【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

告白してもそのまま

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「え、ではまだ小姓の手続きはされていないのですか?」

 金曜日衝撃的な告白をした僕は雅と週末を過ごした。
 まさかの展開に僕の心はまだ落ち着かないまま、夢を見ている様な気持ちで月曜日を迎えた。
 変わった事と言えば、舞が佐々木様と僕は雅とそれぞれ昼食を食べる様になった位だ。
 金曜日のあの一件で、佐々木様は舞ともっと親密に過ごすことで小姓は一人だけだとアピールすると決めたらしい。
佐々木様からなぜか雅にその旨の連絡があり、それを受けて雅は僕と昼食を取る様に決めたのだ。
会うなら放課後僕の部屋でと佐々木様に決められてしまったので、その決まり通りに放課後僕の部屋にやって来たのだ。

「どうしてですか? 山城様のご実家のお許しが出ないとか?」
「ううん。それについては雅の方の問題はないんだ。僕がまだ家に話が出来てないだけ」
「縁談が合ったからですか」
「うん。それもあるし、家は中立の立場だから、本当にいいのかなって。僕のせいでお父様達に迷惑を掛けるわけにはいかないから。春休みまでまって欲しいって雅にお願いしたんだ」

 それも一つの理由だけれど、本当の理由は雅の気持ちが信じられないからだ。
 今は僕を好きだと思っていても、本当に主人公を好きにならないのか。
 ゲームならまだ序盤、でも全体の展開が早いからもっと早く色んなイベントが起きるのかもしれない。
 僕が目にしたのは、三人の攻略対象者との名前呼び、雅ルートの図書館イベントと名前についてのイベント。そしてクジだけだ。
 クジは木村春が誰かのグッズを手にしてるのかどうかは分らないし、雅のグッズは僕が三つとも当てている。だけど木村春は雅ルートのイベントを二つクリアしているとも言える。

「千晴様のご実家とのお話は電話で行えませんか、そして一刻も早く小姓手続きを出来ませんか」
「どうして」

 雅が僕の告白を受け入れてくれたと舞に話したら、自分の事の様に喜んでくれた。
 良かった良かったと何度も言って僕に抱きついて喜ぶ舞だけど、部屋の隅に立っている佐々木家のメイドさんの視線が何だか怖い。
 舞は寮内を歩く時はメイドさんのお供が必須だんだそうだ。
 僕達の学年にはいないけれど、上の学年には公爵家の三男と侯爵家の次男がいて、彼らは授業にも特例でお供を付けているらしい。舞の場合はクラスが佐々木様と同じだから、寮内だけのお供で許されているそうだ。佐々木様の束縛が怖い。
 まあそのお陰で、自分の部屋のソファーに座ってメイドさんが入れてくれた美味しい紅茶を飲めるのだけれど、なんだか複雑な気分だ。

「あの、今日テストの順位が発表されましたよね」
「うん。僕、雅に勉強教えて貰えたお陰で順位が二十番代まで上がったんだ」

 雅に凄く時間を割いて貰ったから、順位を見てホッとした。
 雅は二位だった、一位は佐々木様で三位が主人公である木村春だった。
 主人公はゲームの設定通り頭が良いらしい。

「順位の表の前で木村様が森村様と会話されていて、『さすが奨学生だな、転校してすぐのテストでこの結果か』と森村様が彼に声を掛けたのです、そうしたら『貴重な奨学金を頂いてこの学園で学ぶ機会を頂いたのですから、結果を出すのは当り前です』と彼が答えて、それを聞いて『そういう考え方は実に好ましいね。君とは気が合いそうだ。私は森村喜一郎。良かったら喜一郎と呼んでくれ』と森村様が」

 偶然舞は側にいて、二人の会話を聞いて覚えていたのか。
 それにしても、その会話ゲームのイベントそのままだ。

「四人目。いや、佐々木様は止めたから三人だね。舞ごめんね」
「いいえ。藤四郎様が一緒に見ていて、自分の時も何故か簡単に許してやろうという気になって、今考えると理由が分らないのだと仰っていました」
「理由が分らない?」
「なぜか、そうしないといけないような気持ちになったと」

 そう言うと舞は不安そうな顔で、クッションを抱きしめる。
 不安な気持ちは分る。
 僕はそれがイベントだと知っているから、攻略対象者としての気持ちの変化なのかもしれないと理解出来る(所謂ゲーム補正って奴だと分るだけに余計に不安ではあるけれど)けれど、そうじゃないから舞は不安なんだろう。

「藤四郎様は今は一切そういう感情はないし、彼と話をしても夢中になるという事もないと仰って下さいましたし、僕は藤四郎様のお気持ちは揺るがないと信じられます。それに小姓の手続きは一旦受理されれば卒業までは解消出来ませんし、卒業後は殆どの方が小姓のまま旦那様に嫁ぎます。藤四郎様はそこまでの覚悟を持って僕を受け入れて下さったのだと僕は分っています」

