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二章 「初めて会った時から」
14話
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翌日、俺たちはセシリアの宿屋を出た後、ギルドに来ていた。
目的はもちろん、依頼を受けるため。
「冒険者は、依頼を受ける時は基本的に自分のランクと同ランクの依頼を受けます。ギルドの規約では、一応は一つ上のランクまでは受ける事が出来るようになっていますが」
リリスの説明を聞きながら、掲示板に貼ってある依頼を見る。先ずはFランクの依頼から受けるべきだろう。色々な面倒を考えると。
Fランク依頼の中から『薬草の採取』をする事にした。これは常に貼ってある依頼で、そもそも依頼を受注する必要も無いらしい。
薬草十本につき銅貨2枚。リリスに言わせると、初心者にはこれくらいが丁度いいのだそうだ。
早々にギルドから出る。どうにもこっちに向けられる視線に嫌なものが混じっていたからだ。
中身はともかく、見た目の上では俺たちは少女二人のパーティ。仲間に取り込んでから、力尽くで行為に及ぼうとする者がいるかもしれない。
そうで無くとも、少なからず下心を持って近付いて来るだろう。
「採取系で良いんですか? エンマさんなら討伐系でも何ら問題無いと思うんですけど」
「ああ。余計に目立つ必要も無いし、そもそも今はあそこにいたくないからな」
リリスは首を傾げるが、俺が視線を気にし過ぎなのか? もしくは気配に敏感過ぎるだけなのだろうか。
気にするだけ無駄か。とにかく今は依頼達成を目指すだけだ。
薬草の群生地は、リェリェンの東門から出て直ぐの森の中だ。リリスと会ったのがその森の近くの平原で、魔物が出る事は滅多にないと言う。
出たとしてもゴブリンかスライムか、その程度の弱い魔物だけ。初心者でも余程の事が無い限りは死なないようだ。
そう考えると、リリスが所属していたクランはかなり運が悪かった事になる。オーガなんて、普通は森の中でも見かける事は無いらしい。
それについては、ギルドがAランクパーティに森の調査を依頼しているみたいだが、原因は分かっていないようだな。
「お、あった。一気に四本か」
「はい。こっちも三本見つけました。これでも少ない方ですよ」
「流石はFランクのだな。それほど苦労せずに済ませられそうだ」
とは言っても、警戒はするに越した事は無い。今のところは近くに魔物の気配も無いし、採取に集中していても良いんだけどな。
おっと、また五本見つけた。なるべく傷付けないようにして採る。別に傷が付いても問題は無いらしいが、鮮度を考えると綺麗な状態で採っておきたいな。
微妙に楽しくなってきて、いつの間にか採取に夢中になっていた。気がつくと、森の大分奥の方まで来てしまっていたようだ。
少しではあるが魔力が濃くなって来たし、魔物の気配も感じられる。
薬草は十分採れたし、そろそろ戻った方が良いだろう。
「リリス、そろそろ引き返そう」
「そうですね。結構奥まで来てしまいましたし、魔物に襲われる前に帰りましょうか」
リリスの承認も得た事だし、薬草採取は終了して、リェリェンに引き返す事にする。いや、しようとした。
「あ、待てリリス。囲まれてる」
全くもって、なんで今まで気がつかなかったのか。俺たちは、かなりの数の魔物に囲まれていた。
強さの程は、オーガよりはずっと弱い。一体ずつならリリスでも倒せるレベルだ。
それぞれはEランクの中位ぐらいだが、この数になるとガズルドのパーティでも容易には抜けられないだろう。ガズルドがCランクだった事を考えると、この魔物の群れはDランク上位かCランク下位くらいか。
そんな事を考えている間にも魔物の気配は続々と集まって来る。そろそろ3桁を超えるな。
さて、結構さらっと言ったがこれはかなり異常な事態だ。
