天気になった少女と、僕の話を端々。

おろしちみ

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Season.01 戒晴

Diary.04 馴染みない──little delight,

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 晴子はるこは露骨に目線を逸らした。露骨すぎる。普段から僕は晴子が隠し事をしているとすぐに分かってしまうが、今回のはあまりに露骨すぎる。十余年一緒にいなくても一発で分かってしまう。
 晴子はモジモジしながら離れていった。そして、俯きながらぼそぼそと何かを呟きだした。僕はそれを聞き逃すまいと、自分から晴子の方へ近づいていった。
「……実はね、私受かっちゃったんだ」
 晴子は俯いたまま。その言葉を理解しようとしても、どうしても出来なかった。だからただそのまま詳しい説明を問うことしか出来なかった。
「というと?」
「だから、オーディション! 合格しちゃったの!」
 この約五分ほどでハテナが何個頭に浮かんだだろう。晴子の言うことは理解に時間を要するものばかりだ。晴子が「オーディション合格」と言えばもうその真理はただ一つ。

 晴子がずっと受け続けて落ち続けていた、アイドル事務所のオーディションに合格したということだ。

「ほほ、ほん、ホントに言ってんの?」
「厳密に言えば違うんだけどね、えへへ」
 違うんかい。何がえへへだ。
「一応聞いておくけど、その事務所は?」
 晴子は自慢げに腰に手を当てて胸を逸らした。ふふーん、と鼻息を漏らして眉をV字にさせる。眉を自在に動かせるのは普通に凄い。ていうか胸を強調させるな。公園にいるのが僕だけで良かったな。小学生以上の男子はもれなく発情してしまう光景が目の前に広がっている。広げるなそんなもの。
「そ、れ、がっ! fifstarフィフスターなんだっ!」
 反応するのにややあって、僕は絞り出した言葉を吐いた。
「んえ?」
 結局最初と同じだ。漫才における「天どん」を知らないのか。同じことは三回までって決まって……ん? 二回までで、三回からがアウトなんだっけ。まあ今はそんなことはどうでもいい。とにかく、今までの晴子との会話で、長年その時間を共にしてきた僕はほとんど彼女の言うことを理解してやれなかった。というか初耳の事象が多すぎた。
「さて、ここからが本題なんだ。今から言うのが本当にあおいを呼び出した理由」
 妙に改まった貴重で晴子は隣のブランコに座った。夕陽が僕らの背中を照らしているのか、前方には人型の影が伸びている。ブランコに座った影なんて、「口笛」のジャケ写みたいでなんだかカッコいい。
 そんな何の脈絡もないことを考えでもしないと、何を晴子に言われるかの恐怖に押しつぶされそうだったのだ。──本当に僕を呼び出した理由。卑屈は卑屈なりにまた卑屈な考えを頭に巡らせる。もはや卑屈な考えがないと生きていけないかのように。

 ──私はもうワンステップ上に進むの。アンタみたいなド底辺のクソオタクとは住んでる世界が違うっての。気持ち悪いから付きまとわないでくれる? いい?

 みたいな心を抉るようなことを言われるかもしれない。晴子に限ってそんなことを言わないだろうという謎の自信と、可能性はゼロではないという卑屈が混同してごっちゃになっている。
「ちょっと、碧? おぉーい。大丈夫ですかー」
 晴子の手のひらが僕の目の前でビュンビュン風を切る音を発しながら僕の顔を覗き込む。そういう些細な仕草や行動が、世の男子を勘違いさせるんだぞ。経験者が語ってるんだから信憑性は非常に高いぞ。
 そして、いよいよ晴子が口を開く。
 思いもよらない言葉を吐いたのは、まるで予想だにしていなかった。
「碧にね、私のマネージャーになって欲しいの」
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