19 / 27
策動 2 〜ルーカス〜
しおりを挟む
「私がゲームの世界だと気付いたのは随分遅かったのよ。」
夕食後、王妃様の部屋に呼ばれた僕は用意されたお茶を啜りながら王妃様の話しを聞いていた。
王妃様に前世の記憶が戻ったのは、随分と前の事だったらしい。
幼少期に高熱を出した時に思い出したとか。
「けれどここがゲームの世界だとは微塵も思わなかったわ。」
お茶をコクリとひと口飲んで王妃様が苦笑する。
そりゃそうだ。
王妃様が子供の頃なんてゲームのストーリーが始まる何十年も前なんだから。
そこそこ家柄の良かった王妃様は王家主催のパーティーでお父様に見染められ、猛アプローチされて結婚、お兄様を産んでからも気付かなかったんだって。
"もしかして"と思い始めたのは、体の弱い王妃様がこれ以上子供が産めないという理由で、お父様が無理矢理側妃を迎えさせられそうになってからだとか。
どこかで聞いたような話だとは思ったらしいけど、この時はまだゲームの事を思い出してはいなかった。
思い出したのは側妃としてお城に来たお母様を見た時で、頭の中にゲームの映像が走馬灯の様に一気に流れたんだって。
それでもまだ半信半疑だった王妃様は、嫌がるお父様を説得してなんとかお母様を身篭らせる事に成功。
そして、お姉様が生まれ、名前が決まった時に確信したらしい。
ここが「ヒカラビ」の世界だって。
「ここが、私が前世で大好きだったゲームの世界だったなんて!!ルーカスにはこの感動が分かるでしょ!?ゲームの世界だって確信してからは嬉し過ぎて暫く体の震えが止まらなかったわ!!」
「分かります!!!推しキャラを目の前で拝めて、尚且つ同じ空間に一緒に居るとかマジヤバいですよね!!」
「そうなのよー!!」
2人でキャーキャーと興奮しながら話す姿は、誰が見ても異様だろうな。
最初に人払いしてくれていて良かった。
話しが脱線して王妃様とゲーム内容でメチャクチャ盛り上がってしまった。
王妃様の推しは、僕と同じでお姉様だった。やっぱりね。
この流れ的に絶対そうだと思った。
お姉様はゲームでは意地悪で我儘放題なキャラだからゲームをやり始めの頃は嫌う人が多い。
けれど裏設定というか、小説や漫画で明かされたお姉様の生い立ちや、お母様やお城の者達からの仕打ちのせいで歪んでしまった性格に対して同情する声が多数寄せられ、ゲームを愛するリピーター達には結構愛されていた。
僕は最初からお姉様推しだったけれど、サイドストーリーを読み漁ってからは益々ハマり、お姉様一筋に愛していた。
王妃様はゲームをリピしていくうちにお姉様にどっぷりハマったようだ。
お母様のキャラは分かっていたから、王妃様はお姉様を我が子のように沢山愛し、大切に育てた。
お兄様も、王妃様がお姉様を愛して可愛がる姿を見て育ったお陰でゲームのようにお姉様を遠巻きにするような事も無く、王妃様と一緒になって可愛がってくれたんだ。
グッジョブ、王妃様。
けれど、ここで一つ問題が。
王妃様が前世の記憶を思い出したのが幼少期だったこと。
そのせいで大好きだったゲームではあるが、登場人物に起きた出来事がいつ発生するのかうろ覚えになってしまっていたのだ。
「あの侍女長がロッティーに接近するのを防げていたなら、あの子があんなにも傷付かなくて済んだのに…………今思い返しても悔しいわ。」
王妃様がティーカップをギュッと握り締め眉間に皺を寄せる。
僕は王妃様の手にそっと自分の手を置き微笑んだ。
「王妃様はお姉様と僕に十分過ぎるくらいの愛を与えてくださっていますよ。」
「ルーカス…………あぁ、なんて可愛い子なんでしょう。」
目を細め僕の頭を撫でてくれる王妃様からは、深い愛情を感じる。
いつもいつも、王妃様はお姉様と僕に沢山の愛を与えてくれる。