気配の違いから魔物達の種類を推測しているが、少なくともゴブリン、オーク、コボルト、スライムなんかがいる。他にはそれらの上位種や植物系の魔物と、普通に考えてあり得ない。
「100体以上の魔物が俺たちに殺気を向けている。それも様々な種類のやつらがだ」
「そんな! あり得ません、種類の違う魔物が徒党を組むなんて……」
そこでリリスは言葉を切る。何かを考えている様子だ。
この現象に心当たりがあるのかは分からないが、取り敢えずは結界を張っておこうか。
【空間属性魔法】で作った結界に更に風属性を織り込む。即席風属性結界の完成だ。
強度の上では本来のものに劣るが、この程度の魔物ならば難なく防げる。
取り敢えず危険を遠ざけたところで、リリスに振り返る。
「リリス、これに心当たりがあるのか?」
「はい。かなり高位の魔物使いならば、不可能ではありません」
魔物使い。
【闇属性魔法】或いはスキルの【使役】を使い、魔物を従僕にする奴の事だな。天職が魔物使いならばスキルの適性も高くなる。
え? なんで知ってるのかって? 今まで一人で生きて来たからって誰とも話していなかった訳じゃ無いんだよ。邪神領近くに住んでるフェアリーさんから教えてもらいました。
ま、その話は別の機会にするとして。
「その、高位の魔物使いがいるって事なのか? この森に」
「有力な可能性の一つです。Bランククラスの魔物の襲来も考えられたのですが、そうなると私たちを襲う意味がありませんから」
確かにな。最低限ではあったが、俺の察知に気づかなかったと言う事は、少なくともある程度は気配を絶っていたのだろう。
それだけなら自分らより強い魔物に怯えていたと説明がつくが、今回のは明らかに俺たちを狙って動いている。何者かが何らかの意図を持って嗾けていると考えた方が自然だろうな。
「これは、ギルドに報告する必要がありますね」
「じゃあ、さっさとこいつらを退かさなきゃな」
既に魔物の数は150体にまで膨れ上がっており、更にオーガクラスの魔物もちらほらと見えて来ている。
「リリス、戦闘のスタイルは何だ?」
「剣です。今のままだとかなり危険ですが」
「そうか。じゃあこれだな」
【ストレージ】から一振りの剣を取り出す。リリスが見せたのと同系統の鎧通剣タイプの剣。
これは件の調子に乗って作ってしまったやつの一つだ。【無属性魔法】を【魔法付与】で付けてあり、更に魔力を溜める効果のある魔石も幾つか使っているため、魔石の魔力が保つ限りは持っているだけで身体能力が上がると言う反則仕様になっている。
リリスは剣を受け取ると、驚いた様な表情をする。
「何ですかこれ、身体が軽くなった気がします」
「魔剣だ。装備すると身体能力が上がるようになっている。流石にこの数だとリリスを守り切れるか不安だからな」
「……ありがとうございます。では、行きましょう!」
掛け声と共に結界を解除し、更に【ストレージ】から出した火属性付きの石を魔物に向かって投擲する。石が衝撃を受けると【魔法付与】した魔法が発動して魔物達がまとめて吹き飛んで行く。
血と肉片のシャワーを浴びた魔物はその死体を乗り越え、こちらに向かい進撃する。
「指一本触れさせません」
閃き。
リリスの剣が血塗れの魔物の首を確実に切り落として行く。
魔剣の効果で限界以上の身体能力を無理矢理に引き出させているためにリリスには相当の負担がかかるが、生き残る為だ。その辺は承知してもらおう。
リリスの様子を横目に見ながら、俺も一本の剣を取り出す。
両手剣。前の世界での俺の身長と同じくらいの大きさの大剣だ。効果は比較的大した事無い方で、土属性魔法で折れにくくし、折れても再生するようになっている。
両手剣を振り抜き、オークの胴体を真っ二つに切り裂く。
次にゴブリン数体の首を切り落とし、後ろに回ったオークを【風属性魔法】で刃を模って斬り殺した。
スライムを切り飛ばしてオーガに向かい、剣を喉に突き刺して絶命させる。そして一箇所に固まっていたゴブリンを【魔法付与】した石で爆散させた。
