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動機は何か
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「話が逸れてしまったわね。私の婚約していた時の心情は今は関係ないわ。エミリアさんの事でしたね」
気持ちの整理はついていると思っていても、フィリップ殿下との婚約していた時w思い出すと時折感情的になってしまうのが困ります。
自分でもどうしようもないこの感情が、後悔なのか悲しみなのか怒りなのか分かりません。
ただ、嵐の様に心の中に何かが吹き荒れてきて、泣きたい様な喚きたいような気持になってしまうのです。
「婚約破棄の原因となった彼女はエミリアさんという男爵令嬢です。彼女が侯爵家に放火をしたと父から連絡がありました」
「婚約破棄の原因。殿下が運命の相手と言っている方ですね」
「ええ」
「その方は何故侯爵家に放火を? 逆恨みでしょうか」
イオン様の疑問はもっともな話です。
あの場にエミリアさんがフィリップ殿下と一緒に来ていたということは、彼女に殿下への思いがあったからだと思います。
私という婚約者がいて、それでも自分を選んだのだとエミリアさんに自覚があったのかどうか分かりませんが、フィリップ殿下の方には私はいらないという気持ちがあの時確かにあったと思うのです。
なにせゴミ同然と言われているのですから。
エミリアさんの思い人がフィリップ殿下で、彼女にとって邪魔者な私を婚約破棄によって排除出来たのですからあの時戸惑いはしても、それと同時に喜びもあったでしょう。
男爵令嬢が侯爵家の令嬢である私から、婚約者を奪えたのですから。
「逆恨みという感情があったのかどうか分かりませんが。彼女の動機はそれではないと思います」
私が見る限り、エミリアさんはただの貴族令嬢だと思います。
爵位の違いはあれど、貴族令嬢の殆どは荒事に無縁の生活を送っています。
力仕事等したこともなく、屋敷の外を一人で歩いたこともなく、ひたすら周囲に守られた生活を過ごす令嬢が殆どですし私も勿論そういう生活を送っていました。
その貴族令嬢の典型の様に見えた彼女が仮に私に逆恨みをしたとして、本人が放火をしようと考え行動に移せるとは思えないのです。
「逆恨みではないとすると」
「王妃様からの命令だったのではないかと」
放火で捕らえられた罪人は死罪と決まっています。
この国に住む貴族の令嬢である彼女がそれを知らぬ筈がありません。
「王妃様の」
「ええ。そうでなければ自ら死罪を望んで行動したかのどちらかではないでしょうか」
侯爵家は家に仕えている私兵に守られています。
貴族の家であれば当然ですが、門は屈強な兵士が常時門番としておりますし、屋敷の周辺を巡回警備もしています。
今回エミリアさんは屋敷に設置してあった魔道具が発動し怪我をして捕縛されている様ですが、魔道具がなくても私兵に捕らえられていた可能性は十分にあります。
「死罪を望んで、そうですね。普通の貴族令嬢が放火等して捕縛されず逃げられる等考えるのは無謀です」
「ええ。ですから彼女の単独の行動ではなく、王妃様の命令によるものだと思います」
想像でしかありませんが、 まさかフィリップ殿下の命令とは思えませんから王妃様の命令からの行動と考えるのが正しいでしょう。
「彼女はただの貴族令嬢です。これは憶測ですが王妃様は彼女が失敗すると分かっていて命令したのだと思います」
「ですが、なぜそんなことを?」
「私はフィリップ殿下と婚約破棄をした際に殿下とエミリアさんの婚約締結も一緒に望みました。エミリアさんのご実家の承諾が得られればそれは確定となる筈でした。男爵位の家が王家からの婚約を拒否できるとは思えませんので婚約締結になっている筈が父からそんな知らせは来ていません」
「つまり王妃様は、二人の婚約を阻止するため邪魔なその令嬢を排除しようとした」
「それと、侯爵家への脅しかと」
王妃様にとって邪魔な者は存在すら許されないのだと、そう知らしめるための行いだったのだとそう思うのです。
気持ちの整理はついていると思っていても、フィリップ殿下との婚約していた時w思い出すと時折感情的になってしまうのが困ります。
自分でもどうしようもないこの感情が、後悔なのか悲しみなのか怒りなのか分かりません。
ただ、嵐の様に心の中に何かが吹き荒れてきて、泣きたい様な喚きたいような気持になってしまうのです。
「婚約破棄の原因となった彼女はエミリアさんという男爵令嬢です。彼女が侯爵家に放火をしたと父から連絡がありました」
「婚約破棄の原因。殿下が運命の相手と言っている方ですね」
「ええ」
「その方は何故侯爵家に放火を? 逆恨みでしょうか」
イオン様の疑問はもっともな話です。
あの場にエミリアさんがフィリップ殿下と一緒に来ていたということは、彼女に殿下への思いがあったからだと思います。
私という婚約者がいて、それでも自分を選んだのだとエミリアさんに自覚があったのかどうか分かりませんが、フィリップ殿下の方には私はいらないという気持ちがあの時確かにあったと思うのです。
なにせゴミ同然と言われているのですから。
エミリアさんの思い人がフィリップ殿下で、彼女にとって邪魔者な私を婚約破棄によって排除出来たのですからあの時戸惑いはしても、それと同時に喜びもあったでしょう。
男爵令嬢が侯爵家の令嬢である私から、婚約者を奪えたのですから。
「逆恨みという感情があったのかどうか分かりませんが。彼女の動機はそれではないと思います」
私が見る限り、エミリアさんはただの貴族令嬢だと思います。
爵位の違いはあれど、貴族令嬢の殆どは荒事に無縁の生活を送っています。
力仕事等したこともなく、屋敷の外を一人で歩いたこともなく、ひたすら周囲に守られた生活を過ごす令嬢が殆どですし私も勿論そういう生活を送っていました。
その貴族令嬢の典型の様に見えた彼女が仮に私に逆恨みをしたとして、本人が放火をしようと考え行動に移せるとは思えないのです。
「逆恨みではないとすると」
「王妃様からの命令だったのではないかと」
放火で捕らえられた罪人は死罪と決まっています。
この国に住む貴族の令嬢である彼女がそれを知らぬ筈がありません。
「王妃様の」
「ええ。そうでなければ自ら死罪を望んで行動したかのどちらかではないでしょうか」
侯爵家は家に仕えている私兵に守られています。
貴族の家であれば当然ですが、門は屈強な兵士が常時門番としておりますし、屋敷の周辺を巡回警備もしています。
今回エミリアさんは屋敷に設置してあった魔道具が発動し怪我をして捕縛されている様ですが、魔道具がなくても私兵に捕らえられていた可能性は十分にあります。
「死罪を望んで、そうですね。普通の貴族令嬢が放火等して捕縛されず逃げられる等考えるのは無謀です」
「ええ。ですから彼女の単独の行動ではなく、王妃様の命令によるものだと思います」
想像でしかありませんが、 まさかフィリップ殿下の命令とは思えませんから王妃様の命令からの行動と考えるのが正しいでしょう。
「彼女はただの貴族令嬢です。これは憶測ですが王妃様は彼女が失敗すると分かっていて命令したのだと思います」
「ですが、なぜそんなことを?」
「私はフィリップ殿下と婚約破棄をした際に殿下とエミリアさんの婚約締結も一緒に望みました。エミリアさんのご実家の承諾が得られればそれは確定となる筈でした。男爵位の家が王家からの婚約を拒否できるとは思えませんので婚約締結になっている筈が父からそんな知らせは来ていません」
「つまり王妃様は、二人の婚約を阻止するため邪魔なその令嬢を排除しようとした」
「それと、侯爵家への脅しかと」
王妃様にとって邪魔な者は存在すら許されないのだと、そう知らしめるための行いだったのだとそう思うのです。
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