天気になった少女と、僕の話を端々。

おろしちみ

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Season.01 戒晴

Diary.12 梅雨、近き日──role.

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 話を聞いていると、卯月や朝子さんと状況が全く同じだ。彼女らも晴子同様、おかしなことが体の中で起こってしまった。その際も設楽が助けてくれた。
「なるほどねぇ……。やっぱり碧の感覚は鋭いよ。ずばり、この手の話だね」
「そうか。やっぱり今回もないんだな?」
「ねぇ! 『この手の話』とか『今回もない』とかって何の話!?」
 さすがの晴子もしびれを切らしてしまった。まあ仕方ない。僕も少し意地悪をしすぎた。
「あのね晴子、設楽は色んな『不可思議』に詳しくて、どっから情報を仕入れてきてるのかは知らないけど、晴子の人格が変わる条件とと教えてくれるよ」
 設楽がわざとらしく咳き込む。そろそろ話したいのだろう、僕は会話権を譲った。
「最初に言っておくけど、対処方法は分からない。この不可思議と共存していく必要がある。ま、それを念頭に置いた上で聞いて欲しいんだ。情報源は言えないけど、情報によると晴子ちゃんみたいな事象を『お天気少女』と呼ぶらしい。明確な条件として、午前五時時点での現在地の天候によって、そこから二十四時間の性格が変わっていくみたい。情報があるってことは過去に『お天気少女』になった人がいるってことだけど、その人は今はまだ見つかっていない」
 そう、彼女が読んでいるファイルの中にはその不可思議に関する資料や晴子の資料が挟まっている。なぜか設楽は色んな不可思議の情報を持っていて、詳細を教えてくれる。
「色々実験のしがいがあるんだけどね……。まあそれは後にするとして、アイドルって? ただのあだ名じゃなかったの?」
 設楽は本音をぶちまけてしまう。煽っていると思われてしまうからあんまりあだ名とか言うもんじゃないが、それも設楽だから仕方ないなと思ってしまう。
「今までは、ね。でもこの間アイドル事務所と契約を結んできたの。全然まだ先のことになるんだろうけど、もしステージに立ってみんなの前で歌うことになった時、私以外の人格になっちゃったらどうしようって思っちゃって」
 アイドルにずっとなりたくて奮闘していたのは晴子だけで、他の人格はそうじゃないかもしれない。私は知らないけど、私と友好的な人格ばかりだとは限らない、と晴子は言った。
「それはうーん、私にはどうしようもないなぁ。とにかくこんな風に不可思議に侵された人にいつも私が言っているのは、とにかく他の人格にも情報を知らせるために日記とかのメモを付けた方がいい。そのステージ上がる日が全て晴れるように賭けるなら別にしなくていいけど、それはさすがに無謀すぎるよね。私は、全員の人格にアイドルとして頑張ることを強制させた方が良いと思う。私は晴子ちゃんのことをあんまりよくは知らないけど、碧の大事な人なんでしょ? そんな子には幸せになって欲しい。せっかく掴んだチャンスでしょ? 頑張ってね」
 えらく長台詞だと思っていたら、なんか泣いてしまいそうになった。僕がなんでこんなにうるうるさせられるんだ。晴子でもないのに。ていうかこいつは本当にどうしちゃったんだよ。中学の時のマッドサイエンティストみたいな性格はどこへ行った。冬休みの間になんで変わってしまったんだ!
「ありがとう……。涼夏って呼んでもいい?」
「え? ……うん、もちろん! 嬉しいな、晴子ちゃんみたいに可愛い女の子に名前で呼ばれるなんて。はっ……そっちの方向も、あり?」
「なしだろ」
 なんだ、やっぱり自分があまり知らない人だったから、真面目なフリをしてただけじゃないか。てっきり普通に戻ったのかと思って心配した。……心配? どうして僕が心配する必要があるんだ。設楽が真面目で良い奴だと僕も嬉しいはずなのに。
「やだなぁ、もう。碧くん、もしかして晴子ちゃんに嫉妬しちゃったの? 心配しなくても私は碧くん一筋だよん」
「あ、あの。二人って一体どういう関係で……」
「許嫁だよ」
「違う」
 設楽が、むーと唸りながら頬を膨らませる。マスクを外して顔のもう半分も顕わになった設楽がそんなことをすると、目を逸らしてしまいたくなる。認めたくはないし、絶対本人の前で言えないし言いたくないけど、めちゃくちゃ可愛い。本当に、黙っていれば美人と言う言葉はこいつのために生まれた言葉だと思う。一回、中三の時に「一日言葉を発さずにいてくれ」と言って一緒に街に出て買い物に付き合っていると、すれ違う男たちはみんな設楽に視線を吸われていた。黙っていれば、ショートヘアも相まって「寡黙だけど離したら意外とユーモラスで気が合う子」という最高のキャラをもらえただろうに。
「そうだ碧くん。君も晴子ちゃんのことをずっと見といてあげるんだよ。だから毎晩、次の日の天気は確認しておくんだよ。私のおすすめは東日本テレビのお天気キャスターなんだけどね、童顔巨乳という碧くんの性癖にベストマッチなのさ」
「僕の性癖を暴露するな!」
 あぁ、否定しておけば良かった。晴子も苦笑いで「あははー……」と若干引いている。どうかこのことは日記に書かないで欲しいと願った。
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