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Season.01 戒晴
Diary.11 類するこの異質──limit over,
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現在でも日本だけでなく海外にまで進出して様々な事業を展開している彩城グループは、それはそれはもう大金持ちで、中学高校程度なのにあらゆるところに分校を置いている。ここはその総本山だ。だからといってはなんだが、とにかく校舎が広い。各ホームルーム教室がある教室棟、理科室ばかりが集まった理科室棟、馬鹿でかい体育館とグラウンド、そして部室が集まった部室棟。
部室棟の突き当たり、倉庫かとずっと思っていたその部屋は「おかしなこと研究部」の活動場所になっている。不気味の欠片もない、教科書に載っているような綺麗な字で書かれた貼り紙。
『コノ先関係者以外立入禁止』
貼り紙の文字を書いた人物は、違和感の正体をこう明かしている。
「『この』を片仮名にしたのはSF感が出てカッコいいでしょ」
だそうだ。
校舎は五年に一回のペースで改装工事が行われているため、不気味さはない。そんなおかしなこと研究部の戸を叩いた。
「どうぞお入り~」
この場所の訪問は今日が初めてではない。我が姉や姉の親友の時にもお世話になった。隣にいる晴子は晴子のままで、それもそのはず。今日は雲ひとつない晴天だからだ。
部屋は端っこだからといって狭いわけではなく、どの部屋も平等な広さを持つ。そのヘンテコな名前とは裏腹に、中身は完全に設楽の部屋だ。人をクズにするソファーとテレビがあって、なんとミニ冷蔵庫まである。ここに住んでいる説は濃厚だ。
そしてこの部室最大の特徴が、ドアのある面以外、つまり入ってみて正面と左右の壁一面に敷き詰められている本棚。そしてその本棚にいっぱいいっぱいに敷き詰められている本やファイルの数々。本はその全てが小説で、辻村美月や住野よる、重松清とジャンルはバラバラだ。そこはあまり重要ではなくて、注目すべきはその本棚の八割を占めるファイルの中身だ。
設楽は僕らに適当に座るよう言い、冷蔵庫から一リットルのサイダーを取り出して三つのコップに入れた。それをテレビとソファーの間にある、これまた生活感漂う木の机に置いて差し出した。
そしてようやく――。
「染雲晴子ちゃん、だね」
晴子に背を向けたまま、入って正面側の本棚から背表紙に「染雲晴子」と書かれたリングファイルを取り出した。よく見ればファイルの全てに誰かの名前が書かれている。たまに同じ人の名前があるが、「2」などとナンバリングされている。
「今日はどんな話がしたい? 私はなんでもいいんだ、晴子ちゃんのしたい話をすればいい」
設楽はそう言って、ファイルの中のいっぱいのルーズリーフを捲りながら自分の分のサイダーを一口飲んだ。僕ももう何度も来ているからこの異質な空間にも慣れた。サイダーを一口飲んで、晴子を見る。やはり戸惑っている。挙動不審がもろに表に出てしまっている。僕も最初はそうだったさ。こんな変な部屋に、こんな変な人なんだから。
「私の体質について、です。それと設楽さんならアイドルのことも相談したいです」
珍しく初見で設楽が信頼された。本当に珍しいことだ。大体は胡散臭いなどとあしらわれるのに、晴子は頼るつもりになったようだ。
「分かったよ。じゃあ君の『不可思議』を教えてくれるかな?」
「はい、分かりました。始まりはそう、きっとあの日。卒業式で私が派手に倒れてから――」
晴子は思い出すように語ってくれた。その話をまとめると、こう。
卒業式の日、生徒会長としての最後の責務である生徒答辞の最中に突然倒れた。階段に頭が当たってその時に気を失ってしまい、救急車で病院に搬送されて色々検査を受けた。とある雨の日、見ている景色や感じる匂い、感覚は昨日と一緒なのにおかしなことに気が付いた。自分の思っていることを言葉に出来ない。いや、違う。思っている行動すべてが行動に出来ない。そして次の晴れの日、それを医者に伝えると、全く原因が分からなかったのだという。二重人格――医療の世界では「解離性同一性障害」というらしいが――を疑われたが、検査の結果そうではないことが分かった。
