侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里

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クロって本当に凄い魔族だったんだね

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「はぁ……死ぬかと思ったぜ……。」

「ごめんなしゃーい……。」

私に強く掴まれて失神寸前だったクロを、マリアがサッと私から奪い取り救出した。

「もういいよ。次からは気を付けてくれよな。」

「はーい。」

クロはシュンとする私の膝をポンポンと叩き、私が描いた絵の前に立つ。

クロの魔力講座が始まりました。


「魔力ってのは、簡単に説明すると、体内にあるエネルギーみたいなもんなんだ。だから、人によって得意な魔法が違ったり魔力量がちがったりする。」

「うんうん。」

へー。そうなんだね。

私はコクコクと頷く。


「魔力は血液みたいに血管を通って循環するわけじゃないから、目に見える管とかは無いんだ。」

「え~。じゃあどうしゅるの?」

「自分の感覚で感じとるんだよ。」

「かんかく?」

「そうだ。いいか?」

クロはテトテトと私に近付き、私の手にクロの手を重ねる。

そして目を閉じるとクロの手が淡く光り、そこから私の体に温かなモノが流れ込んできた。

「わっ!」

「感じるか?俺の魔力を少し流した。これが体内の魔力循環だ。意識を集中して流れを感じろよ。」

「はい。」


集中、集中!

私は目を閉じて、流れ込んできた温かなクロの魔力が体内を巡る、その流れを必死に追いかけた。

「おぉっ!しゅごいっ!」

クロの魔力のおかげで、体内をどんな風に魔力が巡っているのかが、すごくよく分かる。

「分かったか?これが魔力循環だ。実際に感じた方がよく分かるだろ?」

「はい!しゅごくよくわかったよ!クロてんしゃい!」

「てんしゃい?……あぁ天才か。そうだろう、そうだろう。俺は天才なんだ。こんな事くらい、簡単に教えてやれるんだぜ。」

私に褒められて上機嫌になったクロは、エッヘン!と腰に手を当てて胸を張る。

……クロ可愛い。


「次は、俺が魔力を流さなくても、自分の魔力の流れを感じられるようにするんだ。意識を体内に集中させろ。そして感じるんだ。」

「はいっ!」


集中、集中!


ーーう~ん。体内がゴチャゴチャしていて上手く感じることが出来ない。


「できない!むじゅかしい……。」

「焦るなよー?最初から上手く出来るなんて思ったら大間違いだ。ちょっとずつ、さっきの感覚を思い出して感じるんだ!」

「はいっ!がんばりましゅっ!」


段々と熱血スポ根アニメ風なノリになってしまったが、小一時間程そんな感じで頑張っていたら、なんとか感覚が掴めてきた。

「クロッ!なんとなくわかってきたよ!」

「おーっ!やったな。流石は俺の主だぜ。」

「うんっ!ありがとー!」



ワイワイと喜び合うエリーヌとクロを、部屋の端に控えていたマリアは複雑な心境で見つめていた。

ーー体内の魔力の流れを感じられる人間が、この世界にどれくらいいるのだろうか。
3歳児が為せる技だとは到底思えないくらい凄い事なのだが、それを、目の前にいる可愛らしい少女がやってのけた。

そして、その方法を教えられる程の優れた魔族は、かなり上流階級に属している筈。
そんな魔族が、何故こんな所で3歳の少女の従魔などをしているのか。


マリアは壁を背に立ち、気配を消して我が主人とその従魔を見つめる。


結局のところ、マリアはこの人並外れた力を持つ2人……いや、1人と1匹を温かく見守り、誠心誠意お仕えするだけだ。


そう思い、魔力の勉強に勤しむエリーヌを、心の中で応援するマリアなのであった。


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