転生×召喚 ~職業は魔王らしいです~

黒羽 晃

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二章 「初めて会った時から」

15話

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 気絶しているリリスを宿屋に連れて行く。
 部屋のベッドにリリスを寝かせると、汚れを拭き取っておいた。

 何故かセシリアがいなかったのだが、買い出しか何かに行っていたのだろう。夕食時には帰っている筈だ。


 その後は、森での出来事をギルドに報告しに行った。当然、魔物使いのいる可能性もだ。
 受付嬢は疑わしげな顔をしていたが、【ストレージ】からオーガの牙を取り出すと顔色を変えて奥の方へと駆けて行った。
 十数秒後に受付嬢は、見知らぬ男を連れて戻って来る。赤銅色の髪に黒目、浅黒く焼けた肌の偉丈夫。

「初めましてかな、エンマ君。俺はリェリェン支部のギルドマスターをやっているセルゲイだ」

「初めまして、炎真です」

 ギルドマスター、元Aランク以上の冒険者がその地位に立てると言う。セルゲイは口こそ軽いが、それ相応の威厳と言うものを感じた。

「早速本題に入りたいんだが、ここでは話せないからな。奥の部屋に来てくれ」

 言われるがままに奥の部屋へと案内される。恐らくはギルドマスターの執務室だろう、質素な文机と椅子だけがあった。
 セルゲイに椅子をすすめられたので、遠慮無く座らせてもらう事にする。

「そうだな、先ずは君がアレシアに見せたこれについてだ」

 そう言って取り出したのは、俺が受付嬢に見せたオーガの牙。確か、最後に倒した一際でかい個体のやつだった筈だ。
 それで、それがどうかしたのか?

「単刀直入に言おう。こいつはオーガジェネラル、オーガの統率個体だ。Bランク相当の魔物になる」

「まさか、それが今回の件の原因だなんて言いませんよね」

「当然だ。ゴブリンやオーガならともかく、ジェネラルがスライムまで統率できる訳が無いからな」

 だったら、なんで今オーガジェネラルの牙がここに出てくるのか、この件にどう関係するんだよ。
 つって、実際には分かっているんだけどな。

「ゴブリンが進化を繰り返してオーガになるケースは少なからず存在する。だが今回のは、本当の事だとすればかなり異常だ。
 そもそも、オーガが複数体出る事自体が普通ならあり得ない事だ。オーガジェネラルにまで進化するなど不可能に近い」

「ですが、実際に進化してオーガジェネラルが出現した」

「そうだ。何度も言うがこれは異常事態。君のパーティのリリス君が言った魔物使いが本当にいるのならこれからが厄介になる」

「ジェネラル級の魔物が、更に増える可能性が高いと言う事ですか」

 蠱毒と言う呪術がある。百足、ゲジなどと言った虫を同じ容器に入れて共食いさせ、最後に残った一匹が神霊になると言ったもの。
 魔物使いはそれをやっているのだろう。同格の魔物同士を戦わせ、殺させて無理矢理に格を上げている。

「そうだな。魔物同士で殺し合いをさせているなら、もしかしたらオーガジェネラル以上の魔物まで出てくるかもしれない。
 そうなると、魔物使いの目的が気になるんだが」

 目的か、確かに。
 俺たちを襲ったのも魔物使いの命令だろう。ならばその理由は?

「……戦力を削る、とか」

「エンマ君。それはつまり、魔物使いは最終的にリェリェンに攻め込むと、そう言っているのか?」

「森に調査に行ったと言うAランクパーティは帰還しましたか?」

 もし帰って来ていないのであれば、既に殺された可能性がある。

「いや、一人だけだが帰還した。パーティの他の三人は死んだとだけ言っていたな。その時は何も話せる状態じゃ無かったから、傷が治ったら話を聞くつもりだ」

 やはりか。
 平原にオーガが現れたと言う報告を聞き、調査に行った冒険者が殺された。目的は討伐では無かったから、もしもの時に撤退する用意は出来ていたんだろう。
 だから帰還できた。Aランクパーティが、一人しか帰還できなかった。

「エンマ君」

「なんでしょう?」

「敵は何処にいる?」

 君の推測を聞きたい。セルゲイはそう言っている。
 例の平原に現れたオーガも魔物使いの所為だとすれば、ガストンのクランを潰すのが目的だったのなら、俺はそれを邪魔した事になる。
 俺がリリスを助けたために、リリスにオーガの情報をギルドに報告された。魔物使いにとって、それは想定外だった筈。
 そして、俺は薬草を採取している時、【変化へんげ】を解いていた。だから俺の事をオーガを倒した奴だと判断できた。

 都合良く森の奥まで来た俺たちに魔物の群れを嗾けた。オーガ一体を倒せる程度の強さの奴なら、これで殺せるとでも思ったのだろうか。だとしても過剰戦力だったとは思う。

 ここまで考えると、一つの疑問が浮かび上がってきた。
 俺たちを襲わせるタイミングを掴めたのは何故か、と。

「ギルドマスター、その前に訊きたい事があります」

「何だ?」

 これが合っているとすれば、リリスをまた危険に晒す事になってしまう。

「気配も、魔力も完全に遮断できる人物か種族に心当たりはありますか?」

 薬草採取は急ぐべき事では無かったから森までは歩いて行ったと思う。
 森の外に魔物が出る事は滅多に無いと聞いていた。
 一度周りの気配を探って、魔物がいないと判断したから警戒を緩めていた。

 もし、街の方から尾行されていたとすれば。
 俺の探知を逃れて尾けて来られる奴がいて、そいつが魔物使いだったとするならば。

「そうだな、超一流の暗殺者ならばそれも可能だが、リェリェンにいると言う話は聞かないな。
 魔法に長けている奴なら魔力を絶つくらいなら出来るが、完全にとは行かないだろう。そもそもそんな奴なら王都に集まる筈だしな」

 他にも、幾つかの例が挙げられていく。
 気配を操る術を持つ獣人、魔力を潜めて狩りを行うエルフ。魔族にもそれに当てはまる種族はあった。
 しかしどれも、余程の修行を積まない限りはさっきの条件を両立できない。

「その他には?」

 他にはあったか、と首を傾げるギルドマスター。

「ああ、あいつを忘れていたな」

 そして、思い出したように呟く。

「何ですか」

 冷や汗が垂れる。嫌な予感がする。
 何かもう、拙い事になっているかの様な焦燥。

 セルゲイが口を開く。そこから紡ぎ出されるその単語は、俺の予感を裏付けてしまった。

悪魔族デーモンだよ。気配も魔力も完璧に遮断できる種族」

 ……確信した。

「……分かりました」

 椅子から立ち上がり、部屋から出て行こうとする。

「敵に、心当たりがあるって事だな」

「……ええ、まあ」

 俺の様子を訝しむ事無く平然と言うセルゲイ。
 俺は少しだけ足を止めて、セルゲイに言った。

「敵は、リェリェンにいます」

 赤髪の女性が頭に浮かぶ。
 同じ魔族だからか、自身の境遇を話した人物。
 人間を、リェリェンを、ネィレン王国を恨む動機のある彼女。

 人族至上主義に、親を殺された。

「そうか。警戒しておく」

「そうして下さい」

 ーーセシリア
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