侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里

文字の大きさ
39 / 87

光ってフワフワ漂うのは蛍だけでいいんですけど?

しおりを挟む
リアムパパに私の魔力の事を話すと、マリアの提案を快く了承してくれた。

「私達でエリーヌ様のお役に立てるのならば、どんな事でもさせていただきます。」

マリア家族が3人揃って頷く。

「ありがとう……!」

私が感極まって目をウルウルさせていると、リアムパパの周りにフワフワと漂っている淡い光が視界に入ってきた。

うん?と、目をゴシゴシと擦り、もう一度見るとその光はどこにもない。


ーーあれ?見間違い?


涙で視界がぼやけていたから気のせいかな?

私がキョロキョロと周りを見回していると、マリアが不思議そうに私を見た。

「エリーヌ様?どうかされましたか?」

「うん……さっきそこに蛍みたいな光がフワフワ~ッと……。」

「ホタル?」

マリアが首を傾げる。


お?この世界には蛍がいないのか?


「ん~……何でもない。」

私がエヘヘッと笑っていると、にぃにが手を私の方へ差し出して微笑んだ。

「エリーヌ様、ここから先の難しい話しは大人達に任せて、私達は散歩でもしましょうか。」

「うん、行くー!」

私はピョンと座っていたソファーから立ち上がって、にぃにの手を取る。


庭には、色とりどりの花が咲き、気持ち良さそうに風に揺られていた。
使用人は雇わずに男2人暮らしだと言っていたけれど、花壇はきちんと手入れされているようで、花々も生き生きとしている。

「お花の手入れは誰がしてるの?とっても綺麗だね。」

「ああ、それは父が……この花壇は母のお気に入りだったので、特にしっかりと世話をしているのでしょう。」

「そっかぁ。」

確かマリアのお母さんは、マリアが私の専属侍女になる1年くらい前に病気で亡くなったって聞いた。
リアムパパは容姿が原因で良い職に就けず、代わりにお母さんが働いて家計を支えていたんだって。

「幼馴染だった父と母はとても仲が良かったんです。唯一の理解者だった母を亡くした父は心身共に弱ってしまい……私達家族はドン底まで落ち、途方に暮れていました。」

「そんな私達家族に、侯爵様は手を差し伸べてくださったのです。このご恩は感謝しても仕切れません。」

庭を歩きながら話すマリアとにぃにはお母さんの事を思い出しているのか、花壇の花を悲しげに見つめている。

「じゃあ、私も父様に感謝しなくちゃね。父様のおかげで、大好きなマリアと、リアムパパと、にぃにに出会えたんだから!」

私がニッコリ笑うと、にぃには頬を染めて何やら悶えている。

「て、天使!!マリア!ここに天使がいるぞ!?」

「兄さん。エリーヌ様は侯爵家の天使ですから。」


マリアが自慢げにしているけど……可笑しいからね!?

どんな分厚い色眼鏡で私を見ているんだよ!

私は天使なんかじゃありませんから!!


私が2人の会話を聞いてげんなりしていると、どこからともなく、またさっきの淡い光がフワフワと漂いこちらに近づいてきた。


あれ?やっぱり見間違いじゃなかったんじゃん。


「ねえ、マリア。あの光ってなんだろう?」

「光ですか?」

私が指差す方を向いて、マリアが首を傾げる。

そうしている間にもどんどん近づいてきて、私達の周りをフワフワと漂っている。

「これだよ、これ!」

「……?私には何も見えませんが……。」



ーーマジか!?


私が驚いて見上げると、その淡い光はピタッと動きを止め、パンッと弾けるように消えてなくなってしまった。


ーーあれ絶対蛍じゃないヤツだ。


「……ハハッ……。この世界にも火の玉ってあるのかなぁ……。」

光が消えたのに呆然としている私を、にぃにとマリアが不思議そうに見つめる。


私にだけ見えてたとか、やっぱり1回死んだ記憶があるからですかね!?




父様達の話し合いが終わり、私は肩をガックリと落として帰りの馬車に揺られていた。

私は平穏に暮らしたいだけなのに……他の人に見えないモノまで見えちゃったら、ますます平穏に暮らせなくなっちゃうんじゃない?


気落ちして帰った私は、屋敷に到着後、目に映った光景に更に肩をガックリと落としたのだった。



「……あぁ。嫌な予感しかしない。」




門の前に止められた、王家の紋章の付いた煌びやかな馬車を見て、私は深く溜め息を吐いた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

処理中です...