転生×召喚 ~職業は魔王らしいです~

黒羽 晃

文字の大きさ
14 / 35
二章 「初めて会った時から」

14話

しおりを挟む
 翌日、俺たちはセシリアの宿屋を出た後、ギルドに来ていた。
 目的はもちろん、依頼を受けるため。

「冒険者は、依頼を受ける時は基本的に自分のランクと同ランクの依頼を受けます。ギルドの規約では、一応は一つ上のランクまでは受ける事が出来るようになっていますが」

 リリスの説明を聞きながら、掲示板に貼ってある依頼を見る。先ずはFランクの依頼から受けるべきだろう。色々な面倒を考えると。
 Fランク依頼の中から『薬草の採取』をする事にした。これは常に貼ってある依頼で、そもそも依頼を受注する必要も無いらしい。
 薬草十本につき銅貨2枚。リリスに言わせると、初心者にはこれくらいが丁度いいのだそうだ。

 早々にギルドから出る。どうにもこっちに向けられる視線に嫌なものが混じっていたからだ。
 中身はともかく、見た目の上では俺たちは少女二人のパーティ。仲間に取り込んでから、力尽くで行為に及ぼうとする者がいるかもしれない。
 そうで無くとも、少なからず下心を持って近付いて来るだろう。

「採取系で良いんですか? エンマさんなら討伐系でも何ら問題無いと思うんですけど」

「ああ。余計に目立つ必要も無いし、そもそも今はあそこにいたくないからな」

 リリスは首を傾げるが、俺が視線を気にし過ぎなのか? もしくは気配に敏感過ぎるだけなのだろうか。
 気にするだけ無駄か。とにかく今は依頼達成を目指すだけだ。


 薬草の群生地は、リェリェンの東門から出て直ぐの森の中だ。リリスと会ったのがその森の近くの平原で、魔物が出る事は滅多にないと言う。
 出たとしてもゴブリンかスライムか、その程度の弱い魔物だけ。初心者でも余程の事が無い限りは死なないようだ。
 そう考えると、リリスが所属していたクランはかなり運が悪かった事になる。オーガなんて、普通は森の中でも見かける事は無いらしい。

 それについては、ギルドがAランクパーティに森の調査を依頼しているみたいだが、原因は分かっていないようだな。

「お、あった。一気に四本か」

「はい。こっちも三本見つけました。これでも少ない方ですよ」

「流石はFランクのだな。それほど苦労せずに済ませられそうだ」

 とは言っても、警戒はするに越した事は無い。今のところは近くに魔物の気配も無いし、採取に集中していても良いんだけどな。
 おっと、また五本見つけた。なるべく傷付けないようにして採る。別に傷が付いても問題は無いらしいが、鮮度を考えると綺麗な状態で採っておきたいな。

 微妙に楽しくなってきて、いつの間にか採取に夢中になっていた。気がつくと、森の大分奥の方まで来てしまっていたようだ。
 少しではあるが魔力が濃くなって来たし、魔物の気配も感じられる。
 薬草は十分採れたし、そろそろ戻った方が良いだろう。

「リリス、そろそろ引き返そう」

「そうですね。結構奥まで来てしまいましたし、魔物に襲われる前に帰りましょうか」

 リリスの承認も得た事だし、薬草採取は終了して、リェリェンに引き返す事にする。いや、しようとした。

「あ、待てリリス。囲まれてる」

 全くもって、なんで今まで気がつかなかったのか。俺たちは、かなりの数の魔物に囲まれていた。
 強さの程は、オーガよりはずっと弱い。一体ずつならリリスでも倒せるレベルだ。

 それぞれはEランクの中位ぐらいだが、この数になるとガズルドのパーティでも容易には抜けられないだろう。ガズルドがCランクだった事を考えると、この魔物の群れはDランク上位かCランク下位くらいか。
 そんな事を考えている間にも魔物の気配は続々と集まって来る。そろそろ3桁を超えるな。

 さて、結構さらっと言ったがこれはかなり異常な事態だ。
 気配の違いから魔物達の種類を推測しているが、少なくともゴブリン、オーク、コボルト、スライムなんかがいる。他にはそれらの上位種や植物系の魔物と、普通に考えてあり得ない。

「100体以上の魔物が俺たちに殺気を向けている。それも様々な種類のやつらがだ」

「そんな! あり得ません、種類の違う魔物が徒党を組むなんて……」

 そこでリリスは言葉を切る。何かを考えている様子だ。
 この現象に心当たりがあるのかは分からないが、取り敢えずは結界を張っておこうか。
 【空間属性魔法】で作った結界に更に風属性を織り込む。即席インスタント風属性結界の完成だ。
 強度の上では本来のものに劣るが、この程度の魔物ならば難なく防げる。

 取り敢えず危険を遠ざけたところで、リリスに振り返る。

「リリス、これに心当たりがあるのか?」

「はい。かなり高位の魔物使いならば、不可能ではありません」

 魔物使い。
 【闇属性魔法】或いはスキルの【使役テイム】を使い、魔物を従僕にする奴の事だな。天職が魔物使いならばスキルの適性も高くなる。
 え? なんで知ってるのかって? 今まで一人で生きて来たからって誰とも話していなかった訳じゃ無いんだよ。邪神領近くに住んでるフェアリーさんから教えてもらいました。
 ま、その話は別の機会にするとして。

