転生×召喚 ~職業は魔王らしいです~

黒羽 晃

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二章 「初めて会った時から」

17話

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「魔物の大軍だ! 戦える者は集まれ!」

 今回の侵攻はその一声から唐突に始まった。
 全く、あの少女の言ったとおりだな。近く侵攻があるだろうと。
 だが、少し早過ぎないか?

 私、リェリェン支部のギルドマスターことセルゲイは、東門の様子を眺めていたーー

「いや眺めてないで戦いに行って下さい」

「おいおい、手厳しいなあ、アレシア」

「当然です。エンマさんの言を信じるなら、オーガジェネラルの現出もあり得るんですよ? それも複数」

「……だね」

 傍らに置いてあった鉄槌を持ち上げ、軽く二、三度振り回す。
 アレシアは当たらないように鉄槌の射程の外まで引いていた。全く、よく出来た受付嬢だよ。

「それじゃ、前線で戦ってる冒険者の援護に行って来るから、後はよろしくね」

「分かりましたから、さっさと行って下さい」

「ははっ、今生の別れかも知れないってのに可愛げの無い」

 Bランク以上の魔物になると、硬く重い防具は意味が無い。その攻撃力は鉄の硬さをものともしないからだ。
 故にランクの高い冒険者が鎧を着ている事は殆ど無い。私も同じで、装備は長年連れ添ったこの鉄槌だけだ。

 前衛が取りこぼしたらしいホブゴブリンを殴り飛ばす。うん、少し鈍っているけどまあまあ戦える。

「おい、ギルドマスターが出てきたぞ」

 おっと、遠くから来た冒険者かな。何人か集まっている。
 だが気にしている暇は無いな。士気が上がるなら良いが、もうここは戦場だ。

 前衛の取りこぼしを殲滅しながら、徐々に前線へと近付く。ここまで来ると冒険者の目に付く事も多くなる。

「ギルドマスターだ」

「セルゲイさんが戦うのか?」

「てめえら、ギルマスが来たぞ! 情けねえとこ見せんなよ!」

『応!!!』

 ギルドマスターの肩書きには士気向上の効果があるとは聞いていたが、ここまでなのか。
 初めてだから、ちょっと驚いたな。まあいい。

 冒険者たちの隙間をぬうようにして前線へ出る。そこには大量の魔物たちがひしめき合っていた。
 どれもがDランクを越す魔物ばかりで、既に少なくない数の冒険者が倒れている。彼等は残念だったと思うしか無いな。

 さて、集団戦の定石はっと。

「強い奴から叩く!」

 近くにいたオーガの頭を鉄槌で思い切り吹き飛ばしてやった。冒険者側から歓声が上がり、更に士気が上がった。
 私はそれには目もくれず雑魚を纏めて打ち飛ばしつつ、他の冒険者では苦戦しそうな魔物を探す。
 言ってしまえば、Dランクくらいなら私がいなくても何とかなる。私はオーガなどの強い魔物を倒していけば良い訳だ。

 その後、数体のオーガを倒して突き進むと、遂にそいつとまみえた。

「やっと見つけた、オーガジェネラル」

「Gurrrrr」

 獣の唸り声、迸る殺気。
 知性の欠片も見えない目に、しかし確かな闘志を宿す。

 オーガジェネラルはBランク相当の魔物。
 全盛期の頃なら歯牙にもかけない相手だったんだが、今だと分からないな。

 小手調べと行きたいところだが、時間も無いのでね。最初から全力で行かせてもらうよ。

 一歩踏み込み、ジェネラルの脚へ鉄槌を叩き込む。しかしそれは一歩引く事で躱される。
 ジェネラルが拳を振り下ろす。私はそれを更に一歩踏み込む事でその威力を受けないようにする。
 そして懐に潜り込む形になった私は、鉄槌を振り上げた。

 ジェネラルの顎を捉える軌道を描き、鉄槌はジェネラルの顔を粉砕すべく加速する。
 簡易的に無属性魔法を行使して身体能力を引き上げるが、ジェネラルは腰を捻ってそれを躱した。

「んなっ」

 衝撃。
 死角からの蹴撃を受け、私の身体は盛大に吹っ飛ばされた。
 あれは明らかに体術の概念、どうしてオーガがそんなものを?

「Goaaa!」

 疑問を抱く間すら与えないと言うように、ジェネラルの追撃が襲う。
 私は飛び上がって何とか避けると、運良く手放さなかった鉄槌を握りしめた。

 暫く戦って来なかった事で鈍っている事を抜いても、過去に戦ったオーガジェネラルより強い。付け焼き刃程度であれ、体術を使う魔物がこんなに強いとは。

 ジェネラルは素早く私の前に現れて、左腕を振り抜く。それを避け、更なる追撃を躱し、懐へ潜り込み鉄槌の柄の部分で腹を突いた。
 確かな手応え、余り効いていないようだが、確実にダメージを与えたのは確かだ。
 このペースでダメージを与えられたとしても、オーガの自然治癒能力ですぐに治ってしまうだろう。だが……

【火を吹け、魔槌】

 鉄槌から炎が上がる。
 この鉄槌は魔具。火属性魔法を【魔法付与エンチャント】された代物だ。
 魔力を流すと鉄槌が燃え上がる。

「火傷には自然治癒の効果が薄い」

 それに、炎なら紙一重で躱したとしてもダメージが入る。現状の最善策だ。
 問題は、この状態は結構魔力を食うと言う事だが、それまでに倒せば問題無し。

 更に無属性魔法をかけて、身体能力を引き上げる。今後を考えると余力は残っていた方が良いんだが、そんな事は考えていられないと判断した。
 一気に畳み掛ける!

