侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里

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私の平穏な日々はどこへいった?

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屋敷へ帰ると、すぐに客間へ通され、予想通りの人物が……いや、がソファーに優雅に座っていた。

「やあ、エリーヌ。遅かったね。」

「待ちくたびれたわよ。」

「……なんでセディとアシュがいるのかな。」

私が2人にジト目を向けると、セディがニッコリと綺麗な笑顔をみせる。

「嫌だなぁ。エリーヌに会いに来たに決まっているじゃないか。エリーヌ、久しぶりに会えて嬉しいよ。」

「ずっと寝込んでいたって聞いて心配していたけれど、元気になったみたいで安心したわ!」

2人とも私を見て嬉しそうに話すから、私はべつにこのまま会えなくても良かったんだけどなんて、言える雰囲気じゃない。

「…………ありがとう。私も、会えて嬉しいよ……。」

アハハ~ッと笑う私に、セディが目を細め怪しむ表情をしながらもニッコリと微笑んだ。

「本当に?」


ギクリッ。


「や、やだな~。本当だよ!」

慌てる私を、微笑んだままジッと見つめるセディ。


怖いからっ!!
目が笑っていませんよー!!


「フフッ。まあいいや。嬉しく思ってくれているなら、僕達が暫くここに滞在させてもらっても問題無いよね?」

「え!?」

「今日から暫く、この屋敷でアシュと2人お世話になるからよろしくね?」


なんですと!?


驚いて父様と母様を見ると、父様は眉尻を下げて肩を竦める。

「私も今、カトリーヌから聞いたよ。」

「なんでそんな展開に!?」


冗談じゃないっ!!
セディと同じ屋根の下で寝食を共にするなんて、変なフラグが立っちゃったらどうするのさっ!!


「うん、父上がね、いい加減ウザくて一緒に居たくなかったんだ。毎日毎日僕達に愚痴るからたまったもんじゃないよね。」

「まったくよ!侯爵を怒らせちゃった~ってべそをかきながら毎日ウジウジしてるから腹が立ってしょうがないわっ!」


自分達の父親なんだろうけどさ、一応この国の王様をウザいとか腹が立つとかってさ…………まあいいか。

「いやいやいや、だからってなんでウチに泊まるのさ。」

「うん?ウザかったから城を出て来たのはいいのだけれど、ほら、僕達って王子と王女じゃない?だから下手な所には行けないしね?真っ先に顔が浮かんだエリーヌの所へ来たんだよ。そうしたらね?侯爵夫人が行く所が無いならウチにどうぞって言ってくれたと言う訳なんだ。そんな有り難いお誘いに乗らない手は無いでしょう?」

キラキラと輝く笑顔をセディに向けられてしまうと、それ以上何も言えなかった。


ーーチクショウ!!笑顔が眩しいぜ!!

セディは顔が綺麗だから、好きじゃなくても無駄にドキドキしちゃうんだよ!!


「ま、まあ、セディはともかく、アシュがウチに来てくれたのは嬉しいかも。あ、今日の夜は私の部屋で一緒に寝ない?眠たくなるまで沢山お喋りしようよ。」

名案を思い付きウキウキしてアシュを見ると、アシュは頬を染めて私の頭を撫でてきた。

「貴方って、本当に素直に気持ちを表してくれるから可愛いわね!勿論OKよ!夜が楽しいだわ!」

「……いいなぁ。アシュだけズルい。僕もずっとエリーヌと一緒にいたいのに……あぁでも、朝まで一緒とかは将来の楽しみにとっておかないとね……。」

アシュの横でセディがブツブツと何か呟いていたけれど、ここからではよく聞こえなかった。

セディの呟きを横で聞いていたアシュがドン引きしていたから、深く突っ込まないようにしよう。……なんか背中がゾクッとしたのは気のせいだよね!?


「そうだ!せっかく来たなら庭でキックボードに乗らない?セディは前に別荘で乗ったけど、アシュはまだ乗ったこと無いよね?お爺ちゃんにキックボード2号を作ってもらったから、こっちに持って来てるんだよね。」

「キックボード?」

「ああ、あれがあるの?前に乗った時はとても楽しかったよ。僕もまた乗りたいな。」

首を傾げるアシュと、キックボードと聞いて目を輝かせるセディの手を引いて庭に向かった。

庭の隅にある道具小屋に置いてあるキックボードを取りに行こうと、だだっ広い庭を小走りで横切る。

遅れて少し後ろからついてくるアシュに「走ったら危ないわよ」と注意され、小走りしながら後ろを振り返ると、私の目の前を淡い光が通り過ぎた。


ーーあれ、さっきマリアの家で見たヤツだ。もしかして、ついてきた?


私が動きを止めて宙を仰ぐと、淡い光はフワフワと私の周りを漂いだす。

「エリーヌどうしたの?上に何かいるのかい?」

「私には何も見えないけど……。」

宙をジッと見つめて動かなくなった私に、2人が声をかける。

2人は私が見ているところを目で追いながら不思議そうにしている。

キョロキョロとして首を傾げているから、この2人にも見えていないらしい。


ーーやっぱり私にしか見えていないんだ。正体が分からないからモヤモヤする……。何か分からないままなんて、気持ち悪くて嫌だ!!


私はフワフワと漂う光を目で追いながら、動かずにジッとその時を待つ。

そして、光が私の目の前に最も近づいてきた時を、私は逃さなかった。


ガシッ!!!


「グエッ」


勢いよく手を伸ばし、私は思い切り淡い光を掴んだ。

淡い光は掴んだ瞬間に光が消え、私の手の中では、背丈が10センチあるかないかの背中に羽の生えた小さな男の子が苦しそうにもがいていたのだった。
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