天気になった少女と、僕の話を端々。

おろしちみ

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Season.01 戒晴

Diary.10 強火すぎる──luminous girl,

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 染雲晴子はアイドルだ。
 それは比喩である。だけど、「バナナと言ったら黄色」みたいな感じで「染雲晴子と言ったらアイドル」という直感は誰もが持っていた。染雲晴子を表すならばアイドル。あの小さなハコで行われたステージで、それを見た者は皆確信した。
 染雲晴子はアイドルだ。
 僕だけが知っている晴子の秘密。特異体質になってしまったこともそうだけど、もう一つ僕は知っている。あんなに頑張ってきても、皆が思っているのは「アイドルみたいだ」ということだけ。アイドルという言葉自体に意味が無く、それがもはや喩えみたいになっているけれど、それでも。僕は知っている。これは喩えでもなんでもなく、紛れもなく。

 染雲晴子はアイドルだ。

「おい、設楽設楽したら? 誰か設楽を知らないか?」
 先生が入ってきて点呼を行うが、僕の前の席は空席だった。確認していなかったけど、設楽も同じクラスなのか。入学式から遅刻なんてさすがだ。というか別に遅刻はしていない気がする。アイツのことだから、きっと部室にいるに違いない。
「先生、多分部室にいるかと」
「部室? 何部のだ」
です。部室棟の突き当たりにあります」
 本当は言いたくなかった。設楽が「はい分かりました」と言って素直に戻ってくるとは思えないからだ。アイツのことだからきっと、ぎゃあぎゃあ喚き散らしながらありとあらゆる物体に縋りつくだろう。それはそれで面白いけど、そこまで僕も趣味が悪くない。しかし先生の圧に負けてしまったのだ。設楽の無事を祈りながら体育館へと移動した。
「セクハラで訴えますよ! やーーーだーーー! 乙女を引き摺るなんて横暴だーーー!」
 騒がしい。
 案の定設楽が引き摺られながらやって来た。設楽にしては随分的を射たことを言う。この光景をSNSにアップすればたちまち非難(クレーム)が学校に殺到してあの教師は解雇か休職処分になるだろう。悪いのは完全に設楽だが、インターネットの世界は酷く視界が狭い。事実だけを見て、その背景は見ない。あの教師がどうなろうが僕には構わないけど、いなくなればいいのにとは思う。屁理屈ばかり言って、自分に都合が悪くなれば恫喝で終わり。
「おはよう設楽。朝から災難だな」
「ふっふっふっー。災難は仕方のないことだからね。まあでも、アイツは死ねばいいね。激動の二、三十代を終えて職も手についてきた辺りで死ねばいいよ」
 自慢げな顔で何を言ってる。そんなサイコ的な考えを僕に言われても困る。発端は設楽が悪いんだから。
「部室に入り浸って何してたの」
「やだなぁ、もう。分かってて言ってんでしょ?」
 声のトーンからアホっぽいとよく言われる設楽だが、全くもってアホではない。というか人の気持ちを読んだり、そういう頭の回転が異様に速いのだ。隠し事もすぐに見抜かれるし、何も考えていないようで色んなことをずっと考えている。それが設楽涼夏すずかという厄介な友達だ。そして、設楽の言う通り、ある程度こいつが部室で何をしていたかの目星はついていた。
「晴子の情報を集めていた、ってとこか?」
 顔の半分が隠れていても、それが満面の笑みであることは充分に理解出来た。
「その通り、大正解さ。何事にも事前準備というものは必要だからね」
 さっきからやけに真面目なことを言う。設楽といえば突拍子もないことをして周りを困らせたり困らせなかったりするのに、今日はいつもと比べればおとなしい。高校デビューというものか?
「どうしたの? あっ、まさかおっけーしてくれる気になったのかな? 私はいつだって準備出来てるよ。あおいくんが望むなら……きちんとお風呂にも入ってくるけど……」
「変な誤解を生むからやめなさい。そうだ、今日の放課後頼むぞ」
「何のために事前準備してたの思ってるのさ。もちろんだよ。許嫁の頼みなら快諾さ」
「だから変な誤解を生むからやめろって!」
 それに、許嫁だからといって互いに仲がいいわけではないだろう。普通に彼女とかにすればいいのに、なんだよそのチョイスは。いや普通に彼女とかでもダメだわ。
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