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「使う資格があるかないか、それは分かりません。でも出来ないのですからどうしようもうありません。エイマールだって、命が尽きた者を生き返らせることも出来ないでしょう? それと同じです」
どんな優秀な治癒魔法の使い手でも、亡くなった人を生き返らせることは出来ない。
前世のゲームにあった生き返り薬や教会で祈ると生き返るなんて現象は、この世界にはないのだ。
それは神だけの御業であり、聖女ごときでは出来る事ではない。
「それは、でも、聖女と言われるものなら」
「もしも聖女が万能であるなら、初代の聖女がこの国で命を落とすことはなかったでしょう。神から力を授けられた聖女が悪い魔女だと言われて処刑される。そんな不名誉なことにはならなかった筈、まして呪いの様な誓いをするほど自分を殺した相手を恨む様なことにはならなかったでしょう」
すでに手遅れだった病、聖女を攫い治癒魔法を使わせようとしていたこの国の王は、聖女の魔法でも治せない末期の病に侵されていた。
それを聖女に治せと強要し、出来ないとしれば悪しき者だとして処刑したのだ。
魔法封じの魔道具を着けさせた上で、拷問し尊厳を奪い、苦しめて苦しめてその最後に殺したのだ。
それで恨むなという方がおかしい、聖女の子孫は自分が聖女になった時その記憶を継承し、それで聖女の誓いは引き継がれていく。これはもう誓いではなく呪いだった。
「聖女の血を引く者は、聖女の苦しみも継承するのです。治癒の力と共に苦しみと怒りと悲しみを継承するのです。だから聖女の誓いから逃れられない。目の前に助けたいと思う人がいても、聖女の誓いがそれを許さなければ治癒の魔法は発動しないのです。それは自力ではどうすることも出来ない呪いの様なものなのです。エイマール、理解していただけますか」
ことさら悲し気に、私だって治療したいのだ思っている振りをしながら言い放ちため息を吐く。
無理に治癒魔法を使わせようとする者は大抵が傲慢で自分の立場に胡坐をかいたものばかり、だから治癒魔法が発動しなかったとしても、私の心はあまり痛まない。
なぜならそういう人は、治癒魔法を掛けさせようと暴力を振るうし脅してくるし、そもそも治癒魔法が不要な些細な怪我や病気ばかりだからだ。しかも神殿の治療院に行くのを面倒くさがり治療費を惜しむのだからどうしようもない。
「理解、……したくありません」
「エイマール、何をいうんだ。彼女に罪はないだろう」
旦那様は平等だし冷静だと思う。
付き合いの長さも信頼も、私よりエイマールにあるのだから彼を庇ったとしても私は納得する。
でも旦那様は、私には罪が無いと言ってくれる。
「分かっています。奥様には罪なんてないことぐらい分ってるっ! それでもその力があるなら助けて欲しかった! 私では力不足でどうしようもなかったけれど、聖女の血を引く者なら、そう呼ばれているのなら」
どういうことだろう。
エイマールが何を言いたいのか分からず、前世の記憶を引っ張りだそうとするけれど、原作に私とエイマールの会話なんてそもそも無かったし、過去にエイマールと会っていたなんて場面も無い。
前世の記憶が関係なくても、私はこの国に来たのは今回が初めてだから彼と会ったことは過去無かったはずだ。
「エイマール、それではお前が何が言いたいのか分からないよ。私は理解が悪いのだから」
こんな時でも旦那様は通常通りだ、この人は取り繕うとか駆け引きをするとか本当に出来ない人なのだろう。侯爵としてそれはどうなのかと思うけれど人しては好ましいと思う。
「あなたの兄上が落馬した時、偶然奥様の血筋の方が傍にいたのです。でも治癒魔法をかけては下さいませんでした」
「兄上が落馬?」
エイマールの話に、私は目を丸くした。
それは、旦那様の亡くなったお兄様のことだろうか、私の親族の誰かがその場にいたというのだろうか。
どんな優秀な治癒魔法の使い手でも、亡くなった人を生き返らせることは出来ない。
前世のゲームにあった生き返り薬や教会で祈ると生き返るなんて現象は、この世界にはないのだ。
それは神だけの御業であり、聖女ごときでは出来る事ではない。
「それは、でも、聖女と言われるものなら」
「もしも聖女が万能であるなら、初代の聖女がこの国で命を落とすことはなかったでしょう。神から力を授けられた聖女が悪い魔女だと言われて処刑される。そんな不名誉なことにはならなかった筈、まして呪いの様な誓いをするほど自分を殺した相手を恨む様なことにはならなかったでしょう」
すでに手遅れだった病、聖女を攫い治癒魔法を使わせようとしていたこの国の王は、聖女の魔法でも治せない末期の病に侵されていた。
それを聖女に治せと強要し、出来ないとしれば悪しき者だとして処刑したのだ。
魔法封じの魔道具を着けさせた上で、拷問し尊厳を奪い、苦しめて苦しめてその最後に殺したのだ。
それで恨むなという方がおかしい、聖女の子孫は自分が聖女になった時その記憶を継承し、それで聖女の誓いは引き継がれていく。これはもう誓いではなく呪いだった。
「聖女の血を引く者は、聖女の苦しみも継承するのです。治癒の力と共に苦しみと怒りと悲しみを継承するのです。だから聖女の誓いから逃れられない。目の前に助けたいと思う人がいても、聖女の誓いがそれを許さなければ治癒の魔法は発動しないのです。それは自力ではどうすることも出来ない呪いの様なものなのです。エイマール、理解していただけますか」
ことさら悲し気に、私だって治療したいのだ思っている振りをしながら言い放ちため息を吐く。
無理に治癒魔法を使わせようとする者は大抵が傲慢で自分の立場に胡坐をかいたものばかり、だから治癒魔法が発動しなかったとしても、私の心はあまり痛まない。
なぜならそういう人は、治癒魔法を掛けさせようと暴力を振るうし脅してくるし、そもそも治癒魔法が不要な些細な怪我や病気ばかりだからだ。しかも神殿の治療院に行くのを面倒くさがり治療費を惜しむのだからどうしようもない。
「理解、……したくありません」
「エイマール、何をいうんだ。彼女に罪はないだろう」
旦那様は平等だし冷静だと思う。
付き合いの長さも信頼も、私よりエイマールにあるのだから彼を庇ったとしても私は納得する。
でも旦那様は、私には罪が無いと言ってくれる。
「分かっています。奥様には罪なんてないことぐらい分ってるっ! それでもその力があるなら助けて欲しかった! 私では力不足でどうしようもなかったけれど、聖女の血を引く者なら、そう呼ばれているのなら」
どういうことだろう。
エイマールが何を言いたいのか分からず、前世の記憶を引っ張りだそうとするけれど、原作に私とエイマールの会話なんてそもそも無かったし、過去にエイマールと会っていたなんて場面も無い。
前世の記憶が関係なくても、私はこの国に来たのは今回が初めてだから彼と会ったことは過去無かったはずだ。
「エイマール、それではお前が何が言いたいのか分からないよ。私は理解が悪いのだから」
こんな時でも旦那様は通常通りだ、この人は取り繕うとか駆け引きをするとか本当に出来ない人なのだろう。侯爵としてそれはどうなのかと思うけれど人しては好ましいと思う。
「あなたの兄上が落馬した時、偶然奥様の血筋の方が傍にいたのです。でも治癒魔法をかけては下さいませんでした」
「兄上が落馬?」
エイマールの話に、私は目を丸くした。
それは、旦那様の亡くなったお兄様のことだろうか、私の親族の誰かがその場にいたというのだろうか。
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