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「誓い、自死するなってことね。お母様を救ってもらって、私のために神の使いを竜に生まれ変わらせてしまったのだから、生きる位するわ。」
ため息を吐き、魔法で血だらけの床を綺麗にした後アンカーは部屋を出て母の部屋へと向かった。
見慣れた廊下を、一人で歩いているアンカーを驚き見つめる使用人を無視してただ歩く。
「お母様っ」
母が眠っているであろう部屋の扉を勢いよく開き、アンカーは声を上げる。
アンカーの最後の記憶の中では虚ろな目で天井を見ていただけのアンカーの母は、体を起こし枕を背もたれにして入り口に立つアンカーを見ていた。
「アンカー、どうしたの?」
「お母様に会いたくなってしまいました」
「まあ、アンカーったら、甘えん坊なのは相変わらずね。お母様ね、なぜか眠っていたのよ、体も悪くないのにどうして昼間から寝ていたのかしらね」
アンカーを見ながら優しく微笑む母に、アンカーは何も言わずに飛びついて抱き着いた。
「お母様、一緒に美味しいお菓子を食べたいです! 甘いお菓子を一緒に」
多分一番最初の時のアンカーですらした事が無かった甘えに、母は目を丸くし我が子を抱きしめる。
「ええ、お菓子を一緒にいただきましょう。アンカー」
自分を抱きしめる腕の優しさに、これはもう与えられる事が無かったものだとアンカーは目を細める。
これ以後この世界でアンカーは義母と義妹に搾取される日々が来ることなく、母が死なずに自分のそばにいる。アンカーが神に願い、未来が変化した。
義妹が愛し子として振る舞わないことで、アンカーが生きて来た世界とこの世界は大きく変わってしまうだろうが、アンカーに後悔はなかった。
何度も何度も世界はアンカーに辛く当たっていたのだから、アンカーの最後の一回くらい世界がアンカーに優しくなっても良いと思うのだ。
アンカーはこれから先、誰かを虐げることも特別優しくすることもしない。誰も害さないし傷つけない、自分をそうしない限りすべての者へ無関心を貫く。
アンカーが大切にするのは、今のところ母だけだ。
そして、未来はもう一人増える。
アンカーのために、自分の未来を変えた人、竜に生まれ変わり自分に会いに来ると誓ったあの神の使い。
本当に来るかどうかわからないけれど、裏切らないと誓ってくれた彼がアンカーのところにやってくる日を待ってみようと決めた。
そして、もしも本当に会いに来たら、今度は馬鹿にせず優しくする。と、決めたのだ。
十数年後、神殿の奥で毎日祈りを神に捧げているアンカーのところに、一人の男が訪ねて来た。
愛し子との神託を受けて成人前に神殿の神子になったアンカーは、内心うんざりしながら客の相手をするため小さな応接間の扉を開けた。
「私に何かご用事でしょうか」
膨大な魔力はともかく、神の愛し子として神がアンカーに与えた加護は決して他人に恩恵を与えるものではないのに、それにもし加護が他人のために使えたとしても、アンカーが人のためにそれを使うつもりはないというのに図々しく自分だけはその恩恵を受けられると期待してアンカーを訪ねて来る者達は多い。
彼らは自分自身は誰にも優しくせず、好き勝手をして贅沢に生きているというのに、アンカーは神の愛し子なのだから自分に尽くして当然と考えてやってくるのだ。
やっぱり自分勝手な敵ばかりだと、アンカーは思いながらソファーから立ち上がった客人を見ると、そこにいたのは縦長の瞳孔という変わった目をした男だった。
がっしりとした筋肉質の長身の男、黒と金の瞳に、浅黒い肌、髪は何色と言えばいいのか濃い緑とも苔の色とも言えそうな色だと、アンカーはこっそりと思う。
「私は番を探して旅をしてきました。私の首元には番につながるうろこが一枚あるのです、これを頼りにここまで来たのです」
期待なんてしていなかったと、アンカーは口の中で呟く。
