天気になった少女と、僕の話を端々。

おろしちみ

文字の大きさ
6 / 13
Season.01 戒晴

Diary.05 凍てついた片側──trump,

しおりを挟む
「急にこんなこと言われて困ってると思うから、噛み砕いて説明するね」
 晴子はるこの言葉にいちいち水を差すような真似はしたくないが、確かに絶賛困惑中だ。マネージャーだなんて高校生の僕に務まるのか、という「え、そこ?」という問題点から入ってしまうのが僕の悪い癖だ。隣にいる女から引き継いだ。
「さっきも言った通り、厳密に言っちゃえば私はオーディションに受かったわけじゃないの。fifstarフィフスターと交渉したの」
「交渉」
「そう、私をアイドルにしてもらうための交渉。一応先に言っておくと、私はもう一人を探してユニットを組むの。で、向こうから提示された条件っていうのが、『自分で相方を探して来い』ってもの」
「でもそれがなんで僕にマネージャーをやれってことに繋がるのさ」
「実はちゃんとfifstarからマネージャーを紹介してもらったんだけど、その後に私が倒れちゃって。実はあのことに私、すっごく怖くなっちゃってさ。だから、不安を取り除くためだけって言ったら言い方が悪いけど……まあそのためにマネージャーはあおいがいいなって」
 なるほど、晴子にしてはよく分かることを言ってくれる。つまるところ、僕は別に何か秀でたものを持っているわけではないものの、晴子がただ安心するためだけの存在だ。
 そんなの。最高の名誉じゃないか。
「もしまた倒れたりしても、碧がいるって分かったら大丈夫な気がするんだ。あとは……この変な体のこと、碧なら分かるかなって」
 どうやら相当な回り道をしたらしい。きっとこれが本題だったんだろうな。確かにこの手のおかしなことに僕はよく巻き込まれる。というかそういうおかしなことに遭ってしまった人に遭う。我が可愛くて麗しい姉もそうだし、朝子あさこ夕陽ゆうひさんもそう。正確に言えば僕が詳しいというより、とある人物がおかしなことに詳しいというだけだ。
「そういうおかしなことに詳しい奴がいるけど、高校が一緒なのか分かんない。連絡しようにもアイツの連絡先は……いや、知ってたな」
 偶然にも程があるぐらい僕の周りでおかしなことが起こるから、向こうから交換しようって言ってきたんだっけか。それか単純にくれって言われたんだっけか。
 とにかく。
「電話してみよう」
 スマホを取り出して電話帳を開く。しっかりと連絡先に登録されてあった。指で名前をそっと触れると発信中の画面に切り替わった。晴子にも聞こえるようにスピーカーボタンを押す。発信音がプルルルと震える。
『やあやあ~。碧くんの方から掛けてくるなんて珍しいじゃないか。どうしたんだい? ようやくオッケーしてくれる気になったかい?』
 騒がしい。
 もはやスピーカーでなくても良いぐらいの騒がしさ。設楽したら涼夏すずかはそういうやつだったことを完全に忘れていた。晴子は、設楽のことを知っていたのか、「あっ、この声聞いたことある」と呟いた。
「違うわ馬鹿。いつまで擦る気だそのネタ。擦りすぎてもう見えねぇよ」
『やだなぁ、もう。ま、そのことはさておき。それで、碧くんの隣にいるのは誰かな?』
 冗談としてさておいといてくれなかったのはさておきだ。さっきの呟きがちゃんと聞こえていたのだろう、晴子は話したこともないだろう人に向かって律儀に自己紹介をした。
染雲そめぐも晴子です」
 数秒の沈黙があった。
『えーっと…………あぁ、アイドルの! やだなぁ、もう。先に言っといてくれれば私もちゃんと電話に出たのに。何の用件かな』
「代わったぞ、碧だよ。設楽の好きそうな話題。朝子・夕陽の時みたいに、色々教えてくれないか?」
『なるほどね、そういうこと。いいよ、相談に乗ろう。冬休みが明けてからでいいかな? 「」で待ってるよ』
「それなんだけどさ設楽。設楽も僕らと高校一緒?」
『やだなぁ、もう。当たり前じゃん。わざわざ外に出るようなやつは相当自惚れてるか頭のネジが外れてるかだね』
 どっちもの条件に当てはまっているのに外には出なかったのか。それなら話は早い。用はもうないし、冬休み明けにまた話せばいいのですぐに電話は切った。隙を与えてしまうと好きにさせてしまう。設楽はそんな隙を見逃さずにだらだら話を拡げやがるからこっちがヒヤヒヤしながら話さないといけない。
 しかし、まあ。アイツにも借りは何個もあるわけで、どうしても嫌いになどなれないのだ。もしかすると借りを作って嫌われないようにしようとしているただの小賢しい奴なのかもしれないが、とにかく感謝はしている。事後が死ぬほど面倒くさい奴だが。
「詳しくは休み明けに聞くとして、大雑把でいいから『天気になった』っていうのはどういうことなのか説明してくれる?」
 恐らくそれは直接表現ではなく、回りくどく婉曲した表現なのだろう。晴子も頷いて口を開く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

処理中です...