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Season.01 戒晴
Diary.05 凍てついた片側──trump,
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「急にこんなこと言われて困ってると思うから、噛み砕いて説明するね」
晴子の言葉にいちいち水を差すような真似はしたくないが、確かに絶賛困惑中だ。マネージャーだなんて高校生の僕に務まるのか、という「え、そこ?」という問題点から入ってしまうのが僕の悪い癖だ。隣にいる女から引き継いだ。
「さっきも言った通り、厳密に言っちゃえば私はオーディションに受かったわけじゃないの。fifstarと交渉したの」
「交渉」
「そう、私をアイドルにしてもらうための交渉。一応先に言っておくと、私はもう一人を探してユニットを組むの。で、向こうから提示された条件っていうのが、『自分で相方を探して来い』ってもの」
「でもそれがなんで僕にマネージャーをやれってことに繋がるのさ」
「実はちゃんとfifstarからマネージャーを紹介してもらったんだけど、その後に私が倒れちゃって。実はあのことに私、すっごく怖くなっちゃってさ。だから、不安を取り除くためだけって言ったら言い方が悪いけど……まあそのためにマネージャーは碧がいいなって」
なるほど、晴子にしてはよく分かることを言ってくれる。つまるところ、僕は別に何か秀でたものを持っているわけではないものの、晴子がただ安心するためだけの存在だ。
そんなの。最高の名誉じゃないか。
「もしまた倒れたりしても、碧がいるって分かったら大丈夫な気がするんだ。あとは……この変な体のこと、碧なら分かるかなって」
どうやら相当な回り道をしたらしい。きっとこれが本題だったんだろうな。確かにこの手のおかしなことに僕はよく巻き込まれる。というかそういうおかしなことに遭ってしまった人に遭う。我が可愛くて麗しい姉もそうだし、朝子・夕陽さんもそう。正確に言えば僕が詳しいというより、とある人物がおかしなことに詳しいというだけだ。
「そういうおかしなことに詳しい奴がいるけど、高校が一緒なのか分かんない。連絡しようにもアイツの連絡先は……いや、知ってたな」
偶然にも程があるぐらい僕の周りでおかしなことが起こるから、向こうから交換しようって言ってきたんだっけか。それか単純にくれって言われたんだっけか。
とにかく。
「電話してみよう」
スマホを取り出して電話帳を開く。しっかりと連絡先に登録されてあった。指で名前をそっと触れると発信中の画面に切り替わった。晴子にも聞こえるようにスピーカーボタンを押す。発信音がプルルルと震える。
『やあやあ~。碧くんの方から掛けてくるなんて珍しいじゃないか。どうしたんだい? ようやくオッケーしてくれる気になったかい?』
騒がしい。
もはやスピーカーでなくても良いぐらいの騒がしさ。設楽涼夏はそういうやつだったことを完全に忘れていた。晴子は、設楽のことを知っていたのか、「あっ、この声聞いたことある」と呟いた。
「違うわ馬鹿。いつまで擦る気だそのネタ。擦りすぎてもう見えねぇよ」
『やだなぁ、もう。ま、そのことはさておき。それで、碧くんの隣にいるのは誰かな?』
冗談としてさておいといてくれなかったのはさておきだ。さっきの呟きがちゃんと聞こえていたのだろう、晴子は話したこともないだろう人に向かって律儀に自己紹介をした。
「染雲晴子です」
数秒の沈黙があった。
『えーっと…………あぁ、アイドルの! やだなぁ、もう。先に言っといてくれれば私もちゃんと電話に出たのに。何の用件かな』
「代わったぞ、碧だよ。設楽の好きそうな話題。朝子・夕陽の時みたいに、色々教えてくれないか?」
『なるほどね、そういうこと。いいよ、相談に乗ろう。冬休みが明けてからでいいかな? 「部室」で待ってるよ』
「それなんだけどさ設楽。設楽も僕らと高校一緒?」
『やだなぁ、もう。当たり前じゃん。わざわざ外に出るようなやつは相当自惚れてるか頭のネジが外れてるかだね』
どっちもの条件に当てはまっているのに外には出なかったのか。それなら話は早い。用はもうないし、冬休み明けにまた話せばいいのですぐに電話は切った。隙を与えてしまうと好きにさせてしまう。設楽はそんな隙を見逃さずにだらだら話を拡げやがるからこっちがヒヤヒヤしながら話さないといけない。
しかし、まあ。アイツにも借りは何個もあるわけで、どうしても嫌いになどなれないのだ。もしかすると借りを作って嫌われないようにしようとしているただの小賢しい奴なのかもしれないが、とにかく感謝はしている。事後が死ぬほど面倒くさい奴だが。
「詳しくは休み明けに聞くとして、大雑把でいいから『天気になった』っていうのはどういうことなのか説明してくれる?」