王妃様がいてくれたから、お姉様はあんなにもキャラ変し、とっても優しくて内面から美しさが溢れ出る美少女に成長したのだろう。
まあ、どんなに性格が悪くても僕の推しはお姉様で変わりないけれど、せっかくなら内面も美しい方がいい。
そしてバッドエンドなんか迎えずに幸せになってもらいたいのだ。
そう考えれば考えるほど、王妃様には感謝しかない。
「ふふっ。ルーカスもゲームとはかなり性格が変わってしまったけれど、まさか貴方が転生者だったとはね。」
「こうして僕が愛されキャラになれたのも、王妃様のお陰ですね。」
「あらあら。」
ニッコリと笑う僕を見て王妃様もクスクスと笑った。
ーーそう、僕もゲームでは皆から疎まれるような気の強い俺様キャラだった。
そして、お姉様にはモブだと言ったけれど、何を隠そう僕も攻略対象のウチの一人なのだ。
心に闇を抱える僕がヒロインに絆されて好きになる、ルーカスルートもあったのを覚えている。
ルーカスはお姉様との関わりが多めだったからお兄様ルートと同じくらい攻略していた。
前世ではいけ好かない嫌なヤローだと思いながらプレイしていたが、まさか自分がルーカスに転生するなんて思いもしなかった。
ゲームでは姉弟とはいえ仲の悪かったお姉様とルーカスも、ここの世界ではお互いを溺愛するシスコン、ブラコン姉弟に仕上がっている。
今の僕のポジションは皆から可愛がられるワンコ系愛されキャラだ。
前世の性格とは全然違うから記憶を思い出した時は流石に小っ恥ずかしかったけど、前世と今の記憶が馴染んできてからは別にそれ程恥ずかしくもなくなった。
だって皆からは可愛い可愛いとチヤホヤされるし、何よりお姉様が僕を溺愛してくれるのだから。
毎日が楽しくて嬉しくて幸せでしょうがない。
「でも、ルーカスが転生者で助かったわ。正直言うと、どうやったらあの女からロッティーを守れるのか不安だったの。」
「あー、そうですね。遂に動き出しちゃいましたもんね。あの第三王子までこんなに早く呼び寄せるとか…………本当に要らないことばかりしてくれますよ。」
「全く同感ね。今まで通り大人しくしていれば良かったものを…………私の可愛いロッティーに手を出したらどうなるのか思い知らせてあげないと……ねえ?」
「そうですね。」
僕と王妃様はお茶をコクリと飲み、不敵な笑みを浮かべたのだった。
夕食後、王妃様の部屋に呼ばれた僕は用意されたお茶を啜りながら王妃様の話しを聞いていた。
王妃様に前世の記憶が戻ったのは、随分と前の事だったらしい。
幼少期に高熱を出した時に思い出したとか。
「けれどここがゲームの世界だとは微塵も思わなかったわ。」
お茶をコクリとひと口飲んで王妃様が苦笑する。
そりゃそうだ。
王妃様が子供の頃なんてゲームのストーリーが始まる何十年も前なんだから。
そこそこ家柄の良かった王妃様は王家主催のパーティーでお父様に見染められ、猛アプローチされて結婚、お兄様を産んでからも気付かなかったんだって。
"もしかして"と思い始めたのは、体の弱い王妃様がこれ以上子供が産めないという理由で、お父様が無理矢理側妃を迎えさせられそうになってからだとか。
どこかで聞いたような話だとは思ったらしいけど、この時はまだゲームの事を思い出してはいなかった。
思い出したのは側妃としてお城に来たお母様を見た時で、頭の中にゲームの映像が走馬灯の様に一気に流れたんだって。
それでもまだ半信半疑だった王妃様は、嫌がるお父様を説得してなんとかお母様を身篭らせる事に成功。
そして、お姉様が生まれ、名前が決まった時に確信したらしい。
ここが「ヒカラビ」の世界だって。
「ここが、私が前世で大好きだったゲームの世界だったなんて!!ルーカスにはこの感動が分かるでしょ!?ゲームの世界だって確信してからは嬉し過ぎて暫く体の震えが止まらなかったわ!!」
