33 / 122
第33話 騒ぎの後に
しおりを挟む
ロルフは、目の前の光景を、すぐには信じられなかった。
自分の身長ほどもある戦斧をひったくるように持ち去り、そのまま弾丸のように飛び出したスゥは、ドレイクの突進をその身一つで受け止め、あまつさえ弾き返し、返しの一撃を叩き込んだのだ。
ドレイクは、しばらく上半身を浮かせたまま、その場に硬直した。
そして、低い呻き声発したのち、ゆっくりとスゥの足元へと崩れ落ちた。
「や……やった、のだ……?」
スゥが恐る恐る、倒れた竜を覗き込む。
それは、もはや指の一本すら、動かさなかった。
「……すごい、すごいよ、スゥちゃんっ!」
「う、うあっ、エト……っ。」
エトに抱きつかれても、スゥはまだ現実味が無いといった表情だった。
自分が倒したという実感が、まだ持てないのだろう。
「驚いたわ……まさか、これを一撃なんて……。」
倒れたドレイクを慎重に観察し、リーシャも感嘆の溜息を漏らした。
すぐにスゥの方を向き直り、呆れた笑顔を見せる。
「何よ……心配して損したわ。全然、戦えるじゃない。」
「リーシャ……」
スゥは自分の手に握られた、戦斧に目を落とした。
それは陽の光を受けて、鈍く輝いていた。
「うぅ……スゥちゃん、良かった……良かったよぉ……」
「ちょ、ちょっと、何でエトが泣いてるのだ?!」
「だって……何か、感動しちゃって……うう……」
「へ、変なの、だ……せ、せっかく、倒したのに……うっ……ぐすっ……」
「ば、馬鹿、二人とも何泣いてんのよ……っ! ……も、う……っ。」
抱き合って泣きだしたスゥとエトの隣で、リーシャも目元を押さえている。
ロルフはそれを、少し離れた場所から見守っていた。
これから先、この三人の可能性に、胸を躍らせながら。
+++
「いいからいいから、貰ってやってくれ! 村を二度も救ってくれた冒険者さんの武器になるんだ、それ以上のことはねぇからよ!」
「はは、そういわれると……断れませんね。ありがたく、活用させて頂きます。」
結局、借りるだけのつもりだった戦斧は、持ち主の好意で貰い受ける形となった。
もちろん安いものではないので、これにはさすがに代金を払うと申し出たのだが、結果はこの通りだ。
そのことを伝えると、スゥはとても喜んで、村長に報告したり、宿に戻る間にも、ずっとそれを手放さなかった。
正直かなり重い武器なので、持ってるだけでも疲れると思うのだが……うまく扱えたことがよほど嬉しかったのだろう。
エトとリーシャも、その様子を興味深そうに見ていた。
「それにしても、よくこんな大きな武器が使えるね、スゥちゃん。」
「にゃはは、スゥはずっと荷物持ちしてたから、力だけはあるのだ。」
「い、いやいや……何を運んでたのよ、何を。」
「せっかくだから、ちょっと持ってみるのだ?」
「え……ってうわッ、重っ?! こ、こんなのどうやって振ってんのよ!!」
「あ、あわわ、リーシャちゃん、こっちに向けないでーっ?!」
先ほどの会敵の疲れはどこへやら、三人共その新しい武器に、大いに盛り上がっているようだった。
「しかし……まさか、戦斧が扱えるとは思わなかったな。」
「……へ?」
溜息交じりにそう漏らすと、三人は会話を止め、驚いた顔でこちらを見た。
「何言ってるのだ、ロルフがスゥに合うって見抜いたんじゃないのか?」
「そうですよ。ほら、短剣を見て……」
「ははは、何を言ってるんだ。一度も武器を振るのを見ずに、適性なんて分かるはずないだろう。」
三人が同時に、「ええーっ?!」と驚きの声を上げる。
「てっきり、ロルフさんなら、分かるのかと……」
「普通は無理だけど……ロルフだし……ねえ。」
「むしろ出来なかったことに驚きなのだ。」
「……お前らなあ。」
一体俺は、どういう人間だと思われているんだ。
ロルフは小さく溜息をついて、スゥの持っている、その大きな武器を指差した。
