侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里

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ストレス発散しようじゃないか!!

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「と、ところで本当に何しに来たのさ?2人とも忙しいだろうから、とっとと用事済ませて、さっさと帰りなよ。」


私は何とか2人に早く帰ってもらおうと必死だった。
だって、こんな所に王族が2人もいるんだよ。ほら、護衛とか防犯的な問題で色々心配じゃない?
王太子と関わると面倒臭いとか、そんなこと全然……思ってるけどね!はよ帰れ。


「何よその言い草!人がせっかく謝りに来てあげたのに!」

私が早く帰れオーラ全開なのに激怒し、王女が声を荒げる。

「え?王女謝りに来たの?でもそれって謝りに来た人の態度じゃなくない?それに謝るのは私にじゃなくて、あの侍女にだよ。」

私が首を傾げながら言えば、王女は「うっ」と呻きながらそっぽを向いた。

「じ、侍女にはここに来る前にきちんと謝ったわよ。2度とあんな事をしないからってね!」

「それで侍女はなんて?許してくれたの?」

「もちろん許してくれたわよ!」

「ふーん。侍女が許したんなら、もういいよ。ちゃんと謝れたんだね。王女のくせにエライじゃん。少し見直したよ。」

ニッコリと王女に微笑むと、王女は顔を赤くして照れている。

……5歳児に褒められて、喜ぶ6歳児……なんかシュールだね。

王女もなぁ……。黙っていればセディの妹なだけあって、スゴイ美少女で萌えるんだけどなぁ。


私がジッと王女を見つめてそんな事を考えていたら、王女が眉間に皺を寄せて怪訝そうな顔をする。

「何よ。」

「いや~、王女はさ、黙っていれば萌え……ずっと見ていられるくらい美少女なのに勿体無いと思って。これからは、もうちょっと言いたい放題、やりたい放題が抑えられるといいね?」


私が苦笑しながらそう言うと、王女は怖い顔でセディを勢いよく指差した。

「だって!!いつもいつも、こんな完璧人間の化物みたいなお兄様と比べられてみなさいよ!?毎日イライラしちゃって自分でも感情が上手く抑えられないのよ!」

「……人を指差すのはやめてくれない?」

叫んだせいでゼェゼェと肩で息をする王女に、セディがニッコリと微笑む。……だから目が笑ってないんだよ。怖いわ!


う~ん……ストレス発散が出来ればいいのか?でも、今の王女は言いたいことを言えているからか、前に会った時よりも嫌な感じがしないんだよね。

言いたいことを溜め込まずに、全部吐き出しちゃえばいいんじゃない?


「マリア!すぐにこれくらいの紙袋を用意出来るかな?」

私がジェスチャーを交えて適度な大きさの紙袋をマリアに持って来てもらえるように頼めば、マリアは数分で紙袋を数個用意してくれた。

マリアってば本当に優秀!!

「ありがとう、マリア。」

「足りなければ、またすぐにご用意致します。」


私とマリアのやり取りを、王女が目を丸くして見ていた。

「貴方、侯爵令嬢よね?そうやっていつも侍女達にお礼を言ったりしているの?そんなの、仕えているのだから当たり前じゃない。」

「はいそれっ!何かをしてもらったり、自分が悪かった時に感謝や謝罪の気持ちを伝えるのに、侯爵令嬢とか、身分なんて関係ないんだよ。ありがとう、ごめんなさいは、人としての基本だからね!」


私が用意してもらった紙袋を王女とセディに渡しながら言えば、王女は紙袋を見つめて黙り、セディは嬉しそうにウンウンと頷いていた。


「さすがエリーヌだね。全くその通りだよ。ところで、これは何をする為に用意したのかな?」

「フフフッ。この紙袋を使って、お手軽簡単にストレス発散をするのよ!」

「ストレス発散?これで?」

「まあ見てて。」

首を傾げるセディに私はニヤッと笑い、紙袋を自分の口に押し当てる。

ーーそして、

「王太子のバカヤロー!!」

と、思い切り紙袋の中に叫び紙袋の口をキュッと手で握り閉じた。

突然叫んだ私に2人が驚いているところへ、口を閉じた紙袋を力一杯叩き潰した。


パーーンッ!!!


「キャッ!」

「うわっ!」


大きな音に驚く2人に私は再びニヤッと笑う。


「ほら、2人ともやってみて。」

私がそう言うと、初めは少し戸惑っていた2人だが、暫くすると意を決して紙袋を口に当てた。


「いつもいつもお兄様と比べるんじゃないわよー!!」

「もっと自由な時間が欲しい!!」



パーーンッ!!!
パーーンッ!!!


叩き潰した紙袋を持って、2人はどことなくスッキリとした顔をしている。

「どう?これなら部屋で出来るし、大きな声を出しても紙袋が音を吸収してくれるし、最後は思い切り叩き潰してスッキリ出来るでしょ?」

「そうね。」

「うん。思った以上にスッキリするかな。」

「ストレスが溜まったら、我儘言っちゃう前にこれでスッキリ!!名付けて、"王様の耳はロバの耳"大作戦だよ!」


拳を突き上げて得意げに言う私を見て、ポカンと口を開け呆けていた2人が同時にプッと吹き出すと、大笑いをしだした。

「貴方……エリーヌは、何をするか分からなくて面白いわね。私達に全く媚びる気配もないし。」

「本当にね。媚びるどころか嫌っているくらいだしね。他の御令嬢達とは全然違って、一緒に居ても飽きないし、もっとずっと一緒に居たいって思わせる子だよね。」

「……いやいや、何処にでもいるただの令嬢なので、構わず速やかにお帰り下さい。」


笑い続ける2人に手土産として残った紙袋を渡し、早く帰ってもらう為に扉をガチャリと開けると…………そこには丁度、扉をノックしようとしていた兄様達が3人揃って立っていた。


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