「分かります!!!推しキャラを目の前で拝めて、尚且つ同じ空間に一緒に居るとかマジヤバいですよね!!」
「そうなのよー!!」
2人でキャーキャーと興奮しながら話す姿は、誰が見ても異様だろうな。
最初に人払いしてくれていて良かった。
話しが脱線して王妃様とゲーム内容でメチャクチャ盛り上がってしまった。
王妃様の推しは、僕と同じでお姉様だった。やっぱりね。
この流れ的に絶対そうだと思った。
お姉様はゲームでは意地悪で我儘放題なキャラだからゲームをやり始めの頃は嫌う人が多い。
けれど裏設定というか、小説や漫画で明かされたお姉様の生い立ちや、お母様やお城の者達からの仕打ちのせいで歪んでしまった性格に対して同情する声が多数寄せられ、ゲームを愛するリピーター達には結構愛されていた。
僕は最初からお姉様推しだったけれど、サイドストーリーを読み漁ってからは益々ハマり、お姉様一筋に愛していた。
王妃様はゲームをリピしていくうちにお姉様にどっぷりハマったようだ。
お母様のキャラは分かっていたから、王妃様はお姉様を我が子のように沢山愛し、大切に育てた。
お兄様も、王妃様がお姉様を愛して可愛がる姿を見て育ったお陰でゲームのようにお姉様を遠巻きにするような事も無く、王妃様と一緒になって可愛がってくれたんだ。
グッジョブ、王妃様。
けれど、ここで一つ問題が。
王妃様が前世の記憶を思い出したのが幼少期だったこと。
そのせいで大好きだったゲームではあるが、登場人物に起きた出来事がいつ発生するのかうろ覚えになってしまっていたのだ。
「あの侍女長がロッティーに接近するのを防げていたなら、あの子があんなにも傷付かなくて済んだのに…………今思い返しても悔しいわ。」
王妃様がティーカップをギュッと握り締め眉間に皺を寄せる。
僕は王妃様の手にそっと自分の手を置き微笑んだ。
「王妃様はお姉様と僕に十分過ぎるくらいの愛を与えてくださっていますよ。」
「ルーカス…………あぁ、なんて可愛い子なんでしょう。」
目を細め僕の頭を撫でてくれる王妃様からは、深い愛情を感じる。
いつもいつも、王妃様はお姉様と僕に沢山の愛を与えてくれる。
王妃様がいてくれたから、お姉様はあんなにもキャラ変し、とっても優しくて内面から美しさが溢れ出る美少女に成長したのだろう。
まあ、どんなに性格が悪くても僕の推しはお姉様で変わりないけれど、せっかくなら内面も美しい方がいい。
そしてバッドエンドなんか迎えずに幸せになってもらいたいのだ。
そう考えれば考えるほど、王妃様には感謝しかない。
「ふふっ。ルーカスもゲームとはかなり性格が変わってしまったけれど、まさか貴方が転生者だったとはね。」
「こうして僕が愛されキャラになれたのも、王妃様のお陰ですね。」
「あらあら。」
ニッコリと笑う僕を見て王妃様もクスクスと笑った。
ーーそう、僕もゲームでは皆から疎まれるような気の強い俺様キャラだった。
そして、お姉様にはモブだと言ったけれど、何を隠そう僕も攻略対象のウチの一人なのだ。
心に闇を抱える僕がヒロインに絆されて好きになる、ルーカスルートもあったのを覚えている。
ルーカスはお姉様との関わりが多めだったからお兄様ルートと同じくらい攻略していた。
前世ではいけ好かない嫌なヤローだと思いながらプレイしていたが、まさか自分がルーカスに転生するなんて思いもしなかった。
ゲームでは姉弟とはいえ仲の悪かったお姉様とルーカスも、ここの世界ではお互いを溺愛するシスコン、ブラコン姉弟に仕上がっている。
今の僕のポジションは皆から可愛がられるワンコ系愛されキャラだ。
前世の性格とは全然違うから記憶を思い出した時は流石に小っ恥ずかしかったけど、前世と今の記憶が馴染んできてからは別にそれ程恥ずかしくもなくなった。
だって皆からは可愛い可愛いとチヤホヤされるし、何よりお姉様が僕を溺愛してくれるのだから。
毎日が楽しくて嬉しくて幸せでしょうがない。
「でも、ルーカスが転生者で助かったわ。正直言うと、どうやったらあの女からロッティーを守れるのか不安だったの。」
「あー、そうですね。遂に動き出しちゃいましたもんね。あの第三王子までこんなに早く呼び寄せるとか…………本当に要らないことばかりしてくれますよ。」
「全く同感ね。今まで通り大人しくしていれば良かったものを…………私の可愛いロッティーに手を出したらどうなるのか思い知らせてあげないと……ねえ?」
「そうですね。」
僕と王妃様はお茶をコクリと飲み、不敵な笑みを浮かべたのだった。
79
あなたにおすすめの小説
追放聖女は、辺境で魔道具工房を開きたい ~ギルド末端職人ですが、「聖印」で規格外の魔道具を作ったら、堅物工房長に異端だと目をつけられました~
とびぃ
ファンタジー
「聖なる力を機械(まどうぐ)に使うとは何事か!」
聖女アニエスは、そのユニークすぎる才能を「神への冒涜」と断罪され、婚約者である王子から追放を言い渡されてしまう。
彼女の持つ『聖印』は、聖力を用いてエネルギー効率を100%にする、魔導工学の常識を覆すチート技術。しかし、保守的な神殿と王宮に、彼女の革新性を理解できる者はいなかった。
全てを失ったアニエスは、辺境の街テルムで、Fランクの魔道具職人「アニー」として、静かなスローライフ(のはず)を夢見る。 しかし、現実は甘くなく、待っていたのは雀の涙ほどの報酬と、厳しい下請け作業だけ。
「このままでは、餓死してしまう……!」
生きるために、彼女はついに禁断の『聖印』を使った自作カイロを、露店で売り始める。 クズ魔石なのに「異常なほど長持ちする」うえ、「腰痛が治る」という謎の副作用までついたカイロは、寒い辺境の街で瞬く間に大人気に!
だがその噂は、ギルドの「規格(ルール)の番人」と呼ばれる、堅物で冷徹なAランク工房長リアムの耳に入ってしまう。 「非科学的だ」「ギルドの規格を汚染する異端者め」 アニーを断罪しに来たリアム。しかし、彼はそのガラクタを解析し、そこに隠された「効率100%(ロス・ゼロ)」の真実と、神の領域の『聖印』理論に気づき、技術者として激しく興奮する。
「君は『異端』ではない。『新しい法則』そのものだ!」
二人の技術者の魂が共鳴する一方、アニエスの力を感知した王都の神殿からは、彼女を「浄化(しょうきょ)」するための冷酷な『調査隊』が迫っていた――!
追放聖女の、ものづくりスローライフ(のはずが、堅物工房長と技術革新で世界を揺るがす!?)物語、開幕!
無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる
あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。
魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。
しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。
小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。
持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
セントフェアファクス皇国徒士家、レイ家の長女ラナはどうしても持参金を用意できなかった。だから幼馴染のニコラに自分から婚約破棄を申し出た。しかし自分はともかく妹たちは幸せにしたたい。だから得意の槍術を生かして冒険者として生きていく決断をした。
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる