転生×召喚 ~職業は魔王らしいです~

黒羽 晃

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三章 「どうだっていい」

26話

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 深い森の中、俺はリリスに稽古をつけていた。なんでも、『私より小さくて可愛いのに、守ってもらってばかりではいけない』からだそうだ。
 確かに、リリスは俺よりも弱く、相当危ないところを助けた事もある。そして、そんな事がある度に、リリスは落ち込んでいた。
 せめて守られるだけと言う事が無いようにと、今では毎日のように稽古と言う名の模擬戦を行っている。

「ふっ!」

「お?」

 フェイントからの鋭い突き。確実に喉元を狙って来たそれを、上半身を軽く捻って躱す。何日も足腰立たなくなるまで、いや足腰立たなくなっても【光属性魔法】と【闇属性魔法】の併用で傷も疲労も回復させて特訓した結果、最初は攻撃を軽くいなすだけだったものを、今ではさっきのように避けざるを得ない攻撃を繰り出す事が出来るようになっていた。

「強くなったな」

「っ!」

 ほんの少し、本気を出す。
 二撃、一発目は剣身を、二発目は柄を打ち、鎧通剣エストックを弾き飛ばす。そして次の瞬間には、リリスの喉に切っ先を突き付けていた。

「……参りました」

 リリスには、俺の手元が見えなくなったと思ったら剣を弾かれて負けていた。と感じただろう。

「うう、相変わらず強過ぎます、エンマさん」

「そりゃまあ、育ちも種族も違うからな。それに、リリスもかなり強くなって来てるぞ?」

「確かに、エンマさんに稽古をつけてもらってから大分強くなったとは思います。ですが、どう考えてもエンマさんとの実力差が縮んだように思えなくて……」

 俺とリリスがリェリェンを出発してから、かれこれ三週間は経つ。稽古をつけ始めたのが二週間と少し前、その間で、リリスは最後に会った時のガズルドと同等の実力をつけている。
 つまり、リリスはBランク相当の実力は持っているのだ。本来ランクを一つ上げるのには、早くても二、三月は必要らしいから、リリスの成長は普通では無い。
 そして自分でも理解できる程に、俺も異常だ。リリスにはまだ言っていないが、異世界人で邪神領出身。邪神キロンに召喚され、強化の為のユニークスキルを渡されてSランクではきかない魔物と戦わされていた。

 そんな、血反吐を吐くじゃあ済まない毎日で手に入れた力を、命の危険だけは保障された特訓なんかで縮められてたまるかって話だ。

「こんな特訓で強くなれるんだったら、世界中の冒険者が強くなる為に四苦八苦なんてしてないだろ」

「……そうですね。私、頑張ります!」

 俺の言葉で納得してくれたらしく、気合を入れ直すリリス。何だか、もう、可愛い。
 だが、ほんわかしてるところじゃ無いだろう。【闇属性魔法】と【空間属性魔法】の併用による認知阻害の結界によって、大抵の魔物に見つかると言う事は無いが、大抵では無い何かに結界を突破される可能性もあるのだ。警戒をし過ぎる事は無い。

 座り込んでいるリリスを立たせて、今後について話し合う。
 俺たちの目的地、シデン王国の国境は、ここライノアス森林を抜けて直ぐの所。そこから暫くは、小さな農村や集落があると言う。

「シデン王国、人族と魔族の共存を謳っている国の一つですね」

「ああ、人族から言えば魔族になる俺にとっては、魔族に対する差別が殆ど無いこの国は好都合なんだ」

「なんて言ってますけど」

 口角を吊り上げる俺をジト目で見るリリス。

「その割に、国名を聞いた時点でシデンに行くと決めていましたよね?」

 うん、やっぱバレてるな。
 いや、仕方が無いよね、元日本人としては気にならない筈が無いと思う。『シデン』って、どうやっても『紫電』に変換されてしまうものだから、何か日本と関係あるかもとか思うのも無理は無いだろう。

「まあ、本当の理由が何だろうと、私はエンマさんの方針に従いますけど」

 そう言ってシデンの方向を向くリリス。詮索はしませんから行きましょう、と言う事なのだろう。
 リリスの気遣いに心の中で感謝しつつ、結界を解除してからリリスの背を追った。

 魔物などに警戒しながら歩いて暫くすると、森の木々が疎らになって行き、直射日光が当たるようになって来た。
 そして森を完全に抜け、関所が見えて来る。ここがネィレン王国とシデン王国の国境だ。
 今のところ、日本との関連は見られないが、国内に入ってから変わるのだろうか? いや、そもそも関連があると決まった訳では無いし。

 ここで考えていても仕方がないな。取り敢えず、さっさと関所を通ってシデンに入るか。

「身分を証明できるものは?」

 関所を守る兵士が、身分証明を求めてきた。まあ当然だろうな、得体の知れない者を国に入れる奴はいないだろうし。
 俺とリリスはギルド証を取り出す。

「冒険者か。ランクは……C? 女の身でありながら、その若さでCランクに上り詰めるとはな」

 兵士はリリスのギルド証を見ると、感嘆の声を上げる。リリスは何だか複雑そうな表情だな、まだ自分の実力だと認めていないのか。
 ギルド証が偽物では無い事を確かめると、今度は俺のギルド証を確認する。

「それでこちらのは……はぁっ!?」

 兵士の視線がランクの欄に釘付けにされた瞬間、素っ頓狂な声を上げた。ギルド証を返されたリリスは、その様子に苦笑する。
 俺のランクはB、その上位。オーガジェネラルを倒し、リェリェンの被害を抑えた功績だそうだ。本来ならありえない程の大出世だが、ギルドマスターセルゲイからすると、これでもかなり、かなり妥協した方らしい。

 何でも、最低ランクからの昇格は、今までではCランクが最高だったらしい。その冒険者が、周りの冒険者から妬みを買ってフルボッコにされそうになったが、妬んだ方の冒険者が返り討ちにされた事から、飛び級昇格は慎重にする事になったそうだ。
 今回も俺の昇格を妬む奴は居たそうだったが、嫉妬による集中砲火が始まる前に、セルゲイとガズルドが説得して制止してくれたらしい。後でお礼はしておいた。

 さて、閑話休題。
 この兵士の驚きようは、ギルド証に記されているランクと俺の見た目が一致しないからだろう。なんかもう、リリスとギルド証を交換した方がまだ信じられると思う。
 兵士は、未だ信じられないと言った顔をしながら、何度もギルド証を見直し、漸く観念したのか、疲れた表情でギルド証を返した。

「偽りは無い、偽物でも無い……通って良し」

 兵士は、未だ複雑な表情で、俺たちにシデン入国の許可を出した。
 この数分で随分と疲労した兵士に心の中で謝ってから、シデン王国への一歩を踏み込んだ。

 このような辺境の地なら、どの国でもあまり変わりはしないだろう。普通に集落や村があって、農業や狩りをして、国からの税を納めてその日その日を生きている筈だ。
 ならば、国の特徴が表れるのは首都かその周辺都市。調べた情報によれば、シデン王国の王都はムラサメと言うらしい。取り敢えず、次の目的地はムラサメで良いだろう。
 まあ、国境から馬車で五日くらいの距離らしいから、暫くは観光とかをする事になりそうだが。

 一先ずは、近くの集落かどこかで泊まれる場所を探す必要があるだろうな。最悪、今まで通りに野宿でも構わないし。またリリスを野宿させるのは忍びないが。
 いや、俺一人で決めるような事では無いな。と言う訳で、今後の方針について、リリスにも訊いてみる事にした。

「土と木の根よりも寝心地の良い所で休みたいです」

 切実だった。そして即決だった。

 そんな感じで、シデンではゆっくり休みながら進んで行く事になった。
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