「その、高位の魔物使いがいるって事なのか? この森に」

「有力な可能性の一つです。Bランククラスの魔物の襲来も考えられたのですが、そうなると私たちを襲う意味がありませんから」

 確かにな。最低限ではあったが、俺の察知に気づかなかったと言う事は、少なくともある程度は気配を絶っていたのだろう。
 それだけなら自分らより強い魔物に怯えていたと説明がつくが、今回のは明らかに俺たちを狙って動いている。何者かが何らかの意図を持って嗾けていると考えた方が自然だろうな。

「これは、ギルドに報告する必要がありますね」

「じゃあ、さっさとこいつらを退かさなきゃな」

 既に魔物の数は150体にまで膨れ上がっており、更にオーガクラスの魔物もちらほらと見えて来ている。

「リリス、戦闘のスタイルは何だ?」

「剣です。今のままだとかなり危険ですが」

「そうか。じゃあこれだな」

 【ストレージ】から一振りの剣を取り出す。リリスが見せたのと同系統の鎧通剣エストックタイプの剣。
 これは件の調子に乗って作ってしまったやつの一つだ。【無属性魔法】を【魔法付与エンチャント】で付けてあり、更に魔力を溜める効果のある魔石も幾つか使っているため、魔石の魔力が保つ限りは持っているだけで身体能力が上がると言う反則仕様になっている。

 リリスは剣を受け取ると、驚いた様な表情をする。

「何ですかこれ、身体が軽くなった気がします」

「魔剣だ。装備すると身体能力が上がるようになっている。流石にこの数だとリリスを守り切れるか不安だからな」

「……ありがとうございます。では、行きましょう!」

 掛け声と共に結界を解除し、更に【ストレージ】から出した火属性付きの石を魔物に向かって投擲する。石が衝撃を受けると【魔法付与エンチャント】した魔法が発動して魔物達がまとめて吹き飛んで行く。
 血と肉片のシャワーを浴びた魔物はその死体を乗り越え、こちらに向かい進撃する。

「指一本触れさせません」

 閃き。
 リリスの剣が血塗れの魔物の首を確実に切り落として行く。
 魔剣の効果で限界以上の身体能力を無理矢理に引き出させているためにリリスには相当の負担がかかるが、生き残る為だ。その辺は承知してもらおう。

 リリスの様子を横目に見ながら、俺も一本の剣を取り出す。
 両手剣ツヴァイハンダー。前の世界での俺の身長と同じくらいの大きさの大剣だ。効果は比較的大した事無い方で、土属性魔法で折れにくくし、折れても再生するようになっている。

 両手剣ツヴァイハンダーを振り抜き、オークの胴体を真っ二つに切り裂く。
 次にゴブリン数体の首を切り落とし、後ろに回ったオークを【風属性魔法】で刃を模って斬り殺した。
 スライムを切り飛ばしてオーガに向かい、剣を喉に突き刺して絶命させる。そして一箇所に固まっていたゴブリンを【魔法付与エンチャント】した石で爆散させた。

 余裕ができたところでリリスの方を見る。
 リリスはオーガの拳を紙一重で躱して、カウンターの一突きでオーガの目を貫いたところだった。足元に相当な数の魔物の死体が散乱している。この調子なら直ぐに全滅させられるだろう。

 俺も戦闘に戻る。
 植物系の魔物が吐き出す酸を避けながら魔物の首を切り、火属性魔法で残っている魔物を焼いて行く。
 そして、一際大きいオーガを殺した事を最後に、魔物達は撤退を始めた。

「ふぅーっ」

 息を吐きながら、身体に着いた血などの汚れを水属性魔法で落として行く。

「はあっ、はあっ、やっと終わりましたか……」

 疲弊した様子のリリスが戻って来る。限界を超えたせいか、所々肉離れを起こしているようだ。

「おっと、大丈夫……じゃあ無さそうだな」

「すいません……」

 足を縺れさせて倒れそうになったリリスを抱きかかえる。数分の戦闘であったにも関わらずリリスの身体は汗だくで、熱かった。
 【光属性魔法】を使って治癒をすると、リリスはかくんと気を失ってしまった。

「このままにはしておけないよな……」

 俺に寄りかかった状態で寝息を立てるリリス。
 不謹慎だとは思うが、やはり可愛いと思う。

 リリスの汗で濡れた銀髪を指で梳く。乾いた血が指に引っかかる。
 リリスを戦わせたのは俺だ。魔物の気配に気付かず、油断して大量の魔物に囲まれた。
 それほど強くないリリスに武器を渡した。戦える力を渡して、無理をさせて苦しませた。

リリスちゃんは優しい子だね。

 セシリアのあの言葉が思い出される。
 きっとリリスは、俺を責めない。
 戦えない自分が悪かったと、魔物を嗾けた魔物使いが悪いと言って、俺を許すだろう。

 運が悪かった。

 オーガに追われている時、リリスはそう思って生きる事を諦めたと言っていた。

「違う。リリス」

 悪いのは、俺だ。そして、俺は卑怯だ。
 否定されない今で、俺が許されないようにしている。

「……ごめん」

 こんなに、傷付けてしまった。
 もう二度と、こんな事はあってはならない。

 リリスを背負い、今度こそリェリェンへ戻る。

 絶対に、リリスを悪だなんて言わせない。

「………」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...