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「それが聖女の縛りですか、聖女を殺した王と国民は無関係ではありませんか? それが貴族だとしても王とは関係はないでしょう!!」
「エイマール、よせっ!」
エイマールがなぜ急に怒り出したのか分からないけれど、彼は立ち上がり私に掴みかからんばかりに両腕を伸ばし、咄嗟に動いた旦那様に止められた。
「無関係かどうか、その判断は治癒魔法を使う本人には出来ません。私の家系は基本的に無欲なお人よしが多いので、むしろ治癒魔法が使えないことで相手に申し訳ないと思うことの方が多いのです」
でも嘘や振りではなく、本当に魔法が使えないのだからどうしようも無い。
「それは自分の意志では無いと言うのですか」
「ええ、相手の身分が分からなくても聖女の血が勝手に判断し魔法を使うかどうか決めるのです」
昔、平民の振りをして治癒魔法を使わせようとした貴族がいたらしい。
みすぼらしい服を着て、治癒魔法を使って欲しいと願い出てきたがどうやっても魔法が発動しなかったそうだ。
後々患者は貴族だと分かったそうだ。
聖女の血恐るべしだと思う。
「そんな事が……」
平民の振りをした貴族の話をしたら、エイマールはヘナヘナと座り込んでしまった。
「あなたはさっきから何が言いたいのですか」
「何がとは」
「聖女の血を継ぐ私に、あなたは何か含むことがあるのではありませんか?」
エイマールの顔をよくよくと見ても、見覚えは全く無いから結婚前に会ったことは無いと思う。
旦那様にもこの国に来て初めて会ったのだから、何かあるとも思えない。
「そうなのか? エイマール」
私の質問に、旦那様は首を傾げつつエイマールに尋ねる。
「あなたにではありませんが、聖女の血を継ぐ人に恨みはあります。でも、どうやら逆恨みになるようですけれど」
恨みと言われて、そうなのかと納得する。
それならば、仕方ないと諦めるしかない。
それは多分、治癒魔法を使って貰えなかった人が身近にいるのだろう。
母国では治癒魔法を使える相手の制限は有名な話だけれど、他国ではそうではないのだから。
治癒魔法を使いたくなかっただけだと考えたのだろう。
「そうですか」
それは私に言われてもどうしようもない。
申し訳ないと思っても、実際に使えないのだから私が出来るのは神殿に属する治癒師を紹介するくらいだ。
逆恨みは今までも沢山されて来た。
だから大袈裟にため息を吐き、頬に右手を添えて困った様に視線を伏せる。
エイマールはともかく、旦那様はこれで私が悲しんでいると誤解するだろう。
「先程申し上げた通り、殆どの貴族を我が血筋の者が治せないのは事実ですから、それについてこれ以上お話できることはございません。理不尽だと思われるでしょうけれど、私にはどうすることも出来ないのですから」
厄介なことに我が一族で治癒魔法を使える者は大抵魔力量も多いから、いくらでも治癒魔法が使えてしまう。
難しい魔法も簡単に覚えてしまうから、神殿に属する治癒師達は妬ましいと内心思っているらしいが神殿が貴族達を癒やし、我が一族の者たちが平民を癒やすことで棲み分けがある意味出来ている。
それでも聖女の血筋の者に魔法を使って欲しいと考える貴族がいて、その筆頭が王族だったのだ。
「それでも、それでも!!」
「エイマール、落ち着け!」
エイマールがまた叫ぶから、旦那様が彼の肩を押さえつける。
「それでも許せない! 目の前で死にかけている者がいても何もしないなんて、そんなの治癒魔法を使う資格は無い!!」
死にかけている者がいても、発動しないものはどうしようもない。
それを言っても納得して貰えないだろう。
それは今のエイマールの姿から分かる事だった。
「エイマール、よせっ!」
エイマールがなぜ急に怒り出したのか分からないけれど、彼は立ち上がり私に掴みかからんばかりに両腕を伸ばし、咄嗟に動いた旦那様に止められた。
「無関係かどうか、その判断は治癒魔法を使う本人には出来ません。私の家系は基本的に無欲なお人よしが多いので、むしろ治癒魔法が使えないことで相手に申し訳ないと思うことの方が多いのです」
でも嘘や振りではなく、本当に魔法が使えないのだからどうしようも無い。
「それは自分の意志では無いと言うのですか」
「ええ、相手の身分が分からなくても聖女の血が勝手に判断し魔法を使うかどうか決めるのです」
昔、平民の振りをして治癒魔法を使わせようとした貴族がいたらしい。
みすぼらしい服を着て、治癒魔法を使って欲しいと願い出てきたがどうやっても魔法が発動しなかったそうだ。
後々患者は貴族だと分かったそうだ。
聖女の血恐るべしだと思う。
「そんな事が……」
平民の振りをした貴族の話をしたら、エイマールはヘナヘナと座り込んでしまった。
「あなたはさっきから何が言いたいのですか」
「何がとは」
「聖女の血を継ぐ私に、あなたは何か含むことがあるのではありませんか?」
エイマールの顔をよくよくと見ても、見覚えは全く無いから結婚前に会ったことは無いと思う。
旦那様にもこの国に来て初めて会ったのだから、何かあるとも思えない。
「そうなのか? エイマール」
私の質問に、旦那様は首を傾げつつエイマールに尋ねる。
「あなたにではありませんが、聖女の血を継ぐ人に恨みはあります。でも、どうやら逆恨みになるようですけれど」
恨みと言われて、そうなのかと納得する。
それならば、仕方ないと諦めるしかない。
それは多分、治癒魔法を使って貰えなかった人が身近にいるのだろう。
母国では治癒魔法を使える相手の制限は有名な話だけれど、他国ではそうではないのだから。
治癒魔法を使いたくなかっただけだと考えたのだろう。
「そうですか」
それは私に言われてもどうしようもない。
申し訳ないと思っても、実際に使えないのだから私が出来るのは神殿に属する治癒師を紹介するくらいだ。
逆恨みは今までも沢山されて来た。
だから大袈裟にため息を吐き、頬に右手を添えて困った様に視線を伏せる。
エイマールはともかく、旦那様はこれで私が悲しんでいると誤解するだろう。
「先程申し上げた通り、殆どの貴族を我が血筋の者が治せないのは事実ですから、それについてこれ以上お話できることはございません。理不尽だと思われるでしょうけれど、私にはどうすることも出来ないのですから」
厄介なことに我が一族で治癒魔法を使える者は大抵魔力量も多いから、いくらでも治癒魔法が使えてしまう。
難しい魔法も簡単に覚えてしまうから、神殿に属する治癒師達は妬ましいと内心思っているらしいが神殿が貴族達を癒やし、我が一族の者たちが平民を癒やすことで棲み分けがある意味出来ている。
それでも聖女の血筋の者に魔法を使って欲しいと考える貴族がいて、その筆頭が王族だったのだ。
「それでも、それでも!!」
「エイマール、落ち着け!」
エイマールがまた叫ぶから、旦那様が彼の肩を押さえつける。
「それでも許せない! 目の前で死にかけている者がいても何もしないなんて、そんなの治癒魔法を使う資格は無い!!」
死にかけている者がいても、発動しないものはどうしようもない。
それを言っても納得して貰えないだろう。
それは今のエイマールの姿から分かる事だった。
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