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第44話 旧友の来訪③
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玄関先で少し話し声が聞こえた後、ロルフは一人の長髪の男性を連れて戻ってきた。
こちらも、ロルフやユーリと同じくらいの年齢だろうか。立ち居振る舞いから、とても落ち着いているような印象を受ける。
ロルフの案内でユーリの隣に座った彼は、こちらに向かって軽く頭を下げた。
「アインといいます。初めまして、トワイライトの皆さん。」
三人とも、反射的に会釈をする。
柔和な表情と、それに違わない優しそうな声だった。
「すみませんね、急にお邪魔してしまって。驚いたでしょう?」
「いや、先にアイツが来てたからな。もう誰が来ても驚かないさ。」
「ふふ……それは、確かに。」
なんだか、先ほどとは違って、かなり和やかな空気になった気がする。
この人も、きっとロルフさんと仲がいいんだ。
「おお、なんか今度は、マトモな人っぽいのだ……!」
「そうね……なんて言うか、常識人だわ……」
スゥとリーシャは、ユーリのほうをちらっと見た。
「おいロルフ、なんか間接的に攻撃を食らっている気がするぞ。」
「事実だ。諦めろ。」
口を尖らせるユーリに、ロルフは冷ややかな視線を送った。
苦笑いしながら、アインに向き直る。
「えっと……アインさんも、役所仕事をしている方なんですか?」
「はい……? 役所仕事?」
アインは一度軽く首を傾げたあと、ロルフとユーリの方を見た。
「あー……、コイツは今、冒険者を辞めて『役所仕事』をしているそうだ。」
「その通り。アインはさしずめ、『遺跡の専門家』ってとこだな。」
二人の言葉を聞いて、アインは全て理解したというように、浅く溜息をついた。
「よく言いますね、貴方は……。まあ、そういうことなら、わかりました。」
「?」
リーシャとスゥと、顔を見合わせる。
なんだか、含みのある言い方だけど……。
アインは再びこちらに向き直り、自分の胸に片手を当てた。
「私は、遺跡や古代遺物などの研究をしていましてね。貴方たちの経験したという出来事を、詳しく教えてほしいのです。」
「遺跡の、研究……ですか。」
「なるほど。それで直接、話を聞きに来たのね。」
「ってことは、学者さんなのだ?」
「ふふ、そうですね。そのようなものです。」
どうりで、知的な感じがすると思った。
リーシャもスゥも、納得したように頷く。
「さっきは秘匿するといったが、アインには話しても大丈夫だ。そもそも手紙を送った相手も、アインにだしな。」
ロルフのその言葉を頷いて肯定しつつ、ユーリも口を開く。
「すぐには公開できないが、ここで分かったことは、できる限りこのギルドの功績にしたいと思っている。なるべく詳しく聞かせてくれ。」
そういうことなら、説明しない理由はない。
エトはリーシャと一緒に、黙って頷いた。
それに、正直、話を聞いてもらえるのなら聞いてもらいたい。
あの時何が起こったのか――それは自分たちですら、よくわかっていないのだから。
+++
「……白いな。」
「これは……白いですね。」
「キュイ?」
ひとしきり遺跡の話をした、その後。
ユーリとアインは、エトの胸に抱かれたシロをみて、共に首を捻っていた。
「あはは……ですよね。」
思わず、苦笑いする。
自分だって、『これが封印されていた黒竜です!』と見せるのは、とても気が引けるのだ。
だって、白いんだもの。
「シロについては、何か分かりそうか?」
「うーん……すみません、これは専門外なので、私にもよくわかりませんね……」
ロルフの問いかけに対して、アインは申し訳なさそうに頭を振った。
「まあ……そうだよな。」
ふう、と息をついて、ロルフはユーリの方へ向き直った。
「すまん、ユーリ。結果はともかく、封印が解けたのは、俺の不注意だ。」
「おいおい、それは言いっこなしだろ。妙な封印付きの家を譲ったのは俺なんだし、むしろ謝りたいくらいだ。」
「えっ、家を譲った……?」
「キュイ?」
封印については、自分にも非がある――と言葉を挟もうとしたのだが、あまりに気になるフレーズだったので、先にそっちが声に出てしまった。
ということは、この人が、ユーリさんが――。
「ああ、言ってなかったな。この家の元々の持ち主は、ユーリなんだ。」
「ははは、まさかギルドハウスになるとは思わなかったけどな。」
えー! と、思わず三人で声を上げる。
「えっと、なんて言うか……。」
「そ、その、お世話になっています……?」
「スゥは、今日からご厄介になるのだ!」
「キューイ!」
三人の反応を見て、ユーリは満足そうに笑った。
「うん。この家も、賑やかになって何よりだ。お前に譲って正解だったよ、ロルフ。」
「そりゃよかった。なかなか気に入ってるんだ、返さないからな?」
そうやって笑い合う二人を見ていると、こっちも暖かな気持ちになる。
ユーリさんも、この家を大切にしていたんだな。
エトは改めて、部屋の中をくるりと見回した。
自分も知らない、色々な想いを引き継いで、この場所がある。
そう思うと、なんだかとても感慨深い。
「……なんか、いいなあ。ふふっ。」
「キュ?」
エトはシロを抱きしめて、小さな声で呟いた。
この家で、この人たちで……このギルドで、よかったな。
何故かふと――そんなふうに、思ったのでした。なんて。
「そういえば、後でスゥの部屋も決めないとね。」
「え、一人一部屋貰えるのか?! すごいのだ!!」
「ははは、そうだろう、この家、無駄に部屋の数多いからな。」
「本当にな。一人暮らしにはキツイものがあったぞ。」
