ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

木嶋うめ香

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大神様に報告と相談3

「ルル、お前が吹き込んだのか」

 ゲルトさんが喧嘩腰でルル先生に言い始めるから、俺は慌ててしまう。

「違いますよ。俺が今思いついただけです」
「何の話なのかしら? ここ、いい?」
「あぁ、いいぞ」
「はい、どうぞ座ってください」
「ルル先生、そっちじゃ狭いですよ。ここ、どうぞ」

 グレオ君の向かいにゲルトさんが座っていて、その間にルル先生は椅子を持ってきて座ろうとするから、ゲルトさんの隣り、本来なら俺が座るはずの(子供椅子がなくて座れなかった)場所を勧める。

「そう? じゃあ遠慮なく」

 ニコニコ顔のルル先生は何か呟きながら移動して、ルル先生が座ったら音が消えたんだ。

「え」
「あなた達良くも悪くも目立つのだから、会話の内容は気をつけなくてはいけないわ」
「ルル先生、これ魔法ですか?」

 周囲の音が何も聞こえない。これって不安になるレベルで何も音が聞こえてこないんだ。

「そうよ、防音の魔法。ウヅキ君も覚えたらいいわよ」
「おいおい、そんなに簡単に覚えられるなら苦労しねえだろうが」
「そう? ウヅキ君は魔法を覚えるのは早いわよ、使いこなすのは時間が掛かるみたいだけれど、あなたとは逆ねワルド」
「ちぇっ。どうせ俺は覚えが悪いさ」

 拗ねたようにワルドさんが言うから、グレオ君が横でオロオロしている。
 そうなんだよね、俺は魔法を覚えるのは自分でも早いんじゃないかなって思うけど、使いこなせないんだよねえ。

「ウヅキ君は基本が出来ていない内に詠唱短縮なんて覚えちゃったせいで、余計に苦労しているのよね」
「苦労、ですか」
「お前ぇ詠唱短縮覚えたのかよ」
「ええと、全然使いこなせてませんが、覚えはしたみたいです」

 俺がそう言うと、ルル先生はクスクスと笑いながら大きなお肉を頬張るという器用なことを始めた。

「なんだよルル、何が可笑しい」
「だってこの子、詠唱が難しいとか、長くて覚えられないとか言いだして、ヤケクソになってやっている内に覚えちゃったんだもの。こんな子見たことないわ。笑うしかないでしょ?」
「ウヅ」
「ウヅキ、なんだよそれ」

 呆れた様に俺の名前を呼ぶゲルトさんに、完全に呆れた顔してるワルドさん、グレオ君は何も言わないけど多分呆れてる。

「だって、詠唱難しいんですってば、何か上手く発音出来なくて途中で詠唱が止まっちゃうんです」
「それで? 水球とか叫んだら発動したとか言うんじゃねぇだろなぁ、ウヅキよぉ」
「ええと、ほら、俺防御壁はそもそも詠唱知らないし、だから下地があったのかなぁ、なんて」

 俺がおかしいみたいに言われるのが嫌でそう言えば、ルル先生は納得した様に頷いてくれた。

「そうね、ウヅキ君は元々防御壁を無詠唱で発動してたのよね」
「はい、というか自分が使えるの知らなかったですし」
「そうねえ。でも詠唱短縮の方が発動しやすいんでしょ」

 俺が、防御壁を使えるのを知らなかったと言った途端ワルドさんが真顔になった。
 俺が嘘言ってるって思っちゃったのかな、そういうのじゃないのに。

「無詠唱でも使えますが、詠唱短縮だとしっかりした防御壁が出る気がします」
「そうなのね。まあ、詠唱って元々無くてもいいものだから、個人個人で発動しやすいし難いはあるのよね」

 詠唱が無くてもいいってなんでなのかな? それは俺以外も思ったみたいだ。

「例えば、生活魔法。ウヅキ君水をここに出してみて」
「はい。水よ」

 ゲルトさんの前にある、空になったスープの器に手をかざし魔法を使う。

「うん、すぐに出せて量も適量ね。ねえ、でもどうしてそこに手を翳したの?」
「ええと、掌の近くから水が出る様な感じだから?」
「ウヅキ君はそうなのね、私はこうよ。水よ」

 ルル先生は、水よと言っただけで空いていたワルドさんのスープの器に水を出した。
 あれ、離れてても出せるんだ。知らなかった。

「え、どこにでも出せるんですか?」
「出せるわよ。別に掌から水を出しているわけじゃないもの」
「そうなんだ。知らなかったです。でも確かに掌そのものから出ている感覚じゃなかったし、浄化はなんでも浄化できますね」

 そうか、結構魔法って自由なんだ。

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