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第99話 偶然の再会
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第99話 偶然の再会
「ちょっとぉ、それで二人相手に、ノコノコ逃げてきたって言うの?」
「だ、だって王国軍ですぜ? 俺たち盗み専門なんで、流石に荷が重いって言うか……どうにかしてくださいよ、ミゲルさん。」
盗賊団らしき複数の男に詰められ、白衣の男は大袈裟に溜息をついた。
「情けないわねぇ……。ま、モノはもう十分集まったし、いいわ。手を貸してあげようじゃないの。」
「おお!!」
やった、と喜びを顔に表す盗賊団達。
しかし次の瞬間には、彼らのその表情は凍り付いていた。
「な……にを……」
「だから、『手助け』よ。アナタ達が戦うための、ねぇ?」
白衣の男はそういいながら、中身を失った注射器を盗賊の首元から引き抜いた。
「ぐ……ォオ……アァアア……!」
「お、お頭?!」
間もなくその体からは、黒い煙のようなものが吹き出し始めた。
その様子を見て、男はうっとりした顔で微笑んだ。
「うふふ。いい実験になりそうじゃなぁい……?」
+++
「スゥが見つからないだって?」
ロルフたちは情報共有のため、再び宿の前に集まっていた。
しかしそのメンバーの中に、スゥの姿はない。
「そうなんです、村中どこを探しても見当たらなくて……」
「大きな村ではないので、恐らく外に出たのではと思うのです。」
「まったく、武器探しで自分が行方不明になるなんて、冗談じゃないわよ!」
他の三人は各々心配を顔に浮かべている。
既に日はほとんど落ち、辺りは暗くなり始めている。このまま村の外にいるとなると、盗賊に出くわさなくても危険な状態だ。
普段ならそんな無謀なことをするとも思えないが、今日のスゥはずいぶんと思いつめた様子だった。
村の外まで探しに行くことだって、十分にあり得る。
ロルフは自分の想定の甘さに歯嚙みしつつ、三人に向き直った。
「とにかく、もう一度村の人たちに聞きまわってみよう。今度は全員で固まって――」
そう言いかけて、ロルフははたと言葉を切った。
妙な地響きのような音が、すごい勢いでこちらへ向かってくるのを感じたからだ。
「……! この音、ドレイクの足音です!」
「うそ、何でこんな時に……!」
耳の鋭いエトが咄嗟に情報共有を行う。
その指さす先に、微かな明かりとともに、走り来るドレイクの姿が見えた。
武器を取りに宿に走ろうとする三人を、ロルフは手を振って制した。
「いや、待て。あれは――敵じゃない。」
「え?」
その姿はほどなく近づき、ドレイクの首にかけられたランタンや、背にまたがった人物の輪郭が定かになった。
その人物はロルフの前で馬――いや竜を止めると、慣れた身のこなしで背から飛び降りた。
「まさかお前が来るとはな……驚いたぞ、アイン。」
「それはこっちのセリフですよ、ロルフ。どうしてここに?」
その姿には、エトとリーシャにも見覚えがあった。
「え、ええ? アインさん??」
「びっくりした……っていうか、え、ドレイクって、乗れるの……?」
二人が目を丸くする前で、ドレイクはぶるる、と鼻を鳴らした。
「俺たちは偶然、クエストのために遠征しててな。村長から盗賊の話は聞いたが……お前が出るほどの事なのか?」
「ああ……盗賊の話を聞いていたのですね。いえ、本来は別のものに任せていたのですが……少し気になる情報が入ってきまして。別件で近場にいたので、様子を見に来たんです。」
「なるほど……」
アインの『情報』についても気になったが、ロルフはすぐに頭を切り替えた。
「すまない、アイン。実はスゥが森に迷い込んだかもしれないんだ。力を貸してもらえないか?」
「……! それは危険だ。わかりました、私の魔法を使いましょう。」
「助かる……!」
アインが小さく詠唱し、指を鳴らすと、青く光る小さな蝶が無数に現れた。
それは掲げた手にあわせて空に舞い上がると、森の方へと散っていった。
「……! 探知魔法ね。一度にあんなに沢山……」
「凄いの? リーシャちゃん。」
「私だと、一匹が限界ね……範囲だって……」
エトとリーシャがそれを見上げていると、マイアが二人の袖を引いた。
「あの……エト、リーシャ。あの方とマスターは、お知り合いなんですか?」
「あ、ごめんごめん、マイアちゃんは知らなかったよね。アインさんはロルフさんのお友達で、前にギルドハウスに来たことがあって――」
「あ……いえ……知ってはいるのです。私が言っているのは……」