 即座に接近し鉄槌を振るい、バックステップして避けたところに蹴りを入れる。
 予想以上の力を入れられたジェネラルの身体は吹き飛び、私は追撃すべく飛び掛かる。

 意図せずして先ほどと同じ構図になったが、ここで違うのは私が火を使っている事。
 仰向けに倒れているジェネラルに鉄槌を叩き込む。ジェネラルは咄嗟に避けようとはせず、倒れたままの状態で拳を振るった。

 驚きはしたが、無理な体勢からの拳。威力は少なく、また遅い。
 私は身を軽く捻って躱し、灼熱の鉄槌をジェネラルの胴体に打ち付けた。
 骨を折り、肉を潰し、命を断つ感覚。
 なかなか苦戦したが、私はオーガジェネラルを倒した。

 しかし、このクラスの魔物があとどれだけいるのだろうか。
 考えていても仕方が無いか。今は殲滅を急ごう。

 襲い掛かる魔物を打ち、殴り、潰していく。そして時々出るオーガを狙って殺す。
 冒険者たちからはまだ雄叫びが聞こえて来る。戦線は維持できているようだな。

 それでは、他の冒険者の為に魔物の数を減らしていこうか。


 ……何十分戦ったか。
 私の足元には魔物の死骸が散乱し、今も無尽蔵に思える魔物に囲まれている。
 息は切れ、腕はそろそろ上がらなくなってきている。

 だがまだだ。まだ戦える。
 昔の勘も戻って来た。今なら無限にだって戦える筈。

「いや、それは無理ってものかな」

 流石に無限は無理だな。
 だが、無尽蔵に見えた魔物の大群も、もう終わりが見えてきた。あれからオーガジェネラルも見かけていない。

 勝てる。

「オオォォォォォォ!!!」

 立ち、叫ぶ。全身を鼓舞し、奮い立たせる。
 身体が熱い、燃えているようだ。鉄槌に灯せる程の魔力も残っていないのに。
 ただ無心で、無我夢中で鉄槌を振るう。

 もう手の感触が消え、戦闘での緊張感と高揚感が全身を支配する頃。

「はぁっ、はぁっ!」

 最後のホブゴブリンの頭を潰し、そして。

 光を、見た。

 魔物の群れは、そこで終わっていた。

 勝った。

 実感のわかない頭で、その言葉を反芻していく。

「……勝った?」

 そして遂に、ただ息をするだけだった口からそれが溢れでた時、ようやく勝利を感じる事が出来た。

 しかし

  悲鳴・・
 冒険者たちがいる側からそれが響いた。
 ハッとして振り返ると、そこにはオーガジェネラルが……三体。
 まだ余裕のあった私が一体を漸く倒せたそれが三体、D~Cランク冒険者に襲い掛かっていた。

 すぐに助けに行こうと思ったが、逆方向から大群の足音が聞こえて来る。
 またそちらを振り向けば、数の上ではさっきの大群に及ばないものの、その面子を見れば先のよりも遥かに上回る脅威。
 オーガジェネラルよりふた回り以上の巨大な体躯を持つ、オーガキング率いる大軍。

 先ほどまでのは前座だったとでも言うのか?
 そう思える程の圧倒的、絶望的な戦力の差。

 ここが私の墓場か。
 せめて一矢報いる。玉砕の思いで、私は鉄槌を握り直した。
 だが、立てない。

 恐怖じゃない。限界を超えて戦い続けた代償。
 私は、あれを相手に何も出来ずに死ぬのか?

「よくやったセルゲイ。お前は休んでいろ」

 頭に軽い衝撃。
 私に投げられたそれは、回復薬だった。

 誰だと思い、声のした方を向く、前に。冒険者を襲っていたオーガジェネラル三体の首が落ちているのが見えた。
 あのジェネラルを一瞬で倒した?

 そんな事、Sランクの冒険者で無ければ不可能……

「それを飲んで後衛に戻れ。助けが必要な者がいる」

 いや、心当たりはある。
 二年前、リェリェンから姿を消したSランク冒険者。
 声の主の方を向く。以前と変わらない金髪を靡かせて、軽鎧と籠手に身を包んだその格好は。

「アルバート?」

 彼は、何を今更と言う風に息を吐き、剣を抜く。

「如何にも、我が名はアルバート。暴悪なる魔物どもよ、我が剣によって、命を散らすが良い!」
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