転生×召喚 ~職業は魔王らしいです~

黒羽 晃

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二章 「初めて会った時から」

11話

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 大剣を地面に水平に構え、横へ凪ぐ。目の前の餓鬼は、生意気にもこの一撃を避け、俺の懐に潜り込む。
 剣の勢いを利用して後ろへ跳び、餓鬼の間合いを離れ、大剣を構え直す。
 こいつ、意外と強えな。俺の剣は鋼すら断つ、回避困難の必殺だったんだが。

 ちっ、怒りで剣筋が定まって無かったのか?
 そう考えたいところでもあるんだが、違うな。俺の剣は十年研鑽し続けた。今更怒りぐらいでぶれるとも思えん。

 攻撃が単調になっていた可能性を含めても、こいつは俺の攻撃を躱して、反撃までして来やがったんだ。
 そういやこいつ、戦闘を始めるまえにスキルを使ってやがったよな。あの感覚は【殺気】だった。パッシブスキル【恐怖耐性】が無かったら気絶していたかも知れない、とんでもない密度の【殺気】だ。

 明らかにCランク以上の実力はある。なんでこんな奴が、なりを潜めていやがった?
 分からねえ。
 だが今は、俺を愚弄したこいつをぶっ殺すだけだ。

 ゲーテとオズマはションベン垂れてぶっ倒れていやがるし、まともに立ててんのはアレックスだけか。情けねえ。

 三人を横目に、俺は再び奴を見据えた。隙なんて無い。
 ならばこじ開けるのみ。大剣の切っ先を奴に向けた。

 向こうは女……リリスっつったか?……に退がるように言っているようだ。
 分かってるな、餓鬼の癖に。
 誰も巻き込まねえってのは良い。建物の損壊は別として、思い切りやれる。

 いつの間にかギャラリーも増えてきていやがるな。直ぐに終わらせるつもりが、随分とかかった。

 勢いを腰の捻りに乗せ、大剣を前へと突き出す。槍と遜色ない突き技。
 これも半身で避けられる。だがそれで良い。元から躱させる為の突きだ。
 更に踏み込み半回転、その惰性で、重みと遠心力だけで斬る。当然、そんなものが通じるとも思っていない。当たれば僥倖、それだけの事だった。

 落ちた威力を極力消費せずに大剣の軌道を変え、持ち上げる。そしてそのまま、飛び退いたこいつに振り下ろす。
 全霊を以て降す一撃。十年欠かさなかった、叩き斬ると言う基礎は奥義に昇華され、音速を超えて相手に襲いかかる。

 これくらいじゃないと、擦りすらしないと言う確信があったからだ。
 剣は狙い違わず、奴の眉間へ吸い込まれるように迫って行く。見た感じならば、奴にはまだ余裕がある筈だ。これも必ず避けられる。

 しかし予想に反し、奴は動かずにその場に止まった。このまま行くと、大剣に頭をかち割られる軌道であるのに、だ。
 もう大剣は俺にも止められない。頭蓋を割って脳漿を散らす姿を幻視した。

 だがその瞬間は来なかった。急に大剣が止まり、手に大剣の重量感が蘇る。
 どう言う事だ? 殺意すら込めて放った一撃が、この必殺が止まるなんて。
 原因は直ぐに知れた。目の前にいるこいつが大剣を人差し指と中指で挟んでいる。
 要は、止めたのだ。こいつが、軽々と。俺の一撃を、超音速の必殺を。

「何の冗談だよ、これは」

 ははは、こいつは傑作だ。もう笑うしか無えよ畜生。
 大剣を引き戻そうとするも、全く動かない。どんだけの力を入れてやがるんだこいつは、もう化け物以外の何でも無えよ。
 大剣に罅が入って行き、刃から峰まで至り、折れた。鋼鉄の大剣が折れた。
 折れた大剣が床に転がるのと同時に、俺は膝を床についた。

 人生初か? ここまで明確な敗北って奴は。
 こう言うのを慢心が招いた敗北とか言うのか。

 奴の、鈴のような声が聞こえた。

「俺の勝ちだ。またこんな事があれば、命は無いと思えよ?」

 当然だ。寧ろ、今殺されないのが不思議なくらいですらある。
 今のこいつの立場なら、正当防衛の名目で俺を殺すくらいは訳ない筈だ。それを見逃すと。

「終わったよ、リリス。ここまで力の差を見せつけてやれば今後も絡んで来る事は無いだろうしな」

「そうですね。では、宿を探しに行きましょうか」

 二人の足音が遠ざかって行く。何か、何か無いか。
 このままだと、永遠にこいつとの縁は断たれる気がする。そうなれば、確実に後悔する。
 何でも良い、今は少しでも引き止めなきゃいけねえ。

