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陛下の決断1
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「そろそろ刻限だ。侯爵行こう」
王太子殿下のお言葉で私達は部屋を出ました。
無言で廊下を進む私達が進む先にあるのは、断罪の為の部屋です。
そこには陛下と王妃様がいらっしゃる筈で、もしかしたら先程小部屋にいた四人もいるかもしれません。
そう考えるだけで私の気持ちは暗く沈んでいきました。
私とフィリップ殿下の婚約期間はそれなりに長くありましたが、私がフィリップ殿下のお気持ちを本当に理解出来たのは先日、婚約破棄後にフィリップ殿下と再会したあの侯爵家でのあの日だったのですから、私がいかにフィリップ殿下と交流を出来ていなかったのか分かります。
「ゾルティーア侯爵家の皆には納得がいかない結果になるかもしれない。だが王家の体面を保つには仕方がないそこは耐えて欲しい」
「私共が陛下の采配に否と言うことなどありましょうか。私と我が家の忠誠は陛下へと捧ぐ為にあるのですから」
お父様が芝居の様な口調と態度で王太子殿下の前に礼を取りました。
私達もそれに倣い礼を取ります。
この国にそれなりの法はあるとしても、法の根本にあるのは陛下です。
この国の絶対の法は陛下なのですから、そんなことはないと信じていますが仮に王妃様を無罪だと陛下が判断したとするなら私達はそれに従うしかありません。
陛下の決断はそれ程重いものなのです。
「そうか。では中へ急ごう」
お父様の答えに王太子殿下は苦笑して、先程エミリアさんの部屋の扉を開いてくれた騎士に部屋の扉を開ける様指示を出しました。
「ここから侯爵達は声を出してはならない。いいね」
王太子殿下のお言葉に私達は頷きで答えるとそれぞれ部屋の中へと入りました。
「!」
部屋に入ってすぐ声を出しそうになり私は慌てて両手で口を塞ぎました。
そこに見えているのは驚愕の姿でした。
床に蹲った王妃様を背後から陛下が抱きかかえる様に支えているのです。
それは抵抗する王妃様を逃さないと言う様に羽交い絞めにしている姿に見えますが、そうではなくただ王妃様を思いのまま抱きしめているだけの様にも見えたのです。
「王太子殿下とゾルティーア侯爵家一行、そして大神官イオン殿をお連れしました」
先程の騎士の声が部屋の中に響き、扉が閉められました。
よくよく室内を見渡すと陛下と王妃様の他第二王子殿下の姿もありました。
第二王子殿下の側には小さなテーブルが置かれ、そこには五つの小さな杯と、一つの大きな杯がありました。
「陛下」
「ああ、判決はすでに出来ている。あれたちもこの場に」
王妃様を抱きしめたまま、陛下は声を発しました。
そのお声は、大きくないものの張りがあり部屋に響きました。
「フィリップ第三王子殿下、フィリエ伯爵、医師アヌビートをお連れしました」
また騎士の声が響きます。
騎士の声と共に三人は粛々と部屋の中央に足を進めました。
「まずは第三王子フィリップ」
王太子殿下の声にフィリップ殿下は俯いていたお顔を上げました。
「フィリップその方の罪を述べよ」
「はい。私の罪は私がこの世に生を受けた、私そのものが罪でございます。私の母は王妃でありこの国の国王の妻であるというのに不貞を犯し、フィリエ伯爵との間に私を儲けました。そして私はその資格がないにもかかわらず長年この国の第三王子として生き恥を晒してきました」
フィリップ殿下のその答えは、何故か私の心に傷を産みました。
それはフィリップ殿下の罪でしょうか。
「そして私は婚約者であるフローリア・ゾルティーア侯爵令嬢を虐げ続けました。それだけでは足りず男爵令嬢と不貞を働き陛下が決めた婚約を破棄されました」
「それが罪だという自覚はあるのだな」
「はい。ございます」