そして今に至るということらしい。つまり、医療では解明出来ていないそうだ。そんなものを設楽というただの女子高生が解明出来るものなのか。というか、それを解明出来たところで何か元に戻す方法はあるのだろうか。
答えは、イエスだ。
部室棟の突き当たり、倉庫かとずっと思っていたその部屋は「おかしなこと研究部」の活動場所になっている。不気味の欠片もない、教科書に載っているような綺麗な字で書かれた貼り紙。
『コノ先関係者以外立入禁止』
貼り紙の文字を書いた人物は、違和感の正体をこう明かしている。
「『この』を片仮名にしたのはSF感が出てカッコいいでしょ」
だそうだ。
校舎は五年に一回のペースで改装工事が行われているため、不気味さはない。そんなおかしなこと研究部の戸を叩いた。
「どうぞお入り~」
この場所の訪問は今日が初めてではない。我が姉や姉の親友の時にもお世話になった。隣にいる晴子は晴子のままで、それもそのはず。今日は雲ひとつない晴天だからだ。
部屋は端っこだからといって狭いわけではなく、どの部屋も平等な広さを持つ。そのヘンテコな名前とは裏腹に、中身は完全に設楽の部屋だ。人をクズにするソファーとテレビがあって、なんとミニ冷蔵庫まである。ここに住んでいる説は濃厚だ。
そしてこの部室最大の特徴が、ドアのある面以外、つまり入ってみて正面と左右の壁一面に敷き詰められている本棚。そしてその本棚にいっぱいいっぱいに敷き詰められている本やファイルの数々。本はその全てが小説で、辻村美月や住野よる、重松清とジャンルはバラバラだ。そこはあまり重要ではなくて、注目すべきはその本棚の八割を占めるファイルの中身だ。
設楽は僕らに適当に座るよう言い、冷蔵庫から一リットルのサイダーを取り出して三つのコップに入れた。それをテレビとソファーの間にある、これまた生活感漂う木の机に置いて差し出した。
そしてようやく――。
「染雲晴子ちゃん、だね」
晴子に背を向けたまま、入って正面側の本棚から背表紙に「染雲晴子」と書かれたリングファイルを取り出した。よく見ればファイルの全てに誰かの名前が書かれている。たまに同じ人の名前があるが、「2」などとナンバリングされている。
「今日はどんな話がしたい? 私はなんでもいいんだ、晴子ちゃんのしたい話をすればいい」
設楽はそう言って、ファイルの中のいっぱいのルーズリーフを捲りながら自分の分のサイダーを一口飲んだ。僕ももう何度も来ているからこの異質な空間にも慣れた。サイダーを一口飲んで、晴子を見る。やはり戸惑っている。挙動不審がもろに表に出てしまっている。僕も最初はそうだったさ。こんな変な部屋に、こんな変な人なんだから。
「私の体質について、です。それと設楽さんならアイドルのことも相談したいです」
珍しく初見で設楽が信頼された。本当に珍しいことだ。大体は胡散臭いなどとあしらわれるのに、晴子は頼るつもりになったようだ。
「分かったよ。じゃあ君の『不可思議』を教えてくれるかな?」
「はい、分かりました。始まりはそう、きっとあの日。卒業式で私が派手に倒れてから――」
晴子は思い出すように語ってくれた。その話をまとめると、こう。
卒業式の日、生徒会長としての最後の責務である生徒答辞の最中に突然倒れた。階段に頭が当たってその時に気を失ってしまい、救急車で病院に搬送されて色々検査を受けた。とある雨の日、見ている景色や感じる匂い、感覚は昨日と一緒なのにおかしなことに気が付いた。自分の思っていることを言葉に出来ない。いや、違う。思っている行動すべてが行動に出来ない。そして次の晴れの日、それを医者に伝えると、全く原因が分からなかったのだという。二重人格――医療の世界では「解離性同一性障害」というらしいが――を疑われたが、検査の結果そうではないことが分かった。
そして今に至るということらしい。つまり、医療では解明出来ていないそうだ。そんなものを設楽というただの女子高生が解明出来るものなのか。というか、それを解明出来たところで何か元に戻す方法はあるのだろうか。
答えは、イエスだ。
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