無事に卵の中の竜は殻を破り生まれて来たけれど、やはり記憶は殆ど残っていなかったと、神はアンカーに教えてくれた。だから、アンカーは彼が現れることはないだろうととっくに諦めていたのだ。
彼に吸い込まれた破片についた血を目印に、番を探せると神は言っていたけれど、期待しながら諦めていたのだ。
「番」
「ええ、あなたです。私は生まれた瞬間から、このうろこが指し示す人に会い、その人を守り、決して裏切らずに生きると心に決めていました」
「会い、守り、裏切らずに生きる」
それは、アンカーがこの世の人を憎みながら、それでも心のどこかで望んでいたことだった。
誰にも優しくしないし期待しないと決意しながら成長していくうちに、義妹が義妹のまま生きている今のこの世界、もしかしたらアンカーが信じられる人と出会えるかもしれないと考え、少しずつ人との関わりを増やして行った。
殆どの時間を神殿で過ごし、神官達と交流し祈りの日々を送りながら、友人になれそうな人と交流をし始めた。
けれど、そんな人たちも愛し子で公爵家の娘でもあるアンカーに、下心を持って近づき愛し子のアンカーから恩恵を受けることしか考えていなかった。
友人になれそうだと感じていた者が、陰でアンカーと付き合っても何も旨みは無かったと話しているのを聞いた時アンカーの希望はそこで絶たれてしまった。
アンカーの希望を打ち砕いたのは、無神経な他人だけでなく家族もだった。兄のスカイは、自分より力があり賢いアンカーを妬み、大切な妹だと言いながら疎んじた。
そして、兄のスカイは母がアンカーばかりを贔屓すると恨みを抱き母とアンカーを殺そうとした。
「裏切らないというのは難しい、あなたはそれが本当に出来るの?」
「出来る、私はそのために生まれたのだから」
きっぱりと言う男に、アンカーは実は記憶があるのだろうかと首を傾げる。
神は、確かにすべてとは言わなかった。でも殆ど残っていないと言っていた。殆ど、つまり僅かには残っているということだと、アンカーは男の顔を見つめる。
「私は実の兄に殺されかけました、母と一緒に。母は殺されかけた時の傷がもとで寝たきりになり、今は兄が母をみています」
死にかけた母を見て、兄は母の体を抱きしめながら後悔を口にした。
アンカーには最後まで謝らなかったが、母には何度も何度も謝罪したから、母は兄を許した。兄と兄を許した母を見限ったアンカーはそれ以後家族とは完全に縁を切って神殿で暮らす道を選び、それからずっと祈りの日々を送っていた。
「人は番が分からないと言いますが、あなたは私の番です。今私は人の見た目をしていますが、私は竜です。竜は番を見誤ることはありませんし、番を裏切ることもありません」
「そう」
信じていいのだろうかとアンカーは考える。
母はアンカーを裏切ったわけではないけれど、アンカーを殺そうとしたスカイを許した。
あの瞬間、母はアンカーから遠いところに行ってしまったのだ、敵だと思う他の人と同じ場所に行ってしまった。
いつか敵になるかもしれないと思いながら、その日が来ないことをアンカーは祈っていた。それなのに、母は敵ではないけれど敵の様なものに変わってしまったのだ。
「信用出来ないけれど、信じたいとも思う。あなたは私に会う為に生まれたと知っているから」
もう誰も信じられるものはない。
そうなった瞬間、アンカーの心は凍り付いた。
それでも自死しなかったのは、それが神との約束だったからだ。そして、アンカーのために竜に生まれ変わった神の使いの訪れを待つ決意をしていたからだ。
「番なんて分からないけれど、裏切らないって生涯かけて信じさせてくれる?」
「あなたに会う為に生まれて来ました。裏切ってあなたを悲しませるなら、私は死を選びます」
「馬鹿ね、自死は生まれ変われなくなるのよ。そんなことをしたら、魂が生命の環から外れてしまうわ」
元は神の使いだというのに、男はそれを覚えていないのだ。だから神の教えを忘れてとんでもないことを言うのだと、自分がその道を選ばせてしまったとアンカーはほの暗い心で悲しく思う。
