34 / 119
本編
これは甘い
しおりを挟む
「ケースに入れるからあんまり意味ないけど、綺麗な色だと思って」
この機種は他にシルバー、白、黒、ベビーピンクがあり、それぞれ縁の色が二種類ある。
その中で言えば、シャンパンゴールドは選択し易い色と言えなくもない。
白、黒はありきたりでイマイチでもベビーピンクはちょっと、なんて人が選びそうな色だからだ。
「ふうん、それより食べたら?」
「あ、うん」
雅の分のコーヒーカップをお湯で温めてからコーヒーマシンをセットし、買ってきたロールサンドはお皿に移すとフォークを添える。
食堂でサンドイッチにナイフとフォークが出る学園内の店らしく、ロールサンドは一本(食パン一枚分)が三等分されていて、それが二本分がプラスチックパックに入れられている。
「美味しそう。あ、苺もちゃんと入ってる。嬉しいな」
苺クリームロールサンドの名前の通り、食パンの中に包まれているのはピンク色のクリームだ。その中に小さくカットされた苺が沢山入っている。
「ふ」
雅のコーヒーをテーブルに置いてから、自分のロールサンドのお皿とスープを置き可愛いロールサンドの見た目に喜んでいたら、雅が笑った。
「何?」
「いや、嬉しそうだなって。コーヒー貰うぞ」
「どうぞ。僕の好みのコーヒーだけど、口に合うかな?」
雅はソファー、僕は向かいのソファーには座らず床にぺたりと座る。
ソファーセットのテーブルは低めだから、床に座った方が食べやすいのだ。
「うん、美味い」
「良かった」
一口コーヒーを飲んだ後、雅にそう言われて安心して僕はロールサンドにフォークを突き刺す。
一口大にカットされたロールサンドは、苺味のクリームにカットされた苺の果肉という夢の組み合わせだった。
これをケーキじゃなくロールサンドにするのが有り難い。
コンビニ内のベーカリーは置いてあるどのパンも美味しいのだけれど、僕の一押しは色々な果物を使ったロールサンドだった。
一口大にカットされているから食べやすいというのもあるし、使った果物に合わせたクリームが美味しいのだ。
スープも美味しいし、幸せだ。
「ふっ」
「え」
カシャリ。機械音が部屋の中に響く。
あれ、今のスマホのカメラの音?
「雅?」
「悪い。あんまり幸せそうに食べるから。写真撮りたくなった」
「え」
まって、まって、現実を受け止められない。
喜んで良いのか悪いのか。
僕はフォークを握りしめたまま、雅の顔を見上げる。
「あの」
「ほら、幸せそうだろ?」
幸せ、それはそうだ。
だって好きな人と、誰にも邪魔されない場所で二人きりで、美味しいものを食べる。
それが幸せじゃなくて、何が幸せだ。
「雅、それ消して」
「なんで」
「だって、恥ずかしい」
写真の僕は、無防備な笑顔でロールサンドを食べている。
しかも唇の端にクリームがついた状態で。
「恥ずかしい?」
「だって、クリームついてる」
雅のスマホの中に自分の写真があるのは、正直嬉しい。
雅が僕の写真を撮ってくれたという事実がそこにあるのは、嬉しすぎる。
だけど、クリーム付けた間抜けな写真はちょっと嫌だ。
「ああ、これはハルらしいな」
「え、らしいって何? 雅の中で僕ってどんな存在なのつ」
貴族の間で、テーブルマナーがちゃんとしているのは当り前、それが出来ないと侮蔑の対象になってしまう。
テーブルマナーで、クリームをつけたままの食事はあり得ない。それがフルコースでも軽食でも、マナーがなってないという侮蔑の対象だ。
「あ、そういう意味じゃない。ただ、ハルはいつも美味しそうに食べるなって」
「消して」
「なんで」
「だって、そんなクリーム付けた写真恥ずかしいよ」
雅が僕の写真を撮って、自分のスマホのデータに保存している。
それって、ただただ嬉しいけれど。
行儀の悪い写真が残っているのは恥ずかしすぎる。
「どうしても駄目?」
「だって」
「誰にも見せない。約束する」
「う」
そう言われたら駄目って言えない。
だって本心では、スマホの中のデータだとしても雅に持っていて欲しい。
「じゃあ、雅の写真僕のスマホで撮ってもいい?」
隠し撮りとそうでない写真の差は、視線がどこにあるかだ。
隠し撮りは当然、視線がカメラに向いていない。
だって、それが隠し撮りだからだ。
「ハルのスマホのカメラで?」
「うん。だってそうしないと不公平だよ。僕だけ写真に撮られるなんて」
なんでもない振りで、雅と交渉する。
雅の写真が欲しい。雅に撮って良いよと許可を貰った写真。
こんなのきっと最初で最後だ。
「写真撮らせたら、この写真消さなくていいのか?」
「誰にも見せないって約束してくれるなら」
「約束するよ。勿論、誰にも見せたりしない」
だったら嬉しい。
雅だけが持っている写真なんて、僕がただ嬉しいだけだ。
「撮らせてくれる?」
「いいよ」
「ありがと」
雅の写真が撮れるのは嬉しい。
雅公認の写真。
こっそりじゃなく、雅が認識している僕が撮った写真だ。
「約束だよ。写真撮らせてね」
「ああ。でも一人は嫌だな。ハルと一緒に撮ろう」
「え」
何それ、どんなご褒美?