余裕ができたところでリリスの方を見る。
リリスはオーガの拳を紙一重で躱して、カウンターの一突きでオーガの目を貫いたところだった。足元に相当な数の魔物の死体が散乱している。この調子なら直ぐに全滅させられるだろう。
俺も戦闘に戻る。
植物系の魔物が吐き出す酸を避けながら魔物の首を切り、火属性魔法で残っている魔物を焼いて行く。
そして、一際大きいオーガを殺した事を最後に、魔物達は撤退を始めた。
「ふぅーっ」
息を吐きながら、身体に着いた血などの汚れを水属性魔法で落として行く。
「はあっ、はあっ、やっと終わりましたか……」
疲弊した様子のリリスが戻って来る。限界を超えたせいか、所々肉離れを起こしているようだ。
「おっと、大丈夫……じゃあ無さそうだな」
「すいません……」
足を縺れさせて倒れそうになったリリスを抱きかかえる。数分の戦闘であったにも関わらずリリスの身体は汗だくで、熱かった。
【光属性魔法】を使って治癒をすると、リリスはかくんと気を失ってしまった。
「このままにはしておけないよな……」
俺に寄りかかった状態で寝息を立てるリリス。
不謹慎だとは思うが、やはり可愛いと思う。
リリスの汗で濡れた銀髪を指で梳く。乾いた血が指に引っかかる。
リリスを戦わせたのは俺だ。魔物の気配に気付かず、油断して大量の魔物に囲まれた。
それほど強くないリリスに武器を渡した。戦える力を渡して、無理をさせて苦しませた。
リリスちゃんは優しい子だね。
セシリアのあの言葉が思い出される。
きっとリリスは、俺を責めない。
戦えない自分が悪かったと、魔物を嗾けた魔物使いが悪いと言って、俺を許すだろう。
運が悪かった。
オーガに追われている時、リリスはそう思って生きる事を諦めたと言っていた。
「違う。リリス」
悪いのは、俺だ。そして、俺は卑怯だ。
否定されない今で、俺が許されないようにしている。
「……ごめん」
こんなに、傷付けてしまった。
もう二度と、こんな事はあってはならない。
リリスを背負い、今度こそリェリェンへ戻る。
絶対に、リリスを悪だなんて言わせない。
「………」
目的はもちろん、依頼を受けるため。
「冒険者は、依頼を受ける時は基本的に自分のランクと同ランクの依頼を受けます。ギルドの規約では、一応は一つ上のランクまでは受ける事が出来るようになっていますが」
リリスの説明を聞きながら、掲示板に貼ってある依頼を見る。先ずはFランクの依頼から受けるべきだろう。色々な面倒を考えると。
Fランク依頼の中から『薬草の採取』をする事にした。これは常に貼ってある依頼で、そもそも依頼を受注する必要も無いらしい。
薬草十本につき銅貨2枚。リリスに言わせると、初心者にはこれくらいが丁度いいのだそうだ。
早々にギルドから出る。どうにもこっちに向けられる視線に嫌なものが混じっていたからだ。
中身はともかく、見た目の上では俺たちは少女二人のパーティ。仲間に取り込んでから、力尽くで行為に及ぼうとする者がいるかもしれない。
そうで無くとも、少なからず下心を持って近付いて来るだろう。
「採取系で良いんですか? エンマさんなら討伐系でも何ら問題無いと思うんですけど」
「ああ。余計に目立つ必要も無いし、そもそも今はあそこにいたくないからな」
リリスは首を傾げるが、俺が視線を気にし過ぎなのか? もしくは気配に敏感過ぎるだけなのだろうか。
気にするだけ無駄か。とにかく今は依頼達成を目指すだけだ。
薬草の群生地は、リェリェンの東門から出て直ぐの森の中だ。リリスと会ったのがその森の近くの平原で、魔物が出る事は滅多にないと言う。
出たとしてもゴブリンかスライムか、その程度の弱い魔物だけ。初心者でも余程の事が無い限りは死なないようだ。
そう考えると、リリスが所属していたクランはかなり運が悪かった事になる。オーガなんて、普通は森の中でも見かける事は無いらしい。
それについては、ギルドがAランクパーティに森の調査を依頼しているみたいだが、原因は分かっていないようだな。
