転生×召喚 ~職業は魔王らしいです~

黒羽 晃

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三章 「どうだっていい」

27話

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「だだっ広い平野ですね~」

「違い無いな。道はあるし、道なりに進んで行けばどこかの村には着くだろう」

「そもそも、事前情報さえあれば、これがどの村に続く道なのかって事は分かったんですよ?」

 歩き始めて数十分。未だ建物の影も見えない。見えるのは平原と疎らに生える木々だけだ。
 馬車の車輪の跡を辿って来ているため、このまま進めば何処かに着く事は間違いないとは思うが……何時間も同じ光景を眺め続けるのは結構な苦痛になる。
 リリスは平気そうな顔をしているが、内心はキツい筈だ。さて、どうしようか。

 ……うん、どうしようも無いな。仕方が無い、プランBで行くか。

「リリス」

「何ですか、エンマさん?」

「ちょいと飛ばすぞ。悪い」

「へ?」

 一言だけ断ってから、リリスをひょいと持ち上げる。左腕を膝の裏に回し、右腕で肩を支える、いわゆるお姫様抱っこの状態だ。
 リリスの顔がぽっと赤くなる。別に、見た目の上では女同士だし、誰かが見ている訳でも無いから、恥ずかしがる要素は無い筈なんだけどな。
 てか俺、だんだんと女……幼女……の身体に慣れて来てるな。上半身の一部が男とほぼ同じだって言うのもあるんだろうか? もしくは、これも最適化の影響なのか。
 まあ、そんな事を気にする段階はとうに過ぎているからな。何カ月この身体で過ごして来たかはもう覚えていないし、思い出す気もない。

 爪先で二度、とんとんと地面を叩き、足に力を入れる。それと同時に前方2mくらいの所に結界を張る。この結界は俺と同調して動くようになっているため、ぶつかる心配は無い。
 どうして張る必要があるのかって? リリスが受ける空気抵抗を減らす為に決まってるだろう。
 結界の存在が確定するのを確認すると、リリスに口を閉じるように言ってから、思いっきり全速力で走り出した。

「~~~~~~~~~~!?」

 リリスが声にならない声で叫ぶ。口を開けていたら舌を噛んでいたかも知れないな。
 現在、リリスに負担をかけ過ぎないように、速度は若干抑えて走っている。だいたい音速のちょい手前くらいだ。前方に張っているのとは別の薄い結界で保護しているし、大丈夫だろう。
 そのままリリスの悲鳴をBGMにして、軽く五分程度走り続けていると、漸く建物の影が見えてきた。

「村が見えてきたな。しかし、俺が走って五分か。どう考えても国境から遠すぎる」

 気分悪そうに顔を青くしているリリスを降ろしながら、俺は国境の関所にいた兵士の事を考えた。
 おそらく、最も辺境に近いこの村にさえ、国境から俺の足でこれ程の時間がかかる。普通の人族が歩いて行こうと思えば、或いは何日とかかるかも知れない。
 そんな場所に、なぜあの兵士がいたのか? 何なら、村に駐屯していた方が良い筈なのに。
 まだ分からない、しかし何らかの理由がある気がする。

「うぅ……吐き気が」

 取り敢えず【闇属性魔法】でリリスの亜音速移動酔いを誤魔化すか。
 乗り物酔いの類いだろうし、暫く寝れば治るだろう。その為にも、さっさとあの村に行かないとな。

 蹲るリリスの頭に手を置き、魔法を発動する。途端、リリスの顔色に朱が戻った。

「……相変わらずすごいですね、エンマさんの魔法。吐かないように精一杯だったのに、もう治っちゃいました。あ、ありがとうございます」

「どういたしまして。まあ、効果の続く間だけ吐き気を消しただけだがな。寝床を借りられたら即行で寝かす」

「参考までに訊いておきますが、どうやってですか?」

「どうして欲しい?」

「え、どうして欲しいって、え? それは、何でもしてくれるって意味で……」

「時間切れ。じゃあ俺が勝手に決めておく」

「え!?」

 薄っすらと頬を染めたリリスの発言をばっさりと切り、村に向かって歩き出す。リリスは慌てて立ち上がると、待って下さいと言いながら俺に付いてきた。

 日没まではまだ時間があるだろうと思い、談笑しながら軽く走る。日本にいた頃の俺基準では全力疾走しているのと変わらない速さだが、今の俺なら小走り程度だ。リリスにとってもほんの少しキツめのジョギング感覚だろう。
 このスピードのままで進むならば、到着するまではおよそ3、4時間くらいだろう。リリスが疲れたらまた魔法で疲労を取ればいいだけだし、もっとペースアップしても良いかもしれない。

「ところで、エンマさん」

 走りながら、リリスが話しかけてくる。

「どうした?」

「今更なんですけど、エンマさんはどうしてそんな男みたいな口調なんですか?」

 確かに今更だな。
 まあ、今まで訊いてこない方が可笑しかったようなものだな。本来なら人がどんな口調をしていようがその人の自由だと思えるのだが、多分、俺だと話が変わってくる。

 リリスが話を続ける。

「エンマさんって、柔らかくて、つるつるで、ふにふにしてて、私よりちっちゃくて、その、可愛い、女の子なのに、どうして男性みたいな喋り方をするのかなって。
 それに、見た目よりも大人に見えたりして……」

 そこで言葉を切った。
 何度も言うが、俺の見た目は幼女のそれだ。どれだけ年齢を高く見ようとしても、10歳かそこらが限界だ。そんな子供が、男の口調をしている、と。
 それで、人はそれを見てどう思うだろうか。恐らくは、余計な事を勘繰る。例えば、そうせざるを得ない環境で育ってきたのだと、どうしても男に見られなければならない事情があるのだと。
 その通りで無くとも似たような事を、リリスも思っているのだろう。まあ、勝手な推測で勝手に物語を作って、それを勝手に真実だと思い込んで、自己満足の正義感に駆られて余計な手を差し伸べる奴に比べれば万倍マシだが。

 そんな訳で、誰かが俺の身の上を心配する事など、完全に無意味なのだ。

 リリスの言葉を切って、言ってやる。

「その内話す」

「……約束ですよ」

「勿論だ」

 微妙な表情をしながらも、信じてくれたようだ。俺は頷くと、今一度前を向く。
 目的の村のすぐ目の前まで来ていた。
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