天気になった少女と、僕の話を端々。

おろしちみ

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Season.01 戒晴

Diary.01 当惑──Perplexity,

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 目が覚めると、自分は天気になった。

 昔よく一緒に遊んだ公園で、僕はそんなことを言われた。その彼女のカミングアウトには驚きもしたし、ふと考えてみれば驚きはしなかった。俄然興味も湧いた。嬉しいとは思わなかったが、僕の中に突如として表れた感情はどれもが負のものであったわけではなかった。
 僕が僕の中の色んな感情を吟味して、それを元にして言葉を紡いだ結果がこれだ。
「はい?」
 なんとも形容し難い間抜けな顔をしていたに違いない。彼女は訝しげな目を僕に向けて、再び説明しだした。
「嘘だと思ってるでしょ? それかあれか。雨の日は頭痛がするとかそのレベルだと──」
 どうやら自分が嘘を吐いていると疑われた、と認識してしまったみたいで申し訳なくなった。
「嘘だとは思ってないし、ちゃんと信じてはいるんだけど。状況が掴みにくくてな。だって仕方ないだろ。……それは分かるよな」
 僕の弁明に、彼女は真夏の向日葵のような飛びっきりの笑顔を咲かせた。彼女がなりふり構わずよくやる笑顔だ。もちろん彼女の笑顔が誰にでも向ける八方美人的な笑顔だとはこれっぽっちも思ってはいない。彼女の見せる笑顔に何度も救われてきたし、彼女の笑顔が大好きだ。
「それは分かってるよ。私の言ったことに困惑してるんでしょ? 順を追って説明してあげる」
 そう言って、僕が座っていたブランコの前にある鉄棒に、ひょいと座った。位置的マウントを取られても困るんだけど、今は自分の話をするから上から見下したいのだろう。そこは僕と彼女の仲だ、充分に彼女の性格を理解している。
「で、晴子はるこが天気になったというと?」
 するとその言葉を待っていた! と言わんばかりに晴子はニカッと笑った。向日葵の笑顔を乱用するのは彼女の癖であるが、こんなものいくつもらっても困らない。俗に言う「助かる」というやつだろうか。可愛いものやカッコいいものを見た時によく使われる「助かる」。何がどう助かるのか、どうやって助かるのかという議論は今はよしておこう。
「ずばり! ……私が天気になっちゃったってことだよっ!」
 左手の人差し指で僕を指し、右手で掛けてもいない眼鏡をくいっとあげる仕草をした。
「さっきと同じこと言ってるよ」
 僕が指摘すると、晴子は今度は右手を顎に当ててうーんと唸りだした。
「私が天気になっちゃって、それは結構由々しき事態で、あおいに相談しないとなって思って……んん? 私は相談しようと思って碧を呼び出して、詳しく説明するために自分が天気になっちゃったことを……んん?」
 完全に変な道に逸れてしまったみたいだ。こうなると晴子はもうダメだ。連れ戻す方法はただ一つ。僕が案内標識にならないといけない。けど、この道は僕にも分からない道だ。未知だ。晴子が何を伝えたくて、「天気になった」とはどういうことなのかも分からない。
 とりあえず、僕は今日はもう帰ろうと伝えた。家はこの公園を境に反対方向。いくら幼馴染みとは言っても家族ぐるみで仲が良いとかそういうわけではないし、晴子のお母さんにわざわざ「どういうことなんですか?」なんて聞きに行くのも、小心者の僕には到底できない。
 ……しかし、まあ。僕にもそれなりに気になることなのだ。
 僕と晴子の関係を表す言葉は無数に存在するが、一番しっくりくるのはやはり幼馴染み。幼馴染みであり、しっかり仲も良い。僕が気弱なのがいけないが、そこを晴子の天真爛漫さで補ってくれている。逆に、晴子の天真爛漫さを僕の気弱さが補っている場合もある。
 そんなふうに切磋琢磨し続けてはや十余年。幼稚園で知り合ってから、何の運の巡り合わせか僕と晴子は高校生である現在まで学校が同じだった。クラスはたまに違ったりもしていたが、高校一年生の今年はどうかは分からないが、華やかな高校生活は、晴子によって一層鮮やかになることだろう。
 中学生でいられる最後の日、つまり卒業式でことは起こった。今でこそ回想に入ろうと思えるが、つい最近まではあの日を思い出すことすら恐怖で出来なかった。恐怖と怒り、後悔と焦り。紛れもなく、あの日を思い出すことは負の感情しか生まれない、意味のない行為だった。
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