雅とツーショットなんて、鼻血出そう。
「一人で写真撮られるの苦手なんだ。ハルの写真は一人だったから不公平になるかな?」
「一緒でいい。ちゃんと撮らせてくれるなら」
ツーショットだよ。初のツーショット。
隠し撮りで満足していた僕には、夢の写真だよ。
ああ、興奮しすぎてロールサンドの味がしなくなって来た。
「ハルが納得するまで、何枚でも撮って良いよ。だから、もう一枚撮っていい?」
「え」
「ハルが笑った顔。撮らせてよ」
うわ。なにその笑顔。
スマホで写真を撮るポーズをしながら、雅は「もう一枚撮りたい。出来ればハルの笑顔」
なんて言うから、僕は恥ずかしくなって俯いてしまうんだ。
「ハル」
「ちょっと待って、心の準備が」
すーはーと深呼吸を繰り返し、笑顔で雅を見つめる。
「うん、笑顔。撮るよ」
笑顔のまま、カシャリと機械音を聞いてふうと息をつく。
き、緊張した。
「うん、上手く撮れた」
「見せて」
「駄目、これは見せない」
「なんで、ずるいよ」
どんな風に撮られたのか、気になるんだけど。
さっきの写真よりはマシだろうか。
「見せない替わりに、写真何枚でも撮って良いよ。ただし二人でね」
「え、いいの? じゃあ、ええと。じゃあ良いよ」
ツーショットを何枚でも撮って言い。雅の提案に僕はあっさり了承する。
こんな嬉しい提案、浮かれるなって方が無理だ。
「まだ撮れないから、後で約束だよ」
フォークを握りしめたまま、雅に念を押す。
写真欲しいんだ。雅の写真が欲しい。主人公を本気で好きになる、主人公のものになる前の雅の写真が。
「ああ、約束だ。いくらでも撮って良いよハル」
雅は笑顔で了承してくれたんだ。
この機種は他にシルバー、白、黒、ベビーピンクがあり、それぞれ縁の色が二種類ある。
その中で言えば、シャンパンゴールドは選択し易い色と言えなくもない。
白、黒はありきたりでイマイチでもベビーピンクはちょっと、なんて人が選びそうな色だからだ。
「ふうん、それより食べたら?」
「あ、うん」
雅の分のコーヒーカップをお湯で温めてからコーヒーマシンをセットし、買ってきたロールサンドはお皿に移すとフォークを添える。
食堂でサンドイッチにナイフとフォークが出る学園内の店らしく、ロールサンドは一本(食パン一枚分)が三等分されていて、それが二本分がプラスチックパックに入れられている。
「美味しそう。あ、苺もちゃんと入ってる。嬉しいな」
苺クリームロールサンドの名前の通り、食パンの中に包まれているのはピンク色のクリームだ。その中に小さくカットされた苺が沢山入っている。
「ふ」
雅のコーヒーをテーブルに置いてから、自分のロールサンドのお皿とスープを置き可愛いロールサンドの見た目に喜んでいたら、雅が笑った。
「何?」
「いや、嬉しそうだなって。コーヒー貰うぞ」
「どうぞ。僕の好みのコーヒーだけど、口に合うかな?」
雅はソファー、僕は向かいのソファーには座らず床にぺたりと座る。
ソファーセットのテーブルは低めだから、床に座った方が食べやすいのだ。
「うん、美味い」
「良かった」
一口コーヒーを飲んだ後、雅にそう言われて安心して僕はロールサンドにフォークを突き刺す。
一口大にカットされたロールサンドは、苺味のクリームにカットされた苺の果肉という夢の組み合わせだった。
これをケーキじゃなくロールサンドにするのが有り難い。
コンビニ内のベーカリーは置いてあるどのパンも美味しいのだけれど、僕の一押しは色々な果物を使ったロールサンドだった。
一口大にカットされているから食べやすいというのもあるし、使った果物に合わせたクリームが美味しいのだ。
スープも美味しいし、幸せだ。
「ふっ」
「え」
カシャリ。機械音が部屋の中に響く。
あれ、今のスマホのカメラの音?
