侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里

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熱があると辛いよね

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トテトテトテ。

長く広い廊下を、私は絵本を抱えながら歩いている。

行き先はアーク兄様の部屋。

今日も兄様は微熱があって、自分の部屋で安静にしている。
そんな兄様の所へ、私は元気になってから毎日のように通って絵本を読んだり、兄様の隣で寝転がってゴロゴロしたりしていた。

だってさ、この世界ってテレビが無いんだよ。ゲーム機とかも無いし。

10歳の男の子がずっと部屋とかベッドの上で過ごすのは、退屈すぎるんじゃないの?

そう思って兄様の部屋に遊びに行くんだけど。アーク兄様はとっても優しくて、3歳児の相手をいつもニコニコとしてくれるから、私が入り浸ってしまっている。美少年は眼福だしね。


それにしても遠い。私の部屋は2階にあって母様の部屋の隣なんだけど、兄様達3人の部屋は3階にある。

別荘だというのに、この屋敷はかなりデカい。
3歳児が2階から3階へ移動するだけで、かなりの重労働だ。

くそー、絵本を欲張って3冊も持ってくるんじゃなかった。


「エリーヌ様、絵本はやはり私が持ちますよ?」

「らいじょーぶ。ありがとー。」

後ろから付いてきてくれているマリアが見兼ねて助けようとしてくれるけど、私はそれをやんわり断る。

自分の物くらい自分で運ばないとね。


アーク兄様の部屋まで到着した頃には既にクタクタだった。

3歳児とはいえ、体力が無さ過ぎる。
これからはもっと体力をつけよう。


コンコンコン。


「はい。」

「アークにいしゃま、エリーらよ。」

自分でガチャリと扉を開け……られないからマリアに開けてもらい、部屋に入る。

ベッドの上で背にクッションをあてがい、本を読んでいたアーク兄様のところへ絵本を運んだ。

ベッドへよじ登り、モゾモゾとアーク兄様の隣に潜り込んで絵本をひろげる。

「フフッ。今日は沢山持ってきたんだね?」

「いっぱいよんで、じのおべんきょーなの。」

「そうなんだ。頑張って。」

一生懸命に絵本を読む私の頭を、アーク兄様が優しく撫でてくれた。

撫でてくれた兄様の手が少し熱い。

兄様を見上げて頬をそっと触ると、やっぱり熱い。ちょっといつもより熱いんじゃないの?

「にいしゃま、あちゅい?」

「うん?そうかな?いつもと変わらないよ。」


いやいや、熱いですよ。いつも熱があるから、感覚が麻痺しちゃってるんじゃない?

「にいしゃま、きょうはエリーといっしょにおひるねしよう。」

私は兄様の読んでいた本を強引に奪うと、絵本と一緒にベッドの端に置く。

私がベッドにゴロンと横になれば、兄様は苦笑しながらも一緒に寝てくれた。

「エリーヌ、字の勉強はいいの?」

「いいの。おべんきょーはいちゅでもできるから。」

「ごめんね。今度は沢山勉強を手伝うからね。」

そう言って、兄様は小さく息を吐いた。

やっぱり体がダルいよね。


アーク兄様は、体内で魔力の巡りが良くないらしい。


ここでは、人は魔力があり、誰でも魔法が使える。それが当たり前の世界。
魔力は平民よりも貴族の方が圧倒的に多く、更には髪などの色素が薄い人の方がより魔力を持っているんだって。

だからうちの家族の中でも、白銀髪の父様、アーク兄様、私は魔力がかなり多いらしい。

アーク兄様は体内に魔力が滞る場所があるみたいで、上手く魔力循環が出来なくて体調が悪くなってしまう。

血管みたいに魔力の通り道があるのかな?

この世界では医療は進歩していない。
治癒に特化した魔法を使える人達が医者のような役割をしていたから、そもそも医療を学ぶような専門の場所が無いのだ。

あとは薬草を扱う薬師がいて、軽い怪我や病などは薬草を使用する。

治癒魔法をかけてもらうにもお金がかかるから、平民は薬草を使用することが多いみたいだけど。


でもね、治癒魔法だって、完璧じゃない。
アーク兄様みたいに魔力の巡りが悪かったり、私みたいに前世を思い出して知恵熱?的な、病気ではなくて原因がハッキリしないものには魔法がかかりにくくて、治りにくい。

魔法に頼りっぱなしじゃなくて、もっと色々勉強とか研究とかしてもいいんじゃない?
もうちょっと頑張ろうよ。



体内で、どうやって魔力が循環してるか分かればいいんだけどなぁ。
私にも、魔力があるんだよね?自分で感じたり出来ないのかな?
まだ3歳の体では難しいのかなぁ……。

アーク兄様……なんとか元気にしてあげたいなぁ……。


アーク兄様の綺麗な寝顔を見ながら色々と考えていたら、いつのまにか寝てしまっていたのだった。




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