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Season.01 戒晴
Diary.02 空白の間──yesterday blank,
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桃色の花弁で覆われた、正門から校舎に伸びる桜並木がこんなにも美しいと思える日が来るとは思っていなかった。この桜並木を煩わしく思っていたのはきっと僕だけじゃないはずだ。毎春、この桜並木から舞い散る花弁を掃除するのは生徒の僕たちの役目だった。何の為にあるんだーなどと愚痴を零していたのも今となっては良い思い出だ。
卒業証書を校長先生から一人ずつ渡されて、いよいよ卒業式も閉式を迎える所だった。式の最後には生徒代表として生徒会長が答辞をすることになっている。こういう式典の時限定で設置される臨時の木製の階段を一歩、また一歩と踏みしめながら壇上へ歩みを進める。まるでこれからの新しい生活への歩みみたいで、僕は単純にカッコいいと思っていた。
会長が答辞を読み始めたその時だった。明らかに異質な衝突音が体育館中に反響した。僕にはその数秒間の出来事が、途方も長い時間映し出されるスローモーションアニメのように見えた。いや、感じた。
染雲晴子が、倒れた。
椅子から転げ落ちたわけではない。壇上で倒れたのだ。
彼女は、まるで誰かに後頭部から伸びた長い長い糸で引っ張られるかのように、後方へ倒れた。そして、そこにはもちろん先ほど踏みしめた階段があるわけで、晴子の体は空虚な重さを確かに持って転がった。最初に晴子に駆けつけたのは僕なんかではなく、校長先生だった。それから救急車が来て、晴子は近くの病院へ搬送されていった。
僕はといえば、何もしなかった。小心者の僕は怖くてたまらなかった。晴子が春休みの間入院することは母から聞いていた。しかし、その病院は聞かなかった。行く気が全くなかったわけではない、僕が行く気になっても僕がやめろと言った。打ちどころが悪くて取り返しのつかないことになっているかもしれない。弱りきった姿を見られたくないかもしれない。僕なんか来ないでいいと思っているかもしれない。そんな卑屈な僕に、僕はいとも容易く負けてしまう。
僕はただ卑屈な妄想を繰り返していただけだった。
そんな日々が続いて、十日が経った頃。晴子が退院出来ると知った。退院日に会う場所を指定され、そうして――現在に至るというわけだ。つまりそう。退院出来た喜びを晴子にぶつけたいのに、最初の一文のおかげでそれどころじゃなくなってしまった。
彼女の快復を祈りつつも、僕は晴子にたくさん聞くことがある。
聞きたいことが山ほどあるんだ。
卒業証書を校長先生から一人ずつ渡されて、いよいよ卒業式も閉式を迎える所だった。式の最後には生徒代表として生徒会長が答辞をすることになっている。こういう式典の時限定で設置される臨時の木製の階段を一歩、また一歩と踏みしめながら壇上へ歩みを進める。まるでこれからの新しい生活への歩みみたいで、僕は単純にカッコいいと思っていた。
会長が答辞を読み始めたその時だった。明らかに異質な衝突音が体育館中に反響した。僕にはその数秒間の出来事が、途方も長い時間映し出されるスローモーションアニメのように見えた。いや、感じた。
染雲晴子が、倒れた。
椅子から転げ落ちたわけではない。壇上で倒れたのだ。
彼女は、まるで誰かに後頭部から伸びた長い長い糸で引っ張られるかのように、後方へ倒れた。そして、そこにはもちろん先ほど踏みしめた階段があるわけで、晴子の体は空虚な重さを確かに持って転がった。最初に晴子に駆けつけたのは僕なんかではなく、校長先生だった。それから救急車が来て、晴子は近くの病院へ搬送されていった。
僕はといえば、何もしなかった。小心者の僕は怖くてたまらなかった。晴子が春休みの間入院することは母から聞いていた。しかし、その病院は聞かなかった。行く気が全くなかったわけではない、僕が行く気になっても僕がやめろと言った。打ちどころが悪くて取り返しのつかないことになっているかもしれない。弱りきった姿を見られたくないかもしれない。僕なんか来ないでいいと思っているかもしれない。そんな卑屈な僕に、僕はいとも容易く負けてしまう。
僕はただ卑屈な妄想を繰り返していただけだった。
そんな日々が続いて、十日が経った頃。晴子が退院出来ると知った。退院日に会う場所を指定され、そうして――現在に至るというわけだ。つまりそう。退院出来た喜びを晴子にぶつけたいのに、最初の一文のおかげでそれどころじゃなくなってしまった。
彼女の快復を祈りつつも、僕は晴子にたくさん聞くことがある。
聞きたいことが山ほどあるんだ。
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