「裏切りなどしないと分かっているから言えることです、約束は破りません。だから、あなたを乗せて空をどこまでも飛ぶ、この約束も叶えます」
「覚えているの?」
「生まれる前にしたあなたとの約束だと思います。私が生まれた時、番のあなたと会って約束を叶えるのだと私の心とこの鱗に誓いました。私の大切な番に、広い空を見せるのは番である私の特権です」
人の形になっていても一枚だけ見える首元の鱗に手をやりながら、男は目を細めながらアンカーを見る。
「……分かった。あなたと行くわ。私はアンカーよ。これからよろしく番の竜さん。とりあえずあなたの名前を教えてくれるかしら」
男に手を伸ばしながら、アンカーは微笑む。
何度も死んだ今までの人生で死ぬ前に見た空の広さをアンカーは今でも覚えている。
空は広いのだと驚いたあの時の気持ちをきっとずっと忘れないけれど、その記憶より広く綺麗な空をアンカーはこの男の背に乗って飛ぶのだ。
「私の名前は……」
アンカーの手を掴み、そのまま引き寄せて男はアンカーの耳に自分の名前を囁いた。
他人の体温なんて嫌悪の理由でしかなかったのに、男が伝えて来る温度はアンカーにはなぜか心地好く感じた。
終わり
没ネタ第二弾でした。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
この話、どんな感じで没ネタとなったかと言いますと、
小説のプロットを考える時、私は大雑把な設定を考えつつ誰を主人公にするか考えることが多いのですが、この話は最初、竜に生まれた彼を主人公に考えていました。
彼のうろこの中に封印されていた、『番を自分の背に乗せて空を飛び、空の広さを番に自分が見せてあげる』という記憶、番にしたその約束を守るために成長し、アンカーに会いに行くけれど、愛し子のアンカーは誰も信じられず番の自分を受け入れようとしない。
そんな話にしようかなと考えて、プロット作ってみたもののハッピーエンドにならなそう。
じゃあ、アンカーが主人公で竜の番が会いに来た話は? と考えてこっちはこっちで難しいとなって、竜に生まれ変わる前の部分なら書けるかなと思い、短編にしてみました。
ため息を吐き、魔法で血だらけの床を綺麗にした後アンカーは部屋を出て母の部屋へと向かった。
見慣れた廊下を、一人で歩いているアンカーを驚き見つめる使用人を無視してただ歩く。
「お母様っ」
母が眠っているであろう部屋の扉を勢いよく開き、アンカーは声を上げる。
アンカーの最後の記憶の中では虚ろな目で天井を見ていただけのアンカーの母は、体を起こし枕を背もたれにして入り口に立つアンカーを見ていた。
「アンカー、どうしたの?」
「お母様に会いたくなってしまいました」
「まあ、アンカーったら、甘えん坊なのは相変わらずね。お母様ね、なぜか眠っていたのよ、体も悪くないのにどうして昼間から寝ていたのかしらね」
アンカーを見ながら優しく微笑む母に、アンカーは何も言わずに飛びついて抱き着いた。
「お母様、一緒に美味しいお菓子を食べたいです! 甘いお菓子を一緒に」
多分一番最初の時のアンカーですらした事が無かった甘えに、母は目を丸くし我が子を抱きしめる。
「ええ、お菓子を一緒にいただきましょう。アンカー」
自分を抱きしめる腕の優しさに、これはもう与えられる事が無かったものだとアンカーは目を細める。
これ以後この世界でアンカーは義母と義妹に搾取される日々が来ることなく、母が死なずに自分のそばにいる。アンカーが神に願い、未来が変化した。
義妹が愛し子として振る舞わないことで、アンカーが生きて来た世界とこの世界は大きく変わってしまうだろうが、アンカーに後悔はなかった。
何度も何度も世界はアンカーに辛く当たっていたのだから、アンカーの最後の一回くらい世界がアンカーに優しくなっても良いと思うのだ。
アンカーはこれから先、誰かを虐げることも特別優しくすることもしない。誰も害さないし傷つけない、自分をそうしない限りすべての者へ無関心を貫く。
アンカーが大切にするのは、今のところ母だけだ。
そして、未来はもう一人増える。
アンカーのために、自分の未来を変えた人、竜に生まれ変わり自分に会いに来ると誓ったあの神の使い。
本当に来るかどうかわからないけれど、裏切らないと誓ってくれた彼がアンカーのところにやってくる日を待ってみようと決めた。
そして、もしも本当に会いに来たら、今度は馬鹿にせず優しくする。と、決めたのだ。
十数年後、神殿の奥で毎日祈りを神に捧げているアンカーのところに、一人の男が訪ねて来た。
愛し子との神託を受けて成人前に神殿の神子になったアンカーは、内心うんざりしながら客の相手をするため小さな応接間の扉を開けた。
「私に何かご用事でしょうか」
膨大な魔力はともかく、神の愛し子として神がアンカーに与えた加護は決して他人に恩恵を与えるものではないのに、それにもし加護が他人のために使えたとしても、アンカーが人のためにそれを使うつもりはないというのに図々しく自分だけはその恩恵を受けられると期待してアンカーを訪ねて来る者達は多い。
彼らは自分自身は誰にも優しくせず、好き勝手をして贅沢に生きているというのに、アンカーは神の愛し子なのだから自分に尽くして当然と考えてやってくるのだ。
やっぱり自分勝手な敵ばかりだと、アンカーは思いながらソファーから立ち上がった客人を見ると、そこにいたのは縦長の瞳孔という変わった目をした男だった。
がっしりとした筋肉質の長身の男、黒と金の瞳に、浅黒い肌、髪は何色と言えばいいのか濃い緑とも苔の色とも言えそうな色だと、アンカーはこっそりと思う。
「私は番を探して旅をしてきました。私の首元には番につながるうろこが一枚あるのです、これを頼りにここまで来たのです」
期待なんてしていなかったと、アンカーは口の中で呟く。
無事に卵の中の竜は殻を破り生まれて来たけれど、やはり記憶は殆ど残っていなかったと、神はアンカーに教えてくれた。だから、アンカーは彼が現れることはないだろうととっくに諦めていたのだ。
彼に吸い込まれた破片についた血を目印に、番を探せると神は言っていたけれど、期待しながら諦めていたのだ。
「番」
「ええ、あなたです。私は生まれた瞬間から、このうろこが指し示す人に会い、その人を守り、決して裏切らずに生きると心に決めていました」
「会い、守り、裏切らずに生きる」
それは、アンカーがこの世の人を憎みながら、それでも心のどこかで望んでいたことだった。
誰にも優しくしないし期待しないと決意しながら成長していくうちに、義妹が義妹のまま生きている今のこの世界、もしかしたらアンカーが信じられる人と出会えるかもしれないと考え、少しずつ人との関わりを増やして行った。
殆どの時間を神殿で過ごし、神官達と交流し祈りの日々を送りながら、友人になれそうな人と交流をし始めた。
けれど、そんな人たちも愛し子で公爵家の娘でもあるアンカーに、下心を持って近づき愛し子のアンカーから恩恵を受けることしか考えていなかった。
友人になれそうだと感じていた者が、陰でアンカーと付き合っても何も旨みは無かったと話しているのを聞いた時アンカーの希望はそこで絶たれてしまった。
アンカーの希望を打ち砕いたのは、無神経な他人だけでなく家族もだった。兄のスカイは、自分より力があり賢いアンカーを妬み、大切な妹だと言いながら疎んじた。
そして、兄のスカイは母がアンカーばかりを贔屓すると恨みを抱き母とアンカーを殺そうとした。
「裏切らないというのは難しい、あなたはそれが本当に出来るの?」
「出来る、私はそのために生まれたのだから」
きっぱりと言う男に、アンカーは実は記憶があるのだろうかと首を傾げる。
神は、確かにすべてとは言わなかった。でも殆ど残っていないと言っていた。殆ど、つまり僅かには残っているということだと、アンカーは男の顔を見つめる。
「私は実の兄に殺されかけました、母と一緒に。母は殺されかけた時の傷がもとで寝たきりになり、今は兄が母をみています」
