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密談
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「ねえ、なんでオーウェンがお姉様の護衛になってんの?」
「うぅ…………。なんでか私も知りたい……。」
扉の外で待機しているオーウェン様に聞こえないように、ルーカスと引っ付いてコソコソ小声で話す。
「う~ん……。オーウェンがお姉様の護衛になるなんて、ゲーム中のどの攻略ルートにも無かったはずだけどなぁ……。」
ルーカスが腕を組みながら首を傾げている。
ルーカスはお兄様と入れ替わるように私の部屋へやって来た。
お兄様と一緒に来たオーウェン様はそのまま私の護衛として此処に留まってくれたのだが、ルーカスが私と2人で話したい事があるからと言って今は外で待機してもらっている。
「やっぱり、お茶会でオリビア様を助けたからお話が変わってしまったのかしら…………お兄様はヒロインとやらに攻略されるのを回避出来た?」
「そうだねぇ。その確率はかなり高いけど、ゲームの強制力を侮ってはいけないと思うんだ。ヒロインとお兄様の出会いを邪魔しちゃったから、ゲームのストーリーには無いイベントが起こる可能性もゼロじゃないだろうし…………オーウェンがお姉様の護衛になったのだって、その前触れなのかもしれないよ。」
ルーカスが難しい顔をしてオーウェンが待機している扉の方を指差す。
確かに、オリビア様が死なずに済んで良かったけれど、そのせいでヒロインはお兄様と出会えなくなってしまったから、そもそものストーリーが始まらないのだ。
私としてはそれが一番有難いのだけれど、ルーカスが言うようにこれで終わりだと思わない方がいいかもしれない。
私が宣戦布告したのだから、あのお母様だって大人しくしているとは思えないし。
絶対に何か仕掛けてくるに違いない。
「そう、それっ!!お姉様ってば、何勝手にお母様とヤリあってるんだよ!あの人は危ないから絶対に2人きりにならないでよね!?」
「ご、ごめんなさい。でも、そのおかげで今のお母様のターゲットはお兄様じゃなくて私になったのよ?」
「そんなのもっと駄目でしょ!!お姉様は僕の生き甲斐なのにっ…………何かあったらどうするのさっ!!」
「大丈夫よ。私にだってあのお母様の血が流れているんだもの。あの人みたいな悪役にだって頑張ればなれると思うの。」
「なっ……!お姉様に悪役なんて無理!!絶対になれないよっ!!!」
さっきまでオーウェン様に聞かれないようにと声を抑えて話していたのをすっかり忘れてルーカスが大声で叫ぶ。
ーー自分でオーウェン様を追い出したくせに、そんなに大きな声を出していたら丸聞こえじゃないのかしら。
でもルーカスが怒る時はいつも頬を膨らませてプリプリ起こるから可愛いのよね。
「ちょっとお姉様、ちゃんと聞いてるの!?」
「ごめんごめん。ちゃんと聞いてるわ。」
更にプクッと頬を膨らませるルーカスが可愛くて、私はクスクスと笑いながらルーカスの頭を撫で撫でする。
ルーカスは頬を膨らませたまま、頭を撫でる私をジッと見つめた。
「……お姉様、とにかく絶対に一人にならないで。僕が出来るだけそばに居るよ。僕がいない時には…………癪だけどオーウェンの側から離れないで。いいね?」
「分かったわ。」
私を見つめて言うルーカスの目が真剣で、本当に私を心配してくれているのが分かって嬉しい。
ニコニコしながらルーカスの頭を撫で続けていると、ルーカスは膨らませていた頬を赤くして口を尖らせた。
「お姉様はズルい。そんなに可愛い笑顔をされたらもう怒れないじゃないか。」
「ふふっ、ありがとう。ルーカス大好きよ。」
可愛いのは私じゃなくてルーカスだけどね。
この後、私とルーカスは他愛もない会話をして、いっときだけ姉弟の時間を楽しんだ。
部屋を後にするルーカスを見送り、ずっと扉の外で待機してくれていたオーウェン様にペコリと頭を下げる。
「長い時間廊下で待たせてすみませんでした。あの……ルーカスが来たのでちゃんと話せませんでしたけれど、お兄様にはもう一度私から護衛の件は断りますので……」
「……シャーロット様が謝ることではありません。それに、ヘンリー様への進言も不要です。シャーロット様の護衛は私が志願して決定されたことですので。」
「え…………」
目を丸くして固まる私を見てオーウェン様が表情を緩める。
…………おぉっ。今、少し笑ったよね。
オーウェン様が笑うのなんて初めて見たよ。
私がまじまじと見ていたのが気に障ったのか、オーウェン様は目を逸らし眉間に皺を寄せてしまった。
「私も、ルーカス様の意見に賛成です。」
「へ?」
目を逸らしたままオーウェン様がボソッと呟いたのだけれど、意味が分からず思わず変な返事を返してしまう。
するとオーウェン様は再び私に視線を戻し目を細めた。
「私も、シャーロット様に悪役は無理だと思います。…………貴方は、とても優しい人だから。」
「!!」
ーーやっぱり丸聞こえだったんじゃないの。
ルーカスがあんなに大きな声を出すから……。
私が優しいとか、オーウェン様に気まで使わせてしまったじゃない。……もの凄く申し訳ないわ。
「…………なんか色々すみません。私、頑張りますね。」
「 ? はい、一緒に頑張りましょう。」
…………うん、本当に頑張ろう。少しでもオーウェン様の迷惑にならないようにしなければ。
