ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

木嶋うめ香

文字の大きさ
39 / 248

スライムを狩ってみよう5

「あれがスライム」

 馬車の中からそっと様子を見て、俺はちょっと、いやかなり引いてしまった。
 なんていうか想像してたのよりもグロかった。
 なんだろう、一言で言えば大きな半透明のゼリーの塊に見えなくもない。
 大きさはそうだなあ、スライム一体の大きさがお店の十二ロールトイレットペーパーが八パック入ってくるダンボール位かなあ?
 この例えはおかしいかな、スライム四角いわけじゃないし。でも多分それ位の大きさなものが、ふるふると震えながらちょっとずつ動いている。
 核というのはあの真ん中の赤いもので、あれを壊せばいいんだね。
 でも、こんなにいるなんて俺の探索では分からなかったよ。十体以上いないか、これ。
 団体でいるの凄く気持ち悪いんだけど。

「ウヅ、大丈夫か?」
「え、あ、はい。想像と違ってたので驚いただけです」

 俺、アドリブに弱いタイプなんだよな。
 動揺するとどんどん言葉が丁寧になっていく。

「魔物ってなんなんでしょうね」

 あれで生きてるとか不思議すぎる。
 スライムって何を食べるんだろう。

「あの、取り敢えず何をやっても襲ってはこないんですよね」
「ああ、スライムに触れると取り込もうとするが、離れていれば大丈夫だ。あいつらは動きも遅い」
「じやあ、試してみてもいいですか?」

 取り込もうとすると聞いて、近づきたくない気持ちが更に強くなる。
 気持ち悪すぎて近づきたくないけど、子供でも狩る魔物から逃げるのは流石に嫌だ。
 でも、これ触るのも近寄るのも嫌だなあ。

「試す? ああ、いいぞ」
「じゃあ、行きます」

 あんなのに神様から貰った短剣は使いたくないし、木の槍持って近づくのも出来れば避けたい。

「ウヅキ君頑張ってね」
「無理だと分かったらそう言うんじゃぞ」

 二人は心配そうにしてるけど、俺の好きにやらせてくれるみたいだ。

「行きます」

 ひょいっと馬車から飛び降りる。
 俺の背にはかなり高い御者台も、身体能力高いのか難なく飛び降り綺麗に着地すると、足元に転がっているなるべく尖った感じの石ころを数個掴んで、スライムに近付いた。

「鑑定」

スライム:HP1のこの世界最弱の魔物。時々狩られた後に魔石を残す。核は物理攻撃で破壊できる。剣先、投石で攻撃可能。

 俺の鑑定だいぶ説明が増えてきた。

「投石でもいける。俺の力でも大丈夫?」

 拾った石を足元に置き、まず一個目を力いっぱい投げてみる。
 魔石が落ちるなら、沢山落ちて欲しい。
 そしたらそれをニルスさん達に渡すんだ。力の弱い俺でも少しづつでもいいから返せるようになりたい。
 魔石一杯落ちろ、いっぱいいっぱい落ちろと念じながら投げてみたんだ。

 ぷよん。の後にぷしゅうと空気が抜けるような音がしてスライムが崩れていく。
 それと同時に半透明部分が減っていき、核だけがふるふる動く余計に気持ち悪い状態になる。

「気持ち悪い……もういいよね? えいっ!」

 また力いっぱい次の石を投げる。
 大きさは様々だけど、結構石が落ちてる場所で良かった。

「おや」
「まあ」
「なっ!」

 後ろから声が聞こえるけれど、俺は気にせずにどんどん石を投げていく。
 石が足りなくなったらまた集めて、また投げ続け気がつけばスライムは姿を消して辺りにはキラキラしたものが落ちていた。

「なんか最後の方、投げる力強くなってた?」

 首を傾げながら、あのキラキラしたものが気になって後ろを振り返る。
 近付いて大丈夫なのかな?

「ウヅ」
「ゲルトさん」
「石を投げ始めた時は驚いたが、ちゃんと狩り出来たな」

 なぜか笑いながら言ってるけど、これだって狩りだよね?

「はい。あの、スライム沢山いて、触ると取り込まれるっていうから、あの、それになんだか沢山いるの気持ち悪いというか」

 側に寄りたくなかったんだよなぁ。

「ぷっ。そうか、気持ち悪かったか」

 ぐしゃぐしゃっとゲルトさんは機嫌良さげに俺の頭を撫でまくる。

「あの、それで、キラキラしたのがアチコチにあるんですけど、あれ何ですか?」

 核は全部攻撃出来た筈なんだけどなあ、何体か核が残ってるのかな。

「キラキラ? ちょっと待ってろ」
「あ、浄化!」

 何となくヌメヌメしている地面を、ゲルトさんに歩かせたくてスライムがいた辺りの地面全体に浄化の魔法を掛けると、ヌメヌメがすっかり消えて綺麗な地面になった。

「ウヅ……」

 なぜか残念なものを見るような顔を一瞬した後、ゲルトさんはキラキラしているところに向かい始めた。

「これ魔石だ、こっちにも」
「え、そんなに落ちるものなんですか?」

 待ってろと言われたけれど、俺は我慢できずにゲルトさんのところに走っていく。
 浄化した地面は湿ってさえいないのが、凄い。

「ほら、これがスライムの魔石だ。手を出してみろ」
「これが」

 ジャラジャラと俺の手のひらに魔石を落していくゲルトさんは、困った様な悩んでいる様な顔をしているから、俺は不安になってしまう。

「俺、何か悪いことしましたか? 石を投げたのが悪かったですか?」

 さっき槍を教えて貰ったのに、自分で勝手に投石に変更してしまったことだろうか。
 確かに勝手な事をした。

「このスライムは怖くないと言っただろ。狩れるならどんなやり方でも問題ない。もっと幼い子にさせるときは大人が抱き上げて槍で刺させるんだかなら。ウヅが一人で出来ないならそうしようと思っていたし」

 それはなんていうか、接待狩りとでもいうんじゃないだろうか。
 石を投げる俺も俺だけど、そんな狩り方初めてだってしたくない。

「それじゃあどうして」
「魔石が落ちすぎてるんだよ。スライムは十体狩って一つ魔石を落とす程度なんだ、殆どのスライムが落とすなんて聞いたことないんだよ」
「そ、そうなんですか?」

 それ、多分なんかの取得率が上がるとか書いてあったのが原因だと思う。
 それに俺、魔石落ちろって念じながら石を投げてたし。

「取り敢えず馬車に戻ろう。魔石は全部拾ったから」
「はい」

 俺は両手一杯の魔石を落とさないように、気を付けて歩き始めた。

「なんにせよウヅ、初めての狩り成功おめでとう。冒険者に一歩近づいたな」

 急に上から言葉が降ってきて、俺は驚いて立ち止まってしまう。

「ゲルトさん」
「槍で狩らなきゃっていう固定観念を無視して、自分で工夫できたのも偉かった」
「あの」
「ただし、スライムの中には体液が飛び散ると危険な種類もいるから、種類によって使い分けるんだぞ」
「はい」

 もしかしなくても、褒めてもらえたんだ。
 ゲルトさんが困惑しているのも気が付かずに、俺は単純に喜んでいたんだ。

あなたにおすすめの小説

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

即席異世界転移して薬草師になった

黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん) 秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。 そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。 色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。 秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。