「お、あった。一気に四本か」
「はい。こっちも三本見つけました。これでも少ない方ですよ」
「流石はFランクのだな。それほど苦労せずに済ませられそうだ」
とは言っても、警戒はするに越した事は無い。今のところは近くに魔物の気配も無いし、採取に集中していても良いんだけどな。
おっと、また五本見つけた。なるべく傷付けないようにして採る。別に傷が付いても問題は無いらしいが、鮮度を考えると綺麗な状態で採っておきたいな。
微妙に楽しくなってきて、いつの間にか採取に夢中になっていた。気がつくと、森の大分奥の方まで来てしまっていたようだ。
少しではあるが魔力が濃くなって来たし、魔物の気配も感じられる。
薬草は十分採れたし、そろそろ戻った方が良いだろう。
「リリス、そろそろ引き返そう」
「そうですね。結構奥まで来てしまいましたし、魔物に襲われる前に帰りましょうか」
リリスの承認も得た事だし、薬草採取は終了して、リェリェンに引き返す事にする。いや、しようとした。
「あ、待てリリス。囲まれてる」
全くもって、なんで今まで気がつかなかったのか。俺たちは、かなりの数の魔物に囲まれていた。
強さの程は、オーガよりはずっと弱い。一体ずつならリリスでも倒せるレベルだ。
それぞれはEランクの中位ぐらいだが、この数になるとガズルドのパーティでも容易には抜けられないだろう。ガズルドがCランクだった事を考えると、この魔物の群れはDランク上位かCランク下位くらいか。
そんな事を考えている間にも魔物の気配は続々と集まって来る。そろそろ3桁を超えるな。
さて、結構さらっと言ったがこれはかなり異常な事態だ。
気配の違いから魔物達の種類を推測しているが、少なくともゴブリン、オーク、コボルト、スライムなんかがいる。他にはそれらの上位種や植物系の魔物と、普通に考えてあり得ない。
「100体以上の魔物が俺たちに殺気を向けている。それも様々な種類のやつらがだ」
「そんな! あり得ません、種類の違う魔物が徒党を組むなんて……」
そこでリリスは言葉を切る。何かを考えている様子だ。
この現象に心当たりがあるのかは分からないが、取り敢えずは結界を張っておこうか。
【空間属性魔法】で作った結界に更に風属性を織り込む。即席風属性結界の完成だ。
強度の上では本来のものに劣るが、この程度の魔物ならば難なく防げる。
取り敢えず危険を遠ざけたところで、リリスに振り返る。
「リリス、これに心当たりがあるのか?」
「はい。かなり高位の魔物使いならば、不可能ではありません」
魔物使い。
【闇属性魔法】或いはスキルの【使役】を使い、魔物を従僕にする奴の事だな。天職が魔物使いならばスキルの適性も高くなる。
え? なんで知ってるのかって? 今まで一人で生きて来たからって誰とも話していなかった訳じゃ無いんだよ。邪神領近くに住んでるフェアリーさんから教えてもらいました。
ま、その話は別の機会にするとして。
「その、高位の魔物使いがいるって事なのか? この森に」
「有力な可能性の一つです。Bランククラスの魔物の襲来も考えられたのですが、そうなると私たちを襲う意味がありませんから」
確かにな。最低限ではあったが、俺の察知に気づかなかったと言う事は、少なくともある程度は気配を絶っていたのだろう。
それだけなら自分らより強い魔物に怯えていたと説明がつくが、今回のは明らかに俺たちを狙って動いている。何者かが何らかの意図を持って嗾けていると考えた方が自然だろうな。
「これは、ギルドに報告する必要がありますね」
「じゃあ、さっさとこいつらを退かさなきゃな」
既に魔物の数は150体にまで膨れ上がっており、更にオーガクラスの魔物もちらほらと見えて来ている。
「リリス、戦闘のスタイルは何だ?」
「剣です。今のままだとかなり危険ですが」
「そうか。じゃあこれだな」
【ストレージ】から一振りの剣を取り出す。リリスが見せたのと同系統の鎧通剣タイプの剣。
これは件の調子に乗って作ってしまったやつの一つだ。【無属性魔法】を【魔法付与】で付けてあり、更に魔力を溜める効果のある魔石も幾つか使っているため、魔石の魔力が保つ限りは持っているだけで身体能力が上がると言う反則仕様になっている。
リリスは剣を受け取ると、驚いた様な表情をする。
「何ですかこれ、身体が軽くなった気がします」
「魔剣だ。装備すると身体能力が上がるようになっている。流石にこの数だとリリスを守り切れるか不安だからな」
「……ありがとうございます。では、行きましょう!」
掛け声と共に結界を解除し、更に【ストレージ】から出した火属性付きの石を魔物に向かって投擲する。石が衝撃を受けると【魔法付与】した魔法が発動して魔物達がまとめて吹き飛んで行く。
血と肉片のシャワーを浴びた魔物はその死体を乗り越え、こちらに向かい進撃する。
「指一本触れさせません」
閃き。
リリスの剣が血塗れの魔物の首を確実に切り落として行く。
魔剣の効果で限界以上の身体能力を無理矢理に引き出させているためにリリスには相当の負担がかかるが、生き残る為だ。その辺は承知してもらおう。
リリスの様子を横目に見ながら、俺も一本の剣を取り出す。
両手剣。前の世界での俺の身長と同じくらいの大きさの大剣だ。効果は比較的大した事無い方で、土属性魔法で折れにくくし、折れても再生するようになっている。
両手剣を振り抜き、オークの胴体を真っ二つに切り裂く。
次にゴブリン数体の首を切り落とし、後ろに回ったオークを【風属性魔法】で刃を模って斬り殺した。
スライムを切り飛ばしてオーガに向かい、剣を喉に突き刺して絶命させる。そして一箇所に固まっていたゴブリンを【魔法付与】した石で爆散させた。
余裕ができたところでリリスの方を見る。
リリスはオーガの拳を紙一重で躱して、カウンターの一突きでオーガの目を貫いたところだった。足元に相当な数の魔物の死体が散乱している。この調子なら直ぐに全滅させられるだろう。
俺も戦闘に戻る。
植物系の魔物が吐き出す酸を避けながら魔物の首を切り、火属性魔法で残っている魔物を焼いて行く。
そして、一際大きいオーガを殺した事を最後に、魔物達は撤退を始めた。
「ふぅーっ」
息を吐きながら、身体に着いた血などの汚れを水属性魔法で落として行く。
「はあっ、はあっ、やっと終わりましたか……」
疲弊した様子のリリスが戻って来る。限界を超えたせいか、所々肉離れを起こしているようだ。
「おっと、大丈夫……じゃあ無さそうだな」
「すいません……」
足を縺れさせて倒れそうになったリリスを抱きかかえる。数分の戦闘であったにも関わらずリリスの身体は汗だくで、熱かった。
【光属性魔法】を使って治癒をすると、リリスはかくんと気を失ってしまった。
「このままにはしておけないよな……」
俺に寄りかかった状態で寝息を立てるリリス。
不謹慎だとは思うが、やはり可愛いと思う。
リリスの汗で濡れた銀髪を指で梳く。乾いた血が指に引っかかる。
リリスを戦わせたのは俺だ。魔物の気配に気付かず、油断して大量の魔物に囲まれた。
それほど強くないリリスに武器を渡した。戦える力を渡して、無理をさせて苦しませた。
リリスちゃんは優しい子だね。
セシリアのあの言葉が思い出される。
きっとリリスは、俺を責めない。
戦えない自分が悪かったと、魔物を嗾けた魔物使いが悪いと言って、俺を許すだろう。
運が悪かった。
オーガに追われている時、リリスはそう思って生きる事を諦めたと言っていた。
「違う。リリス」
悪いのは、俺だ。そして、俺は卑怯だ。
否定されない今で、俺が許されないようにしている。
「……ごめん」
こんなに、傷付けてしまった。
もう二度と、こんな事はあってはならない。
リリスを背負い、今度こそリェリェンへ戻る。
絶対に、リリスを悪だなんて言わせない。
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