「武器の適性を見るには、まず一番小さい武器と一番大きい武器を振らせて、その動きの差で適性を見るんだ。スゥの場合は、短剣の傷み具合から軽量武器の適性がないことはわかっていたから、ここで見つけた戦斧を振らせてみて、適性を測ろうとしたわけだな。個人的には、長剣か大剣当たりが妥当だと思っていたんだが……」
それを聞いた三人は、ぽかんとして、しばらく言葉を失った。
「え……それじゃ、スゥはサンプルの一番でっかいヤツが、偶然使えたみたいな……?」
「まあ、そういうことになるな。鬼人は種族特性で筋力が優れているとは言え、戦斧が扱える奴は稀だと思うぞ。」
それを聞いて、スゥはへなへなとその場に座り込んだ。
「……き、聞いてなくて、よかったのだ……それ知ってたら、魔物の前に飛び出したりなんて……」
「あ、あはは……結果オーライだね……。」
ロルフはそれを聞いて、ふふ、と小さく笑った。
スゥはそう言っているが、きっとそれは間違いだ。
仲間のために飛び出す勇気を持っているものは、たとえどんな状況だったとしても、どれだけ不利だったとしても、飛び出して行ってしまうものなのだ。
自分の昔のパーティーたちが、そうであったように。
――エトやリーシャが、そうであるように。
「さて……こうなると、スゥにもパーティーで頑張ってもらわないといけなくなったな。」
「えっ。パーティー、なのだ?」
目を丸くするスゥに、深く頷く。
「手負いとは言え、ドレイクを一撃だ。そんな才能を遊ばせておけるほど、うちのギルドの人材に余裕はない。」
ロルフはそう言って、わざとらしく笑った。
スゥの後ろで、エトとリーシャが小さくハイタッチをした。
「やったあ、一緒に頑張ろうね、スゥちゃん!」
「ま、実際助けられちゃってるしね。むしろ、そうじゃなきゃ困るわ。」
「あ……二人とも……。」
スゥはエトとリーシャを交互に見て。
それから、少し恥ずかしそうに、顔を伏せて。
「よ、よろしくなのだ……にゃはは。」
そう言って、照れくさそうに笑った。
自分の身長ほどもある戦斧をひったくるように持ち去り、そのまま弾丸のように飛び出したスゥは、ドレイクの突進をその身一つで受け止め、あまつさえ弾き返し、返しの一撃を叩き込んだのだ。
ドレイクは、しばらく上半身を浮かせたまま、その場に硬直した。
そして、低い呻き声発したのち、ゆっくりとスゥの足元へと崩れ落ちた。
「や……やった、のだ……?」
スゥが恐る恐る、倒れた竜を覗き込む。
それは、もはや指の一本すら、動かさなかった。
「……すごい、すごいよ、スゥちゃんっ!」
「う、うあっ、エト……っ。」
エトに抱きつかれても、スゥはまだ現実味が無いといった表情だった。
自分が倒したという実感が、まだ持てないのだろう。
「驚いたわ……まさか、これを一撃なんて……。」
倒れたドレイクを慎重に観察し、リーシャも感嘆の溜息を漏らした。
すぐにスゥの方を向き直り、呆れた笑顔を見せる。
「何よ……心配して損したわ。全然、戦えるじゃない。」
「リーシャ……」
スゥは自分の手に握られた、戦斧に目を落とした。
それは陽の光を受けて、鈍く輝いていた。
「うぅ……スゥちゃん、良かった……良かったよぉ……」
「ちょ、ちょっと、何でエトが泣いてるのだ?!」
「だって……何か、感動しちゃって……うう……」
「へ、変なの、だ……せ、せっかく、倒したのに……うっ……ぐすっ……」
「ば、馬鹿、二人とも何泣いてんのよ……っ! ……も、う……っ。」
抱き合って泣きだしたスゥとエトの隣で、リーシャも目元を押さえている。
ロルフはそれを、少し離れた場所から見守っていた。
これから先、この三人の可能性に、胸を躍らせながら。
+++
「いいからいいから、貰ってやってくれ! 村を二度も救ってくれた冒険者さんの武器になるんだ、それ以上のことはねぇからよ!」
「はは、そういわれると……断れませんね。ありがたく、活用させて頂きます。」
結局、借りるだけのつもりだった戦斧は、持ち主の好意で貰い受ける形となった。
もちろん安いものではないので、これにはさすがに代金を払うと申し出たのだが、結果はこの通りだ。
そのことを伝えると、スゥはとても喜んで、村長に報告したり、宿に戻る間にも、ずっとそれを手放さなかった。
正直かなり重い武器なので、持ってるだけでも疲れると思うのだが……うまく扱えたことがよほど嬉しかったのだろう。
エトとリーシャも、その様子を興味深そうに見ていた。
「それにしても、よくこんな大きな武器が使えるね、スゥちゃん。」
「にゃはは、スゥはずっと荷物持ちしてたから、力だけはあるのだ。」
「い、いやいや……何を運んでたのよ、何を。」
「せっかくだから、ちょっと持ってみるのだ?」
「え……ってうわッ、重っ?! こ、こんなのどうやって振ってんのよ!!」
「あ、あわわ、リーシャちゃん、こっちに向けないでーっ?!」
先ほどの会敵の疲れはどこへやら、三人共その新しい武器に、大いに盛り上がっているようだった。
「しかし……まさか、戦斧が扱えるとは思わなかったな。」
「……へ?」
溜息交じりにそう漏らすと、三人は会話を止め、驚いた顔でこちらを見た。
「何言ってるのだ、ロルフがスゥに合うって見抜いたんじゃないのか?」
「そうですよ。ほら、短剣を見て……」
「ははは、何を言ってるんだ。一度も武器を振るのを見ずに、適性なんて分かるはずないだろう。」
三人が同時に、「ええーっ?!」と驚きの声を上げる。
「てっきり、ロルフさんなら、分かるのかと……」
「普通は無理だけど……ロルフだし……ねえ。」
「むしろ出来なかったことに驚きなのだ。」
「……お前らなあ。」
一体俺は、どういう人間だと思われているんだ。
ロルフは小さく溜息をついて、スゥの持っている、その大きな武器を指差した。
「武器の適性を見るには、まず一番小さい武器と一番大きい武器を振らせて、その動きの差で適性を見るんだ。スゥの場合は、短剣の傷み具合から軽量武器の適性がないことはわかっていたから、ここで見つけた戦斧を振らせてみて、適性を測ろうとしたわけだな。個人的には、長剣か大剣当たりが妥当だと思っていたんだが……」
それを聞いた三人は、ぽかんとして、しばらく言葉を失った。
「え……それじゃ、スゥはサンプルの一番でっかいヤツが、偶然使えたみたいな……?」
「まあ、そういうことになるな。鬼人は種族特性で筋力が優れているとは言え、戦斧が扱える奴は稀だと思うぞ。」
それを聞いて、スゥはへなへなとその場に座り込んだ。
「……き、聞いてなくて、よかったのだ……それ知ってたら、魔物の前に飛び出したりなんて……」
「あ、あはは……結果オーライだね……。」
ロルフはそれを聞いて、ふふ、と小さく笑った。
スゥはそう言っているが、きっとそれは間違いだ。
仲間のために飛び出す勇気を持っているものは、たとえどんな状況だったとしても、どれだけ不利だったとしても、飛び出して行ってしまうものなのだ。
自分の昔のパーティーたちが、そうであったように。
――エトやリーシャが、そうであるように。
「さて……こうなると、スゥにもパーティーで頑張ってもらわないといけなくなったな。」
「えっ。パーティー、なのだ?」
目を丸くするスゥに、深く頷く。
「手負いとは言え、ドレイクを一撃だ。そんな才能を遊ばせておけるほど、うちのギルドの人材に余裕はない。」
ロルフはそう言って、わざとらしく笑った。
スゥの後ろで、エトとリーシャが小さくハイタッチをした。
「やったあ、一緒に頑張ろうね、スゥちゃん!」
「ま、実際助けられちゃってるしね。むしろ、そうじゃなきゃ困るわ。」
「あ……二人とも……。」
スゥはエトとリーシャを交互に見て。
それから、少し恥ずかしそうに、顔を伏せて。
「よ、よろしくなのだ……にゃはは。」
そう言って、照れくさそうに笑った。
0
あなたにおすすめの小説
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる