【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

嫌味を言われる理由は?

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「更衣室は確かに違うが、俺は何も知らなかったのか」

 不機嫌そうな声がして、思わず体を震わせてしまう。
もしかして、僕なにか悪いこと言ったのかな。

「千晴様、まさか山城様に何もお話しされていなかってのですか?」
「え、あの。駄目だったのかな」

 大林君に言われて狼狽える。
 だってあの頃はちゃんと友達ですらなかったし、それで他の人から嫌味言われてるって告げ口するのはどうなんだろうと思うんだけど。

「ハル」
「はい」
「ハルの状況を知らなかった俺が、今更何を言っても遅いんだが言わせてくれ」
「えーと、はい」

 僕の気持ちを悟ったのか雅に低い声でそう言われ、真剣に話を聞きますとばかりに、僕は姿勢を正して雅の方を向く。

「供を付けるが、ハルが立場を理解してくれないのは困る。今後はどんな些細な事でも教えてくれ。誰かに何か嫌味を言われたでも何でもいいから、悪意を感じる様な出来事は全部だ」
「告げ口みたいで嫌だけど、言わないと駄目かな」

 そんなのいちいち話してたらキリがないよ。
 昔よりは減ったけど、舞と一緒だと更に凄いことになるし。

「以前から不思議でしたが、千晴様はあまり気になさらないのですね」
「気にならないわけじゃないけれど、事実だったりするから言われても仕方ないかなあって思ってたかな?」

 雅が僕に優しくしてたのが気に入らなかったんだろう、雅の目が届かない場所で僕は嫌味を言われていた時がある。
 今もたまにあるけど、昔ほどじゃない。
たけど、あの人達は木村君みたいに露骨に僕に何かしてくるわけじゃなく。
 ただ、貧相な顔立ちだとか、山城様の隣にいるには地味だとか正しいこと言ってるから、そうだよねと納得しているところはある。

「事実とは?」

 頭痛を堪える様に額に手を当てながら、大林君が聞いてくる。

「ええと、地味顔とか貧相な体型とか?」
「そんな酷いことを言われていたのか」
「え、でも。僕地味顔だし、痩せすぎなのは健康診断でも指摘されてたし。大林君は綺麗系な美人さんだから羨ましいよ」

 髪や肌の手入れを怠ったりはしてないけれど、元々がイベント要員のモブなんだから、それなりの顔でしかないのは確かなんだよね。
 同じモブ的立場なのに、あの人達綺麗系とか可愛い系なんだよねえ。僕ももうちょっとマシな顔になりたかったよ。

「千晴様、それは勘違いされずぎです」
「勘違い?」
「千晴様は可愛らしいお顔立ちをされていらっしゃいますし、貧相等でもありませんよ」
「可愛いっていうのは、木村君みたいな人を言うんじゃないかな。まああの人も今はあちこちから嫌味言われてるみたいだけど」

 木村君は僕の比じゃないくらい嫌味を言われているけれど、あの人の場合は自分からそうしてる雰囲気あるし、僕に色々絡んでくるしで、庇う気にはなれないけど。

「ハルは自己評価が低すぎる」

 雅まで大林君と同じ格好で、二人して額に手を当て首を横に振ったのだった。
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