続くマイアの言葉に、二人はしばらく硬直した。
「ちょっとぉ、それで二人相手に、ノコノコ逃げてきたって言うの?」
「だ、だって王国軍ですぜ? 俺たち盗み専門なんで、流石に荷が重いって言うか……どうにかしてくださいよ、ミゲルさん。」
盗賊団らしき複数の男に詰められ、白衣の男は大袈裟に溜息をついた。
「情けないわねぇ……。ま、モノはもう十分集まったし、いいわ。手を貸してあげようじゃないの。」
「おお!!」
やった、と喜びを顔に表す盗賊団達。
しかし次の瞬間には、彼らのその表情は凍り付いていた。
「な……にを……」
「だから、『手助け』よ。アナタ達が戦うための、ねぇ?」
白衣の男はそういいながら、中身を失った注射器を盗賊の首元から引き抜いた。
「ぐ……ォオ……アァアア……!」
「お、お頭?!」
間もなくその体からは、黒い煙のようなものが吹き出し始めた。
その様子を見て、男はうっとりした顔で微笑んだ。
「うふふ。いい実験になりそうじゃなぁい……?」
+++
「スゥが見つからないだって?」
ロルフたちは情報共有のため、再び宿の前に集まっていた。
しかしそのメンバーの中に、スゥの姿はない。
「そうなんです、村中どこを探しても見当たらなくて……」
「大きな村ではないので、恐らく外に出たのではと思うのです。」
「まったく、武器探しで自分が行方不明になるなんて、冗談じゃないわよ!」
他の三人は各々心配を顔に浮かべている。
既に日はほとんど落ち、辺りは暗くなり始めている。このまま村の外にいるとなると、盗賊に出くわさなくても危険な状態だ。
普段ならそんな無謀なことをするとも思えないが、今日のスゥはずいぶんと思いつめた様子だった。
村の外まで探しに行くことだって、十分にあり得る。
ロルフは自分の想定の甘さに歯嚙みしつつ、三人に向き直った。
「とにかく、もう一度村の人たちに聞きまわってみよう。今度は全員で固まって――」
そう言いかけて、ロルフははたと言葉を切った。
妙な地響きのような音が、すごい勢いでこちらへ向かってくるのを感じたからだ。
「……! この音、ドレイクの足音です!」
「うそ、何でこんな時に……!」
耳の鋭いエトが咄嗟に情報共有を行う。
その指さす先に、微かな明かりとともに、走り来るドレイクの姿が見えた。
武器を取りに宿に走ろうとする三人を、ロルフは手を振って制した。
「いや、待て。あれは――敵じゃない。」
「え?」
その姿はほどなく近づき、ドレイクの首にかけられたランタンや、背にまたがった人物の輪郭が定かになった。
その人物はロルフの前で馬――いや竜を止めると、慣れた身のこなしで背から飛び降りた。
「まさかお前が来るとはな……驚いたぞ、アイン。」
「それはこっちのセリフですよ、ロルフ。どうしてここに?」
その姿には、エトとリーシャにも見覚えがあった。
「え、ええ? アインさん??」
「びっくりした……っていうか、え、ドレイクって、乗れるの……?」
二人が目を丸くする前で、ドレイクはぶるる、と鼻を鳴らした。
「俺たちは偶然、クエストのために遠征しててな。村長から盗賊の話は聞いたが……お前が出るほどの事なのか?」
「ああ……盗賊の話を聞いていたのですね。いえ、本来は別のものに任せていたのですが……少し気になる情報が入ってきまして。別件で近場にいたので、様子を見に来たんです。」
「なるほど……」
アインの『情報』についても気になったが、ロルフはすぐに頭を切り替えた。
「すまない、アイン。実はスゥが森に迷い込んだかもしれないんだ。力を貸してもらえないか?」
「……! それは危険だ。わかりました、私の魔法を使いましょう。」
「助かる……!」
アインが小さく詠唱し、指を鳴らすと、青く光る小さな蝶が無数に現れた。
それは掲げた手にあわせて空に舞い上がると、森の方へと散っていった。
「……! 探知魔法ね。一度にあんなに沢山……」
「凄いの? リーシャちゃん。」
「私だと、一匹が限界ね……範囲だって……」
エトとリーシャがそれを見上げていると、マイアが二人の袖を引いた。
「あの……エト、リーシャ。あの方とマスターは、お知り合いなんですか?」
「あ、ごめんごめん、マイアちゃんは知らなかったよね。アインさんはロルフさんのお友達で、前にギルドハウスに来たことがあって――」
「あ……いえ……知ってはいるのです。私が言っているのは……」
続くマイアの言葉に、二人はしばらく硬直した。
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