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報告の続き
「それって、俺が持っていて不自然じゃないですか?」
「素材奪取は先的な能力だから、誰が持っていても不自然じゃないけれど、元々持っていないのに突然この能力が出てきたらおかしいかもしれないね。卯月はまだ誰にも鑑定されていないから問題ないよ。この能力は隠蔽してはいけないよ」
「はい」
「能力のレベルが低いうちは魔石程度、上がってくれば素材が取得出来るようになる。君にはレベル上げに有利な能力があるからこれはすぐに出来る様になるだろう。それに君は魔石が欲しいと思いながら戦っていただろ、君のそういう念はそのまま能力を上げるから、余計に魔石取得率は上がっているんだろうね」
大神様の過保護っぷりが凄いな。
それに俺の念、確かに魔石出ろ魔石出ろって思いつつ戦ってた。
特に最初のスライムはそうだった、それがあの魔石の量になるのか。
「冒険者になるにはどれも有利な能力だよ」
「そうだと思います。魔石だけでも相当数ここに入ってますから」
マジックバッグを引っ張り出し見せると、大神様はご機嫌な顔で笑った。
「うんうん、短期間で頑張ったね。努力する子は好きだよ」
「そ、そんな努力とかじゃなくて、教えてくれる人が優秀なんですっ!」
褒められるとか焦る。
俺はゲルトさんが熱心に指導してくれるから、安心して狩りが出来てるだけだ。
「今までは何を狩ったのかな」
「ええと、スライムと、ゴブリンと、ゴブリンアーチャー、後はコボルトです。あ、あと角兎も!」
角兎は俺が狩った中で唯一食べられる魔物だった。
実が柔らかくて美味しかったし、解体の練習もさせてもらえた。
「そうかそうか、角兎は動きが早いがよく狩れたね。偉い偉い」
俺の嬉しそうな様子に、大神様もご機嫌な顔で頭を撫でてくれた。びっくりした。
「おや、しまった。つい撫でてしまったな」
「え」
何か悪かったんだろうか。
撫でられたのはびっくりしたけれど、何が問題なんだろう。
「ふむ、つい加護を追加してしまったようだ。まあいいか今更一つや二つ増えても同じだろう」
「え、大神様の愛し子への加護(慈愛:加護を受けている者が大切に思う相手が病気や怪我になり難くなる。加護を受けている者は幸運度が上がる)とありますが」
「その通りだね」
「加護を受けている者は俺、俺が大切に思う相手、この世界ならニルスさんに、マリアさんに、ゲルトさん」
店長と奥さんにももし届くなら、届いてほしい。
その分俺の幸運度は上がらなくてもいいから、そうなって欲しい。
でも、大神様は前に向こうの事は管轄外みたいな事言ってたから難しいよね。親切にしてもらってるのに、自分の欲求ばかり望んじゃ駄目だ。
あ、でも聞きたいことあったんだ。
「神様、母さんからの手紙はどうして」
「ああ、君の思い入れがあるものを全部引っ張ってきたんだけれどね、君に残されていた方ではない一枚目もそれに引っ張られて付いてきたんだよ。物の記憶を私は見られるんだが、どうも君のお母さんの手紙を意図的に捨てた人がいた様だね」
「そうだったんですね」
だとしたら、母さんは俺に全部読ませるつもりだったのか。
あれは嘆きなのか、それとも懺悔なのか今でも分からないけれど、母さんは俺を最後に守ってくれようとしたんだっていうのは分かる。
「あれに書いてあったのは本当なんでしょうか」
「そうだね、嘘はなかったと思うよ」
そうか、じゃあ嘘じゃないんだ。
母さんはどんな思いであの手紙を書いたのか分からないけれど、もう聞くことも出来ないからあるがままに受け入れるしかない。
「収納だと他のアイテムに紛れて気が付かないかもしれないから、マジックバッグに入れていたんだけれど、余計なお世話だったかな」
「いいえ。読んだ時はショックでしたけれど、母さんとちゃんとお別れ出来た気がしたので、全部読めて良かったと今は思っています。母さんにももう俺の記憶は無いわけですし、きっと一人なら身軽に生きていくと思います」
