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学園
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お茶会の毒事件からもうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。
あれからオーウェン様は私の護衛としてずっと側にいてくれている。
口数が少なくいつも眉間に皺を寄せているオーウェン様に最初こそ緊張して一緒に居るのが気まずかったけれど、お兄様の幼馴染で護衛だったオーウェン様は他のどの護衛よりも信頼できる人物だった為、今ではオーウェン様が側に居てくれないと不安になってしまう程にまでなっていた。
最近はたまに……本当にたまにだけど笑顔を見せてくれるようにもなって、凄く嬉しい。
オーウェン様が護衛についてくれてからは特に何か起きる訳でもなく平和に時が過ぎている。
お母様もオーウェン様が相手では中々私に手を出せないらしい。
だから私はすっかり油断してしまっていた。
「転校生を紹介する。」
「隣国のボヴェルデンから留学生として来ました、アンソニーです。これからよろしくお願いします。」
学園に登校後、クラスで先生から紹介された編入生の登場に、私は顔面蒼白になって固まってしまった。
こんな中途半端な時期に留学生って……。しかもボヴェルデンはお母様の母国じゃないの。
まさか第三王子とかじゃないわよね?もしそうなら、この人がルーカスの言っていた攻略対象の一人って事になるけど…………あ、ヤバイ。目が合っちゃった。
私が編入生を凝視しながらグルグル頭の中で考えていたら、バチッと目が合ってしまい慌てて下を向く。
そ~っと編入生の様子を見る為に顔を上げると、編入生もまだこちらを見ていたようで再びバチッと目が合い、ニッコリと微笑まれた。
私はまた勢いよく下を向く。
下を向いた私の頬を冷や汗が伝い、カタカタと体が震え出す。
ーーこの人はお母様と同じタイプの人間だ。
微笑んでいるのに、目が全く笑っていない。周りの人間を見下し、嫌悪しているような冷たい目に私の背筋がゾクリと凍る。
「先生。僕の席はシャーロット王女の隣にして欲しいです。この学園に慣れるまで親戚のシャーロット王女に色々と教えてもらいたいので。」
「ああ、そうですね。シャーロット様、よろしくお願いします。」
「…………はい。」
いいわけあるかー!!!……って叫ばなかった自分を褒めたい。
親戚って言われちゃってるし……もうほぼ……いや、確実に貴方、第三王子でしょ。
ツカツカと歩み寄り隣の席に座った編入生をチラリと見る。
相変わらず微笑んではいるが凍りそうなくらい冷たい目がこちらを向いていた。
「あの、貴方……」
「アンソニーだよ。」
「ア、アンソニー、私と貴方って親戚……」
「うん、そうだよ。あれ?イザベラ様から聞いてない?僕はボヴェルデンの第三王子だから、君とはいとこだよ。よろしくね、シャーロット。」
ーー聞いてません。そもそも貴方が来ることさえ聞いてませんから。
これはルーカスの言う通りゲームの強制力とか言うやつなんじゃないだろうか。…………怖い。早くルーカスに報告しないと。
「よろしく」と挨拶しすぐに前を向いて視線を逸らした。横からの痛いくらいの視線には気付かない振りをして授業に集中する。
授業終了のチャイムが鳴り、急いでルーカスのいる下級生クラスに行こうと席を立つと、手をガシッと掴まれた。
「どこに行くの?学園の中を案内してもらいたかったんだけど。」
「あ、あの、私行く所が…………」
「僕もついて行っていい?一人でいるのも不安だし。」
ついて来られたら、本人を前にしてルーカスと話せないでしょ!