恐らくそれは直接表現ではなく、回りくどく婉曲した表現なのだろう。晴子も頷いて口を開く。
晴子の言葉にいちいち水を差すような真似はしたくないが、確かに絶賛困惑中だ。マネージャーだなんて高校生の僕に務まるのか、という「え、そこ?」という問題点から入ってしまうのが僕の悪い癖だ。隣にいる女から引き継いだ。
「さっきも言った通り、厳密に言っちゃえば私はオーディションに受かったわけじゃないの。fifstarと交渉したの」
「交渉」
「そう、私をアイドルにしてもらうための交渉。一応先に言っておくと、私はもう一人を探してユニットを組むの。で、向こうから提示された条件っていうのが、『自分で相方を探して来い』ってもの」
「でもそれがなんで僕にマネージャーをやれってことに繋がるのさ」
「実はちゃんとfifstarからマネージャーを紹介してもらったんだけど、その後に私が倒れちゃって。実はあのことに私、すっごく怖くなっちゃってさ。だから、不安を取り除くためだけって言ったら言い方が悪いけど……まあそのためにマネージャーは碧がいいなって」
なるほど、晴子にしてはよく分かることを言ってくれる。つまるところ、僕は別に何か秀でたものを持っているわけではないものの、晴子がただ安心するためだけの存在だ。
そんなの。最高の名誉じゃないか。
「もしまた倒れたりしても、碧がいるって分かったら大丈夫な気がするんだ。あとは……この変な体のこと、碧なら分かるかなって」
どうやら相当な回り道をしたらしい。きっとこれが本題だったんだろうな。確かにこの手のおかしなことに僕はよく巻き込まれる。というかそういうおかしなことに遭ってしまった人に遭う。我が可愛くて麗しい姉もそうだし、朝子・夕陽さんもそう。正確に言えば僕が詳しいというより、とある人物がおかしなことに詳しいというだけだ。
「そういうおかしなことに詳しい奴がいるけど、高校が一緒なのか分かんない。連絡しようにもアイツの連絡先は……いや、知ってたな」
偶然にも程があるぐらい僕の周りでおかしなことが起こるから、向こうから交換しようって言ってきたんだっけか。それか単純にくれって言われたんだっけか。
とにかく。
「電話してみよう」
スマホを取り出して電話帳を開く。しっかりと連絡先に登録されてあった。指で名前をそっと触れると発信中の画面に切り替わった。晴子にも聞こえるようにスピーカーボタンを押す。発信音がプルルルと震える。
『やあやあ~。碧くんの方から掛けてくるなんて珍しいじゃないか。どうしたんだい? ようやくオッケーしてくれる気になったかい?』
騒がしい。
もはやスピーカーでなくても良いぐらいの騒がしさ。設楽涼夏はそういうやつだったことを完全に忘れていた。晴子は、設楽のことを知っていたのか、「あっ、この声聞いたことある」と呟いた。
「違うわ馬鹿。いつまで擦る気だそのネタ。擦りすぎてもう見えねぇよ」
『やだなぁ、もう。ま、そのことはさておき。それで、碧くんの隣にいるのは誰かな?』
冗談としてさておいといてくれなかったのはさておきだ。さっきの呟きがちゃんと聞こえていたのだろう、晴子は話したこともないだろう人に向かって律儀に自己紹介をした。
「染雲晴子です」
数秒の沈黙があった。
『えーっと…………あぁ、アイドルの! やだなぁ、もう。先に言っといてくれれば私もちゃんと電話に出たのに。何の用件かな』
「代わったぞ、碧だよ。設楽の好きそうな話題。朝子・夕陽の時みたいに、色々教えてくれないか?」
『なるほどね、そういうこと。いいよ、相談に乗ろう。冬休みが明けてからでいいかな? 「部室」で待ってるよ』
「それなんだけどさ設楽。設楽も僕らと高校一緒?」
『やだなぁ、もう。当たり前じゃん。わざわざ外に出るようなやつは相当自惚れてるか頭のネジが外れてるかだね』
どっちもの条件に当てはまっているのに外には出なかったのか。それなら話は早い。用はもうないし、冬休み明けにまた話せばいいのですぐに電話は切った。隙を与えてしまうと好きにさせてしまう。設楽はそんな隙を見逃さずにだらだら話を拡げやがるからこっちがヒヤヒヤしながら話さないといけない。
しかし、まあ。アイツにも借りは何個もあるわけで、どうしても嫌いになどなれないのだ。もしかすると借りを作って嫌われないようにしようとしているただの小賢しい奴なのかもしれないが、とにかく感謝はしている。事後が死ぬほど面倒くさい奴だが。
「詳しくは休み明けに聞くとして、大雑把でいいから『天気になった』っていうのはどういうことなのか説明してくれる?」
恐らくそれは直接表現ではなく、回りくどく婉曲した表現なのだろう。晴子も頷いて口を開く。
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