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幼馴染って面倒臭い
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「私が悪かった!許してくれ!」
私達家族の目の前で、只今、国王様が床に額を擦り付け土下座しております。
私が唖然としている横で、父様が眉間に皺を寄せ国王様を黙って見下ろしていた。
「このとおりだ。本当にすまなかった!」
「…………立て。国王がそんな事をすんるんじゃない。」
「違う!!今、この場にいる私は国王じゃない!お前の幼馴染としてここにいるんだ。どうか許してくれ!」
頭を上げようとしない国王を、父様は顔を顰めて見下ろす。
なかなか「許す」という言葉が父様からは出ない。
そりゃそうか。
メチャクチャ怒ってたもんね。
でも、一国の王が土下座した状態のままってどうなのよ。
チラッとセディとアシュを見ると、2人は何とも言えない複雑そうな顔をして国王様を見ている。
父親の土下座している姿なんて見たくないよね。
私は居た堪れず父様を見上げた。
「父様。元はと言えば、私の魔力が変なのがいけなかったんだし。国王様だって、そりゃビックリするよね。ね?」
「エリーヌ……。あんな酷いことを言った私を許してくれるのかい?」
額を床につけていた国王様が顔を上げて私を見つめる。
「許すも何も……魔力測定の時に私、魔法石を粉々に砕いちゃったし……むしろ、謝るのは私の方だと思うんですよね。なんか、色々ごめんなさい。」
「エリーヌ~……。君はなんて優しい子なんだ。私は幼い頃から思ったことをすぐに口に出してしまうたちでね……ずっと注意されているんだが、生まれ持った性分だからどうにも直らないんだよ~。」
「それはまあ、何考えてるか分からないより正直でいいんじゃないですか?あ、でもそれだと国王様的には困るのかな?じゃあ父様を困らせない程度には頑張っていただけると助かります。」
「て、天使だ!!天使がここにいる!!」
ーーホントそういうのやめて。
私がジトッと国王様を見ていると、父様が国王様の腕を掴んでグイッと引っ張り上げ立たせた。
「もういいから、立て。」
父様はそう言って、家族内で打ち合わせていた通りに私の魔力がどうしてこうなったかを国王様へ説明する。
「ふ~ん……。湖で溺れて瀕死状態の時にクロとマリアの魔力を吸収しちゃったわけか……。」
国王様はフムと、顎に手を当て難しい表情をして黙り込んだ。
ドキドキ。
「エリーヌの纏うオーラが他の人間とは違うからな……。常識では考えられない事が起こり得る可能性は十分にあるね。」
「え?国王様ってオーラが見えるの!?」
「ん?まあ、これでも一応この国のトップだからね。人間の中では王位を継承したものだけが見えるらしいよ。」
ーーおおっ!!
なんかカッコイイな!!
「凄い!!やっぱり、なんだかんだ言っても国王様は特別なんですね!」
「そ、そう?」
私がちょっと興奮してそう言うと、国王様は照れながらエヘヘと笑った。
ーーこの人、全然王様っぽく無いんだよね……。
王様の威厳とかが感じられん。むしろ可愛いわ。
「さっきはあんな事を言ったけど、国王様は頑張らなくても、べつに今のままでいいんじゃないですか?」
「えっ?」
国王様が私をキョトンとした顔をして見る。
「国王様に対して私がこんな事を言うのは失礼かもしれないですけど、今のままで全然いいと思います。私は今の国王様が、親しみやすくて可愛くて好きですから。」
私がニッコリ微笑むと、国王様は目をウルウルさせて私をギュッと抱き締めた。
「グエッ!く、苦しい……」
「エリーヌは天使だ!!やっぱり天使がここにいるよ~!!」
ーーもうそれ、ホントにやめて!!
っていうか離して!!内臓が飛び出ちゃうから!!
「離さんか馬鹿者。私の娘を殺す気か。」
父様が、ジタバタともがく私から国王様をペリッと引き剥がしてくれた。
ーー助かった……。ありがとう、父様!
「まったく……。お前みたいな馬鹿な王は、私が側にいて見張ってやらないとな。……明日、エリーヌ達を見送ってから城に出勤する。」
「っ!!オズボルト~!!!」
泣き顔で今度は父様に抱き付こうとしている国王様を、父様が全力で躱している。
「あははっ!」
その光景が面白くて、私は大笑いしてしまった。
周りを見ると、母様も兄様達も、みんな笑っていた。
ーー良かった。なんとか丸く収まったかな?
ホッと胸を撫で下ろしていると、セディとアシュが私の横に歩み寄り、私の両手をギュッと握り締める。
「「ありがとう。」」
強く握られた手からは、眉尻を下げながら言う2人の想いが伝わってきて私もギュッと握り返した。
「幼馴染っていいもんだね。国王様と父様を見てるとなんだか羨ましいよ。」
「あら、私達だって幼馴染よね?」
「フフッ、そうだね。まだ幼馴染なだけだね。まだ。」
ゾクゾクッ!!
「……お兄様。せっかくいい感じだったのに。」
ーーやっぱりさっきの無し。
幼馴染って面倒臭い!!
私達家族の目の前で、只今、国王様が床に額を擦り付け土下座しております。
私が唖然としている横で、父様が眉間に皺を寄せ国王様を黙って見下ろしていた。
「このとおりだ。本当にすまなかった!」
「…………立て。国王がそんな事をすんるんじゃない。」
「違う!!今、この場にいる私は国王じゃない!お前の幼馴染としてここにいるんだ。どうか許してくれ!」
頭を上げようとしない国王を、父様は顔を顰めて見下ろす。
なかなか「許す」という言葉が父様からは出ない。
そりゃそうか。
メチャクチャ怒ってたもんね。
でも、一国の王が土下座した状態のままってどうなのよ。
チラッとセディとアシュを見ると、2人は何とも言えない複雑そうな顔をして国王様を見ている。
父親の土下座している姿なんて見たくないよね。
私は居た堪れず父様を見上げた。
「父様。元はと言えば、私の魔力が変なのがいけなかったんだし。国王様だって、そりゃビックリするよね。ね?」
「エリーヌ……。あんな酷いことを言った私を許してくれるのかい?」
額を床につけていた国王様が顔を上げて私を見つめる。
「許すも何も……魔力測定の時に私、魔法石を粉々に砕いちゃったし……むしろ、謝るのは私の方だと思うんですよね。なんか、色々ごめんなさい。」
「エリーヌ~……。君はなんて優しい子なんだ。私は幼い頃から思ったことをすぐに口に出してしまうたちでね……ずっと注意されているんだが、生まれ持った性分だからどうにも直らないんだよ~。」
「それはまあ、何考えてるか分からないより正直でいいんじゃないですか?あ、でもそれだと国王様的には困るのかな?じゃあ父様を困らせない程度には頑張っていただけると助かります。」
「て、天使だ!!天使がここにいる!!」
ーーホントそういうのやめて。
私がジトッと国王様を見ていると、父様が国王様の腕を掴んでグイッと引っ張り上げ立たせた。
「もういいから、立て。」
父様はそう言って、家族内で打ち合わせていた通りに私の魔力がどうしてこうなったかを国王様へ説明する。
「ふ~ん……。湖で溺れて瀕死状態の時にクロとマリアの魔力を吸収しちゃったわけか……。」
国王様はフムと、顎に手を当て難しい表情をして黙り込んだ。
ドキドキ。
「エリーヌの纏うオーラが他の人間とは違うからな……。常識では考えられない事が起こり得る可能性は十分にあるね。」
「え?国王様ってオーラが見えるの!?」
「ん?まあ、これでも一応この国のトップだからね。人間の中では王位を継承したものだけが見えるらしいよ。」
ーーおおっ!!
なんかカッコイイな!!
「凄い!!やっぱり、なんだかんだ言っても国王様は特別なんですね!」
「そ、そう?」
私がちょっと興奮してそう言うと、国王様は照れながらエヘヘと笑った。
ーーこの人、全然王様っぽく無いんだよね……。
王様の威厳とかが感じられん。むしろ可愛いわ。
「さっきはあんな事を言ったけど、国王様は頑張らなくても、べつに今のままでいいんじゃないですか?」
「えっ?」
国王様が私をキョトンとした顔をして見る。
「国王様に対して私がこんな事を言うのは失礼かもしれないですけど、今のままで全然いいと思います。私は今の国王様が、親しみやすくて可愛くて好きですから。」
私がニッコリ微笑むと、国王様は目をウルウルさせて私をギュッと抱き締めた。
「グエッ!く、苦しい……」
「エリーヌは天使だ!!やっぱり天使がここにいるよ~!!」
ーーもうそれ、ホントにやめて!!
っていうか離して!!内臓が飛び出ちゃうから!!
「離さんか馬鹿者。私の娘を殺す気か。」
父様が、ジタバタともがく私から国王様をペリッと引き剥がしてくれた。
ーー助かった……。ありがとう、父様!
「まったく……。お前みたいな馬鹿な王は、私が側にいて見張ってやらないとな。……明日、エリーヌ達を見送ってから城に出勤する。」
「っ!!オズボルト~!!!」
泣き顔で今度は父様に抱き付こうとしている国王様を、父様が全力で躱している。
「あははっ!」
その光景が面白くて、私は大笑いしてしまった。
周りを見ると、母様も兄様達も、みんな笑っていた。
ーー良かった。なんとか丸く収まったかな?
ホッと胸を撫で下ろしていると、セディとアシュが私の横に歩み寄り、私の両手をギュッと握り締める。
「「ありがとう。」」
強く握られた手からは、眉尻を下げながら言う2人の想いが伝わってきて私もギュッと握り返した。
「幼馴染っていいもんだね。国王様と父様を見てるとなんだか羨ましいよ。」
「あら、私達だって幼馴染よね?」
「フフッ、そうだね。まだ幼馴染なだけだね。まだ。」
ゾクゾクッ!!
「……お兄様。せっかくいい感じだったのに。」
ーーやっぱりさっきの無し。
幼馴染って面倒臭い!!
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