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魔力のお勉強

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翌日。
私は自分の部屋で絵を描いていた。

床に紙を広げ、そのままペタンと直に座り込む。
あいにく、この豪華な部屋に置かれたソファーとテーブルでは、3歳児がお絵描きするのに適した高さにはならず、仕方無く床で描いているのだ。

決して、豪華なテーブルをインクで汚したら勿体無いとか、そんな庶民丸出しの考えからではない。……本当だよ?

だから、後ろに控えているマリアだって何も言わないんだもん。
いつもならお行儀が悪いって、すぐに怒られる状況なんだからね。


私が手を止め、短い腕を組みながら悩んでいると、後ろから声がかけられた。

「これは何を描いたんだ?」

「なにって、にんげん。みたらわかりゅでしょ。」

「……にんげん。全く分からなかったけどな。」


失礼な。どこからどう見ても人間じゃないか。
ムッとしながら声のする方を向くが、誰もいない。

……あれ?

「いまの、マリアのこえ?」

「私ではありません。」

ですよねー。男の人の声だったもん。

キョロキョロしても誰もいない。

いるのは、私の描いた絵の前で仁王立ちしているクロだけだ。

後ろ足で器用に立って絵を見ている。

ジッとクロを見ていたら、私の視線に気づいたクロと目が合った。

「なんだ?」

「……クロ、しゃべれたの?」

「当たり前だ。普通に話せる。」

「いま、はじめてしゃべったじゃん。」

「お前を湖で助けた時に、力を使い過ぎたんだ。この姿で魔力を使うと、消費が激しいんだよ。」


わぉ……私のせいで話せなかったの?

「ごめんなしゃい。」

私が素直に謝ると、クロのつぶらな瞳が細められた。

「俺が助けたいからやっただけだ。お前のせいじゃないさ。それに、俺はもうお前の従魔だしな。」

「ありがとー。クロ、やしゃしいね。」

「おうよ。それより、なんで人間なんて描いていたんだ?描きながら悩んでたみたいだし。」

クロが言いながら私の膝の上にちょこんと乗る。

可愛いのに、荒々しい言葉遣い。

……ここにもギャップ萌えがいた。

「たいないの、ちのめぎゅ……ちのめぐりをかいてたの。まりょくはどうなのかとおもって。」

ああ、言いにくい!3歳だから、舌が上手く回らなくて発音しにくいんだよね。
早くスムーズに話せるようになりたい!

「……血の巡り?ハハッ!エリーヌは面白いことを考えるな!」

「ちのめぐりかたと、まりょくのめぐりかたは、にているのかな?しょれとも、ちがうのかな?」

う~んと唸って腕を組み、首を傾げる私を見て、クロが再び目を細めた。

「お前、本当に3歳か?そんなこと、普通の3歳児が考えないだろ。あと、それ腕は組めてないからな。」


ドキッ!!

ジトッとした目を向けてきたクロから、そっと目を逸らす。

クロさん、なかなか鋭いですな……。

「ど、どっからみても、しゃんしゃいじらよ!や、やらなぁ、クロってば!」

動揺を隠し切れていない私を、クロはジッと見つめていたが、諦めたのか、フゥとため息を吐いて肩を竦めた。

「まあいいや。今はそれでも。で、なんだっけ?魔力の巡り方だっけ?それな、血の巡りとだいたい一緒だよ。」

「ほぇ?クロ、しってるの?」

「おうよ。俺はそこそこ凄い魔族なんだぜ?それくらい知ってるさ。魔力の事は魔族のほうが詳しいからな。」

エッヘン!と胸を張るクロはメチャクチャ可愛くて、全然凄そうには見えないけどね。……勿論、クロには言わないよ。


でも、こんな近くに魔力循環に詳しい先生がいた!

私は思わず力加減も忘れて、力一杯クロを掴む。

「グエッ!」


「しょれ、くわしくおしえてくらしゃい!!」




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