「雅?」
「悪い。あんまり幸せそうに食べるから。写真撮りたくなった」
「え」
まって、まって、現実を受け止められない。
喜んで良いのか悪いのか。
僕はフォークを握りしめたまま、雅の顔を見上げる。
「あの」
「ほら、幸せそうだろ?」
幸せ、それはそうだ。
だって好きな人と、誰にも邪魔されない場所で二人きりで、美味しいものを食べる。
それが幸せじゃなくて、何が幸せだ。
「雅、それ消して」
「なんで」
「だって、恥ずかしい」
写真の僕は、無防備な笑顔でロールサンドを食べている。
しかも唇の端にクリームがついた状態で。
「恥ずかしい?」
「だって、クリームついてる」
雅のスマホの中に自分の写真があるのは、正直嬉しい。
雅が僕の写真を撮ってくれたという事実がそこにあるのは、嬉しすぎる。
だけど、クリーム付けた間抜けな写真はちょっと嫌だ。
「ああ、これはハルらしいな」
「え、らしいって何? 雅の中で僕ってどんな存在なのつ」
貴族の間で、テーブルマナーがちゃんとしているのは当り前、それが出来ないと侮蔑の対象になってしまう。
テーブルマナーで、クリームをつけたままの食事はあり得ない。それがフルコースでも軽食でも、マナーがなってないという侮蔑の対象だ。
「あ、そういう意味じゃない。ただ、ハルはいつも美味しそうに食べるなって」
「消して」
「なんで」
「だって、そんなクリーム付けた写真恥ずかしいよ」
雅が僕の写真を撮って、自分のスマホのデータに保存している。
それって、ただただ嬉しいけれど。
行儀の悪い写真が残っているのは恥ずかしすぎる。
「どうしても駄目?」
「だって」
「誰にも見せない。約束する」
「う」
そう言われたら駄目って言えない。
だって本心では、スマホの中のデータだとしても雅に持っていて欲しい。
「じゃあ、雅の写真僕のスマホで撮ってもいい?」
隠し撮りとそうでない写真の差は、視線がどこにあるかだ。
隠し撮りは当然、視線がカメラに向いていない。
だって、それが隠し撮りだからだ。
「ハルのスマホのカメラで?」
「うん。だってそうしないと不公平だよ。僕だけ写真に撮られるなんて」
なんでもない振りで、雅と交渉する。
雅の写真が欲しい。雅に撮って良いよと許可を貰った写真。
こんなのきっと最初で最後だ。
「写真撮らせたら、この写真消さなくていいのか?」
「誰にも見せないって約束してくれるなら」
「約束するよ。勿論、誰にも見せたりしない」
だったら嬉しい。
雅だけが持っている写真なんて、僕がただ嬉しいだけだ。
「撮らせてくれる?」
「いいよ」
「ありがと」
雅の写真が撮れるのは嬉しい。
雅公認の写真。
こっそりじゃなく、雅が認識している僕が撮った写真だ。
「約束だよ。写真撮らせてね」
「ああ。でも一人は嫌だな。ハルと一緒に撮ろう」
「え」
何それ、どんなご褒美?
雅とツーショットなんて、鼻血出そう。
「一人で写真撮られるの苦手なんだ。ハルの写真は一人だったから不公平になるかな?」
「一緒でいい。ちゃんと撮らせてくれるなら」
ツーショットだよ。初のツーショット。
隠し撮りで満足していた僕には、夢の写真だよ。
ああ、興奮しすぎてロールサンドの味がしなくなって来た。
「ハルが納得するまで、何枚でも撮って良いよ。だから、もう一枚撮っていい?」
「え」
「ハルが笑った顔。撮らせてよ」
うわ。なにその笑顔。
スマホで写真を撮るポーズをしながら、雅は「もう一枚撮りたい。出来ればハルの笑顔」
なんて言うから、僕は恥ずかしくなって俯いてしまうんだ。
「ハル」
「ちょっと待って、心の準備が」
すーはーと深呼吸を繰り返し、笑顔で雅を見つめる。
「うん、笑顔。撮るよ」
笑顔のまま、カシャリと機械音を聞いてふうと息をつく。
き、緊張した。
「うん、上手く撮れた」
「見せて」
「駄目、これは見せない」
「なんで、ずるいよ」
どんな風に撮られたのか、気になるんだけど。
さっきの写真よりはマシだろうか。
「見せない替わりに、写真何枚でも撮って良いよ。ただし二人でね」
「え、いいの? じゃあ、ええと。じゃあ良いよ」
ツーショットを何枚でも撮って言い。雅の提案に僕はあっさり了承する。
こんな嬉しい提案、浮かれるなって方が無理だ。
「まだ撮れないから、後で約束だよ」
フォークを握りしめたまま、雅に念を押す。
写真欲しいんだ。雅の写真が欲しい。主人公を本気で好きになる、主人公のものになる前の雅の写真が。
「ああ、約束だ。いくらでも撮って良いよハル」
雅は笑顔で了承してくれたんだ。
216
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる