67 / 119
本編
問題だらけの人達
しおりを挟む
「雅」
雅に無理をさせたのかもと不安になって名前を呼ぶけれど、ただ笑っているだけだ。
本当は大変だったとしても、雅は多分僕にそんな話はしないだろうけど、それでも教えて欲しいと思う。
「ハルは大丈夫、何の問題もなくすぐに手続き完了した。佐々木だってそうだったろう?」
「舞? そういえばそうだね」
そうだ、舞は僕が佐々木様に話に行ってすぐ小姓になった。
あれを知っていたから小姓の手続きって簡単なんだと思っていたんだ。というより、結局は個人の話だから学園から許可が必要だなんて思ってなかったという方が正しいのかもしれない。僕はやっぱり考えが足りないんだな。これから気をつけなきゃ。
「僕、小姓にしますっていう届けを学園に出すだけだと思ってたんだ。だから家から反対されなければ問題ないって思ってた」
「そうだな。許可っていっても家からの許可と学園の許可は意味が違うから。それは思いつかなくても仕方ない」
「意味が違うの?」
「学園の許可云々は、小姓としてその生徒を認めたら学園内で問題が出そうな場合だとか、生徒の素行や成績が悪くて小姓を持つ資格が無いと判断された場合だな」
川島君や森村様はどちらも成績優秀だし、川島君はクラス委員長を任される位なのにそれでも駄目だと学園側が判断してるってことなのか。
でも、なんで?
「川島様も森村様も小姓にすると届け出たのは同じ人物、これが問題です。こんな常軌を逸する届けを学園が受理出来る訳がありません。この届けが原因で川島様、森村様、私の弟である谷崎信也、そして木村春の素行調査を学園側が始めました。私が本当は谷崎家の者であると学園側には届けていますので、私のとこに真っ先に事実確認が来ました。その時は顔から火が出る思いでした」
「それは、確かにそうだね」
二人が納得してどちらも木村君を小姓にするって言っているのか、そこが分らないけど届けを出された学園側はビックリだろう。あ、二人じゃなくて三人か大林君の所に確認にきたっていうことは谷崎様も届けを出してたんだろう。
「小姓になり、ゆくゆくは主人になった相手に嫁ぐ。男女の婚約は白紙も破棄もよくある話ですが、小姓は余程の事がなければ解消はありません」
「どうして?」
「小姓になるとは、主人の手がついたと公言しているのと同じだからです。平民なら兎も角、貴族の世界で無垢で無いものはまともな嫁ぎ先等ありません。それが当然の認識だというのに、小姓を共有するとして届け出ているのですから許可が出なくて当然です。本当はそこに私の弟も混ざっていたのですから、今日の騒ぎが無くともあれは退学になって当然です。いくらあれが愚かだと言っても、成人したら妻と同じ立場になると分っている小姓を他人と共有など、一体何を間違えばそんな考えに陥るのか理解に苦しみます」
大林君の顔がどんどん険しくなって、僕達に話をしているという感じじゃなくなってきた。
これどうしたらいいんだろう、困って雅の方に視線を移すと急に抱き寄せられてしまった。
「み、雅っ」
「俺は誰かとハルを共有するつもりはないから。お前は俺の小姓なんだ、他の奴に渡すつもりはない」
「僕だって誰かと共有するとか言われても困るけど。ねえ、大林君の前で恥ずかしいよ」
お腹に回された腕にドキドキしながら抗議すると、雅は機嫌良さそうに笑いながら僕の頭を撫で始め、大林君は呆れた顔になった。
大林君の反応は嫌になるくらい理解できる。いきなり目の前でイチャイチャし始めたらこういう顔したくなるよ。
「山城様のご機嫌が直って何よりです。それにしても木村春が意図的に三人に近寄り小姓の話を持っていったのだとしたら、大したものです」
「それは」
「木村春がそういう教育を受け、色で相手を陥れる命を受けているのであれば簡単なのですが」
理由を知らなければそうだよね。
この世界がゲームの世界そのものだったら、彼が主人公だからゲームの強制力が働いたって考えられるけれど。
強制力ももしかしたらあるのかもしれないけど、それよりも彼に前世の記憶があって効率よく攻略出来る様動いている様に僕には見える。
でも、それを知らなければ木村君がなんであんなに簡単に三人に近付けたのか理解出来なくて当然だろう。
「弟は領地に戻しますからいいですが、残りの二人が問題ですね」
ほうっとため息をつきながら、大林君は呟いたのだった。
