弟に前世を告白され、モブの私は悪役になると決めました

珂里

文字の大きさ
12 / 27

密談

しおりを挟む
「ねえ、なんでオーウェンがお姉様の護衛になってんの?」

「うぅ…………。なんでか私も知りたい……。」


扉の外で待機しているオーウェン様に聞こえないように、ルーカスと引っ付いてコソコソ小声で話す。


「う~ん……。オーウェンがお姉様の護衛になるなんて、ゲーム中のどの攻略ルートにも無かったはずだけどなぁ……。」


ルーカスが腕を組みながら首を傾げている。
ルーカスはお兄様と入れ替わるように私の部屋へやって来た。

お兄様と一緒に来たオーウェン様はそのまま私の護衛として此処に留まってくれたのだが、ルーカスが私と2人で話したい事があるからと言って今は外で待機してもらっている。


「やっぱり、お茶会でオリビア様を助けたからお話が変わってしまったのかしら…………お兄様はヒロインとやらに攻略されるのを回避出来た?」

「そうだねぇ。その確率はかなり高いけど、ゲームの強制力を侮ってはいけないと思うんだ。ヒロインとお兄様の出会いを邪魔しちゃったから、ゲームのストーリーには無いイベントが起こる可能性もゼロじゃないだろうし…………オーウェンがお姉様の護衛になったのだって、その前触れなのかもしれないよ。」


ルーカスが難しい顔をしてオーウェンが待機している扉の方を指差す。


確かに、オリビア様が死なずに済んで良かったけれど、そのせいでヒロインはお兄様と出会えなくなってしまったから、そもそものストーリーが始まらないのだ。
私としてはそれが一番有難いのだけれど、ルーカスが言うようにこれで終わりだと思わない方がいいかもしれない。

私が宣戦布告したのだから、あのお母様だって大人しくしているとは思えないし。
絶対に何か仕掛けてくるに違いない。


「そう、それっ!!お姉様ってば、何勝手にお母様とヤリあってるんだよ!あの人は危ないから絶対に2人きりにならないでよね!?」

「ご、ごめんなさい。でも、そのおかげで今のお母様のターゲットはお兄様じゃなくて私になったのよ?」

「そんなのもっと駄目でしょ!!お姉様は僕の生き甲斐なのにっ…………何かあったらどうするのさっ!!」

「大丈夫よ。私にだってあのお母様の血が流れているんだもの。あの人みたいな悪役にだって頑張ればなれると思うの。」

「なっ……!お姉様に悪役なんて無理!!絶対になれないよっ!!!」


さっきまでオーウェン様に聞かれないようにと声を抑えて話していたのをすっかり忘れてルーカスが大声で叫ぶ。



ーー自分でオーウェン様を追い出したくせに、そんなに大きな声を出していたら丸聞こえじゃないのかしら。

でもルーカスが怒る時はいつも頬を膨らませてプリプリ起こるから可愛いのよね。


「ちょっとお姉様、ちゃんと聞いてるの!?」

「ごめんごめん。ちゃんと聞いてるわ。」


更にプクッと頬を膨らませるルーカスが可愛くて、私はクスクスと笑いながらルーカスの頭を撫で撫でする。

ルーカスは頬を膨らませたまま、頭を撫でる私をジッと見つめた。


「……お姉様、とにかく絶対に一人にならないで。僕が出来るだけそばに居るよ。僕がいない時には…………癪だけどオーウェンの側から離れないで。いいね?」

「分かったわ。」


私を見つめて言うルーカスの目が真剣で、本当に私を心配してくれているのが分かって嬉しい。

ニコニコしながらルーカスの頭を撫で続けていると、ルーカスは膨らませていた頬を赤くして口を尖らせた。


「お姉様はズルい。そんなに可愛い笑顔をされたらもう怒れないじゃないか。」

「ふふっ、ありがとう。ルーカス大好きよ。」


可愛いのは私じゃなくてルーカスだけどね。


この後、私とルーカスは他愛もない会話をして、いっときだけ姉弟の時間を楽しんだ。




部屋を後にするルーカスを見送り、ずっと扉の外で待機してくれていたオーウェン様にペコリと頭を下げる。


「長い時間廊下で待たせてすみませんでした。あの……ルーカスが来たのでちゃんと話せませんでしたけれど、お兄様にはもう一度私から護衛の件は断りますので……」

「……シャーロット様が謝ることではありません。それに、ヘンリー様への進言も不要です。シャーロット様の護衛は私が志願して決定されたことですので。」

「え…………」


目を丸くして固まる私を見てオーウェン様が表情を緩める。


…………おぉっ。今、少し笑ったよね。

オーウェン様が笑うのなんて初めて見たよ。


私がまじまじと見ていたのが気に障ったのか、オーウェン様は目を逸らし眉間に皺を寄せてしまった。



「私も、ルーカス様の意見に賛成です。」

「へ?」



目を逸らしたままオーウェン様がボソッと呟いたのだけれど、意味が分からず思わず変な返事を返してしまう。

するとオーウェン様は再び私に視線を戻し目を細めた。


「私も、シャーロット様に悪役は無理だと思います。…………貴方は、とても優しい人だから。」

「!!」


ーーやっぱり丸聞こえだったんじゃないの。
ルーカスがあんなに大きな声を出すから……。

私が優しいとか、オーウェン様に気まで使わせてしまったじゃない。……もの凄く申し訳ないわ。


「…………なんか色々すみません。私、頑張りますね。」

「 ? はい、一緒に頑張りましょう。」



…………うん、本当に頑張ろう。少しでもオーウェン様の迷惑にならないようにしなければ。



この時、決意新たに意気込む私は、オーウェン様から向けられている優しくも熱のこもった視線に気付く余裕が全くなかったのだった。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる

あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。 魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。 しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。 小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...