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Prolog
Diary.00 起章
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僕は、どこか悲しげな道を歩いている。
コンクリートで舗装された道、その両脇には色とりどりの花畑が広がっている。赤、黄、青、黄、紫。花たちは僕を見るように、じっとしながらも花びらを向けてくる。気味が悪くて、なんだか気まずい。
──僕は、美しい道を歩いている。
丁寧に舗装されたコンクリートの上を、僕はしっかりと足を踏みしめて歩く。もしこれがコンクリートではなく、土や砂だったら足跡が綺麗についただろう。道の両脇にはこれまた美しい花畑が広がっている。決して色とりどりとは言えない。真っ黒い花びらを付けた花が、あちこちに向いていて、規則性はない。ただ一つ、規則があるとするならば、その数千、いや数万にも及ぶ花たちは、
一輪たりとも僕を見ない。
歩き始めてから何時間経ったのか分からない。ずっと歩き続けているが同じ景色が続くだけ。時計はないし、足が勝手に動くので脇の花畑に逸れることができない。だけど不思議なことに何も起こらないのだ。なんらかのアクションがあった方がまだマシだとさえ思う。タチの悪い夢だ。こんな嫌な夢、二度と見ないように覚めても覚えていたい。
──一体、この先に道はあるのか分からない。どれほど長いのかも、どれほど短いのかも皆目見当が付かない。なぜなら、僕が歩いている道は山道だから。昇り続けて「はい、おしまい」ということはさすがにないはずだ。昇った分だけまたさらに道があるとすれば、それは途方もない距離になる。不思議と汗はでてこないし、お腹も空かない。日や月が昇ったり沈んだりを繰り返してはいるが、気温も変わらないし、誰もでてこない。
この山道は、どこまで続くのだろう。果てしなく、気が遠くなるほどの道のりになるかもしれない。だけど、夢なら覚めてくれよ。こんなに意識があるんだ。早く僕を現実へ帰してくれ。
──もうじき限界がやってくるだろう。体力は全く減らない。だから、精神的に限界を迎えるのだ。こんな不思議で、何もなくて、気味が悪くて、苛立つような世界なんてもう嫌だ。
「あ」
僕は、一人の少女と出会った。
地毛なのだろうか、髪は流れるように美しい金色で、その容姿はまるで英国の少女を彷彿とさせる。見た目は僕と同い年くらいに見える。同級生にこんな子がいたなら、一躍クラスのマドンナだろう。目が覚めるほどの美人だ。なら、早く覚めろよ。
「君は?」
「僕?」
僕が質問した。彼女は自分を「僕」と称した。そういう人もいるのだから、特に詮索しようとは思わない。
「僕は……誰なんだろうね」
少女がふっと笑う。またその柔くて困ったような顔が愛らしい。
「誰なんだろう、って。分からないの?」
「君は分かるの? 自分が誰かって」
「うん、僕は……え?」
自分を紹介するための文を頭で軽く組み立てていたのに、それが崩れ去ったように忘れてしまった。そう、自分が誰なのかを忘れてしまったのだ。
「ね、分かんないでしょ。だからさ、これはきっと夢なんだよ。ヘンテコな夢。そう思わないとやってらんないよ」
「あぁ……うん。それはなんとなく察してるんだが、君はどうやってここへ? ちなみに僕はよく分からない」
「僕も分からないんだよね。気がついたら道を歩いていた。そうだ、一つだけ。君は昇って来た? 降りてきた?」
「昇って来たけど。君はどうやって?」
「僕も昇ってきたよ。共通点が分かってよかっ――」
ふっと意識が消えたようにして、少女は後ろへ倒れた。僕が駆け寄って初めて知った。彼女の周りにあった花畑は真っ黒だった。そして、彼女はすうっと消えて行くように黒い花たちに溶けた。
コンクリートで舗装された道、その両脇には色とりどりの花畑が広がっている。赤、黄、青、黄、紫。花たちは僕を見るように、じっとしながらも花びらを向けてくる。気味が悪くて、なんだか気まずい。
──僕は、美しい道を歩いている。
丁寧に舗装されたコンクリートの上を、僕はしっかりと足を踏みしめて歩く。もしこれがコンクリートではなく、土や砂だったら足跡が綺麗についただろう。道の両脇にはこれまた美しい花畑が広がっている。決して色とりどりとは言えない。真っ黒い花びらを付けた花が、あちこちに向いていて、規則性はない。ただ一つ、規則があるとするならば、その数千、いや数万にも及ぶ花たちは、
一輪たりとも僕を見ない。
歩き始めてから何時間経ったのか分からない。ずっと歩き続けているが同じ景色が続くだけ。時計はないし、足が勝手に動くので脇の花畑に逸れることができない。だけど不思議なことに何も起こらないのだ。なんらかのアクションがあった方がまだマシだとさえ思う。タチの悪い夢だ。こんな嫌な夢、二度と見ないように覚めても覚えていたい。
──一体、この先に道はあるのか分からない。どれほど長いのかも、どれほど短いのかも皆目見当が付かない。なぜなら、僕が歩いている道は山道だから。昇り続けて「はい、おしまい」ということはさすがにないはずだ。昇った分だけまたさらに道があるとすれば、それは途方もない距離になる。不思議と汗はでてこないし、お腹も空かない。日や月が昇ったり沈んだりを繰り返してはいるが、気温も変わらないし、誰もでてこない。
この山道は、どこまで続くのだろう。果てしなく、気が遠くなるほどの道のりになるかもしれない。だけど、夢なら覚めてくれよ。こんなに意識があるんだ。早く僕を現実へ帰してくれ。
──もうじき限界がやってくるだろう。体力は全く減らない。だから、精神的に限界を迎えるのだ。こんな不思議で、何もなくて、気味が悪くて、苛立つような世界なんてもう嫌だ。
「あ」
僕は、一人の少女と出会った。
地毛なのだろうか、髪は流れるように美しい金色で、その容姿はまるで英国の少女を彷彿とさせる。見た目は僕と同い年くらいに見える。同級生にこんな子がいたなら、一躍クラスのマドンナだろう。目が覚めるほどの美人だ。なら、早く覚めろよ。
「君は?」
「僕?」
僕が質問した。彼女は自分を「僕」と称した。そういう人もいるのだから、特に詮索しようとは思わない。
「僕は……誰なんだろうね」
少女がふっと笑う。またその柔くて困ったような顔が愛らしい。
「誰なんだろう、って。分からないの?」
「君は分かるの? 自分が誰かって」
「うん、僕は……え?」
自分を紹介するための文を頭で軽く組み立てていたのに、それが崩れ去ったように忘れてしまった。そう、自分が誰なのかを忘れてしまったのだ。
「ね、分かんないでしょ。だからさ、これはきっと夢なんだよ。ヘンテコな夢。そう思わないとやってらんないよ」
「あぁ……うん。それはなんとなく察してるんだが、君はどうやってここへ? ちなみに僕はよく分からない」
「僕も分からないんだよね。気がついたら道を歩いていた。そうだ、一つだけ。君は昇って来た? 降りてきた?」
「昇って来たけど。君はどうやって?」
「僕も昇ってきたよ。共通点が分かってよかっ――」
ふっと意識が消えたようにして、少女は後ろへ倒れた。僕が駆け寄って初めて知った。彼女の周りにあった花畑は真っ黒だった。そして、彼女はすうっと消えて行くように黒い花たちに溶けた。
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