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この先の話をしよう6 (キム先生視点)
しおりを挟む「……キム先生?」
「魔法は成功したと思います」
今は心の中で詠唱したが、次からは無詠唱でも魔法は使えそうだ。
かなり難しい魔法だが、この指輪の性能が良すぎるお陰で魔力量さえ足りれば危なげなく使えると分かる。
だが効果のほどは、吸い込んだ魔力が少なすぎて値はほぼ変わっていない様な気がする。
値がそれ程変わらなくても、体感で何か感じるのかと思っていたが、魔力回復薬を飲んだ時のような感覚もないから本当に微量な強化なのかもしれない。
つまり、この程度の変化なら徐々にミルフィ様に使っても問題は無いかもしれないということだ。
「思います? というのは」
「この魔石には、まだ魔力が残っている筈です。魔石にある魔力の半分を使っただけですから」
灯りの魔道具に魔石を戻し、灯りを点けると問題なく魔道具が作動し灯りが点いた。
「魔法は上手く使えたけれど、キム先生は納得されていない様に見えますが」
「元々あの魔石は魔力量があまり多くないと思います。使用したのは半分の魔力ですから、今回の魔法の強化では、検査しても何か変わることがないと思うのです」
元々今回は値の変化より魔法が上手く使えるか、そちらの確認が主だった。
値がどの程度変化するかを確認するなら、やはり元々の値が低い者で確認した方がいいに決まっている。
「あ、そうですよね。では僕に力を分けて頂くのはどうでしょう。僕は値が高いわけではありませんから、違いが分かりやすいのではないでしょうか」
「……そうですね。特に危険も無いようですし、それでは私の部屋から魔石をいくつか持ってきます」
この魔法はだいぶ魔力の消費が激しいから、魔力回復薬も多めに持って来ないといけないだろう。
友人の薬師が試しで作った魔力回復薬は恐ろしく不味いが、売られているものより回復量は多いから食事で回復出来ない時はやはり頼りがちになってしまう。
「すぐ戻ってきますので」
「はい、お願いします」
セドリック様を一人残し部屋を出ると、足早に侯爵家で用意してくれた一階の客間へと戻る。
セドリック様の部屋から、私が使っている客間はそんなに離れていない。
魔法の勉強用の部屋は、セドリック様の私室から数部屋離れたところにあるから、魔法の師である私も行き来がしやすい様に配慮されているのだと思う。
「魔石と魔力回復薬と……他の薬も一応持って行くか。それにしてもこの指輪、なんだか違う効果も感じるんだがこの小さな魔石にどれだけの魔法を組み込んでいるんだ?」
試しに指輪に魔力を流すと、頭の中に魔法が浮かんで来た。
鑑定魔法を使うと、鑑定結果が頭の中に浮かぶがそれと同じ様な感覚だ。
「体力回復、怪我の治療、解毒に解呪……これ魔導書の中にあった守り石の魔法陣が入っている? いや、あれよりも魔法の種類が多いな。ん? なんだこの体内浄化って、それに雷の魔法? 水の魔法は飲水を出す。光魔法の汚れを落とすとはなんだ?」
魔導書に書いてあった以上に魔法が組み込まれているというのか、一つ一つは簡単な魔法でもそれを組み合わせてこの小さな石に魔法陣を刻んでいるのかと思うと、その技術力が恐ろしくなる。
しかも飲水を出すとか、そんなものをわざわざ守り石の魔方陣に組み込んだ意図が分からない。
分からないが、こんなものまで簡単に魔石に刻めるだけの技術がネルツ侯爵にはあったということだ。
「偉大なる魔法使いネルツ侯爵、どうかあなたの力を貸して下さい。ミルフィ様を助けられる様に」
思わず手を組み、窓の向こうに広がる空を見つめながら祈る。
他国の、それも三百年以上昔に亡くなった人に祈っても、祈られた方も困るだろうが今の私はどんな存在にでも縋りたいような、そんな気持ちになっていたのだ。
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