「ロルフは掃除が苦手ですしね。」
「キュイキュイ。」
その後も、話はしばらく脱線し、家の話で盛り上がったのだった。
こちらも、ロルフやユーリと同じくらいの年齢だろうか。立ち居振る舞いから、とても落ち着いているような印象を受ける。
ロルフの案内でユーリの隣に座った彼は、こちらに向かって軽く頭を下げた。
「アインといいます。初めまして、トワイライトの皆さん。」
三人とも、反射的に会釈をする。
柔和な表情と、それに違わない優しそうな声だった。
「すみませんね、急にお邪魔してしまって。驚いたでしょう?」
「いや、先にアイツが来てたからな。もう誰が来ても驚かないさ。」
「ふふ……それは、確かに。」
なんだか、先ほどとは違って、かなり和やかな空気になった気がする。
この人も、きっとロルフさんと仲がいいんだ。
「おお、なんか今度は、マトモな人っぽいのだ……!」
「そうね……なんて言うか、常識人だわ……」
スゥとリーシャは、ユーリのほうをちらっと見た。
「おいロルフ、なんか間接的に攻撃を食らっている気がするぞ。」
「事実だ。諦めろ。」
口を尖らせるユーリに、ロルフは冷ややかな視線を送った。
苦笑いしながら、アインに向き直る。
「えっと……アインさんも、役所仕事をしている方なんですか?」
「はい……? 役所仕事?」
アインは一度軽く首を傾げたあと、ロルフとユーリの方を見た。
「あー……、コイツは今、冒険者を辞めて『役所仕事』をしているそうだ。」
「その通り。アインはさしずめ、『遺跡の専門家』ってとこだな。」
二人の言葉を聞いて、アインは全て理解したというように、浅く溜息をついた。
「よく言いますね、貴方は……。まあ、そういうことなら、わかりました。」
「?」
リーシャとスゥと、顔を見合わせる。
なんだか、含みのある言い方だけど……。
アインは再びこちらに向き直り、自分の胸に片手を当てた。
「私は、遺跡や古代遺物などの研究をしていましてね。貴方たちの経験したという出来事を、詳しく教えてほしいのです。」
「遺跡の、研究……ですか。」
「なるほど。それで直接、話を聞きに来たのね。」
「ってことは、学者さんなのだ?」
「ふふ、そうですね。そのようなものです。」
どうりで、知的な感じがすると思った。
リーシャもスゥも、納得したように頷く。
「さっきは秘匿するといったが、アインには話しても大丈夫だ。そもそも手紙を送った相手も、アインにだしな。」
ロルフのその言葉を頷いて肯定しつつ、ユーリも口を開く。
「すぐには公開できないが、ここで分かったことは、できる限りこのギルドの功績にしたいと思っている。なるべく詳しく聞かせてくれ。」
そういうことなら、説明しない理由はない。
エトはリーシャと一緒に、黙って頷いた。
それに、正直、話を聞いてもらえるのなら聞いてもらいたい。
あの時何が起こったのか――それは自分たちですら、よくわかっていないのだから。
+++
「……白いな。」
「これは……白いですね。」
「キュイ?」
ひとしきり遺跡の話をした、その後。
ユーリとアインは、エトの胸に抱かれたシロをみて、共に首を捻っていた。
「あはは……ですよね。」
思わず、苦笑いする。
自分だって、『これが封印されていた黒竜です!』と見せるのは、とても気が引けるのだ。
だって、白いんだもの。
「シロについては、何か分かりそうか?」
「うーん……すみません、これは専門外なので、私にもよくわかりませんね……」
ロルフの問いかけに対して、アインは申し訳なさそうに頭を振った。
「まあ……そうだよな。」
ふう、と息をついて、ロルフはユーリの方へ向き直った。
「すまん、ユーリ。結果はともかく、封印が解けたのは、俺の不注意だ。」
「おいおい、それは言いっこなしだろ。妙な封印付きの家を譲ったのは俺なんだし、むしろ謝りたいくらいだ。」
「えっ、家を譲った……?」
「キュイ?」
封印については、自分にも非がある――と言葉を挟もうとしたのだが、あまりに気になるフレーズだったので、先にそっちが声に出てしまった。
ということは、この人が、ユーリさんが――。
「ああ、言ってなかったな。この家の元々の持ち主は、ユーリなんだ。」
「ははは、まさかギルドハウスになるとは思わなかったけどな。」
えー! と、思わず三人で声を上げる。
「えっと、なんて言うか……。」
「そ、その、お世話になっています……?」
「スゥは、今日からご厄介になるのだ!」
「キューイ!」
三人の反応を見て、ユーリは満足そうに笑った。
「うん。この家も、賑やかになって何よりだ。お前に譲って正解だったよ、ロルフ。」
「そりゃよかった。なかなか気に入ってるんだ、返さないからな?」
そうやって笑い合う二人を見ていると、こっちも暖かな気持ちになる。
ユーリさんも、この家を大切にしていたんだな。
エトは改めて、部屋の中をくるりと見回した。
自分も知らない、色々な想いを引き継いで、この場所がある。
そう思うと、なんだかとても感慨深い。
「……なんか、いいなあ。ふふっ。」
「キュ?」
エトはシロを抱きしめて、小さな声で呟いた。
この家で、この人たちで……このギルドで、よかったな。
何故かふと――そんなふうに、思ったのでした。なんて。
「そういえば、後でスゥの部屋も決めないとね。」
「え、一人一部屋貰えるのか?! すごいのだ!!」
「ははは、そうだろう、この家、無駄に部屋の数多いからな。」
「本当にな。一人暮らしにはキツイものがあったぞ。」
「ロルフは掃除が苦手ですしね。」
「キュイキュイ。」
その後も、話はしばらく脱線し、家の話で盛り上がったのだった。
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