「おい、てめえら」

 餓鬼の方が、振り返った。リリスとか言った女も、次いで顔をこっちに向ける。

「何だ、まだやるのか? その折れた剣で何が出来るって……」

「宿を探すなら」

 奴の台詞を遮って話す。

「ギルドの近くのやつは避けた方が良い。奴ら、安い酒と程度の低い飯しか出さねえ癖に金だけぶん取るぼったくりだ。行くなら北東にあるボロ宿に行け。料金の割に飯が美味い」

 我ながらひでえ文が出てきたもんだな。何の宣伝だよ。あの宿だってギルドに通うのが不便だって理由で引き払ったってのに。いや、そうじゃ無え。
 見ろよ、二人とも大分面喰らったような顔してやがる。これも違え。面白くはあるが違え。

「次は余裕ぶっこいたその顔、出来なくさせてやるよ。忘れんじゃ無えぞ」

 何か小物みてえな台詞になったが、良い。
 奴の印象に軽く残るだけで良い。
 確証も何も無い。直感だってそれを否定するが、俺は奴と再戦する。

 奴は去って行った。俺に構う暇なんざ無えってか。それも仕方ねえ。
 だが最後、出て行く前に、奴は笑った。
 それの意味するところは知らねえが、確実に笑った。

 今の強さに胡座を掻いていたが、今日で一つ、目標が出来ちまったな。

「大丈夫ですか? ガズルドさん」

「武器以外はな」

「そうですか? プライドも大丈夫じゃあ無さそうに見えるんですけど」

 俺に話しかけて来たのは、金髪の受付嬢のアレシア。アレックスの姉だったか。

「そうだな。俺の誇りプライドとやらもバラバラに壊れちまってるみてえだ」

 クスリとアレシアが微笑む。

 ずっと膝立ちってのも格好がつかねえな。
 俺は立ち上がると、パーティの全員に言う。

「ゲーテ、オズマ、立て。何時までも腰抜かしてるつもりか」

 自分でも驚くくらいの、低い声だ。二人はサッと立って直立不動になる。プレッシャーでも出てんのかよ、俺から。

「アレックス、今日からパーティリーダーはお前だ。俺はもう抜ける。拒否は認めねえ」

「はあ!? そりゃ無えっすよ、ガズルドさん!」

「おお、オデは、ガズルドの強さ見て、ここに居るんだぞ!」

「黙れ!」

 急に狼狽えるゲーテとオズマを、俺は一声で黙らせる。

「俺は、今まで圧倒的強者ってのを知らなかった。昔から剣の才能だけがあって、周りより断然強かっただけだ。
 分かってるだろてめえらも。あいつには、俺の全てが通用しない。強者って奴だった。冒険者初めて、数年かけて培ったプライドを、今日でポッキリ折られちまったんだ。
 俺は俺の弱さを、今日、漸く実感した」

 ゲーテ、オズマ、アレックス。三人とも、神妙な顔で聞いている。受付嬢のアレシアも居るし、此処で宣言する。

「俺は今日、パーティ『鉄の大剣アイアンソード』を離脱する。文句は言わせねえ」

 傲慢だった俺について来てくれた事には感謝するが、これからの俺は、また一人だ。
 助けも何も無い、一人からのリスタート。

「……ガズルドさん」

「何だアレックス。拒否は認めねえっつったろ」

「違います。文句とかそう言うのじゃなくて」

 アレックスは、姉と同じ、母親譲りだと言った金髪を揺らして言った。

「僕の目標はガズルドさんです。ガズルドさんが負けたって、それは変わりません。ガズルドさんが更に強くなっても、僕はガズルドさんを超える事を諦めませんから」

 そういやそうだったな。アレックスが新人だった頃、強気だったこいつを叩きのめしてから、こいつは俺のパーティに加入したんだった。あれから奴の【殺気】を受けて立っていられる程強くなったとは、世界ってのはままならねえもんだ。

「……好きにしろ」

 思えば、アレックスは俺と言う目標を見つけたから強くなったんだな。そして俺にも目標が出来た。
 だったら俺も、まだ強くなれる筈だ。

 待っていやがれよ、俺が絶対にぶっ倒してやる。
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