死にかけた母を見て、兄は母の体を抱きしめながら後悔を口にした。
アンカーには最後まで謝らなかったが、母には何度も何度も謝罪したから、母は兄を許した。兄と兄を許した母を見限ったアンカーはそれ以後家族とは完全に縁を切って神殿で暮らす道を選び、それからずっと祈りの日々を送っていた。
「人は番が分からないと言いますが、あなたは私の番です。今私は人の見た目をしていますが、私は竜です。竜は番を見誤ることはありませんし、番を裏切ることもありません」
「そう」
信じていいのだろうかとアンカーは考える。
母はアンカーを裏切ったわけではないけれど、アンカーを殺そうとしたスカイを許した。
あの瞬間、母はアンカーから遠いところに行ってしまったのだ、敵だと思う他の人と同じ場所に行ってしまった。
いつか敵になるかもしれないと思いながら、その日が来ないことをアンカーは祈っていた。それなのに、母は敵ではないけれど敵の様なものに変わってしまったのだ。
「信用出来ないけれど、信じたいとも思う。あなたは私に会う為に生まれたと知っているから」
もう誰も信じられるものはない。
そうなった瞬間、アンカーの心は凍り付いた。
それでも自死しなかったのは、それが神との約束だったからだ。そして、アンカーのために竜に生まれ変わった神の使いの訪れを待つ決意をしていたからだ。
「番なんて分からないけれど、裏切らないって生涯かけて信じさせてくれる?」
「あなたに会う為に生まれて来ました。裏切ってあなたを悲しませるなら、私は死を選びます」
「馬鹿ね、自死は生まれ変われなくなるのよ。そんなことをしたら、魂が生命の環から外れてしまうわ」
元は神の使いだというのに、男はそれを覚えていないのだ。だから神の教えを忘れてとんでもないことを言うのだと、自分がその道を選ばせてしまったとアンカーはほの暗い心で悲しく思う。
「裏切りなどしないと分かっているから言えることです、約束は破りません。だから、あなたを乗せて空をどこまでも飛ぶ、この約束も叶えます」
「覚えているの?」
「生まれる前にしたあなたとの約束だと思います。私が生まれた時、番のあなたと会って約束を叶えるのだと私の心とこの鱗に誓いました。私の大切な番に、広い空を見せるのは番である私の特権です」
人の形になっていても一枚だけ見える首元の鱗に手をやりながら、男は目を細めながらアンカーを見る。
「……分かった。あなたと行くわ。私はアンカーよ。これからよろしく番の竜さん。とりあえずあなたの名前を教えてくれるかしら」
男に手を伸ばしながら、アンカーは微笑む。
何度も死んだ今までの人生で死ぬ前に見た空の広さをアンカーは今でも覚えている。
空は広いのだと驚いたあの時の気持ちをきっとずっと忘れないけれど、その記憶より広く綺麗な空をアンカーはこの男の背に乗って飛ぶのだ。
「私の名前は……」
アンカーの手を掴み、そのまま引き寄せて男はアンカーの耳に自分の名前を囁いた。
他人の体温なんて嫌悪の理由でしかなかったのに、男が伝えて来る温度はアンカーにはなぜか心地好く感じた。
終わり
没ネタ第二弾でした。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
この話、どんな感じで没ネタとなったかと言いますと、
小説のプロットを考える時、私は大雑把な設定を考えつつ誰を主人公にするか考えることが多いのですが、この話は最初、竜に生まれた彼を主人公に考えていました。
彼のうろこの中に封印されていた、『番を自分の背に乗せて空を飛び、空の広さを番に自分が見せてあげる』という記憶、番にしたその約束を守るために成長し、アンカーに会いに行くけれど、愛し子のアンカーは誰も信じられず番の自分を受け入れようとしない。
そんな話にしようかなと考えて、プロット作ってみたもののハッピーエンドにならなそう。
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