ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

木嶋うめ香

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大神様に報告と相談4

「ルルよぉ。つまりどういうことなんだよ」
「ふふふ。ワルドはこう見えて頭が固いから短縮詠唱や無詠唱は覚えにくいでしょうね」

 どういう事だろう?
 俺は首を傾げて、ワルドさんと自分の違いを考える。
 俺とワルドさんの違いといえば、魔法の基本を理解しているかいないか、詠唱を完璧に覚えているかいないかだ。

「どういうこった」
「ワルドは木工の腕が素晴らしいわ。受付にあるウヅキ君用の踏み台とか、食堂にある椅子とかであなたの腕は皆に認知されているし、ニルスさんはとても気に入っていると聞くわ」
「そりゃどうも」
「照れることないわ。自分の技術には自信があるんでしょう?」
「そりゃ、自信がねえもんを売ったりできねえよ」

 ああ、ワルドさんって本当に職人さんなんだ。
 こういう人、前世で店長のお仲間にも居た。
 提灯を作ったり、竹細工を作ったり、そういう職人さん達は口下手な人が多かったけれど優しくて、自分が作った物に誇りを持ってたんだ。

「木工って、寸法が少しでも狂うと出来が悪くなるでしょう? つまりあなたの根底にはそういうきちんとした物を作るっていう意識が働いているのだと思うのよ。椅子の四本の脚の一本でも短かったら、その椅子の座り心地はどう? がたがたして落ち着かないんじゃないかしら」
「何言ってんだ。そんなの当然だろうが」
「ふふふ。そういう所よ。ワルドは家具を作るのと同じように、手順を大切に考える人なのよ。寸法を測り、木を切って組み立てる。ワルドは使う魔法を理解して詠唱を覚え、正しく詠唱して、正しく魔力を込めて発動する。そうしないといけないんだって意識があるの」

 ルル先生の話は難しくて、俺の理解は追いつかない。
 だって、俺はそんな風に魔法を考えてないんだ。
 そんな風に考えたら、俺魔法を発動出来ないよ。だって、詠唱の意味を理解出来ないと魔法が発動出来ないって言ってない?

「ふふふ。ウヅキ君はちょっと混乱している感じね」
「はい。だって俺、今のルル先生の言ったことが正しい魔法の発動方法だとしたら、俺、間違って発動してるんじゃないかって思います」

 俺は困って泣きそうな気持になりながら、なんなら耳がしょんぼり伏せてしまいながらルル先生に言うと、ゲルトさんの手が俺の頭を撫でた。

「ふふふ。間違っていないのよ。どちらも正しいのよ。そしてそれが魔法の不思議なところなの」
「俺もワルドさんも正しくて、それが魔法の不思議?」

 首を傾げる。
 ルル先生が何を言いたいのか分からない。
 グレオ君を見ると、グレオ君も困った顔をしてるしワルドさんはもっとだ。

「ウヅキ君はどういう気持ちで魔法を使っている?」
「ええと、俺は」

 話しながらルル先生は大量の肉を食べている。
 細い身体のどこに入るのか分からない、山盛りの肉をがっついた様子も見せずに食べていくんだ。

「ええと、ルル先生が見本に見せてくれたものは、それが成功だと思って同じくなるようにやってるかも?」

 教えて貰った魔法はそんな感じだったと思う。
 でも、風神の刃はルル先生の見本とはだいぶ違ってるかもしれない。

「私がウヅキ君に見せた魔法は、どれも基本に忠実に発動したものだからあれを基本にするのは問題ないわ。でも、ウヅキ君はそれが詠唱ありきだとは思っていないわよね」
「え、……そういえばそうかもしれません」

 俺、魔法をルル先生が見本に見せてくれたものに近づける事だけを意識していて、詠唱なんかどうでもいいと思っていたかもしれない。
 
「どうしてそう思ったの」
「えっと。詠唱覚えきれてないけれど、魔法をとにかく発動したくて」

 ルル先生が見せてくれた魔法の通り発動したい、そういう気持ちが強くて、だから詠唱している場合じゃないって思ったんだ。

「詠唱してると、詠唱することに集中しちゃってどんな魔法なのか忘れちゃうんです。だから俺」

 う、なんだか俺頭の悪い子みたいじゃないか?
 つまり俺は、詠唱すると上手く魔法を発動出来なかったってことか。

「気が付いたみたいね。そうよ、ウヅキ君は詠唱では上手く魔法が発動出来ないって思っている。対してワルドは詠唱しないと駄目だと思っているのよ。それが二人の違い」
「つまり、俺は詠唱ありきで考えているから無詠唱では魔法が使えねえってことか」
「そういうこと。でもそれはワルドに限らず、多かれ少なかれ魔法使いならそう思っている筈よ」

 え、それってつまり俺の考え方が少数派ってことなのかな。
 なんかそれ、納得いかないんだけど。俺がおかしいのかな。

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