雅に無理をさせたのかもと不安になって名前を呼ぶけれど、ただ笑っているだけだ。
本当は大変だったとしても、雅は多分僕にそんな話はしないだろうけど、それでも教えて欲しいと思う。
「ハルは大丈夫、何の問題もなくすぐに手続き完了した。佐々木だってそうだったろう?」
「舞? そういえばそうだね」
そうだ、舞は僕が佐々木様に話に行ってすぐ小姓になった。
あれを知っていたから小姓の手続きって簡単なんだと思っていたんだ。というより、結局は個人の話だから学園から許可が必要だなんて思ってなかったという方が正しいのかもしれない。僕はやっぱり考えが足りないんだな。これから気をつけなきゃ。
「僕、小姓にしますっていう届けを学園に出すだけだと思ってたんだ。だから家から反対されなければ問題ないって思ってた」
「そうだな。許可っていっても家からの許可と学園の許可は意味が違うから。それは思いつかなくても仕方ない」
「意味が違うの?」
「学園の許可云々は、小姓としてその生徒を認めたら学園内で問題が出そうな場合だとか、生徒の素行や成績が悪くて小姓を持つ資格が無いと判断された場合だな」
川島君や森村様はどちらも成績優秀だし、川島君はクラス委員長を任される位なのにそれでも駄目だと学園側が判断してるってことなのか。
でも、なんで?
「川島様も森村様も小姓にすると届け出たのは同じ人物、これが問題です。こんな常軌を逸する届けを学園が受理出来る訳がありません。この届けが原因で川島様、森村様、私の弟である谷崎信也、そして木村春の素行調査を学園側が始めました。私が本当は谷崎家の者であると学園側には届けていますので、私のとこに真っ先に事実確認が来ました。その時は顔から火が出る思いでした」
「それは、確かにそうだね」
二人が納得してどちらも木村君を小姓にするって言っているのか、そこが分らないけど届けを出された学園側はビックリだろう。あ、二人じゃなくて三人か大林君の所に確認にきたっていうことは谷崎様も届けを出してたんだろう。
「小姓になり、ゆくゆくは主人になった相手に嫁ぐ。男女の婚約は白紙も破棄もよくある話ですが、小姓は余程の事がなければ解消はありません」
「どうして?」
「小姓になるとは、主人の手がついたと公言しているのと同じだからです。平民なら兎も角、貴族の世界で無垢で無いものはまともな嫁ぎ先等ありません。それが当然の認識だというのに、小姓を共有するとして届け出ているのですから許可が出なくて当然です。本当はそこに私の弟も混ざっていたのですから、今日の騒ぎが無くともあれは退学になって当然です。いくらあれが愚かだと言っても、成人したら妻と同じ立場になると分っている小姓を他人と共有など、一体何を間違えばそんな考えに陥るのか理解に苦しみます」
大林君の顔がどんどん険しくなって、僕達に話をしているという感じじゃなくなってきた。
これどうしたらいいんだろう、困って雅の方に視線を移すと急に抱き寄せられてしまった。
「み、雅っ」
「俺は誰かとハルを共有するつもりはないから。お前は俺の小姓なんだ、他の奴に渡すつもりはない」
「僕だって誰かと共有するとか言われても困るけど。ねえ、大林君の前で恥ずかしいよ」
お腹に回された腕にドキドキしながら抗議すると、雅は機嫌良さそうに笑いながら僕の頭を撫で始め、大林君は呆れた顔になった。
大林君の反応は嫌になるくらい理解できる。いきなり目の前でイチャイチャし始めたらこういう顔したくなるよ。
「山城様のご機嫌が直って何よりです。それにしても木村春が意図的に三人に近寄り小姓の話を持っていったのだとしたら、大したものです」
「それは」
「木村春がそういう教育を受け、色で相手を陥れる命を受けているのであれば簡単なのですが」
理由を知らなければそうだよね。
この世界がゲームの世界そのものだったら、彼が主人公だからゲームの強制力が働いたって考えられるけれど。
強制力ももしかしたらあるのかもしれないけど、それよりも彼に前世の記憶があって効率よく攻略出来る様動いている様に僕には見える。
でも、それを知らなければ木村君がなんであんなに簡単に三人に近付けたのか理解出来なくて当然だろう。
「弟は領地に戻しますからいいですが、残りの二人が問題ですね」
ほうっとため息をつきながら、大林君は呟いたのだった。
180
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる