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陛下の決断4
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「フィリエ伯爵、己の罪を述べよ」
王太子殿下の声にフィリエ伯爵は一度フィリップ殿下の方を向いた後、口を開きました。
「はい。私は陛下の臣下でありながら、義理の妹で現王妃殿下と不貞を働きました。その不貞から子が出来、その子が血統を偽り王子として育てられていると知りながら何も知らない振りをしていました。また、王子と共に生まれた妹を我が屋敷で秘密裏に預かり育てようとしました。現在その子は亡くなっていますが、そうでなければ未だに存在を隠し育て続けたでしょう。王妃殿下との不貞は本意ではありませんでした、油断した隙をつき騙されて結ばされた不貞です。その後妻と子供達と領民の命を人質に王妃殿下に脅されていたとは言え、血統を偽っていると黙っていた罪は罪です。どうぞ私に裁きを」
フィリエ伯爵は、そう言うと臣下の礼を取りそのまま頭を下げ続けました。
「本意では無かったのだな」
「はい。先程も申し上げた通り私には王妃殿下を思う心はございません。私が愛するのは妻だけです。私が罪の裁きを受けこの身が物言わぬものになったとしても、魂だけになっても王妃様を愛することは絶対にありません。私の心を無視し自分の思いを優先させる人をどうして愛せましょうか。歪んだ思いを果たす為人の命を脅かすと脅す人をどうして愛しい等思えるでしょうか。私にとって王妃殿下は義理の妹ですらなく、ただただ恐ろしい人でしかありません。恐ろしい魔女を思うことなどありません。蔑み憎んでも愛するなどありません」
フィリエ伯爵は先程の審議でも王妃様に心はないと言い続けていました。
王妃様はそれを認めず、フィリップ殿下はフィリエ伯爵と愛し合った結果だと仰いました。
媚薬の葡萄酒をフィリエ伯爵に飲ませ、精神操作の魔法を何度も掛けたと言いながらそれでも愛があったとそう仰ったのです。
ですが、一欠片の情すらフィリエ伯爵は持っていないのだと、そう言い切ったのです。
「魂になっても私を愛さない」
「ええ、私はこの命が果てて魂だけになっても、もし万が一また人に生まれ変わったとしても私はあなたを愛することはありません」
「そんな、そんなお義兄様、いやよそんな風に言わないで、私を愛して。一度でいいのよ私を愛すると言って!」
陛下に羽交い絞めされながら、神聖契約を破った罪の証に痛みと熱を与えられながら王妃様は叫びました。
王妃様を羽交い絞めにしたまま陛下は、苦しそうに顔を歪め「王妃よ」と小さく呟きました。
「フィリエ伯爵」
「はい。陛下」
「お前の不貞は確かに罪だ。フィリップの血統を王子と偽り続けたのも罪だ。だが、その罪の根本は王妃だ」
確かにそうです。すべては王妃様の罪です。
「フィリエ伯爵は爵位を息子に譲り、領地に妻と共に謹慎とする」
「陛下」
「どうしてっ!」
「アダム」
「はい。フィリエ伯爵の罪は王妃の魔法による罪です。その罪を償うのも王妃あなただ」
「どうして、お義兄様も罪に問われるでしょう? フィリップの父親はお義兄様。フィリップの父だと言わず陛下を謀ったのよ。私と共に罪を償わなければならない筈よ。あの女の側にお義兄様は返さない。お義兄様は私と共に神の裁きを受けるのよ。私と同じに!」
「だからこそです。フィリエ伯爵はその罪を生涯償わなければならない。己の妻に」
「え」
「共に領地で謹慎し、同じ時間を過ごし罪を償い続けるのです」
それは伯爵への罰ではなく、王妃様への罰なのでしょうか。
自分は神の裁きを受けるというのに、愛する人は妻と共に生き続けるのです。
「そんな。そんなお義兄様、お義兄様」
髪を振り乱しながら王妃様はフィリエ伯爵へ手を伸ばしました。
絹よりも滑らかだと言われていた王妃様の手は、染みだらけの皺々で今にも朽ち果てる老木の様です。
「いやよぉっ!」
王妃様の叫びを無視して、三再び王太子殿下は小さな杯を一つ手に取り、大きな杯にその中身を注ぎました。
「王妃殿下、母上。最後の罪です。ここにはいないエミリア嬢に母上は侯爵家の放火を命じましたね」
「だから何。侯爵家など燃えて無くなればいい。フィリップを誑かす女狐等放火の罪で火あぶりになればいい。私にとって邪魔なものはすべて消え去ればいいのよ」
「認めるのですね。放火を命じたと」
