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見てはいけないもの1
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いつまでも戻ってこないキム先生が心配で、私は兄様と二人でそっと寝室に続く扉を開けた。
キム先生はわざわざ廊下に出てから寝室に行ったけれど、実はこの部屋からも寝室に入ることは出来る。
お母様とパティに見つかるといけないと思い、小さく開いた扉から中を覗くとこちらに背を向けたキム先生とお父様の姿が確認出来た。
お父様が来ていると思わなかったから驚いたけれど、そういえばキム先生が呼んだと言っていたと思い出す。
お母様とパティは床にぺたりと座り込んでいる、こちらを向いた二人は目を開けているのにも関わらずお父様達が話しているのを気にしていない様子に、正気ではないのかと不安になる。
お母様の気付け薬の匂いがここまで漂ってくる、とても濃い匂いだ。
以前の私が使っていた匂い袋よりも、はるかに濃い匂いが魔物を使役する時に使う薬草だとキム先生は言っていたけれど、こんなに濃い匂いの中に長くいたら皆の体に負担にならないだろうか。
「部屋を離したのは、……その……ミルフィーヌが生まれた時にあの子が女の子だったことで妻は気落ちしてしまったせいです。セドリックは生まれた時から体が弱く、すぐに体調を崩した。だから次の子を授かった時、妻は次こそは健康に問題のない男の子を生むのだと意気込んでいて」
部屋の中を覗き込みながら何か考えている様子の兄様は、お父様がキム先生の問いに躊躇いがちに答えたその内容に息を飲んだ。
「お父様、何を言って」
兄様は、驚きのあまりになのか声が震えている。
人は自分より動揺する人が近くにいるのを見ると、自分も同じく動揺しても冷静になれるものなのだと知った。
皆の体を心配する気持ちは驚きのあまりどこかに消えて、悲しみと驚きに心が支配される。
兄様に禁忌の魔法を掛ける前、兄様だけが大切なのだと言わんばかりの両親の姿に、私を信用する気は微塵もないその姿に失望し絶望した。
あれ以上の悲しみは無いと思っていたのに、それ以上の悲しみがあったらしいことに驚いてしまう。
「……悲しみのあまりセドリックを片時も離そうとしなくなった妻を支えることに専念出来た」
悲しみのあまりと、お父様は当たり前のことのように言っている。
私が女の子だったから、お母様は悲しんだ。それは当時のお母様にはそうなって当たり前だとお父様は考えていたということだ。
お父様は、心の奥に溜まっていた汚いものをすべて吐き出したいとでもいう様に、キム先生に告白しているけれど私の耳にお父様の声は届いても、内容が理解出来ない。
理解出来ないのではない、私は当時の状況も両親二人の心情も理解したくないのだ。
「……ミルフィーヌを見るのも辛いと、妻が言い出して」
理解したくないのに、私の体は三歳の幼児でも意識は以前の大人だった私だから理解出来てしまった。
生まれた瞬間にお母様を悲しませ、その後顔を見ることすら辛いと思わせてしまった。
生まれた私が女だった、それだけで。
「私、どれだけいい子になろうと努力しても無駄だった。最初から愛されて無かったのだから」
ポツリと呟いたら、これが全ての元凶なのだと私の中に言葉が落ちてきた。
それがすっぽりと私の心に収まると、今まで両親に見限られたらと恐れていたことが馬鹿みたいに感じてしまう。
「ミルフィーヌ……」
私を気にして名前を呼ぶ兄様と視線が交わり、私は大丈夫だと微笑む。
「兄様、私は兄様が私を見てくれるだけで十分満足なの」
以前の兄様は、私に呆れていたのだと知っているけれど、それでも私を見てくれていた。
そして今は私が傷付いて悲しんでいないかと、心配してくれる。
私は、それだけで十分幸せだと思う。
「大丈夫、兄様が元気にいてくれたらそれで良いの」
「ミルフィーヌ」
「私には兄様がいるし、キム先生だって私を気遣ってくれてるもの、だからね大丈夫なの」
私は心からそう思っているのに、私の気持ちを嘲笑うかのように、突然パティの笑い声が響き始めた。
キム先生はわざわざ廊下に出てから寝室に行ったけれど、実はこの部屋からも寝室に入ることは出来る。
お母様とパティに見つかるといけないと思い、小さく開いた扉から中を覗くとこちらに背を向けたキム先生とお父様の姿が確認出来た。
お父様が来ていると思わなかったから驚いたけれど、そういえばキム先生が呼んだと言っていたと思い出す。
お母様とパティは床にぺたりと座り込んでいる、こちらを向いた二人は目を開けているのにも関わらずお父様達が話しているのを気にしていない様子に、正気ではないのかと不安になる。
お母様の気付け薬の匂いがここまで漂ってくる、とても濃い匂いだ。
以前の私が使っていた匂い袋よりも、はるかに濃い匂いが魔物を使役する時に使う薬草だとキム先生は言っていたけれど、こんなに濃い匂いの中に長くいたら皆の体に負担にならないだろうか。
「部屋を離したのは、……その……ミルフィーヌが生まれた時にあの子が女の子だったことで妻は気落ちしてしまったせいです。セドリックは生まれた時から体が弱く、すぐに体調を崩した。だから次の子を授かった時、妻は次こそは健康に問題のない男の子を生むのだと意気込んでいて」
部屋の中を覗き込みながら何か考えている様子の兄様は、お父様がキム先生の問いに躊躇いがちに答えたその内容に息を飲んだ。
「お父様、何を言って」
兄様は、驚きのあまりになのか声が震えている。
人は自分より動揺する人が近くにいるのを見ると、自分も同じく動揺しても冷静になれるものなのだと知った。
皆の体を心配する気持ちは驚きのあまりどこかに消えて、悲しみと驚きに心が支配される。
兄様に禁忌の魔法を掛ける前、兄様だけが大切なのだと言わんばかりの両親の姿に、私を信用する気は微塵もないその姿に失望し絶望した。
あれ以上の悲しみは無いと思っていたのに、それ以上の悲しみがあったらしいことに驚いてしまう。
「……悲しみのあまりセドリックを片時も離そうとしなくなった妻を支えることに専念出来た」
悲しみのあまりと、お父様は当たり前のことのように言っている。
私が女の子だったから、お母様は悲しんだ。それは当時のお母様にはそうなって当たり前だとお父様は考えていたということだ。
お父様は、心の奥に溜まっていた汚いものをすべて吐き出したいとでもいう様に、キム先生に告白しているけれど私の耳にお父様の声は届いても、内容が理解出来ない。
理解出来ないのではない、私は当時の状況も両親二人の心情も理解したくないのだ。
「……ミルフィーヌを見るのも辛いと、妻が言い出して」
理解したくないのに、私の体は三歳の幼児でも意識は以前の大人だった私だから理解出来てしまった。
生まれた瞬間にお母様を悲しませ、その後顔を見ることすら辛いと思わせてしまった。
生まれた私が女だった、それだけで。
「私、どれだけいい子になろうと努力しても無駄だった。最初から愛されて無かったのだから」
ポツリと呟いたら、これが全ての元凶なのだと私の中に言葉が落ちてきた。
それがすっぽりと私の心に収まると、今まで両親に見限られたらと恐れていたことが馬鹿みたいに感じてしまう。
「ミルフィーヌ……」
私を気にして名前を呼ぶ兄様と視線が交わり、私は大丈夫だと微笑む。
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そして今は私が傷付いて悲しんでいないかと、心配してくれる。
私は、それだけで十分幸せだと思う。
「大丈夫、兄様が元気にいてくれたらそれで良いの」
「ミルフィーヌ」
「私には兄様がいるし、キム先生だって私を気遣ってくれてるもの、だからね大丈夫なの」
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