貴方が来たことを言いに行きたいのに!!ルーカスだって突然私が攻略対象者の第三王子を連れて行ったらビックリするだろうし…………ここはアンソニーの言う通りにしておいた方がいいのかも…………ルーカスには後で隙を見て会いに行こう。
「…………学園を案内します。」
「そう?ありがとう。」
アンソニーの背筋の凍るような笑顔に心の中で悲鳴を上げながら、私もニッコリと王女の公務で鍛えられた営業スマイルでそれに答える。
その後、隙を見てルーカスに会いに行こうとしていた私の行動はことごとくアンソニーに阻止され…………結局、下校時間になるまでルーカスに会いに行くことは叶わず、私はこの日、精神力をゴリゴリと削られ、精神的にも体力的にもヘトヘトになったのだった。
あれからオーウェン様は私の護衛としてずっと側にいてくれている。
口数が少なくいつも眉間に皺を寄せているオーウェン様に最初こそ緊張して一緒に居るのが気まずかったけれど、お兄様の幼馴染で護衛だったオーウェン様は他のどの護衛よりも信頼できる人物だった為、今ではオーウェン様が側に居てくれないと不安になってしまう程にまでなっていた。
最近はたまに……本当にたまにだけど笑顔を見せてくれるようにもなって、凄く嬉しい。
オーウェン様が護衛についてくれてからは特に何か起きる訳でもなく平和に時が過ぎている。
お母様もオーウェン様が相手では中々私に手を出せないらしい。
だから私はすっかり油断してしまっていた。
「転校生を紹介する。」
「隣国のボヴェルデンから留学生として来ました、アンソニーです。これからよろしくお願いします。」
学園に登校後、クラスで先生から紹介された編入生の登場に、私は顔面蒼白になって固まってしまった。
こんな中途半端な時期に留学生って……。しかもボヴェルデンはお母様の母国じゃないの。
まさか第三王子とかじゃないわよね?もしそうなら、この人がルーカスの言っていた攻略対象の一人って事になるけど…………あ、ヤバイ。目が合っちゃった。
私が編入生を凝視しながらグルグル頭の中で考えていたら、バチッと目が合ってしまい慌てて下を向く。
そ~っと編入生の様子を見る為に顔を上げると、編入生もまだこちらを見ていたようで再びバチッと目が合い、ニッコリと微笑まれた。
私はまた勢いよく下を向く。
下を向いた私の頬を冷や汗が伝い、カタカタと体が震え出す。
ーーこの人はお母様と同じタイプの人間だ。
微笑んでいるのに、目が全く笑っていない。周りの人間を見下し、嫌悪しているような冷たい目に私の背筋がゾクリと凍る。
「先生。僕の席はシャーロット王女の隣にして欲しいです。この学園に慣れるまで親戚のシャーロット王女に色々と教えてもらいたいので。」
「ああ、そうですね。シャーロット様、よろしくお願いします。」
「…………はい。」
いいわけあるかー!!!……って叫ばなかった自分を褒めたい。
親戚って言われちゃってるし……もうほぼ……いや、確実に貴方、第三王子でしょ。
ツカツカと歩み寄り隣の席に座った編入生をチラリと見る。
相変わらず微笑んではいるが凍りそうなくらい冷たい目がこちらを向いていた。
「あの、貴方……」
「アンソニーだよ。」
「ア、アンソニー、私と貴方って親戚……」
「うん、そうだよ。あれ?イザベラ様から聞いてない?僕はボヴェルデンの第三王子だから、君とはいとこだよ。よろしくね、シャーロット。」
ーー聞いてません。そもそも貴方が来ることさえ聞いてませんから。
これはルーカスの言う通りゲームの強制力とか言うやつなんじゃないだろうか。…………怖い。早くルーカスに報告しないと。
「よろしく」と挨拶しすぐに前を向いて視線を逸らした。横からの痛いくらいの視線には気付かない振りをして授業に集中する。
授業終了のチャイムが鳴り、急いでルーカスのいる下級生クラスに行こうと席を立つと、手をガシッと掴まれた。
「どこに行くの?学園の中を案内してもらいたかったんだけど。」
「あ、あの、私行く所が…………」
「僕もついて行っていい?一人でいるのも不安だし。」
ついて来られたら、本人を前にしてルーカスと話せないでしょ!
貴方が来たことを言いに行きたいのに!!ルーカスだって突然私が攻略対象者の第三王子を連れて行ったらビックリするだろうし…………ここはアンソニーの言う通りにしておいた方がいいのかも…………ルーカスには後で隙を見て会いに行こう。
「…………学園を案内します。」
「そう?ありがとう。」
アンソニーの背筋の凍るような笑顔に心の中で悲鳴を上げながら、私もニッコリと王女の公務で鍛えられた営業スマイルでそれに答える。
その後、隙を見てルーカスに会いに行こうとしていた私の行動はことごとくアンソニーに阻止され…………結局、下校時間になるまでルーカスに会いに行くことは叶わず、私はこの日、精神力をゴリゴリと削られ、精神的にも体力的にもヘトヘトになったのだった。
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