愛されてはいなかったし、暴力を振るわれてたけれど、でも母さんは俺を捨てなかったんだよな。
それだけは不思議だった。
「親になったからと言っても完璧ではないし、強くも賢くもない。人は自分が考え努力した以上にはなれないし、望んでも思いは変えられない」
「そうなんでしょうね」
俺は母さんから愛されたかった。
いつかは愛してくれるんじゃないかって、その思いをどうしても捨てられなかった。
「君の母親がどういう気持ちだったのか分からないけれど、幼い君を手放すことはしなかった。それは現実だよ」
「はい」
「母親を憎むかい?」
「許せとは言わないのですか」
「許しとは他人に強制されて行うものではないよ、それが親子でも許せないものは許せないし悲しいものは悲しいのだから。卯月が許せないと思うなら、許す必要はないんだよ」
「はい」
もしも母さんに会ったら、そんな日はこの世界では絶対にありえない。
だから俺は安心して生きていける。
「卯月はここで思うままに生きればいいよ」
「はい、ありがとうございます」
「たまには祈りにおいで。また話をしよう」
「はい、是非」
ぺこりと頭を下げると、開いていた筈の瞼が開いた。
あれ? ここどこだろ。
「ウヅ」
「あ、ゲルトさん」
俺の肩にゲルトさんの手が置かれていた。
「何か悲しいことを思い出したのか?」
「え?」
「祈りながら泣いていた」
すっと目元をゲルトさんの指先で拭われて、俺は現実に戻ったんだと悟った。
「大神様にお礼を言ってたら、何だか胸がいっぱいになってしまったんです」
「お礼?」
「はい、ゲルトさんとニルスさん達と巡り会わせてくれたお礼です」
そう言うとゲルトさんは、安心した様な顔で俺を抱き上げた。
大神様も過保護だけど、ゲルトさんも過保護な人だ。
「屋台で串焼き買って帰ろう。美味いところがあるんだ」
「はい」
俺は返事をすると、幸せな気持ちでゲルトさんにしがみついたんだ。
「素材奪取は先的な能力だから、誰が持っていても不自然じゃないけれど、元々持っていないのに突然この能力が出てきたらおかしいかもしれないね。卯月はまだ誰にも鑑定されていないから問題ないよ。この能力は隠蔽してはいけないよ」
「はい」
「能力のレベルが低いうちは魔石程度、上がってくれば素材が取得出来るようになる。君にはレベル上げに有利な能力があるからこれはすぐに出来る様になるだろう。それに君は魔石が欲しいと思いながら戦っていただろ、君のそういう念はそのまま能力を上げるから、余計に魔石取得率は上がっているんだろうね」
大神様の過保護っぷりが凄いな。
それに俺の念、確かに魔石出ろ魔石出ろって思いつつ戦ってた。
特に最初のスライムはそうだった、それがあの魔石の量になるのか。
「冒険者になるにはどれも有利な能力だよ」
「そうだと思います。魔石だけでも相当数ここに入ってますから」
マジックバッグを引っ張り出し見せると、大神様はご機嫌な顔で笑った。
「うんうん、短期間で頑張ったね。努力する子は好きだよ」
「そ、そんな努力とかじゃなくて、教えてくれる人が優秀なんですっ!」
褒められるとか焦る。
俺はゲルトさんが熱心に指導してくれるから、安心して狩りが出来てるだけだ。
「今までは何を狩ったのかな」
「ええと、スライムと、ゴブリンと、ゴブリンアーチャー、後はコボルトです。あ、あと角兎も!」
角兎は俺が狩った中で唯一食べられる魔物だった。
実が柔らかくて美味しかったし、解体の練習もさせてもらえた。
「そうかそうか、角兎は動きが早いがよく狩れたね。偉い偉い」
俺の嬉しそうな様子に、大神様もご機嫌な顔で頭を撫でてくれた。びっくりした。
「おや、しまった。つい撫でてしまったな」
「え」
何か悪かったんだろうか。
撫でられたのはびっくりしたけれど、何が問題なんだろう。
「ふむ、つい加護を追加してしまったようだ。まあいいか今更一つや二つ増えても同じだろう」