「ええ、命じたわ。あの女狐はぶるぶると震えて滑稽だったわ。あんなみすぼらしい女をどうして私のフィリップは気に入ったのかしら。惑わされたとしか思えないわ。私の愛する、お義兄様との子があんな女を愛するなんて、あってはならないというのに」
「そなたは、どうして。王妃という尊い地位にいながらどうして」
陛下は涙を流しながら、それでも王妃様の体を離しませんでした。
「アダム」
「はい。エミリアの罪は王妃の命令による罪です。その罪を償うのも王妃あなただ。あなたは自分の為に魔法を使いその地位を使い四人の人の人生を歪めた。五人の命を奪った。その罪を己の体で償うのです」
最後の杯も王太子殿下は大きな杯にその中身を注ぎました。
「エミリアの命は」
「フィリップ、そなたの刑を伝える。王位継承権をはく奪し子が出来ぬようにした上で王族から除籍する。今後は放火未遂犯のエミリアと共にフィリエ伯爵領にて平民として生きよ。フィリエ伯爵は二人を使用人として謹慎先で仕えさせよ」
「陛下」
「父、陛下。ご温情有難く賜ります」
「陛下……」
ふらふらとフィリップ殿下は陛下の下へ歩み寄ろうとして立ち止まり、その場で平伏しました。
フィリエ伯爵は茫然と立ちすくみ、一度天を仰いだ後に同じく平伏しました。
神の裁きはすべて王妃様の杯と共になり、王太子殿下がそれを銀盆にのせ静々と王妃様の前へ進みました。
「さあ、神の裁きを始めましょう。五つの大罪を王妃であるあなたは犯した。すでにあなたは神聖契約を破った罪で神に代償を支払っていますが、それだけでは足りないのです。これを飲み五か月の間、あなたは罪を償い続けるのですよ。償いが終わった先にある救いがあなたの死です」
「飲むわ。飲めばいいんでしょう」
王太子殿下が差し出した杯を、王妃様は躊躇わず飲み干しました。
「これから一日かけて神の裁きは始まります。まだ苦しみは始まらない、これから徐々にその裁きは行われる」
「王妃よ。我が最愛だった者よ。そなたは五か月の間罪を償い、その命で償いを終える。だが表立ってはそなたは余の妻のまま王妃のまま、葬送の儀を行う。その体は魂止めをしたのち王太后の墓に一緒に納めよう。母上は優しい方だ至らぬそなたをあの世から諭し正しく導いてくれるだろう」
魂止め、それは罪人に行われる死後の罰です。
この国では命を終えた後の魂は神が導き神の園に迎えられると信じられています。
神の園で現世の疲れを癒した後に生まれ変わるのです。
ですが、罪人は神の園にいけない様に魂止めを行うのです。
体が朽ちた後、魂も一緒に朽ちるといわれています。
それが罪人への罰なのです。
「嫌よ。死んでまで王家に縛られる等、あの王太后と同じ墓に入る等、嫌よぉっ!」
王妃様の声だけが虚しく部屋に響きました。
こうして裁きは終了したのです。
王妃様の罪は、裁かれたのです。
王太子殿下の声にフィリエ伯爵は一度フィリップ殿下の方を向いた後、口を開きました。
「はい。私は陛下の臣下でありながら、義理の妹で現王妃殿下と不貞を働きました。その不貞から子が出来、その子が血統を偽り王子として育てられていると知りながら何も知らない振りをしていました。また、王子と共に生まれた妹を我が屋敷で秘密裏に預かり育てようとしました。現在その子は亡くなっていますが、そうでなければ未だに存在を隠し育て続けたでしょう。王妃殿下との不貞は本意ではありませんでした、油断した隙をつき騙されて結ばされた不貞です。その後妻と子供達と領民の命を人質に王妃殿下に脅されていたとは言え、血統を偽っていると黙っていた罪は罪です。どうぞ私に裁きを」
フィリエ伯爵は、そう言うと臣下の礼を取りそのまま頭を下げ続けました。
「本意では無かったのだな」
「はい。先程も申し上げた通り私には王妃殿下を思う心はございません。私が愛するのは妻だけです。私が罪の裁きを受けこの身が物言わぬものになったとしても、魂だけになっても王妃様を愛することは絶対にありません。私の心を無視し自分の思いを優先させる人をどうして愛せましょうか。歪んだ思いを果たす為人の命を脅かすと脅す人をどうして愛しい等思えるでしょうか。私にとって王妃殿下は義理の妹ですらなく、ただただ恐ろしい人でしかありません。恐ろしい魔女を思うことなどありません。蔑み憎んでも愛するなどありません」
フィリエ伯爵は先程の審議でも王妃様に心はないと言い続けていました。
王妃様はそれを認めず、フィリップ殿下はフィリエ伯爵と愛し合った結果だと仰いました。