「お前をこの世に生み出したのは母親である王妃と父親であるフィリエ伯爵の罪だ。それでも自分に罪があると言うのだな」
「はい。そう思う事は辛いことですが、私が陛下への不貞の末生まれたことが事実なら、私の存在そのものが罪だとそう考えます」
フィリップ殿下はそう言うと、なぜか一瞬だけ私の方を見て微笑んだのです。
王太子殿下のお言葉で私達は部屋を出ました。
無言で廊下を進む私達が進む先にあるのは、断罪の為の部屋です。
そこには陛下と王妃様がいらっしゃる筈で、もしかしたら先程小部屋にいた四人もいるかもしれません。
そう考えるだけで私の気持ちは暗く沈んでいきました。
私とフィリップ殿下の婚約期間はそれなりに長くありましたが、私がフィリップ殿下のお気持ちを本当に理解出来たのは先日、婚約破棄後にフィリップ殿下と再会したあの侯爵家でのあの日だったのですから、私がいかにフィリップ殿下と交流を出来ていなかったのか分かります。
「ゾルティーア侯爵家の皆には納得がいかない結果になるかもしれない。だが王家の体面を保つには仕方がないそこは耐えて欲しい」
「私共が陛下の采配に否と言うことなどありましょうか。私と我が家の忠誠は陛下へと捧ぐ為にあるのですから」
お父様が芝居の様な口調と態度で王太子殿下の前に礼を取りました。
私達もそれに倣い礼を取ります。
この国にそれなりの法はあるとしても、法の根本にあるのは陛下です。
この国の絶対の法は陛下なのですから、そんなことはないと信じていますが仮に王妃様を無罪だと陛下が判断したとするなら私達はそれに従うしかありません。
陛下の決断はそれ程重いものなのです。
「そうか。では中へ急ごう」
お父様の答えに王太子殿下は苦笑して、先程エミリアさんの部屋の扉を開いてくれた騎士に部屋の扉を開ける様指示を出しました。
「ここから侯爵達は声を出してはならない。いいね」
王太子殿下のお言葉に私達は頷きで答えるとそれぞれ部屋の中へと入りました。
「!」
部屋に入ってすぐ声を出しそうになり私は慌てて両手で口を塞ぎました。
そこに見えているのは驚愕の姿でした。
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それは抵抗する王妃様を逃さないと言う様に羽交い絞めにしている姿に見えますが、そうではなくただ王妃様を思いのまま抱きしめているだけの様にも見えたのです。
「王太子殿下とゾルティーア侯爵家一行、そして大神官イオン殿をお連れしました」
先程の騎士の声が部屋の中に響き、扉が閉められました。
よくよく室内を見渡すと陛下と王妃様の他第二王子殿下の姿もありました。
第二王子殿下の側には小さなテーブルが置かれ、そこには五つの小さな杯と、一つの大きな杯がありました。
「陛下」
「ああ、判決はすでに出来ている。あれたちもこの場に」
王妃様を抱きしめたまま、陛下は声を発しました。
そのお声は、大きくないものの張りがあり部屋に響きました。
「フィリップ第三王子殿下、フィリエ伯爵、医師アヌビートをお連れしました」
また騎士の声が響きます。
騎士の声と共に三人は粛々と部屋の中央に足を進めました。
「まずは第三王子フィリップ」
王太子殿下の声にフィリップ殿下は俯いていたお顔を上げました。
「フィリップその方の罪を述べよ」
「はい。私の罪は私がこの世に生を受けた、私そのものが罪でございます。私の母は王妃でありこの国の国王の妻であるというのに不貞を犯し、フィリエ伯爵との間に私を儲けました。そして私はその資格がないにもかかわらず長年この国の第三王子として生き恥を晒してきました」
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フィリップ殿下はそう言うと、なぜか一瞬だけ私の方を見て微笑んだのです。
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