この時、決意新たに意気込む私は、オーウェン様から向けられている優しくも熱のこもった視線に気付く余裕が全くなかったのだった。
「うぅ…………。なんでか私も知りたい……。」
扉の外で待機しているオーウェン様に聞こえないように、ルーカスと引っ付いてコソコソ小声で話す。
「う~ん……。オーウェンがお姉様の護衛になるなんて、ゲーム中のどの攻略ルートにも無かったはずだけどなぁ……。」
ルーカスが腕を組みながら首を傾げている。
ルーカスはお兄様と入れ替わるように私の部屋へやって来た。
お兄様と一緒に来たオーウェン様はそのまま私の護衛として此処に留まってくれたのだが、ルーカスが私と2人で話したい事があるからと言って今は外で待機してもらっている。
「やっぱり、お茶会でオリビア様を助けたからお話が変わってしまったのかしら…………お兄様はヒロインとやらに攻略されるのを回避出来た?」
「そうだねぇ。その確率はかなり高いけど、ゲームの強制力を侮ってはいけないと思うんだ。ヒロインとお兄様の出会いを邪魔しちゃったから、ゲームのストーリーには無いイベントが起こる可能性もゼロじゃないだろうし…………オーウェンがお姉様の護衛になったのだって、その前触れなのかもしれないよ。」
ルーカスが難しい顔をしてオーウェンが待機している扉の方を指差す。
確かに、オリビア様が死なずに済んで良かったけれど、そのせいでヒロインはお兄様と出会えなくなってしまったから、そもそものストーリーが始まらないのだ。
私としてはそれが一番有難いのだけれど、ルーカスが言うようにこれで終わりだと思わない方がいいかもしれない。
私が宣戦布告したのだから、あのお母様だって大人しくしているとは思えないし。
絶対に何か仕掛けてくるに違いない。
「そう、それっ!!お姉様ってば、何勝手にお母様とヤリあってるんだよ!あの人は危ないから絶対に2人きりにならないでよね!?」
「ご、ごめんなさい。でも、そのおかげで今のお母様のターゲットはお兄様じゃなくて私になったのよ?」
「そんなのもっと駄目でしょ!!お姉様は僕の生き甲斐なのにっ…………何かあったらどうするのさっ!!」
「大丈夫よ。私にだってあのお母様の血が流れているんだもの。あの人みたいな悪役にだって頑張ればなれると思うの。」
「なっ……!お姉様に悪役なんて無理!!絶対になれないよっ!!!」
さっきまでオーウェン様に聞かれないようにと声を抑えて話していたのをすっかり忘れてルーカスが大声で叫ぶ。
ーー自分でオーウェン様を追い出したくせに、そんなに大きな声を出していたら丸聞こえじゃないのかしら。
でもルーカスが怒る時はいつも頬を膨らませてプリプリ起こるから可愛いのよね。
「ちょっとお姉様、ちゃんと聞いてるの!?」
「ごめんごめん。ちゃんと聞いてるわ。」
更にプクッと頬を膨らませるルーカスが可愛くて、私はクスクスと笑いながらルーカスの頭を撫で撫でする。
ルーカスは頬を膨らませたまま、頭を撫でる私をジッと見つめた。
「……お姉様、とにかく絶対に一人にならないで。僕が出来るだけそばに居るよ。僕がいない時には…………癪だけどオーウェンの側から離れないで。いいね?」
「分かったわ。」
私を見つめて言うルーカスの目が真剣で、本当に私を心配してくれているのが分かって嬉しい。
ニコニコしながらルーカスの頭を撫で続けていると、ルーカスは膨らませていた頬を赤くして口を尖らせた。
「お姉様はズルい。そんなに可愛い笑顔をされたらもう怒れないじゃないか。」
「ふふっ、ありがとう。ルーカス大好きよ。」
可愛いのは私じゃなくてルーカスだけどね。
この後、私とルーカスは他愛もない会話をして、いっときだけ姉弟の時間を楽しんだ。
部屋を後にするルーカスを見送り、ずっと扉の外で待機してくれていたオーウェン様にペコリと頭を下げる。
「長い時間廊下で待たせてすみませんでした。あの……ルーカスが来たのでちゃんと話せませんでしたけれど、お兄様にはもう一度私から護衛の件は断りますので……」
「……シャーロット様が謝ることではありません。それに、ヘンリー様への進言も不要です。シャーロット様の護衛は私が志願して決定されたことですので。」
「え…………」
目を丸くして固まる私を見てオーウェン様が表情を緩める。
…………おぉっ。今、少し笑ったよね。
オーウェン様が笑うのなんて初めて見たよ。
私がまじまじと見ていたのが気に障ったのか、オーウェン様は目を逸らし眉間に皺を寄せてしまった。
「私も、ルーカス様の意見に賛成です。」
「へ?」
目を逸らしたままオーウェン様がボソッと呟いたのだけれど、意味が分からず思わず変な返事を返してしまう。
するとオーウェン様は再び私に視線を戻し目を細めた。
「私も、シャーロット様に悪役は無理だと思います。…………貴方は、とても優しい人だから。」
「!!」
ーーやっぱり丸聞こえだったんじゃないの。
ルーカスがあんなに大きな声を出すから……。
私が優しいとか、オーウェン様に気まで使わせてしまったじゃない。……もの凄く申し訳ないわ。
「…………なんか色々すみません。私、頑張りますね。」
「 ? はい、一緒に頑張りましょう。」
…………うん、本当に頑張ろう。少しでもオーウェン様の迷惑にならないようにしなければ。
この時、決意新たに意気込む私は、オーウェン様から向けられている優しくも熱のこもった視線に気付く余裕が全くなかったのだった。
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