媚薬の葡萄酒をフィリエ伯爵に飲ませ、精神操作の魔法を何度も掛けたと言いながらそれでも愛があったとそう仰ったのです。
ですが、一欠片の情すらフィリエ伯爵は持っていないのだと、そう言い切ったのです。
「魂になっても私を愛さない」
「ええ、私はこの命が果てて魂だけになっても、もし万が一また人に生まれ変わったとしても私はあなたを愛することはありません」
「そんな、そんなお義兄様、いやよそんな風に言わないで、私を愛して。一度でいいのよ私を愛すると言って!」
陛下に羽交い絞めされながら、神聖契約を破った罪の証に痛みと熱を与えられながら王妃様は叫びました。
王妃様を羽交い絞めにしたまま陛下は、苦しそうに顔を歪め「王妃よ」と小さく呟きました。
「フィリエ伯爵」
「はい。陛下」
「お前の不貞は確かに罪だ。フィリップの血統を王子と偽り続けたのも罪だ。だが、その罪の根本は王妃だ」
確かにそうです。すべては王妃様の罪です。
「フィリエ伯爵は爵位を息子に譲り、領地に妻と共に謹慎とする」
「陛下」
「どうしてっ!」
「アダム」
「はい。フィリエ伯爵の罪は王妃の魔法による罪です。その罪を償うのも王妃あなただ」
「どうして、お義兄様も罪に問われるでしょう? フィリップの父親はお義兄様。フィリップの父だと言わず陛下を謀ったのよ。私と共に罪を償わなければならない筈よ。あの女の側にお義兄様は返さない。お義兄様は私と共に神の裁きを受けるのよ。私と同じに!」
「だからこそです。フィリエ伯爵はその罪を生涯償わなければならない。己の妻に」
「え」
「共に領地で謹慎し、同じ時間を過ごし罪を償い続けるのです」
それは伯爵への罰ではなく、王妃様への罰なのでしょうか。
自分は神の裁きを受けるというのに、愛する人は妻と共に生き続けるのです。
「そんな。そんなお義兄様、お義兄様」
髪を振り乱しながら王妃様はフィリエ伯爵へ手を伸ばしました。
絹よりも滑らかだと言われていた王妃様の手は、染みだらけの皺々で今にも朽ち果てる老木の様です。
「いやよぉっ!」
王妃様の叫びを無視して、三再び王太子殿下は小さな杯を一つ手に取り、大きな杯にその中身を注ぎました。
「王妃殿下、母上。最後の罪です。ここにはいないエミリア嬢に母上は侯爵家の放火を命じましたね」
「だから何。侯爵家など燃えて無くなればいい。フィリップを誑かす女狐等放火の罪で火あぶりになればいい。私にとって邪魔なものはすべて消え去ればいいのよ」
「認めるのですね。放火を命じたと」
「ええ、命じたわ。あの女狐はぶるぶると震えて滑稽だったわ。あんなみすぼらしい女をどうして私のフィリップは気に入ったのかしら。惑わされたとしか思えないわ。私の愛する、お義兄様との子があんな女を愛するなんて、あってはならないというのに」
「そなたは、どうして。王妃という尊い地位にいながらどうして」
陛下は涙を流しながら、それでも王妃様の体を離しませんでした。
「アダム」
「はい。エミリアの罪は王妃の命令による罪です。その罪を償うのも王妃あなただ。あなたは自分の為に魔法を使いその地位を使い四人の人の人生を歪めた。五人の命を奪った。その罪を己の体で償うのです」
最後の杯も王太子殿下は大きな杯にその中身を注ぎました。
「エミリアの命は」
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「陛下」
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フィリエ伯爵は茫然と立ちすくみ、一度天を仰いだ後に同じく平伏しました。
神の裁きはすべて王妃様の杯と共になり、王太子殿下がそれを銀盆にのせ静々と王妃様の前へ進みました。
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「これから一日かけて神の裁きは始まります。まだ苦しみは始まらない、これから徐々にその裁きは行われる」
「王妃よ。我が最愛だった者よ。そなたは五か月の間罪を償い、その命で償いを終える。だが表立ってはそなたは余の妻のまま王妃のまま、葬送の儀を行う。その体は魂止めをしたのち王太后の墓に一緒に納めよう。母上は優しい方だ至らぬそなたをあの世から諭し正しく導いてくれるだろう」
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