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城塞都市の怪異
~7~
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最初の巡回の時はいつもより静かであったが、街の様子は特段の異常と言えるものはなかった。
しかし、夜半の時刻、次の任務に就いた兵士たちが第二外壁の南門から大通りを南に進み、貧民街の中心辺りに差し掛かった頃、ついに件の暴徒に遭遇する。
しかしながら、その者たちの姿は、報告で聞いていたものとは全く異なるものだった。
前日の夜番が被害者から聞き及んだ話では、暴徒は狂犬のように凶暴化していたものの、その容貌は顔色が悪い程度で留まっていたはずだ。
……だが今、彼らの目の前にいるのは、道の中ほどで血を流して横たわる犠牲者を地に這うような姿勢で取り囲む、もはや人とは思えぬ異形の群れであった。
男女差が判然とせぬほどに筋張って痩せ細り、衣服から露出した肌はどす黒い紫色に変色している。
髪はまばらで、額にかかる前髪の隙間から覗く目は赤く、闇に光る。
怒り狂った野獣のごとく剥き出しになった歯茎と、そこから生えている黄色く鋭い牙状に変化した歯。
その隙間から垂れ落ちる赤いものは餌食となったものか、はたまた自らの内より溢れ出たものか。
四つん這いで兵士たちを威嚇するその姿は、ぼろ布同然の衣服を纏っていなければ、まさに獣そのものだった。
今の人数で相手をするには不利すぎると判断し、援軍を呼ぶべく、兵士たちは来た道を逃げるように引き返していった。
―――
「――隊長! で、出ました!!」
先ほど巡回に出ていた兵士二人が扉を跳ね除け、詰め所に駆け込んできた。
やはり今夜も暴徒が現れたかと席を立った隊長に、彼らは息を切らし、目撃した異様な光景を報告する。
だが、彼女は戦慄に震える部下の説明が終わるのを待たず、すぐさま詰め所に残っていた全隊員に出動の号令をかけていた。
報告の最中、ふと窓から外へ向けた女性戦士の眼は、巡回兵を追ってきたと思われる人型の獣の群れを、既に捕らえていたからだ。
窓の外の貧民街から上がる、悲鳴と唸り声。
大通り沿いに並んだ篝火に照らされて、四つん這いの人獣が道に蠢き、腕の代わりに翼が生えたような人影が街の空を舞う。
もはや現実は、古の伝承に語られる悪夢の世界へと変わり果てていた。
彼女は席の横に立てかけていた愛用の長剣を掴むと、部下の誰よりも早く、外に待ち構える化け物どもの群れの中へと飛び込んでいった。
先祖代々、この城塞都市を護り続けた一族の末席に名を連ねる者として、今こそ役目を果たす時だと――たとえ、相手が何者であろうとも。
しかし、夜半の時刻、次の任務に就いた兵士たちが第二外壁の南門から大通りを南に進み、貧民街の中心辺りに差し掛かった頃、ついに件の暴徒に遭遇する。
しかしながら、その者たちの姿は、報告で聞いていたものとは全く異なるものだった。
前日の夜番が被害者から聞き及んだ話では、暴徒は狂犬のように凶暴化していたものの、その容貌は顔色が悪い程度で留まっていたはずだ。
……だが今、彼らの目の前にいるのは、道の中ほどで血を流して横たわる犠牲者を地に這うような姿勢で取り囲む、もはや人とは思えぬ異形の群れであった。
男女差が判然とせぬほどに筋張って痩せ細り、衣服から露出した肌はどす黒い紫色に変色している。
髪はまばらで、額にかかる前髪の隙間から覗く目は赤く、闇に光る。
怒り狂った野獣のごとく剥き出しになった歯茎と、そこから生えている黄色く鋭い牙状に変化した歯。
その隙間から垂れ落ちる赤いものは餌食となったものか、はたまた自らの内より溢れ出たものか。
四つん這いで兵士たちを威嚇するその姿は、ぼろ布同然の衣服を纏っていなければ、まさに獣そのものだった。
今の人数で相手をするには不利すぎると判断し、援軍を呼ぶべく、兵士たちは来た道を逃げるように引き返していった。
―――
「――隊長! で、出ました!!」
先ほど巡回に出ていた兵士二人が扉を跳ね除け、詰め所に駆け込んできた。
やはり今夜も暴徒が現れたかと席を立った隊長に、彼らは息を切らし、目撃した異様な光景を報告する。
だが、彼女は戦慄に震える部下の説明が終わるのを待たず、すぐさま詰め所に残っていた全隊員に出動の号令をかけていた。
報告の最中、ふと窓から外へ向けた女性戦士の眼は、巡回兵を追ってきたと思われる人型の獣の群れを、既に捕らえていたからだ。
窓の外の貧民街から上がる、悲鳴と唸り声。
大通り沿いに並んだ篝火に照らされて、四つん這いの人獣が道に蠢き、腕の代わりに翼が生えたような人影が街の空を舞う。
もはや現実は、古の伝承に語られる悪夢の世界へと変わり果てていた。
彼女は席の横に立てかけていた愛用の長剣を掴むと、部下の誰よりも早く、外に待ち構える化け物どもの群れの中へと飛び込んでいった。
先祖代々、この城塞都市を護り続けた一族の末席に名を連ねる者として、今こそ役目を果たす時だと――たとえ、相手が何者であろうとも。
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