 視界の片隅に見えるメイドさんが、満足そうに小さく頷くのが見えた。
 怖い。このメイド、どれだけ佐々木様に忠義があるんだ。

「佐々木様が舞を大事に思ってるのは僕も分るよ。だから教室であんな風に宣言したんだろうし、僕と舞が会うのを止めないのも舞を思ってこその温情だと思うよ」

 僕を見るメイドさんの目は冷ややか過ぎて怖いけれど、これは僕が佐々木様に本当は良く思われていないからなんだろう。
 何せ僕は山城家の犬扱いだからね。

「藤四郎様と同じく、山城様も侯爵家の次期当主となられる方です。いつまでもお一人のままですと、千晴様以上に縁談が来てしまいます。もしそれが公爵家の方だったら、どうしますか?」
「それは」
「政略であればまだしも、あの木村様が何か策略を巡らせたら?」
「策略って」

 そういうイベントあるんだっけ?
 いや、あったかも。確か逆ハーエンドを迎える時にだけ発生する谷崎様ルートだ。
 他の四人の攻略対象者が好きで、でも谷崎様も諦められない主人公が谷崎様を酔わせて一晩過ごしちゃうんだ。
 純真無垢で明るい主人公が何故かそこだけ性格が変わってて、評判はあまり良く無かったんだ。
 この世界、同性同士でもそういう事しちゃうとどちらかが結婚とかそういう相手がいない場合は責任取らないといけなくなるそうだ。
 実はそれを知らなくて、雅との話を昨日父様にした時に教えられた。
 ちなみに今世の僕はびっくりするレベルで何も知らないみたいだ。
 前世の記憶が戻ってもその辺り朧気になってるんだけど、今世の僕よりはマシだと思う。
 前世の記憶と知識、今世の記憶と知識となんとなくの線引きが僕は出来るのだけど、それで線引きするとキスとか一人でするとかは前世の知識だった。今世の僕はキスって唇が触れるだけだと思ってる。それ以上は何にも知らない。
 前世の僕は恋人がいたことがないから、一人でするは経験しててもそれ以外は何もない。
 AV動画は生々しくて手が出せなくて、薄い本のハードも無理だった。
 自分の性癖を受け入れ切れてなかったから、見るのが怖かったんだ。
 そんな分けで、三次元的な知識が無かった。友達との猥談も避けまくってたからファンタジー的なBLのエッチの知識が多少ある程度だ。
 本気で何も知らないと察した父様は、多分動揺していたと思う。
 なんとなく、一人でした事はあるだろうっぽい事を匂わされていたと電話を切って気がついたけれど、実際未経験だったので電話中は気がつきもせず、父様はあーとかうーとか、困りまくっていた。
 
 そんな分けで今世の貴族の貞操観念は結構厳しいらしいと、父様に習ったのだ。
 内容はイマイチ分らず、父様は疲れた様にあとは山城様に聞きなさいと電話を切った。
 そして、そのまま雅に聞いたら頭を抱えていた。僕は悪くない、だって雅に聞いてからそういう事かと気がついたんだから。
 実は雅とはキスすらまだしてないから、雅はもの凄く教えにくそうだった。
 教えにくそうだったけれど開き直って、閨事の類いだと内容に全く触れずに教えてくれた。
 雅の教えてくれた内容によれば、例えば今の佐々木様の立場で木村君とそうなっても、悪いのは相手がいると知っていてその行為を拒否しなかった木村君の方になり、佐々木様が拒否したら小姓にも愛人にもなれない。
 勿論佐々木様が強要した場合は別らしい。お酒を飲んで正気じゃなかったとか何となくの流れとかの場合だけだそうだ。
 だけど、僕という恋人がいても公には一人の雅が木村君ととなったら、雅は彼を小姓にしないといけないんだ。だから不用意に誰かと密室で二人きりになったりするなと雅に念押しされた。

「そんな可能性あるかな、木村君が何かするってことでしょ?」

 舞に聞きながら、もしかしらたあるかもしれないと思い始めた。
ここが本当にゲームの世界で、主人公にはゲーム補正がかかっているなら可能性は十二分にあるだろうな。

「僕はそう感じました。あの方は貴族の考えとは違います。好意を分かりやすく相手に伝えて、それを何人にも行える方なのです。あと、何か引っ掛かるのです」
「引っ掛かる? 雅に何かするって事?」

 逆ハールートは、佐々木様が離脱したから成立しない。
 一人でも抜けるとあるのは友情エンドだけだ。
 だったら誰狙いなんだろう。
 雅だとしたら、いい加減雅の性格も分っているだろうから、これ以上名前呼びをし合う相手を増やすのは悪手だと気がつきそうな気がする。

「仮に雅を思っているとしたら、森村様まで名前を呼び合う様になるのは雅に悪感情を抱かせるだけだと思うけれど」
「それはそうですけれど。陽子さんはどう思われますか?」

 突然舞はメイドに声を掛けて驚いた。
 この人陽子さんって言うんだ。

「わたくしは個人的な考えをお話出来る立場ではございません」
「でも、女性目線でどう思うか知りたいのです」
「ご主人様にお叱りを受ける覚悟で申し上げれば、その者は状況を読めぬ愚か者か、状況が読めるものの取捨選択が出来ぬ愚か者のどちらかではないかと愚行致します」

 難しくて何を言ってるのか分らないんだけど
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