トワイライト・ギルドクエスト

野良トマト

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第45話 旧友の来訪④

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「見送りご苦労! 意外と長いことお邪魔しちゃったな。」
「非常に有意義な情報が得られました。何かわかったら、手紙などで連絡しますね。」

 日は既に沈み始めていて、オレンジの光が辺りに満ちている。

 ロルフは玄関の外へ出て、ユーリとアインを見送っていた。
 エト達には家の中で待ってもらっているので、この場には三人だけだ。

 こちらの話はすべて伝えたが、やはりそれだけで判断できることは無く、新しい情報は得られなかった。これから今回の情報を整理して、今までの記録と照らし合わせたり、実地調査などを行って検証していくそうだ。

 遺跡の件は、これで一旦は終わり。
 だがロルフには、もう一つ、話しておきたいことがあった。


「その……すまなかった。ルーンブレードを、最後まで見ることが出来なくて。」

 二人に向かって、頭を下げる。

 それを見て、ユーリとアインは顔を見合わせ、溜息をついた。

「まったく、相変わらず真面目なヤツだな。そもそも俺たちこそ、お前に全部押し付けて出ていったんだ。とやかく言える立場じゃないさ。」
「ええ、それに……事情も、大体は聞いています。どちらかと言えば、謝りたいくらいですよ。」

 頭を上げると、二人は苦笑いをしていた。

「お前ら……」

 それからロルフが何かいう前に、ユーリは「あーあ」と、わざとらしく肩を落とした。

「それにしても、残念だ。お前がまだしょぼくれてるようだったら、今度こそコッチに引き抜こうと思ったんだけどな。」
「おや。もしかしてユーリ、ここに来たのはそれが理由だったんですか?」

 アインが、訝しげな視線を送る。

「ははは、あわよくば、な。遺跡のついでだ。もっとも――」

 ユーリはそう言いながら、視線をギルドハウスへ――その中へと送った。

「どうやら、もう居場所は決まってしまったらしい。」

 おどけた調子でそう言うと、ユーリはくるりと向き直り、歩き始めた。

「私たちも、貴方のギルドの今後を、楽しみにしていますよ。」
「……ああ。」

 アインは小さく微笑むと、ユーリの後に続いた。
 ユーリが片手を上げ、軽く振る。

 夕日に染まるその後ろ姿には、どこか郷愁を感じるものがあった。


「……居場所、か。」

 二人の姿が見えなくなってから、ロルフは一度、夕日に染まる空を見上げた。
 そして小さく微笑んで、振り返り、ギルドハウスの扉を開けた。


+++


 次の日、ロルフ一行は、ギルド協会へと足を運んでいた。
 理由はもちろん、クエストの報告のためだが、エリカとの約束のためでもある。

 到着した一行は、エリカの案内で、奥の部屋に通された。

「遺跡でのBランククエスト二件は、予定通りとして……更に村を襲ったドレイクの討伐と、ダイオウガニ六匹の撃退……」

 書類を読み上げた後、エリカは小さく息を吐いて、こちらを見た。

「まったく、期待を裏切りませんね、ロルフさんは。」

 エリカは、それでもどこか予想通り、といった顔で微笑んだ。

「おいおい、後半二つはギルドの評価にはならないだろう?」
「そんなことはありませんよ。ギルド協会側で裏が取れているなら、当然評価対象になります。基本がクエストなだけで、この辺りは結構柔軟に見ているんですよ。」

 なるほど、確かに、ギルドの『強さ』をクエストの達成率だけで見るのは、現実的ではないかもしれない。

 それにしても、一昨日のカニの件まで耳に入っているとは。
 ギルド協会の情報網は侮れない。悪いことは出来ないぞ。


「ってことは……スゥの活躍も、ギルドの評価になるのだ?!」

 このエリカの話に、スゥは目を輝かせた。

「そういうことみたいね。ドレイクとダイオウガニは、スゥが居ないと無理だったもの。」
「うんうん、スゥちゃんも、しっかりギルドの一員だね。」
「うう、なんか、めちゃくちゃ嬉しいのだー!」

 スゥは、エトとリーシャに抱きついた。
 そんな三人を見て、エリカはくすりと笑った。

「嬉しい収穫も、あったみたいですね。」
「ああ、本当に、大収穫だ。」

 それを聞いて、エリカは満足そうに笑うと、立ち上がり、後ろの棚から何かの書類を取り出した。

 そして再び席につくと、こほんと咳払いをして、視線を集めた。

「さて、この実績を元に……ギルド協会は、一つの決定を下しました。」

 そう仰々しく言いつつ、エリカは先ほどの紙を差し出した。

 そこには、『ギルド営業許可証』と書かれている。

 しかし、今、トワイライトのギルドハウスにあるものとは、少し違う。
 中央上部に大きく書かれているのは、『B』の文字だった。

「……! ロルフさん、これって……!」

 エトが、他の二人も、目を見開いて、こちらに顔を向ける。
 ロルフはそれに、大きく頷いて返した。

「ギルド『トワイライト』を、Bランクギルドに認定します。」

 エリカはそこまで言いきって、一拍を置いて、また柔らかな表情になった。

「おめでとうございます、皆さん。ランク、昇格ですよ。」

 わあっ、と、歓声が上がる。

 スゥはやっぱりエトとリーシャに抱きつき、エトは感極まって涙目になり、リーシャは何を言っていいやら、あわあわとしている。

 その様子を見て、エリカとロルフは目を合わせ、ふふ、と笑った。


 このギルドは、強くなった。
 そして――まだまだ、強くなれる。

 ロルフは、無邪気に喜び合う三人を、暖かく見つめた。
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