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まとまらない計画
「これだけで全然駄目ね。そもそも私達だけでは使えるものが少なすぎるわ」
ユウナが提案したのは、王都にある侯爵家の使用人達を使い『殿下が相愛の相手と添い遂げられる様にフローリアが身を引いた。そして心痛のあまり体調を崩している。殿下は男爵家令嬢エミリアと婚約をする』や『殿下は自分で婚約者のフローリアを蔑ろにしておきながら、悪いのはフローリアだと逆恨みしている』等を他家の使用人に噂を流して貰うというものです。使用人同士の他家の交流は侮れません。通常であれば屋敷内で見聞きした事を他家に広める等あってはならない話ですが、今回は殿下の非情な行ないが許せず……という風に進めていくつもりです。
これにお母様の人脈を使えば、王妃様がフローリアが悪いと言い出しても、信じるものは少なくなるでしょう。
「私が侯爵家を継ぐためには少しでも悪い評判は消しておかなければいけないから、その点ではユウナの案は良いのだけれどね」
「社交界でフローリアが殿下にエスコートをまともにされていなかったのは有名な話だろ。少しでもこの噂が広まればそこは大丈夫だろう」
婚約破棄をした身ですから、多少評判が落ちるのは覚悟の上です。けれど、殿下の不貞が理由だとはっきりさせておかなければ他の家から侮られてしまいます。
フィリップ殿下と私の婚約破棄の発表と共にエミリアさんとの婚約を公表する筈ですが、エミリアさんとの婚約の方だけは表に出さず王妃様が婚約破棄は王家からで理由が私の不義だと噂を広められてしまえば、事実と異なってもそれが真実とされてしまう可能性もあるので、これは早急に行なわなければいけません。
「この辺りのことはすでにお母様がされていそうだけれど、案として送りましょう。すぐに着手しなければならない事ですもの」
私が聞いた王妃様の秘密と共に手紙に記すと魔道具でお父様へ送ります。
王都から離れた身では出来る事が限られてしまうのは申し訳なく思いますが、仕方ありません。
「ねえ、フィリエ伯爵の子息はケネスの同級生だったかしら?」
「次男が俺の一つ上だな。長男は兄上と一緒だ」
「交流がある?」
「ないな」
「お顔を存じ上げないのだけれど、フィリップ殿下に似ていらっしゃるのかしら?」
私の記憶が誤っていないなら、彼らは異母兄弟となります。
フィリエ伯爵は王妃様と同じ髪色で瞳の色も同じですが、大人しく繊細な印象です。
「外見は似ているが性格は違うな、彼は騎士になるには繊細すぎる感じがする。剣の腕は良いがどちらか言えば文官向きな感じだし真面目な性格の様だし、本人も騎士団の事務方を希望していると聞いている」
真面目という時点で性格の傾向もフィリップ殿下とは異なると理解してしまった私は、少し意地が悪いでしょうか。
「不敬を承知で言わせて頂きますと、フィリップ殿下の性格とはだいぶ違う様に思いますね。真面目とか繊細とかは殿下の最も遠いところにある様に愚考致します」
丁寧な言い方をしていても、ユウナの発言は十分に不敬です。
不敬です、不敬ですがユウナを叱れないのは私も同じ事を考えていたからです。
「交流が無いというのに、詳しいのね」
「ああ、彼は生徒会の副会長だからな。良くも悪くも目立つんだよ。あと俺の友達が生徒会の会計をやっているから交流はないけれど話を良く聞くんだ。大雑把で暴走しがちな会長を止められるのは彼だけらしいとか。細かい所まで良く気が利くから助かるとか、率先して書類仕事を進めてくれるから助かるとか」
聞けば聞く程殿下とは異なる様です。
殿下は、こちらがお願いしても署名すらしてくれず、生徒会室はお城に戻ると家庭教師が待っているから授業が終わってすぐ帰るのが嫌で、時間潰しに来ているのだと公言している人です。
「公には従兄弟になるけれど、交流はあるのかしら。フィリエ伯爵のご子息を夜会で見かけた事は殆どないのだけれど」
フィリエ伯爵は王家主催の物以外の夜会はあまり参加されませんし、参加しても奥様を伴うことは稀です。
奥様は体が弱く領地から出る事が殆どないと言われていますが、記憶の中の王妃様の言動を考えると体が弱いというのは嘘という可能性もあります。
「そういう話は聞いたことがないな。確かに公では従兄弟という扱いになるが、伯爵と王妃様は義理の兄妹とはいえフローリアの先程の話を考えれば王妃様を警戒して近付けられないんじゃないか? 何をされるか分らないだろう」
王妃様がフィリエ伯爵を今でも思っているとすれば、フィリエ伯爵家の子息達は王妃様にとって自分から義兄を奪った相手との子供という事になります。
苛烈な王妃様の性格を考えたら、確かに近付けたくはないでしょう。
ユウナが提案したのは、王都にある侯爵家の使用人達を使い『殿下が相愛の相手と添い遂げられる様にフローリアが身を引いた。そして心痛のあまり体調を崩している。殿下は男爵家令嬢エミリアと婚約をする』や『殿下は自分で婚約者のフローリアを蔑ろにしておきながら、悪いのはフローリアだと逆恨みしている』等を他家の使用人に噂を流して貰うというものです。使用人同士の他家の交流は侮れません。通常であれば屋敷内で見聞きした事を他家に広める等あってはならない話ですが、今回は殿下の非情な行ないが許せず……という風に進めていくつもりです。
これにお母様の人脈を使えば、王妃様がフローリアが悪いと言い出しても、信じるものは少なくなるでしょう。
「私が侯爵家を継ぐためには少しでも悪い評判は消しておかなければいけないから、その点ではユウナの案は良いのだけれどね」
「社交界でフローリアが殿下にエスコートをまともにされていなかったのは有名な話だろ。少しでもこの噂が広まればそこは大丈夫だろう」
婚約破棄をした身ですから、多少評判が落ちるのは覚悟の上です。けれど、殿下の不貞が理由だとはっきりさせておかなければ他の家から侮られてしまいます。
フィリップ殿下と私の婚約破棄の発表と共にエミリアさんとの婚約を公表する筈ですが、エミリアさんとの婚約の方だけは表に出さず王妃様が婚約破棄は王家からで理由が私の不義だと噂を広められてしまえば、事実と異なってもそれが真実とされてしまう可能性もあるので、これは早急に行なわなければいけません。
「この辺りのことはすでにお母様がされていそうだけれど、案として送りましょう。すぐに着手しなければならない事ですもの」
私が聞いた王妃様の秘密と共に手紙に記すと魔道具でお父様へ送ります。
王都から離れた身では出来る事が限られてしまうのは申し訳なく思いますが、仕方ありません。
「ねえ、フィリエ伯爵の子息はケネスの同級生だったかしら?」
「次男が俺の一つ上だな。長男は兄上と一緒だ」
「交流がある?」
「ないな」
「お顔を存じ上げないのだけれど、フィリップ殿下に似ていらっしゃるのかしら?」
私の記憶が誤っていないなら、彼らは異母兄弟となります。
フィリエ伯爵は王妃様と同じ髪色で瞳の色も同じですが、大人しく繊細な印象です。
「外見は似ているが性格は違うな、彼は騎士になるには繊細すぎる感じがする。剣の腕は良いがどちらか言えば文官向きな感じだし真面目な性格の様だし、本人も騎士団の事務方を希望していると聞いている」
真面目という時点で性格の傾向もフィリップ殿下とは異なると理解してしまった私は、少し意地が悪いでしょうか。
「不敬を承知で言わせて頂きますと、フィリップ殿下の性格とはだいぶ違う様に思いますね。真面目とか繊細とかは殿下の最も遠いところにある様に愚考致します」
丁寧な言い方をしていても、ユウナの発言は十分に不敬です。
不敬です、不敬ですがユウナを叱れないのは私も同じ事を考えていたからです。
「交流が無いというのに、詳しいのね」
「ああ、彼は生徒会の副会長だからな。良くも悪くも目立つんだよ。あと俺の友達が生徒会の会計をやっているから交流はないけれど話を良く聞くんだ。大雑把で暴走しがちな会長を止められるのは彼だけらしいとか。細かい所まで良く気が利くから助かるとか、率先して書類仕事を進めてくれるから助かるとか」
聞けば聞く程殿下とは異なる様です。
殿下は、こちらがお願いしても署名すらしてくれず、生徒会室はお城に戻ると家庭教師が待っているから授業が終わってすぐ帰るのが嫌で、時間潰しに来ているのだと公言している人です。
「公には従兄弟になるけれど、交流はあるのかしら。フィリエ伯爵のご子息を夜会で見かけた事は殆どないのだけれど」
フィリエ伯爵は王家主催の物以外の夜会はあまり参加されませんし、参加しても奥様を伴うことは稀です。
奥様は体が弱く領地から出る事が殆どないと言われていますが、記憶の中の王妃様の言動を考えると体が弱いというのは嘘という可能性もあります。
「そういう話は聞いたことがないな。確かに公では従兄弟という扱いになるが、伯爵と王妃様は義理の兄妹とはいえフローリアの先程の話を考えれば王妃様を警戒して近付けられないんじゃないか? 何をされるか分らないだろう」
王妃様がフィリエ伯爵を今でも思っているとすれば、フィリエ伯爵家の子息達は王妃様にとって自分から義兄を奪った相手との子供という事になります。
苛烈な王妃様の性格を考えたら、確かに近付けたくはないでしょう。
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