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思いの強さが印になるそうです
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「それではこちらに神聖契約を行う内容をご記入下さい」
「はい」
神聖契約は特殊な魔道具を使い、契約者の魔力を記録し体内に呪を施します。
つまり、神聖契約という名の呪いなのです。
「お嬢様、本当にこの内容で契約されるのですね?」
「はい」
契約内容は、『私が王家と婚約及び婚姻またはそれに類するもの及び行為を行わない。例え王家の者が王家の籍を抜けた場合でも同様とする』としました。
「では、神に祈りを捧げ契約を守る誓いをたてて下さい」
「はい」
祭壇の前に片膝を付き座り、祭壇の前に置かれた魔道具に右手をのせ目を閉じました。
男女関係なく、神聖契約を行う際はこの姿勢で祈りを捧げます。
私が祈りを捧げている間、神官は魔道具に契約内容を刻み私に呪を施します。
すうっと魔力が体から抜ける感覚に目を開けると、魔道具が淡く光っている様に見えました。
「契約は成った。もし神聖契約を破ることあれば、契約者はその代償として命を天に返すものとする」
神官の言葉に後ろで契約を見守っていたお父様とお母様、二人が息を飲む気配がしました。
「ありがとうございます。神官様、契約を破ることなく生きることを誓います」
神官の手を借り立ち上がると、顔色を変えたお父様が私に詰め寄りました。お父様との約束は、代償は命ではなくお金でしたから当然です。
「何故変えた」
「私の婚姻は、私だけでなく侯爵家の治める領地の民の一生を左右することです、その婚姻に関する契約をするのですから相応のものでなくてはいけないと愚考致しました」
「なんという事だ」
へなへなとお父様は床にしゃがみこんでしまいました。
日頃のお父様ならありえない行動に、私は呆然と見つめることしか出来ませんでした。
「お父様、なにも恐れることはありません。陛下は婚約破棄の証明書に婚約破棄撤回はしない旨書いてくださっているのですから。私はただそれに同意し契約を行ったまでのこと。婚約者である殿下のお心を繋ぎ止めて置けなかった不甲斐ない私が、二度と殿下のお側に等夢想しない為の契約ですもの、契約を破るなど起こるはずがありません」
とは言うものの、お父様にはこの契約があっても王家から無理強いされかねないという思いがあるのでしょう。
私が神聖契約の話をお母様に相談した途端、お父様と神殿に手紙を送り、その日の内に契約の準備を整えると神殿に向かったのがその証拠です。
普段であれば深夜まで仕事で城に残っているお父様が、日も落ちたばかりのこの時刻に神殿にやって来たのですから、猶予は無いと考えていたのでしょう。
「それはそうだが」
「お嬢様、失礼ですが印はどちらに発現したかお分かりになりますか?」
「印、でございますか」
「はい、どこか体に熱を感じる箇所があるかと存じます」
「熱、ええ、確かに感じます。こちらですね」
左手を差し出すと、目の前の神官からため息の様な声が聞こえました。
「これは凄いです。お嬢様のお気持ちはとても強いのですね」
「強い、ですか?」
「はい。軽い気持ちで契約をされる方は稀ですが、契約を守るという意志が強ければ強い程、印は濃くはっきりと発現致します。左手の薬指は神に繋がる指とされていますが、その指に印が発現したのも同じ理由でしょうが、困ったことになりましたな」
印が出る場所や印の濃さ等までは知りませんでしたから、私は驚いて自分の指を見つめてしまいました。
「何か弊害があるのか」
立ち上がり、私の左手を見つめながらお父様は神官に尋ねました。
「弊害といえば弊害でしょうか」
「なんだ」
「お嬢様は政略での婚姻はお止めになった方が良いでしょう。意に添わない相手との婚姻も、契約の対象となっていると考えて頂ければよろしいかと」
私、そんなことまで契約はしていませんが、何がおきたのでしょう?
「はい」
神聖契約は特殊な魔道具を使い、契約者の魔力を記録し体内に呪を施します。
つまり、神聖契約という名の呪いなのです。
「お嬢様、本当にこの内容で契約されるのですね?」
「はい」
契約内容は、『私が王家と婚約及び婚姻またはそれに類するもの及び行為を行わない。例え王家の者が王家の籍を抜けた場合でも同様とする』としました。
「では、神に祈りを捧げ契約を守る誓いをたてて下さい」
「はい」
祭壇の前に片膝を付き座り、祭壇の前に置かれた魔道具に右手をのせ目を閉じました。
男女関係なく、神聖契約を行う際はこの姿勢で祈りを捧げます。
私が祈りを捧げている間、神官は魔道具に契約内容を刻み私に呪を施します。
すうっと魔力が体から抜ける感覚に目を開けると、魔道具が淡く光っている様に見えました。
「契約は成った。もし神聖契約を破ることあれば、契約者はその代償として命を天に返すものとする」
神官の言葉に後ろで契約を見守っていたお父様とお母様、二人が息を飲む気配がしました。
「ありがとうございます。神官様、契約を破ることなく生きることを誓います」
神官の手を借り立ち上がると、顔色を変えたお父様が私に詰め寄りました。お父様との約束は、代償は命ではなくお金でしたから当然です。
「何故変えた」
「私の婚姻は、私だけでなく侯爵家の治める領地の民の一生を左右することです、その婚姻に関する契約をするのですから相応のものでなくてはいけないと愚考致しました」
「なんという事だ」
へなへなとお父様は床にしゃがみこんでしまいました。
日頃のお父様ならありえない行動に、私は呆然と見つめることしか出来ませんでした。
「お父様、なにも恐れることはありません。陛下は婚約破棄の証明書に婚約破棄撤回はしない旨書いてくださっているのですから。私はただそれに同意し契約を行ったまでのこと。婚約者である殿下のお心を繋ぎ止めて置けなかった不甲斐ない私が、二度と殿下のお側に等夢想しない為の契約ですもの、契約を破るなど起こるはずがありません」
とは言うものの、お父様にはこの契約があっても王家から無理強いされかねないという思いがあるのでしょう。
私が神聖契約の話をお母様に相談した途端、お父様と神殿に手紙を送り、その日の内に契約の準備を整えると神殿に向かったのがその証拠です。
普段であれば深夜まで仕事で城に残っているお父様が、日も落ちたばかりのこの時刻に神殿にやって来たのですから、猶予は無いと考えていたのでしょう。
「それはそうだが」
「お嬢様、失礼ですが印はどちらに発現したかお分かりになりますか?」
「印、でございますか」
「はい、どこか体に熱を感じる箇所があるかと存じます」
「熱、ええ、確かに感じます。こちらですね」
左手を差し出すと、目の前の神官からため息の様な声が聞こえました。
「これは凄いです。お嬢様のお気持ちはとても強いのですね」
「強い、ですか?」
「はい。軽い気持ちで契約をされる方は稀ですが、契約を守るという意志が強ければ強い程、印は濃くはっきりと発現致します。左手の薬指は神に繋がる指とされていますが、その指に印が発現したのも同じ理由でしょうが、困ったことになりましたな」
印が出る場所や印の濃さ等までは知りませんでしたから、私は驚いて自分の指を見つめてしまいました。
「何か弊害があるのか」
立ち上がり、私の左手を見つめながらお父様は神官に尋ねました。
「弊害といえば弊害でしょうか」
「なんだ」
「お嬢様は政略での婚姻はお止めになった方が良いでしょう。意に添わない相手との婚姻も、契約の対象となっていると考えて頂ければよろしいかと」
私、そんなことまで契約はしていませんが、何がおきたのでしょう?
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