【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

味方なのか敵なのか

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「それ本当の話なのかな」

 疑いたいわけじゃ無いけれど、白井さんがここに来た理由が分らない。
 木村君がいなくなった事を、雅じゃなく僕に知らせる必要ってある?

「ねえ、何か録音出来るものってあるかな。僕が身に付けていておかしくないもの」

 サロンの中に白井さんを招くのは微妙だから、出来るならドアのところで対応したい。
 でも僕は白井さんに疎まれている気がするし、なんか先日の白井さんの態度も気になる。

「雅はあの人を信用している感じがするけれど、あの人の僕に対する言動が気になるんだ。それに雅が居ない時に他の人と会って話をするのは何か抵抗があって」

 メイドさん達は雅に忠誠を誓っているみたいだし、僕の事も大事にしてくれるから不安な理由を正直に話す。

「雅に誤解される様な行為は避けたいけれど、追い返すのも申し訳ないし。だから何か聞かれたら雅に全部聞いて貰える様にしたいんだけど」

 そんな都合の良い道具なんか流石にないか。
 でも最悪、僕がそういう道具を望んでいた事実だけ雅に伝わればいいか。
 なんて考えていたら、メイドさんは少し考えた後で「ございます」と言い始めた。

「あるの? それ白井さんにそういう道具だってバレちゃう可能性ある?」
「その心配はございません。すぐご用意いたしますのでお待ち下さい」
「うん、お願い」

 待たせてるけどそれは仕方ないよね。
 怪我して休んでる僕のところに急に訪ねて来た向こうが悪い。うん、そう思うことにしよう。

「雅に一応連絡しておこう」

 授業中だろうから、トークアプリで『木村君が居なくなったって、白井さんがサロンに来ているんだけど』と送ってみた。
 これで雅がサロンに来てくれたらいいんだけど。

「千晴様こちらが録音出来るチョーカーでございます」
「え、これが?」

 銀盆に載せられているのは、黒いビロードの幅広リボンの中央に青い大きな石がついたチョーカーと、二つの指輪だった。

「一度スイッチを入れれば三日間録音し続ける事が出来ると伺っております。ただ一つ難点がございまして」
「難点?」
「はい、装着はどなたでも可能ですが、この金具を外す事が出来るのはご主人様のみなのです。この金具部分に指紋認証機能が付いておりまして、外せなくなります。リボンに見える部分も中に金属が入っており鋏で切ることも出来ません」
「そうなんだ。じゃあ雅に外して貰うから大丈夫。あと、そっちは?」

 チョーカーと一緒に銀盆にのっている二つの指輪。
 シンプルな金色の指輪には青い石と赤い石がそれぞれ付いている。

「こちらは護身用の指輪でございます。指輪を両手の指にそれぞれ石を掌側に位置するように付けて頂き、何かあれば両手で相手の体に触れて頂きますと軽い電気ショックを与える事が出来るものです」
「え」

 軽い電気ショック?
 日常で聞く可能性がない単語に、違う意味でショックを受けているとメイドさんは淡々と説明してくれる。

「静電気で金属に触れて衝撃を受けた事はございますか?」
「うん、あるよ。結構痛いよね」
「あの衝撃の十倍程の衝撃を相手に与える事が出来るそうです。勿論生命に関わる衝撃ではございません。何かあった場合逃げる為の隙を作る為の道具でございます」
「そ、そうなんだ」

 こんな当り前見たいな言い方するのってありなんだろうか。
 引きつりながら頷くと「こちらはお使いになりますか?」と聞いてきたら一応受け取ってそれぞれ指にはめてみた。

「これのスイッチは?」
「チョーカーをお首につけ、金具を止めた時点で録音が開始されます」
「そうなんだ」

 雅は何を考えてこれを準備してたんだろ。
 僕、もしかして信用されてないのかな。
 いや、違うよね。きっと僕の心配をしてたんだ。だって、護身用の指輪も用意してくれたんだから。

「雅の愛情? なんだよね」
「勿論(かなり重すぎる愛情だと存じますが)でございます」

 何だろう、メイドさんの返事に何か含みを感じるけど気のせいかな?

「じゃあ、行こうか」
「中には入れないのですね」
「雅のサロンに、雅が居ない時に勝手に入れられないよ」
「畏まりました」

 この判断は正解だったのだろう。メイドさんは笑顔で頷いてくれた。

「雅から返事来ないな。ね、僕が白井さんに対応している間雅に電話してくれる?」
「畏まりました」

 今僕に付いてるメイドさんが一人だけだから、雅に電話している間僕一人になっちゃうけれどまあそれは仕方ないよね。

「お待たせしました」
「やあ、小姓ちゃん」
「木村君が居なくなったと聞きましたが」

 あれ、何この笑顔、なんか顔つきが違う?
 ドアを閉め、廊下に出て話すけれど、何かマズい気がする。

「不用心だなあ。だから認められないんだよ」
「え」

 にやにやと嗤うのは、知っているけれど知らない顔。

「どれだけ親しい人間でも、信じちゃ駄目って旦那様に習わなかった、小姓ちゃん」
「何が言いたい」
「駄目駄目駄目。認められないよ。あんたじゃ山城家の正妻は無理」

 シュッと何かを吹きかけられて、意識がすぐに遠くなる。

「悪く思うなよ。恨むなら不用心な自分を恨むんだな」

 白井さんの声、恨むってなに? 何で白井さんがこんなこと。

「雅」

 薄れていく意識の中で、白井さんの背後に見えたのは主人公のあの髪色だった。
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