転生×召喚 ~職業は魔王らしいです~

黒羽 晃

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三章 「どうだっていい」

32話

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 冒険者ギルドから退出した俺たちは、その後ケレンの案内で武具屋に来ていた。
 と言うのも、日頃の特訓や魔物との戦闘のためにリリスの皮鎧にがた・・が来はじめていたためである。
 無論、手入れを欠かしていた訳では無い。ただ、リェリェンでも長く使っていたのにリェリェンから出た後も酷使し続けていたのが問題だろう。

「ところどころ腐食してやがる。今までは継ぎ接ぎしてダマしてたみてえだが、もう限界だろう。一体どんな使い方していやがった」

「はは……お恥ずかしい限りです」

 呆れてものも言えない。鉱精族ドワーフの店主はリリスの皮鎧を見てため息をついた。
 対してリリスは、申し訳ないと言った風にはにかんでいる。

「ったく……こりゃあもう潰すくらいしか使い道無えぞ。直せねえ事も無えが、ここまでになると一から作った方が楽だ」

「そうなんですか……えっと、エンマさん?」

「良いと思うぞ? 依頼の報酬もあるし、換えるなら今が良い時だろう」

 店主に流し目を送り、それに、と続ける。

「ケレンが勧めるだけはある。間違いなく素晴らしい腕だ」

「ほう、嬉しい事を言ってくれるじゃねえか? お嬢ちゃん」

 店に陳列されている汎用武具を見るだけでも、その品質の良さは分かる。あの店主、粗野な風貌と口調をして、ここまで冒険者を想った装備を作れるらしい。

「で、では、お願いします。店主さん」

「おう、直ぐに取り掛かってやる。今が昼頃だからな、明日の朝一で取りに来い。最高の物を作ってやらぁ」

「ああ、頼むよ。それとこのナイフ、十振りほど欲しいんだけど、あるか?」

「応とも。直ぐに用意できるぜ」

 その武具屋からは、他にも幾つかの消耗品を補充してから後を発った。



 続いて訪れたのは魔法屋。安い魔術具や教本を売っている店だ。「高位の魔法士などの使う高級品は貴族様御用達の店にしか売っていないのだが、基本的な物ならここで十分だと知り合いが言っていた」とはケレンの言。

「エンマは魔法も使うからな。俺はその辺はてんで分からねえが、まあ何かしら役に立つだろう。多分」

「多分ってお前、まあ見てはみるが」

 とは言いつつも、案外内心は興奮していたりする。魔法の教本を軽く捲っているだけなのだが、それには俺の使う超能力のような感覚で行使する魔法では無くて、体系化され簡略化した魔法が書かれている。
 尤も、これ自体はスキルを持たない初心者魔法士の使う教本である。俺にとって学ぶ価値はあるが実戦で使う事は無いだろう。
 それより気になるのが、ランタンのような魔道具。聞いてみるに、魔石から魔力を取り出して光らせる魔道具。そのまんまランタンだな。

「これを二つと、教本を一冊くれ」

「はい、どうぞー」

 店番をしている眠そうな目をした少女が、俺から代金を受け取ると商品を手渡してくれた。

「魔石は別売りかー、自前だからー、気をつけてねー」

「……随分と、気の抜ける話し方だな」

「生まれつきなものでー、えへへ」

 ……しかしながらこの少女、見かけによらずなかなかに強い魔力を持っている。
 魔道具の魔力が雑音のようにしてかき消してはいるが、それでも触れ合うレベルで近づいた時に分かった。
 ……見かけによらずって部分は、俺も同様なのだがね。

「何か必要になったらまた来る。行こう、リリス」

 特に買いたい物も無いらしいリリスを連れ、魔法屋を後にする。

「またのお越しをー、お待ちしてまーすー」

 店番の少女の気の抜けた声が、俺たちの背中を見送った。




「そしてここが闘技場。年に何度かの武闘大会が行われる場でもあり、平時では見世物の試合が催されている」

「一巡後の大会もここで行われるんですね」

 リリスの言葉に、その通り、と返し、ケレンは話を続ける。
 それを右から左へ聞き流しつつ、俺は闘技場の外観を眺めていた。

 あの後もケレンに王都ムラサメを案内され、大方の場所は行き尽くしたと言われて最後に連れられたのがこの闘技場。
 見た目の上では、巨大なドーム状の建物である。上から見た図は分からないが、吹き抜けになっているのではなかろうか。
 側面に開いた窓から内部の歓声が聞こえる。

「賭け試合なんかも、闘技場が運営している。高ランクの冒険者が依頼で見回っていたりするから、だいたいの違法は働けねえ」

 ああ、なるほど。さっきのは賭けに勝った側の声か。単純な試合を見ての感動もあるだろうが。

「大会参加の登録は今から行われている。まあ、名前書いて判を押すだけだから、余計な手間は無い」

「ケレンはもう登録したのか?」

「まあな。大会が近づけばさらに混んで大変になるだろうから、今からやっといた方が良いぜ」

「そうか」

 こっちだ、と言うケレンに付いて行くと、ギルドのようなカウンターがあった。
 どうやら登録用の受付カウンターらしく、文字を書けない参加者の為の代筆もしているらしい。
 俺とリリスは用紙をもらい、名前を書いて受付に渡した。

「はい、エンマ様にリリス様ですね。それでは、用紙に魔力を流して頂けますでしょうか」

 言われた通りに魔力を流すと、用紙に模様が浮かび上がった。

「……これは?」

「魔力印は初めてですか? これは魔力を図形化したもので、本人を照合するために使います。人によって形が違うので偽装できない、便利な印なんです」

 訊いてみると、受付は丁寧に説明してくれた。
 なるほど、これは確かに便利だ。大して手間もかからない上に、不正も難しい。登録者の認証はどうするのか気になってはいたが、こんなシステムがあるとは。
 そう感心する俺を見て、ケレンがくくっと笑う。

「ま、用紙の量産が困難だから、こう言う国営の大会でなけりゃ使われねえもんだがな」

「そうなのか?」

「ああ。これを作れる魔術士が限られるかららしい」

「ふーん。……結構無造作に置いてあった気がするんだが、盗まれたりはしないのか?」

「一応、盗まれても大丈夫な仕掛けはあるらしいな。俺は詳しくねえが」

 そう言うもんなのか。

 ともかく、これでこの闘技場にも用は無くなった。
 闘技場から立ち去り、さてこれからどうしようかと考える。
 と。

くきゅるるるる……

「あ、」

 ……。
 音の鳴った方を見ると、ほのかに顔を赤くしたリリスがはにかむように笑っていた。

「……そろそろいい時間だし、飯にするか」

 と、ケレン。

「……賛成だな」

「すいません……」

 俺が賛同し、リリスからも異論は出ないと言う事で、俺たちは昼食をとる事にした。
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