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王妃様の溺愛
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「お兄様の話を私はあまり聞いたことがないの。肖像画も私は持っていないし、屋敷にも飾られていないわ」
お父様達は私をとても愛してくれていますし、大切に愛情を掛けて育ててくれました。
亡くなったとはいえ、お兄様のことを忘れたとは思えません。
「あなたに話せば、うっかり王妃様やフィリップ殿下との会話で話題にするかもしれないでしょう。王妃様を無駄に刺激しないため、二人はあの子の思い出を封印したのよ」
「では意図的に私の記憶から消そうと?」
「あなたは幼かったからほぼ領地に住んでいたし、あの子は王都にいる時も多かったから、そうしていけば成長と共に記憶は薄れていくでしょう。寂しいけれどそれがあなたを守る為には必要だったのよ」
確かに元々私以外子供がいなかったかの様に育てられました。
ケネスのお兄様達も叔父様達も、亡くなったお兄様の話を私にしたことはありませんでした。
それもすべて……。
「王妃様を警戒してのことなのですね。あの方が私を害する事が無いように、私は守られていたのですね」
「ええ、婚約を断ることは出来なかったの。何度も辞退を申し出たけれど陛下は許してくださらなかった。あなたへの殿下の態度はお世辞にも良いとは言えなくて、婚約を結んでからも侯爵は何度も陛下へ婚約解消を願い出ていたのよ」
過去に王家から婿入りしている縁はあるとはいえ、侯爵家はただの一臣下でしかありません。
それなのに、お父様は罰せられる可能性もあるというのに、そんな危険なことをしていたなんて。
「唯一許されたのは、殿下が不貞を犯した時の婚約破棄なの。その理由の時だけは婚約破棄、婚姻後の場合は離縁も陛下は了承すると約束頂けたの。侯爵家の血統に響く可能性がある問題ですからね。殿下の不貞を許してしまえば、王家が侯爵家を簒奪すると言っている様なものですからね」
王妃様を大切にしている陛下も、破ってはいけない最低限を守ってくださったのでしょう。
「そうでしたか、だからあの書類があったのですね」
婚約時に婚約解消の際の申請書を作るのは、この国の貴族の常識ですが、私にはもう一枚、殿下の不義不貞を理由に婚約破棄を申請する旨の申請書がありました。
だからこそ、殿下がエミリアさんを連れてきた時に私は婚約破棄の手続きを思い付いたのです。
「婚約破棄についてだけは、陛下と王妃様の気持ちは一つでは無かったのね」
王妃様なら、殿下の不貞も私の至らなさが理由だと正当化されてしまったでしょう。
殿下の不貞を理由に婚約破棄を認めるなど、王妃様にはあり得ない行いの筈です。
王妃様は何人もいるお子さまの内、フィリップ殿下を一番溺愛しているのですから、どんな無茶なことでも強行されるのです。
フィリップ殿下を一番? いいえ、王妃様はフィリップ殿下だけを愛されているのかもしれません。
「王妃様が愛しているのはフィリップ殿下だけ?」
「フローリア?」
「おばあ様、王妃様が手元に置いて育てたのはフィリップ殿下だけで、他の皆様はすべて乳母まかせだったと言うのは本当ですか」
王妃様はフィリップ殿下だけを贔屓しているというのは、公然の事実でした。それは育て方の違いから言われていた事でしたが、私はその理由を知っているのです。
「そうよ。他のお子様達はすべて乳母と当時はまだ王妃としてご存命だった陛下のお母様が、ご自分の宮でお育てになったの。けれど年が離れた末っ子として生まれたフィリップ殿下だけは王妃様の希望で当時の王太子妃様の宮で育てられた。フィリップ殿下だけ髪色が違うでしょう? 当時その事で色々噂があったからよく覚えているわ」
おばあ様の言葉に、私は封印していた記憶をおばあ様に話す決心をしました。
「フィリップ殿下の父親は陛下ではない」
幼い私は、そう王妃様自身が話しているのを見ていたのです。
お父様達は私をとても愛してくれていますし、大切に愛情を掛けて育ててくれました。
亡くなったとはいえ、お兄様のことを忘れたとは思えません。
「あなたに話せば、うっかり王妃様やフィリップ殿下との会話で話題にするかもしれないでしょう。王妃様を無駄に刺激しないため、二人はあの子の思い出を封印したのよ」
「では意図的に私の記憶から消そうと?」
「あなたは幼かったからほぼ領地に住んでいたし、あの子は王都にいる時も多かったから、そうしていけば成長と共に記憶は薄れていくでしょう。寂しいけれどそれがあなたを守る為には必要だったのよ」
確かに元々私以外子供がいなかったかの様に育てられました。
ケネスのお兄様達も叔父様達も、亡くなったお兄様の話を私にしたことはありませんでした。
それもすべて……。
「王妃様を警戒してのことなのですね。あの方が私を害する事が無いように、私は守られていたのですね」
「ええ、婚約を断ることは出来なかったの。何度も辞退を申し出たけれど陛下は許してくださらなかった。あなたへの殿下の態度はお世辞にも良いとは言えなくて、婚約を結んでからも侯爵は何度も陛下へ婚約解消を願い出ていたのよ」
過去に王家から婿入りしている縁はあるとはいえ、侯爵家はただの一臣下でしかありません。
それなのに、お父様は罰せられる可能性もあるというのに、そんな危険なことをしていたなんて。
「唯一許されたのは、殿下が不貞を犯した時の婚約破棄なの。その理由の時だけは婚約破棄、婚姻後の場合は離縁も陛下は了承すると約束頂けたの。侯爵家の血統に響く可能性がある問題ですからね。殿下の不貞を許してしまえば、王家が侯爵家を簒奪すると言っている様なものですからね」
王妃様を大切にしている陛下も、破ってはいけない最低限を守ってくださったのでしょう。
「そうでしたか、だからあの書類があったのですね」
婚約時に婚約解消の際の申請書を作るのは、この国の貴族の常識ですが、私にはもう一枚、殿下の不義不貞を理由に婚約破棄を申請する旨の申請書がありました。
だからこそ、殿下がエミリアさんを連れてきた時に私は婚約破棄の手続きを思い付いたのです。
「婚約破棄についてだけは、陛下と王妃様の気持ちは一つでは無かったのね」
王妃様なら、殿下の不貞も私の至らなさが理由だと正当化されてしまったでしょう。
殿下の不貞を理由に婚約破棄を認めるなど、王妃様にはあり得ない行いの筈です。
王妃様は何人もいるお子さまの内、フィリップ殿下を一番溺愛しているのですから、どんな無茶なことでも強行されるのです。
フィリップ殿下を一番? いいえ、王妃様はフィリップ殿下だけを愛されているのかもしれません。
「王妃様が愛しているのはフィリップ殿下だけ?」
「フローリア?」
「おばあ様、王妃様が手元に置いて育てたのはフィリップ殿下だけで、他の皆様はすべて乳母まかせだったと言うのは本当ですか」
王妃様はフィリップ殿下だけを贔屓しているというのは、公然の事実でした。それは育て方の違いから言われていた事でしたが、私はその理由を知っているのです。
「そうよ。他のお子様達はすべて乳母と当時はまだ王妃としてご存命だった陛下のお母様が、ご自分の宮でお育てになったの。けれど年が離れた末っ子として生まれたフィリップ殿下だけは王妃様の希望で当時の王太子妃様の宮で育てられた。フィリップ殿下だけ髪色が違うでしょう? 当時その事で色々噂があったからよく覚えているわ」
おばあ様の言葉に、私は封印していた記憶をおばあ様に話す決心をしました。
「フィリップ殿下の父親は陛下ではない」
幼い私は、そう王妃様自身が話しているのを見ていたのです。
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