「え、大神様の愛し子への加護(慈愛:加護を受けている者が大切に思う相手が病気や怪我になり難くなる。加護を受けている者は幸運度が上がる)とありますが」
「その通りだね」
「加護を受けている者は俺、俺が大切に思う相手、この世界ならニルスさんに、マリアさんに、ゲルトさん」
店長と奥さんにももし届くなら、届いてほしい。
その分俺の幸運度は上がらなくてもいいから、そうなって欲しい。
でも、大神様は前に向こうの事は管轄外みたいな事言ってたから難しいよね。親切にしてもらってるのに、自分の欲求ばかり望んじゃ駄目だ。
あ、でも聞きたいことあったんだ。
「神様、母さんからの手紙はどうして」
「ああ、君の思い入れがあるものを全部引っ張ってきたんだけれどね、君に残されていた方ではない一枚目もそれに引っ張られて付いてきたんだよ。物の記憶を私は見られるんだが、どうも君のお母さんの手紙を意図的に捨てた人がいた様だね」
「そうだったんですね」
だとしたら、母さんは俺に全部読ませるつもりだったのか。
あれは嘆きなのか、それとも懺悔なのか今でも分からないけれど、母さんは俺を最後に守ってくれようとしたんだっていうのは分かる。
「あれに書いてあったのは本当なんでしょうか」
「そうだね、嘘はなかったと思うよ」
そうか、じゃあ嘘じゃないんだ。
母さんはどんな思いであの手紙を書いたのか分からないけれど、もう聞くことも出来ないからあるがままに受け入れるしかない。
「収納だと他のアイテムに紛れて気が付かないかもしれないから、マジックバッグに入れていたんだけれど、余計なお世話だったかな」
「いいえ。読んだ時はショックでしたけれど、母さんとちゃんとお別れ出来た気がしたので、全部読めて良かったと今は思っています。母さんにももう俺の記憶は無いわけですし、きっと一人なら身軽に生きていくと思います」
愛されてはいなかったし、暴力を振るわれてたけれど、でも母さんは俺を捨てなかったんだよな。
それだけは不思議だった。
「親になったからと言っても完璧ではないし、強くも賢くもない。人は自分が考え努力した以上にはなれないし、望んでも思いは変えられない」
「そうなんでしょうね」
俺は母さんから愛されたかった。
いつかは愛してくれるんじゃないかって、その思いをどうしても捨てられなかった。
「君の母親がどういう気持ちだったのか分からないけれど、幼い君を手放すことはしなかった。それは現実だよ」
「はい」
「母親を憎むかい?」
「許せとは言わないのですか」
「許しとは他人に強制されて行うものではないよ、それが親子でも許せないものは許せないし悲しいものは悲しいのだから。卯月が許せないと思うなら、許す必要はないんだよ」
「はい」
もしも母さんに会ったら、そんな日はこの世界では絶対にありえない。
だから俺は安心して生きていける。
「卯月はここで思うままに生きればいいよ」
「はい、ありがとうございます」
「たまには祈りにおいで。また話をしよう」
「はい、是非」
ぺこりと頭を下げると、開いていた筈の瞼が開いた。
あれ? ここどこだろ。
「ウヅ」
「あ、ゲルトさん」
俺の肩にゲルトさんの手が置かれていた。
「何か悲しいことを思い出したのか?」
「え?」
「祈りながら泣いていた」
すっと目元をゲルトさんの指先で拭われて、俺は現実に戻ったんだと悟った。
「大神様にお礼を言ってたら、何だか胸がいっぱいになってしまったんです」
「お礼?」
「はい、ゲルトさんとニルスさん達と巡り会わせてくれたお礼です」
そう言うとゲルトさんは、安心した様な顔で俺を抱き上げた。
大神様も過保護だけど、ゲルトさんも過保護な人だ。
「屋台で串焼き買って帰ろう。美味いところがあるんだ」
「はい」
俺は返事をすると、幸せな気持ちでゲルトさんにしがみついたんだ。
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